シスター・先生から(宗教朝礼)

2023.02.01

2023年2月1日放送の宗教朝礼から

  おはようございます。これから宗教朝礼を始めます。今日から2月ですね。2月は一年で最も寒い月といわれます。インフルエンザもはやっています。寒さ対策をして、体調を整えて、オンラインへむかってください。2月という月は寒いだけでなく、気持ちも憂鬱になりがちな月だそうです。冬で太陽の光を浴びる時間が少なく、落ち込んだ気持ちになりがちな季節だそうです。私自身も、この季節は落ち込んだり、うまくいかなかったことを思い出したり、憂鬱な気持ちになりがちな印象があります。皆さんはいかがですか。

 しかし、寒い冬が過ぎれば春が来て、桜が咲きます。桜が咲くには冬の寒さが必要だという話を聞いたことがありますか。桜の木は夏に花の芽を作りますが、その芽は冬にいったん成長を止め眠った状態になるそうです。それが真冬の寒さで眠りから覚め、春に向けて成長し、花を咲かせるそうです。つまり、桜が美しい花をさかせるためには、一定期間、厳しい寒さに耐える必要があるのです。花を咲かせるためには厳しい冬が必要。なんだか、人生のようではありませんか?
もう一つ、桜に関わる話を紹介します。私が中学生だったころ、国語の教科書に載っていた「言葉の力」というエッセイです。作家大岡信さんが染色家志村ふくみさんを訪ねたときのことです。

 京都の嵯峨に住む染色家志村ふくみさんの仕事場で話していたおり、志村さんがなんとも美しい桜色に染まった糸で織った着物を見せてくれた。そのピンクは、淡いようでいて、しかも燃えるような強さを内に秘め、華やかでしかも深く落ち着いている色だった。その美しさは目と心を吸い込むように感じられた。
「この色は何から取り出したんですか。」
「桜からです。」
と志村さんは答えた。素人の気安さで、私はすぐに桜の花びらを煮詰めて色を取り出したものだろうと思った。実際はこれは桜の皮から取り出した色なのだった。あの黒っぽいごつごつした桜の皮からこの美しいピンクの色が取れるのだという。志村さんは続けてこう教えてくれた。この桜色は、一年中どの季節でもとれるわけではない。桜の花が咲く直前のころ、山の桜の皮をもらってきて染めると、こんな、上気したような、えもいわれぬ色が取り出せるのだ、と。
 私はその話を聞いて、体が一瞬揺らぐような不思議な感じに襲われた。春先、もうまもなく花となって咲き出でようとしている桜の木が、花びらだけでなく、木全体で懸命になって最上のピンクの色になろうとしている姿が、私の脳裏に揺らめいたからである。(略)
光村書店『国語2』

 花を咲かせるためには見えないところまでも最上のピンク色になろうとしている、これも人生のようではありませんか。
 初めに、2月は憂鬱になりやすい月だと言いました。皆さんは日々、憂鬱に思ったり、悩んだり、悲しんだり、もやもやしたりすることがありませんか。もしかしたら、それは、皆さんが花を咲かせるための準備なのかもしれません。桜が厳しい冬を乗り越えて花を咲かすように。そして皆さんが花を咲かせるのは、その目に見える部分だけでなく、見えないところでも真摯に努力したからなのかもしれません。春先の桜の木が「花びらだけでなく、木全体で懸命になって最上のピンクの色になろうとしている」ように。
だから、憂鬱な気持ちや悩みや悲しみやもやもやをある意味大切にしてください。それは皆さんがよりよく成長しようと努力している糧なのですから。そして、うまくいかなかい自分、悩んでいる自分、悲しんでいる自分を責めるのではなく、受け入れてあげてください。必要以上に自分を嫌いになったり、責めたりする必要はありません。つらいこと、悲しいこと、嬉しいこと、さまざまなことを受け入れて、前を向いてください。そして、周囲に目を向けて、一歩前へ踏み出してください。
 昔、ある神父さまに言われました。「神様が一番望んでいることは何だと思いますか?」答えは「あなたの幸せ」です。皆さんが皆さんの冬を受け入れ、「幸せ」という花を咲かせますよう、お祈りします。これで宗教朝礼を終わります。
M.S.(国語科)