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フィールド日記

2013年05月

2013.05.31

不二聖心の茶草場  ナキイナゴの動画



2013.05.31 Friday
掛川市など5市町の、茶畑の周辺の茶草場を活用した「静岡の茶草場農法」が、5月29日、世界農業遺産に認定されました。不二聖心にも茶草場があり、茶草場のススキは有機肥料として使われ、茶草場には多くの絶滅危惧種が生息しています。世界農業遺産と同等の価値のあるものが不二聖心にも存在すると言えるでしょう。今朝はその茶草場にナキイナゴの声が満ちていました。5月最後の日にナキイナゴのたくさんの声を耳にしたことを大切な記録としてとどめておきたいと思います。


 

 


今日のことば

茶草場――刈り取って茶畑に敷き詰めて有機肥料とするため、茶畑の周囲でススキやササなどを育てている草地。県内で見られる特徴的な風景で、希少な植物や昆虫など多様な生物の宝庫にもなっている。茶草場で育てたススキなどを肥料とする伝統的な農法を「茶草場農法」と呼ぶ。
朝日新聞(2013.05.30)より

2013.05.30

スイカズラとシェイクスピア

 

2013.05.30 Thursday
 

例年より早く梅雨入りし、今日はかなり激しい雨の降る一日となりました。梅雨時の不二聖心で最も目立つ花の一つがスイカズラです。スイカズラ科の花は世界に約500種ありますが、日本のスイカズラは、海外に帰化している例も見られ、Japanese honeysuckle と呼ばれています。シェイクスピアの『真夏の夜の夢』に出てくるwoodbineという植物はスイカズラ科に属し、翻訳者によってはスイカズラの和名である「忍冬」を訳語としてあてている場合もあります。シェイクスピアは、luscious woodbineと表現しています。luscious(香りが良い)というのもスイカズラの仲間の大きな特徴です。梅雨の鬱陶しさを花の香りで多少なりとも忘れることができたらと思います。

今日のことば

あぢさゐの花雨に濡れ父の機が撃ち落されしその日近づく  結城文
四十二で死にたる父に晩年のなきこと思ふ戦なき世に    結城文

2013.05.28

ニジュウヤホシテントウが教えてくれること

 

2013.05.28 Tuesday
昨日紹介したアメリカイヌホオズキにニジュウヤホシテントウがついていました。よく見かけるナミテントウはアブラムシを食べてくれる益虫ですが、写真のニジュウヤホシテントウは植物の葉を食い荒らす害虫です。イヌホオズキの葉も食べれば、茄子の葉も食べれば、トマトの葉も食べます。さて、これらの植物に共通することは何でしょうか。それは、すべてナス科に属するということです。見た目では確認しにくい植物の共通性を、虫たちが食べ物の好みで教えてくれることが多々あります。

今日のことば

やはりストーリィには悲哀がなければならない。悲哀は愛に変わる。

新美南吉  

2013.05.27

畑地を好むアメリカイヌホオズキ

 

2013.05.27  Monday
 

5月22日に「共生の森」でナス科の植物の写真を撮りました。イヌホオズキと見当をつけたのですが、そう言い切るには問題がありました。イヌホオズキは5月ではなく8月に咲く花なのです。専門家の方にご意見を求めたところ、アメリカイヌホオズキという帰化植物であろうという回答を得ました。やはり花期からの判断ということです。英語版のウィキペディアにはアメリカイヌホオズキについて次のような説明があります。

It can grow on sandy and poor soil, but prefers fertile and cultivated soil types.

 つまりアメリカイヌホオズキは、痩せた土地でも育つが肥えた畑地をより好むということです。朝日新聞社から出ている「植物の世界」84号では、アフリカのイヌホオズキも畑の周辺でよく見られると書かれていました。「共生の森」もかつては畑地でした。pHをはかるとそのことがよくわかります。アメリカホウズキは「共生の森」の土地の歴史を静かに語りかけているのかもしれません。


 

今日のことば

タレントのテリー伊藤さんが何年か前、テレビの討論番組で語気を強めていたのを思い出す。「サザエさんを見て、悲しいと思う子供たちもたくさんいるんですよ」。国際機関の統計によると、日本は貧しい子供の割合が先進国の中で4番目に高いという。標準の半分以下の所得しかない家の児童は時を経て増え、今や6人に1人がカツオくんでもワカメちゃんでもないらしい。

