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フィールド日記

2011年12月

2011.12.31

アリジゴク

2011.12.31 Sunday

第二牧草地から見た大晦日の空です。

 多くの生き物が活動をやめて越冬に入り、アリの姿もほとんど見かけなくなったこの時期に特別第3教室の下でアリジゴクの巣を見つけて驚きました。 巣の中にはちゃんとアリジゴクが住んでいました。
一度巣を壊して平らにしその後の様子を観察したところ、アリジゴクはきちんと巣を作りなおしました。
この時期もアリジゴクが活動している証です。しかし蟻などの小動物が活動していない時期になぜアリジゴクは巣をつくるのでしょうか。
今日は森の奥でもたくさんのアリジゴクの巣を見つけました。この時期の巣は決して珍しいものではないようです。

 

 アリジゴクがウスバカゲロウの幼虫であることは日本ではよく知られていて、日本人は長い間この虫に親しんできました。井伏鱒二の「蟻地獄」という詩からもそのことがよくわかります。

蟻地獄  井伏鱒二

小学校へあがる前のことーー
お寺の回廊の下が涼しかつた
そこの地面に二つ三つ蟻地獄の穴があつた
その穴のわきに身を伏せて
その穴にそつと頬を近づけて囁くのだ
「こんこん出やれ、鬼出やれ
こんこん出やれ、鬼出やれ」
さう囁きながら
穴のわきを静かに静かに手のひらで叩く
これは一人遊びの遊戯である

それを私はお寺の小僧から教はつた
「こんこん出やれ、鬼出やれ」
繰返し囁き繰返し叩いてゐると
穴の底から蟻地獄が顔を覗かすのだ
兜の鍬型のやうな頑丈な顎を出し
「おい、いたづらは止せ」と云ひたげにすぐ隠れる
それを見て子供一人で遊ぶ遊戯であつた

                     今日のことば

「頭のいい人」というのは「心のやさしい人」です。「成績のいい人は心の冷たい人だ」というのは嘘です。
一生懸命勉強する人は物の奥行きが見える ようになるので、心やさしい人になるのです。
本当に勉強する人は奥行きを学ぶのです。そういう人は思いやり深い人間になるのです。                                                      西経一

2011.12.29

テイカカズラ

2011.12.29 Thursday

 第2牧草地に向かう道の途中でテイカカズラの種を見つけました。種の上についている綿毛のおかげで遠くまで飛んでいくことができます。この工夫は 見事に成功しているようで、不二聖心ではいろいろなところでテイカカズラの種が落ちているのを見かけます。
見つけたら手にとって宙に投げてみてください。 ゆっくりと落下する様子を観察することがでるでしょう。

          今日のことば

わたしが生きているのはむだにはならないでしょう
もしだれかの心がひとつでも裂けるのをふせいであげられたら
ひとつでも生命の痛みを軽くしてあげられるなら
あるいは苦痛をしずめられるなら

あるいは一羽の弱ったこまどりを助けて
もういちど巣にもどしてあげられるなら
わたしが生きているのはむだにはならないでしょう
                                     エミリー・ディキンソン

If I can stop one heart from breaking
I shall not live in vain
If I can ease one life the aching
Or cool one pain

Or help one fainting Robin
Into his nest again
I shall not live in vain.
              Emily Dickinson

2011.12.28

ビロウドサシガメ

2011.12.28 Wednesday

 すすき野原でビロウドサシガメに出会いました。ビロウドのような藍色の光沢を帯びた頭部と胸部が印象的です。このサシガメは植物の根ぎわや落ち葉 の下で生活し、昆虫類や多足類などの小さな動物を捕食します。腹部の赤い色も鮮やかですが、落ち葉の下では藍色も赤色も誰の目にもふれることはありません。

     今日のことば

つまずいたりころんだりしたおかげで
物事を深く考えるようになりました

あやまちや失敗をくり返したおかげで
少しずつだが
人のやることを暖かい眼で
見られるようになりました

               相田みつを

2011.12.27

チャエダシャク

2011.12.27 Tuesday

葉を落とした木々の美しさが心にしみる季節となりました。

 12月22日に本館前で撮影したシャクガ科の蛾の画像を2人の専門家に見ていただき、チャエダシャクであることが判明しました。不二聖心初記録です。晩秋に活動する蛾です。
世界に35000種いると言われるシャクガの仲間の中でどの種であるのかを特定するのは至難の業です。
不二聖心だけでも驚くほどの数のシャクガが生息し ていることでしょう。シャクガの幼虫がいわゆるシャクトリムシです。Wikipediaにはシャクガの学名(Geometridae)についての次のような興味深い記述が載っています。

The name "Geometridae" ultimately derives from Latin geometra from Greek γεωμέτρης ("geometer, earth-measurer"). This refers to the means of locomotion of the larvae or caterpillars, which lack the prolegs of other Lepidopteran caterpillars in the middle portion of the body, with only two or three pairs at each end.

