〇お知らせ〇
同じ内容をインスタグラム「不二聖心女子学院フィールド日記」(クリックするとインスタグラムのページが開きます)にも投稿しています。より高画質な写真を載せていますのでぜひフォローしてください。

フィールド日記

2014年06月

2014.06.30

タラノキ  コクロヒメテントウ

 美味なタラの芽で知られるタラノキが「共生の森」の周辺で青々と葉を茂らせています。


 タラノキは、この木だけで一冊の絵本が書けるほど、さまざまな生き物を呼び寄せる木です。画像の白い生き物はコクロヒメテントウというテントウムシの幼虫です。アリの捕食から逃れるために、アリと共生関係にあるカイガラムシに擬態しています。


今日のことば

にんじんは明日蒔けばよし帰らむよ東一華(あずまいちげ)の花も閉ざしぬ    土屋文明

2014.06.27

タケニグサの花

 「共生の森」では、栗の花が盛りを過ぎ、タケニグサの花が咲き始めました。


 タケニグサの茎は長く伸び、「クサ」という名に似つかわしくない大きさまで成長します。

 この茎の中にギングチバチが巣を作ることがあります。ギングチバチの姿は不二聖心のフィールドで既に確認されていますので、いつか巣も見つかるかもしれません。

 今日のことば

 岩田氏の本を読んでから間もなく、私はギングチバチの巣を偶然に見つけることができた。終戦の年の冬で、たまたま青山墓地の附近を歩いていたとき、空襲警報が鳴った。昼間の空襲であった。すでに哨戒機の爆音がとどろき、なんとなく大規模な空襲のように思われた。私は墓地のなかへはいっていった。人家のある場所より樹木と墓石のつらなった人家のない墓地のほうが安全そうに思えたからである。敵機を待ついくばくかの時間に、私は立枯れているタケニグサの茎をさしたる期待もなく割っていった。茎の中には越冬中のトビイロケアリの雌がひそんでいたりした。そして一本の茎を割ったとき、なかからバラバラと黒いものがこぼれおちてきた。十数匹の蠅の残骸である。私の手はふるえた。この巣をつくった蜂は、たしかにクララギングチバチか、それに近い種類にちがいない。私はなおタケニグサの茎を割り、もう一つの巣の跡を見つけだした。しかしそれは過ぎ去ったものの残骸にすぎなかった。乾からびた蠅のキチン質が、おそらくは前の夏の、ふしぎな狩猟蜂の生活を暗示しているにすぎなかった。
                        『どくとるマンボウ昆虫記』(北杜夫)より

2014.06.26

共生の森の植樹の準備  セミの幼虫

 6月25日の総合学習の時間に高校1年生が植樹のための準備として杭打ちと穴掘りをしました。

 生徒が土を掘っていたら、蝉の幼虫が出てきました。形から判断するにヒグラシではないかと思われます。7年地中にいてからようやく地上に姿を現し、地上での1週間を過ごす蝉の生活史には、人をして時間というものに深く思いを至らしめるものがあります。

今日のことば

私は花が好きだ。
しかし、なぜと問われてもうまく答えることは出来ない。
だが、花に逢えば、感動し心が癒される。
千変万化する花ビラやしべの形や彩り、風に乗って漂う、夢を誘うような不思議な香り、新たな命を宿し育ち色づいてゆく果実や種子、そういったすべてが、何かを語りかけてくるのだ。
そう、それは過ぎてゆく時の流れの標しでもある。                栗田子郎

2014.06.23

ムラサキシキブ  カノコガ

 裏道でムラサキシキブの花が咲き始めました。実に注目が集まりがちなムラサキシキブですが、花もなかなか美しいです。ムラサキシキブという名前はもちろん『源氏物語』の作者の名前に由来しています。


 「共生の森」で、この夏初めてカノコガを見つけました。「カノコ」は「鹿の子」を意味し、翅の模様が小鹿の背の斑紋に似ているところから付けられた名前です。古語では小鹿を「鹿の子」と表現するのが一般的でした。