編集手帳(2013.5.26)より  

2013.05.24

温暖化指標生物のシブイロカヤキリの声を聞いてみませんか



2013.05.24  Friday
昨夜、帰宅する時に校舎の裏でシブイロカヤキリが、けたたましい音を出して鳴いていました。不二聖心で聞かれる虫の声で「野趣に富む」という表現がぴったりくる双璧は、このシブイロカヤキリとクツワムシです。シブイロカヤキリは、現在、温暖化の影響で東北地方で北上を続けていると言われます。かつては関東北部にもいなかった虫です。「茨城県自然博物館第3次総合調査報告書」は、1991年に茨城県高萩市で全く発見できなかったシブイロカヤキリが、2003年には同市で確認されたという事実を伝えています。
動画をクリックすると真っ暗な中でけたたましく鳴くシブイロカヤキリの声を聞くことができます。
この声を東北地方で聞いたら、それは貴重なデータとなります。

 

今日のことば

人はなぜ苦しむのか。それは、自分のことしか考えないからです。でも、人のために何かをする。すると、「ありがとう」という思いや言葉が返ってきて、自分が必要とされている大切な存在であると感じられ、それが生きる力になるのです。  

水谷修  

2013.05.23

「林業女子会@静岡」代表 本戸三保子さんの講演

 2013.05.23  Thursday


 

 昨日は「林業女子会@静岡」の代表を務めていらっしゃる本戸三保子さんが高校1年生の総合学習の時間に「林業の魅力 ~木と私たちの暮らしをつなぐもの~」という演題で講演をしてくださいました。大学で森林資源に関する研究をなさり今は林業家として親方について仕事をなさっている本戸さんは、おそらく他に例を見ない経歴の持ち主と申し上げてよいのではないかと思います。講演では本戸さんからしかうかがえない話をいろいろと聴くことができました。何より心を打たれたのは、その誠実な語り口と林業に対する熱い思いでした。最後の質疑応答も活発になされましたが、生徒からの「林業のお仕事でいちばんたいへんなことは何ですか」という質問に、しばらく考え込んでしまった本戸さんの姿が印象的でした。「たいへんなこと」が簡単には思いつかないぐらい本戸さんは林業の仕事が大好きでいらっしゃることがよくわかりました。本戸さんの許可を得て講演原稿の一部を以下に引用させていただきます。日本に、このような志を持って林業に携わっている方がいらっしゃるということ自体が林業を元気にする力となるように思います。

 

 