今日のことば

子どもを愛するだけでは足りない。愛を感じさせないといけない。
                 ドン・ジョバンニ・ボスコ

2011.12.26

牧草地の朝日 聖母子像 越冬するテントウムシ

2011.12.26 Monday

 今日もまた実に朝日の美しい朝でした。第二牧草地に向かう道の途中の聖母子像を覆うように三椏の木が枝を
広げています。三椏の蕾に隠れるようにしてテントウムシが越冬していました。

                        今日のことば

今日、あなたは空を見上げましたか。空は遠かったですか、近かったですか。雲はどんな形をしていましたか。
風はどんなにおいがしましたか。あなたにとって、いい一日とはどんな一日ですか。
「ありがとう」という言葉を、今日あなたは口にしましたか。
                                   長田弘

2011.12.25

イヌマキ

2011.12.25 Sunday

 イヌマキの実の写真を撮りました。一見赤い部分が実のように見えますが、これは実ではなく花床で、緑の部分が種子になります。赤と緑のクリスマスカラーが印象的な植物です。

 

             今日のことば

ことばで祈れなくとも、頭で祈れなくとも、生きることによって祈れる。
愛したいとねがって生きることそれ自体が立派な祈りなのだ。
                    ルネ・ヴォアイヨーム

2011.12.24

オサムシ

2011.12.24 Saturday

今日の牧草地では冬の空に美しい雲が数多く浮かんでいるのが見られました。

 オサムシの死骸を拾いました。オサムシは空を飛ぶことができず移動能力が低いため、種分化が起きやすいと言われています。このオサムシはアオオサ ムシかシズオカオサムシのいずれかです。
不二聖心内のオサムシ相の解明はまだまだこれからですが、詳しい調査がなされれば富士山山麓の自然史について重要な事実が見えてくるかもしれません。

    今日のことば

キリストが百度、千度生まるるとも、
汝の心に生まれざれば、
何の益かあらん。

2011.12.23

霜の花 ソシンロウバイ

2011.12.23 Friday

 ニュースではクリスマス寒波という言葉が盛んに使われています。今日も寒い朝でした。
すすき野原には霜の花が咲いていました。

 

 マリアガーデンのソシンロヴイの蕾がだいぶ膨らんできました。ソシンロウバイはロウバイ科ロウバイ属の
落葉低木です。ソシンロウバイはロウバイのように花の中心部が暗紫色にならず、花全体が黄色いのが特徴です。
ロウバイの香りが漂う新春の訪れが待ち遠しいです。

今日のことば

わたしはわたし。そのままを受け止めてくれるか、さもなければ放っといて。

I am what I am. Take it or leave me alone.
                      ロザリオ・モラレス

2011.12.22

絵かき虫

2011.12.22 Thursday

 フユイチゴは不二聖心の林内で最も数の多い植物の一つです。そのフユイチゴの葉に時々白い模様がはいっている場合があります。「絵かき虫」と呼ば れる潜孔性昆虫の仕業です。「絵かき虫」には実にさまざまな種類があり、これだけでも生物の多様性を実感することができます。
それにしても、この薄い葉の 中に潜れる虫がいるというのは自然の驚異です。

                      今日のことば

 挫折することのない人は信用できない。人は宿命として挫折によって「人間」を獲得する。
心をこめた仕事であれば苦しみがなくて完成しようか。愛することを知るものが悩みなくてありえようか。
よい事づくめの人は、心をこめていないか、より以上のものを求めていないか、
人を押しのけていることを自覚していないか、つめたく他を見下げているか、である。
大きな挫折をもった人ではじめて他の挫折を共感することができる。人間の最も深い感情がそこから発している。流されぬ日蓮はなく、十字架にかからぬキリストはありえないのだ。
                                    永瀬清子

2011.12.22

センリョウ

2011.12.21 Wednesday

 今日は、クリスマス・キャロルの日でした。生徒たちの努力が実った素晴らしいキャロルとなりました。
チャプレンの神父様から「これほどとは……。言葉になりません。」と言っていただいたことがとてもうれしかったです。
今年も残り僅かとなりました。クリスマスの本当の意味を考えながら残りの日々を過ごして新しい年を迎えたいものです。
下の写真は正門近くの森に生えるセンリョウの写真です。お正月の飾りとして使われるセンリョウをまもなく
あららこちらで見かけることになるでしょう。

今日のことば

寒星や神の算盤ただひそか   中村草田男