 動植物の名前には古典ゆかりの人物や古語からとられたものがたくさんあります。

 
 今日のことば

 灌仏の日に生まれあふ鹿の子かな    松尾芭蕉

2014.06.22

ゲンジボタルと古典の授業  ホタルブクロ

 先週の古典の授業で、富士山麓の田んぼで採集したゲンジボタルを見せ、ホタルを詠んだ和泉式部の和歌の話をしました。思いの外、大きな反響がありました。


 校舎の裏でホタルブクロの膨らんだ蕾を見つけました。昔の子供が花の中にホタルを入れて遊んだところから、ホタルブクロを名づけられた花です。


今日のことば

ものを思へば沢の蛍もわが身よりあくがれいづる魂(たま)かとぞ見る   和泉式部

2014.06.19

栗の花

 著名な植物学者、前川文夫博士の『日本人と植物』(岩波新書)の中に「栗花落」という難読名字が紹介されています。「栗花落」は「つゆり」と読みます。「つゆり」は「梅雨入り」が縮まってできた言葉です。前川博士は、「栗花落」は梅雨入りの時期に栗の花が落ちることから生まれた名字だろうと推測しています。不二聖心は今が栗の花の盛りの時期です。梅雨入りからはずいぶん時間が経ちました。どうも梅雨入りと栗の花の落ちる時期は一致しないようです。それならばなぜ「栗花落(つゆり)さん」という名字が生まれたのか。じっくり考えてみたいものです。


今日のことば

世の人の見付けぬ花や軒の栗   松尾芭蕉


 

 

2014.06.13

モリアオガエルの不思議な産卵

 夜、帰宅する時に栗の花が香りました。梅雨の季節に欠かせない6月の風物詩です。
 昨日は、高校2年生が、「モリアオガエルをつかまえました」と教えてくれました。
 今日は、高校1年生が、「モリアオガエルがコケの上に卵を産みました」と知らせてくれました。下に水のない場所にモリアオガエルが産卵すると、それだけで新聞に載ることがあります。
 この卵の発見者は、「夏休み子供自然体験教室」の生徒スタッフの一人です。この観察眼が体験教室でも生かされることを願っています。(「夏休み子供自然体験教室」についてはホームページのトップページをご覧ください。)


今日のことば

人が何かに出会い、感動する。その感動の元をたどっていった時、その核のところには、こういった肯定の光景があるのではないだろうか。肯定の感情が世界を覆う、そのことを感動というのではないだろうか。                               太田省吾
 

 

2014.06.12

コマルハナバチの女王の死

 6月10日のフィールド日記で紹介したようにマルハナバチの働き蜂が訪花する季節となりました。春に女王蜂が生んだ卵がかえり、働き蜂として活動し始めたということです。働き蜂が働き始める季節は女王蜂が一つの役割を終える季節でもあります。
 今日は校舎の近くで既に息絶えているマルハナバチの女王蜂を見つけました。静かな思いに誘われる6月の自然の姿です。

 今日のことば

 苦しいことがなにもない人生なんぞ、無意味だよ。わしら人間は、祈るなら、苦しいことの意味を理解するのを助けてほしい、と祈るべきだ。苦しいことを取りのぞいてほしい、と祈るのではなくね。
                          『ナゲキバト』(ラリー・バークダル)より

2014.06.10

六月とサツキ  コマルハナバチ

 今日は陰暦の五月十三日です。旧暦の五月(さつき)は、ちょうど今の季節に当たります。ツツジ科のサツキという和名は陰暦の五月に咲くところから付けられた名前です。不二聖心の庭もさまざまなサツキの仲間であふれています。
 最もよく見られるのが、大盃(おおさかずき)と呼ばれる種類です。


 サツキの仲間は基本的に雄蕊は5本です。サツキ(五月)は5本。覚えやすいです。


 早朝からコマルハナバチの働き蜂が訪花していました。サツキの受粉はマルハナバチのように花にもぐることが得意な蜂でなければできません。自然界では、それぞれの生き物がそれぞれの役割を担っています。


今日のことば

五月雨をあつめてはやし最上川    松尾芭蕉
 

2014.06.06

幻のアジサイ シチダンカ

 理科室から本館に向かう通路の脇に幻のアジサイ、シチダンカが咲いています。シーボルトが「フローラ・ジャポニカ」に記載して以来、約130年間、幻のアジサイとなっていましたが、六甲山小学校の職員の荒木慶治さんによって1959年に六甲山で発見されました。
 花崗岩で有名な六甲山の土壌は酸性で、アジサイの栽培に適した土壌です。全国に広がる御影石のふるさとは、全国に広がるシチダンカのふるさとともなりました。


今日のことば

麦秋や子を負ひながらいはし売り  小林一茶