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  2009年7月15日放送の宗教朝礼より

おはようございます。これから宗教朝礼を始めます。

5月に行われた聖マグダレナ・ソフィアの祝日の劇団ティーチャーズの歌は、GReeeeNの「キセキ」でした。中学生の皆さんは覚えていますか。私がこの歌を素敵な歌だなと感じたきっかけは、去年の高校3年生が送別会でこの歌を歌ったこと。それと同時期に保育園児だった娘がこの歌を口ずさんでいたことでした。

この広い地球上で愛する人と巡り合えた奇跡“miracle”。そして、そんな君と小さな幸せを見つけ、それを重ねてこの先何十年も歩み続け、人生の軌跡“track”を一緒に描いていきたいという願いが込められた歌です。常識では考えられない不思議な出来事という意味で使われる奇跡“miracle”。人や物事が辿ってきた動きの跡として使われる軌跡“track”。同音異義語の奇跡“miracle”と軌跡“track”とが言葉遊びのように使われています。

また、これとは別にもう一つ私がよく使うキセキがあります。高校2年生以上の皆さんはもちろん知っていますよね。中学生と高校1年生は今から言うことを頭の中で想像してください。ある点から距離が5cmの点の集まりって何だと思いますか。それは、半径5cmの円です。数学ではこのようにある条件を満たしながら、動くときに描く図形を軌跡”locus“と言います。

皆さんは単にキセキというと、どのキセキが頭に思い浮かびますか。

私がこの不二聖心という学校で数学を教えている奇跡“miracle”。しかし、この学校にたどり着くまでには、様々な場所での経験を積み重ねて泣いたり笑ったりしたことの一つひとつが、私のこれまでの軌跡“track”。そして、これから先どんな図形を描いていくのか不安と希望が交差する軌跡”locus“。

少し強引かもしれませんが、キセキとは人がこれまで辿ってきた人生の跡という意味と、これから動くときに描かれるこれからの足跡。過去を現在に、更には未来へと結びつけていく不思議な言葉だと思いませんか。

ところで、「つみきのいえ」という短編アニメーションを知っていますか。2009年のアカデミー賞で短編アニメーション賞を受賞し一躍有名になった作品で、国内外の映画祭で20冠に輝いた短編アニメーションです。

この物語は水没していく家で暮らす一人の老人の話です。この水没の背景には地球温暖化が秘められています。海面が上昇すると、家の中に水が流れ込んできます。完全に水没してしまう前に、その家の上に新しい家を作ります。その家がまた水の中に沈みそうになると、またその上に新しい家を作ります。こうして、上へ上へと家を建て増しすることで、つみきを積み上げたような家が出来上がります。周りの人は家を作り続けるのをやめて違う土地へ引っ越してしまいますが、この老人は一人になっても、この家に住み続けました。ある日落としたものを探しに海に潜ります。3階下の家へ着いたとき、老人の妻が微笑みながら落し物を拾ってくれる場面が一瞬蘇ります。その家は、妻が亡くなったときの家でした。さらに、下の家へ、下の家へと潜っていくたびに沢山の思い出が回想されます。孫たちのこと、娘がお嫁に行ったときのこと、娘が生まれたときのことなど。その思い出を辿りながら、老人は一階ずつ下へ降りていきます。そして、一番下の家へ。その家を建てた頃には、まだ周りには水が無く緑が生い茂っていました。子供の頃の楽しい思い出が蘇ってきます。

このように、過去の無い人はいません。過去の経験や知識を積み上げていくことで、今の自分があるのです。決して家作りを止めない老人から学ぶもの。その老人が歩んできた軌跡を辿ることで、誰の人生にもある、ささやかな思い出を再確認し、人は愛し愛されて生きていくということ。とても心に響く物語でした。

映画賞を受賞した作品には、セリフが無く、映像とBGMのみによってストーリーが進んでいきます。色合いや絵のタッチには、手書きの温かみがあります。機会があったら、DVDや絵本を見てください。

思い出は、時の経過と共に嫌なものをそぎ落とし嬉しかったものを多く残すとされています。

来週からは夏休みです。多くの経験をし、多くのことを感じとることでしょう。9月にはひと回り成長した皆さんにお会いできることを楽しみにしていますね。

これで宗教朝礼を終わります。

M.D.(数学科)

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