シスター・先生から(宗教朝礼)

2017.02.08

2017年2月8日放送の宗教朝礼から

 今から、ある映像の音声を流します。聞いてください。

  Obama Sings 'Amazing Grace' During Pinckney Eulogy | msnbc
 英語のスピーチをしていた人が途中から、賛美歌を歌い始めました。曲名は「Amazing Grace」。有名な曲です。この賛美歌は1772年、イギリス人牧師John Newtonが作詞しました。彼は牧師になる前、長年黒人奴隷貿易に関わっており、そのことに対する悔恨と、それにも拘らず赦しを与えてくれた神様に対する感謝が歌われています。アメリカではもっとも親しまれている歌の一つだそうです。
 さて、スピーチをしていて歌を歌いだした人はわかりますか?前アメリカ大統領オバマ氏です。この映像は2015年6月26日にサウスカロライナ州チャールストンで起きた銃乱射事件の追悼式のものです。
 このときのことを取り上げた朝日新聞(2016年1月1日付)の記事を読みたいと思います。



かつて奴隷取引の拠点だった米南部サウスカロライナ州チャールストン。
ここで昨年(2015)6月、白人至上主義の男に射殺された牧師ら黒人9人の追悼式があった。
大勢の参列者を前に、黒のスーツに身を包んだオバマ大統領が壇上に立った。
力強く進んでいたスピーチが、突然止まった。
沈黙が10秒ほど続いた。〈中略〉
アメージング・グレース 
なんと甘美な響き 
人でなしの私を救ってくださった
たちまち総立ちの大合唱に。天を見上げ、涙を流す人もいた。
ふだん冷静に振る舞う大統領が、この日は犠牲者一人ひとりの名を、叫ぶように読み上げた。〈中略〉
追悼式の1週間前。逮捕された容疑者が出廷した。
遺族は一人ひとり、モニター越しに男に語りかけた。
「あなたは私から大切な人を奪いました。もう彼女(母)と話し、
 抱きしめることもできません。でも私はあなたをゆるします。」
「私は自分がとても憤っていることを告白しますが、憎むことはありません。
ゆるさねばなりません。あなたの魂のために私は祈ります」


 新聞の見出しは「オバマが歌ったゆるす心」。
 誰かに心を傷つけられたとき、私は怒りや悲しみでいっぱいになります。あなたはどうですか。「ゆるす」ことは非常に難しいことです。でも、それを実践している人たちがいます。さきほどの銃乱射事件の被害者遺族。2015年11月に起こったパリ同時多発テロで妻を亡くした男性がfacebookに投稿したメッセージ「私は君に憎しみという贈り物はしない。 …… 私と息子は、世界中のどの軍隊よりも強い。怒りでは応じずに自由に生きることこそが、君をはずかしめるだろう」。私たちは彼らの姿から多くのメッセージをいただいたはずです。
 数日前、アメリカのSuper Bowl(プロアメリカンフットボールリーグの優勝決定戦)のハーフタイムショーでLady Gagaがショーを行いました。彼女はニューヨークの聖心女子学院の卒業生でもあります。彼女の「Born this way」という曲の歌詞に次のような部分があることを知りました。

Whether you're broke or evergreen
You're black, white, beige, chola descent
You're lebanese, you're orient
Whether life's disabilities
Left you outcast, bullied or teased
Rejoice and love yourself today
あなたが貧しくても、豊かでも、黒人・白人・黄色人種・ヒスパニック・レバノン人・東洋人、 
   障害者であったりのけ者にされたり、いじめられていも
今日のあなた自身を喜び愛しなさい

 歌詞の中には性的マイノリティの方々も取り上げられています。
 私たちは家族、学校など、さまざまなコミュニティに所属しています。これからあなたたちが生きていく社会はより多様性のあるものとなるでしょう。自分と異なる人たちを受け入れる広さ、豊かさを身につけるためにも、私たちには今いる場所で「ゆるす心」を持ち、自分自身の多様性を広げていく必要があるのではないでしょうか。私はみなさんにそのような心を持ってほしいと願っています。
                                                                  M.H.(国語科)