 私と林業との出会い


林業は危険な力仕事で男の仕事だといわれています。「危険、きたない、きつい」の三拍子がそろっていて、さらに山へ女の人が入ることをタブーとする考え方が未だに残っています。
どうして私がそんな仕事に飛び込んだのかというと、高校生のころ私は環境問題に関心があり、生物が生きる環境を作り出しているのは森林だと思い、静岡大学の森林資源科学科へ進みました。
そして、大学3年生のときのインターンシップ(職場体験)で静岡県森林組合連合会に10日間お世話になりました。そのとき初めて林業という産業を目の当たりにしました。山の伐採現場、丸太の市場、製材所などを案内していただき、山の木がどのように木材となって私たちの生活の中で使われるものになるのかを知りました。そして、職人の高齢化、後継者不足、丸太が安くて林業は衰退しつつあり、荒れた山が多くなっている現状を知り、私も何か役に立ちたいという思いが湧き上がりました。
そして、一番印象的だったのが山の伐採現場でした。木が倒れる時の迫力、プロの人たちの意気の合った手際のいい仕事ぶりに引き付けられました。そして何より自分たちの仕事に誇りをもって生き生きとしていて働く人たちの姿にその仕事の魅力を感じました。
そうしてその後、当時女性が現場で働いているという龍山森林組合へ同行させてもらいました。その時組合長をされていたのが今の私の親方である青山有一さんです。青山さんは「自分は山の仕事の経験があるから、女性でもできる仕事があると思い、やる気のある人を採用した。」とおっしゃいました。そして、「日本の山はまずは経済林として成り立たせることが大事。そうすればおのずと山はよくなる。環境はあとからついてくる。」「林業は現場で学べ。机上の空論では通用しない。」と熱く語ってくださいました。私はこのお話を聞いて、林業をやろうと決意しました。
しかし、実際は林業の求人は少なく、現場の仕事に女性を受け入れてくれるところはほとんどありませんでした。私はその時体力も経験もありませんでしたので、やる気だけのアピールでは無謀だったと思います。そうして何度か山へ通い、苗植えや草刈りなどの体験をさせてもらっているうちにやる気を認めてくださり、青山さんが組合長を辞めた後自分の山の管理をしていくからということで、指導していただきながら一緒に仕事をさせてもらうことになりました。
何とか希望通りの現場の仕事につけたものの、ほとんど山に来た経験がなかったので、はじめは山を歩くのも一苦労でした。毎日体のあちこちが痛くて、道具も重たく使いこなせないので、思うように仕事ができませんでした。それでも毎日清々しい空気と季節ごとに移り変わっていく緑の美しさに励まされ、ここでくじけてはいけないと思いました。
そうして1~2年くらい経つと体力もついてきて、今ではこの仕事の面白さがわかってくるようになりました。一本一本の木や地形は二つとして同じものはないので、毎回新しい発見があり経験の積み重ねが大事です。ベテランの72歳の師匠には無駄な力を使わずに道具をうまく利用すること、常に先を読んで作業をすることを教えてもらっています。
社会的意義を考えてもやりがいのある仕事であり、手入れをした山は本当にきれいになって応えてくれます。そして、山の中で全力で体を動かして仕事をすることはこの上なく気持ちのいいものです。
私は、この仕事と出会えてよかったと心から思っています。
林業は危険すぎるのであえてお進めはしませんが、世の中にはまだ知らない職業がたくさんあります。みなさんもこれからいろんな体験をして、自分のやりたいことを見つけてもらいたいと思います。見つけたら、たとえ困難があってもすぐにあきらめずに努力してほしい。私は自分の努力だけでなく、よき理解者との出会いがあって今があるのですが、そのようなチャンスがきたときにぐっと掴めるように挑戦してみてほしいと思います。

 


今日のことば

「林業女子会@静岡」代表 本戸三保子さんの講演の感想より

◎林業のことをあまり知らなかったので、今日知ることができて良かったです。林業は将来に希望を持てる職業だと思いました。ずっと何年も続いていき、環境を良くすることもでき、先生も「好きだから大変じゃない」とおっしゃっていて、すごく魅力的な職業だと思いました。私も将来、先生のように仕事に誇りを持って取り組める女性になりたいです。

◎環境問題のことについて私も興味があり、本戸先生も高校生の時に環境問題に興味があって、その後林業の仕事についたとおっしゃっていて驚きました。私の中の林業のイメージは木を伐っているだけというものだったのですが、今回話をうかがって「植える→育てる→伐る→使う」という循環系だと聞いたので、林業のイメージががらりと変わりました。
ヒノキの年輪を見せていただきましたのが、あれほどの年輪は見たことがなかったのでとても驚きました。

◎木戸先生のお話をうかがい、林業に対しての見方が変わった気がします。林業では、常に、50年後、100年後を考えながら作業をしていて、今木を伐れるのは昔ここに木を植えてくれた先祖のおかげで、今植えるのはこの先の子供たちのためだという話を聞き、たいへんだけれどもすごいことだと思いました。森林は再生可能な資源なので大切にしていきたいと改めて思いました。

2013.05.22

シロスジヒゲナガハナバチとツチハンミョウ

 

2013.05.22 Wednesday
アザミの花にいろいろな虫が集まる季節となりました。写真のハチはシロスジヒゲナガハナバチです。このハチは、地中深くに巣穴を掘り花粉と蜜で幼虫を育てます。ツチハンミョウという昆虫の幼虫は花を訪れたシロスジヒゲナガハナバチの足にしがみついてその巣まで連れて行ってもらい、地中の巣を自分の住居とします。しかし、訪花するハチが必ずしもシロスジヒゲナガハナバチとは限りません。しがみついたハチがたまたまシロスジヒゲナガハナバチであったという僥倖によって彼等の命は守られているのです。

 

 

今日のことば

ツチハンミョウの幼虫が安楽な成育の場所へ辿りつくまでは、かかる難儀の連続だ。無事に行きつく可能性がどんなに低いかは容易に想像がつくだろう。それゆえにこそ、ツチハンミョウの母親はあんなにぶざまにふくれあがった腹をひきずっているのだ。彼女は何千という卵をうむ義務がある。数えきれぬ子供たちのなかから特別な幸運児だけが、ツチハンミョウの歴史をになう一員となれるのだ。

