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  2009年6月17日放送の宗教朝礼より

おはようございます。宗教朝礼を始めます。
まずは、今流れているピアノ曲を少し聴いてください。

(Liszt Hungarian Rhapsody No. 2)

この曲はピアニスト辻井伸行さんの演奏によるものです。
先週金曜日、全校朝礼のお祈りの中でも触れられていたのを記憶している方も多いでしょう。

出生時に病気のために視力を失った辻井さんですが、7日にアメリカで開催された第13回バン・クライバーン国際ピアノコンクールで日本人として初めて優勝しました。今流れている曲は、辻井さんがコンクールの決勝で演奏した曲のひとつ、リスト作曲の「ハンガリー狂詩曲第2番」です。

弱冠20歳で厳しい予選を勝ち抜いた辻井さんは、アジア人でも初めての優勝者となりました。

4年に1度しか開催されない、世界的に有名なコンクールで全盲のピアニストが優勝したニュースは瞬く間に広まり、日本中の多くの人が彼の偉業を讃え、帰国後すぐに行われたコンサートのチケットは完売だったということです。
さて、週末、家でこの喜ばしいニュースを見ながら、2つのことについて考えていました。

ひとつは、多くのメディアが辻井さんが全盲であることを執拗に取り上げている、ということです。

彼は生まれつきの全盲ですが、ピアノの才能は2歳の時にすでに発揮され、10代ですでに日本のみならず、世界各国でリサイタルを行い、キャリアを積んできています。

さまざまな賞も受賞していますし、経歴を聞けば、辻井さんが経験豊かな優れたピアニストであることは一目瞭然です。

しかしメディアは、彼が全盲だという事実ばかりに話題の焦点を置いているようで、私は何とも言えない気持ちになっていました。

確かに、手元が見えない状態でピアノを弾くことは並大抵のことではないはずです。楽譜も、専用の点字の楽譜を指導の先生が作ってくださっているということでした。たった3分の曲が、点字楽譜では百科事典1冊ほどの厚さにもなるそうです。

複数のニュースを見ているうちに、辻井さんは全盲だから素晴らしいのだろうか、と違和感を感じ始めました。

すると、母親であるいつこさんのインタビューが映りました。

いつこさんは

「これでやっと息子が全盲のピアニストではなく、一人前の芸術家として認められたとうれしく思います」

とコメントをなさっていました。

コンクールの審査員も同様でした。

「優勝したのは、全盲のピアニストだからではなく、彼の純粋な音楽が評価されたからだ」と。

帰国直後のインタビューで辻井さんは、

「障害者というより、一人のピアニストとして聴いてくれた手応えがあるので、それがとてもうれしい」

と話をしています。

私はこれらのコメントを聞いて、あぁ、そうか。と思いました。

常に「全盲の」という枕詞とともに生活してきた辻井さんは、評価を受けながらも決して心から満足していなかったということを確信しました。

確かに障害者という事実は一生変わらないことですが、実際に障害を抱える人にとって「障害者なのに素晴らしい」と評価されることは不本意で、障害に関係なく一人の人間として認められたい気持ちがあるのだということを痛感しました。障害者の方に出会ったときにどのように接することが大事か、改めて考えさせられました。

さて、もうひとつ、ニュースを見ながら考えたことがあります。

辻井さんの指導者である先生が「のぶくんのピアノの才能はGIFTだ」とコメントをしていました。

このGIFTの意味は、生まれながらにして与えられている才能、です。

ちょうど先月、高校2年生のオーラルの授業で、辻井さんと同じように盲目の女性が学校を障害を抱える子どもたちのために建てたという物語を読みました。彼女は「人は誰でもGIFTを与えられている」と言っていました。

授業の終わりに、生徒それぞれのGIFTは何かと聞くと、一瞬、何だろう?と考えこむも、思い思いに話をしてくれました。

ささいに聞こえることでも、大事なGIFTだね、とその物語を終えました。

中間試験が終わって、ある生徒が自信をなくした様子で私に話しかけてきてくれました。

「先生、どうしよう。私にはなんの取り柄もない」と彼女は寂しそうでした。

とっさのことであまり気の利いた言葉が思い浮かばなかったのですが、私は辻井さんや授業で読んだ物語のことを思い出し、

「人にはね、必ず一つはいいところがあるんだよ」と答えました。

彼女は「え~、ひとつしかないの?」といたずらっぽく笑っていましたが、話をしていくうちに

「なんか少し元気が出てきた」と帰っていきました。

人には、必ずひとつGIFTが与えられています。

自分のGIFTが何か、ぜひ探してみてください。

そしてそれを大事に、個性を伸ばしていってほしいなと思います。

最後に、一人のピアニストとして素晴らし演奏をした辻井さんのGIFTを、もう少しゆっくり感じてみてください。

(Liszt Hungarian Rhapsody No. 2)

これで宗教朝礼を終わります。

M.I(寄宿舎).   

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