北杜夫  

2013.05.21

体色の鮮やかなモリアオガエルと築山のモリアオガエルの卵





2013.05.21 Tuesday
今朝は校舎の壁に絶滅危惧種のモリアオガエルがついていました。樹上生活に適するように指の吸盤が発達しているのが写真からもよくわかります。昨日の「フィールド日記」のモリアオガエルと比較すると体色が全く違います。本館前の築山のモリアオガエルの卵は今朝の時点で8個になっていました。今年はモリアオガエルの産卵時期が例年より早いというニュースがあちこちで流れていますが、不二聖心のモリアオガエルの産卵のペースもいつもよりはやいようです。今日は御殿場のNPO法人「土に還る木・森づくりの会」の方々が「共生の森」の草刈りをしてくださいました。暑い中での除草作業に心からの感謝を申し上げたいと思います。「共生の森」でも既にモリアオガエルの生息が確認されています。

今日のことば

高校3年生の短歌より

ほととぎす厳しい自然を生き抜いたあなたの歌に勇気をもらう    
彼女より先に座れる兄の横 初ドライブは私の迎え         
ごちそうを父・姉・私でプレゼントごめんね母よ母の日だけで    
心では言えるのになぜか照れ隠しいつもありがとう言えない娘    

お知らせ

今年も8月に小学4年生から6年生を対象として「夏休み子供自然体験教室」を不二聖心女子学院で開催します。申し込み方法など詳しいことをお知りになりたい方は下記のURLをクリックしてください。
http://www.fujiseishin-jh.ed.jp/modules/bulletin/index.php?page=article&storyid=297
 

2013.05.20

モリアオガエル  オオホシオナガバチ  ヒメヒゲナガカミキリ





2013.05.20 Monday
今日は雨のために、体育大会に向けてのテント運びもライン引きの練習もできませんでしたが、この雨もカエルたちにとっては恵みの雨であったようです。夜の7時過ぎには、日本各地で絶滅危惧種に指定されているモリアオガエルが校舎のすぐ近くまでやってきていました。
5月15日に高校3年生が特別第3教室で採集したオナガバチについて、ヒメバチの専門家の方に同定を依頼したところ、オオホシオナガバチだと回答がありました。オナガバチは、林業害虫であるキバチに寄生する益虫です。2枚目の写真は5月12日に「共生の森」で採集したヒメヒゲナガカミキリです。広葉樹に穿孔する林業害虫です。オナガバチの中にはカミキリムシの幼虫に寄生する種もいます。林業や森づくりのためにオナガバチは非常に大きな役割を果たしていると言えそうです。

今日のことば

自分の心を見たければ、自分の部屋を見ればいい。部屋は「あなた」である。

名越康文

お知らせ

今年も8月に小学4年生から6年生を対象として「夏休み子供自然体験教室」を不二聖心女子学院で開催します。申し込み方法など詳しいことをお知りになりたい方は下記のURLをクリックしてください。
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2013.05.19

カラスザンショウにアゲハチョウの幼虫と謎の巣を発見





2013.05.19 Sunday
寄宿舎のデザートの種から育てたグレープフルーツの木にアゲハチョウが卵を産みました。グレープフルーツは「共生の森」の一角に植えられていますが、そのすぐ近くに同じミカン科のカラスザンショウが生えています。その枝にアゲハチョウの幼虫を見つけました。こちらはいつのまにか終齢幼虫(5齢幼虫)になっていました。まわりの葉はほぼすべて食べ尽くされています。さらにすぐ近くのカラスザンショウには葉巻状になった葉を見つけました。この場合は、葉は食糧兼住居となっています。中に何かが潜んでいるはずですが、正体は謎です。

今日のことば

自然界は広く、深い。人が知っているのはほんの一部だ。生物の不思議をひらくには、教える方が好奇心のエンジンをしっかり回して、子どもと謎解きの旅に出るつもりでちょうどいい。よく見れば、生き物は絶対に面白いのだ。

盛口満  

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今年も8月に小学4年生から6年生を対象として「夏休み子供自然体験教室」を不二聖心女子学院で開催します。申し込み方法など詳しいことをお知りになりたい方は下記のURLをクリックしてください。
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