シスター・先生から(宗教朝礼)

2017.04.26

2017年4月26日放送の宗教朝礼から

 おはようございます。これから,宗教朝礼をはじめます。

今日はまず私の友人の話をしたいと思います。3月のある日,私は学生時代の友人が出演する演劇の舞台を観に行きました。規模も大きく,約2000人が観ている前で演じていた友人はとてもかっこよく,輝いていました。舞台後はエントランスで観に来てくれた方々に挨拶をするのですが,いつも人だかりで誰からも好かれるような存在でした。私は友人の舞台を小規模なものから大規模なものまで何度か観に行っていますが,観に行くたびにいつも圧倒され,充実した生活を送っているなぁといつも思っていました。そんな友人から先日連絡がありました。内容の1つは「次の舞台のチケットを買うかどうか」というお誘い,もう1つは「今まで乗ってきたバイクを手放すことにした」という連絡でした。2つ目の内容は私にとってとても驚きました。友人にとってバイクは舞台と並ぶくらい友人の人生の一部と言ってもいいくらいのものでした。学生時代,友人はバイクの免許を取得してから,時間ができるといろんなところへバイクで走っていくほどの行動力を発揮し,私はその思い出話をよく聞いていました。友人はとても悩んだ末の決断だったのは間違いないです。手放す理由はいくつかありましたが,理由の1つとして,「舞台演者としてさらに力を入れて,将来は役者になる」という決意が固まったからでした。演劇は1つの作品を完成させるのに何か月もの時間をかけています。学生時代も,舞台の稽古で忙しい生活をおくっていましたが,とても充実しているように見えました。私は,大きな決断をするために自分の人生の1つとしてきたものを手放す選択をした友人の実行力,決意の固さには頭が上がりませんでした。
 自分自身のこれまでを振り返ると,大きな選択を迫られたことがたくさんありました。ときには悩み,結論が出ない日々を送ったり,この選択でよかったのかと不安になることも少なくなかったです。そのときに大事になったのが「自分自身が今何をしたいのか」であったり,「自分の中で1番大切にしていることは何か」でした。何かを選択するときには様々な考えや希望があり,選択することをより迷わせます。そのときに「自分の中で何を大事にしたいのか」を考えることが大切だと感じました。同時に「捨てる勇気」も必要です。友人も,その大事にしたいものがしっかり持てていたから,自分の人生の一部であったものを「捨てる」ということができたのではないかと思っています。
話は変わりますが,今の世の中は欲しいものがあれば何でも手に入ります。わからないことがあればインターネットで検索する,お店に行かなくても,自宅でインターネットを経由して商品を注文,配達してくれることもできます。そんな便利な中で,私たちはモノや情報にあふれている生活を送っています。その分,自分たちで取捨選択をしなければ収拾がつかなくなってしまうことも少なくありません。モノで例えるのであれば,本や衣類などが棚などに入らず,あちらこちらに置いてあり,仕舞いには足の踏み場もないような状況です。高度情報社会といわれるこの現代で,自分たちで情報を選択していくことが問われています。ニュースで述べていることだけがすべて,ではなく,さまざまな角度からものごとを見て,それを自分なりに整理整頓し,不要なものは捨てることがこれからは大事になってきます。
これから生活していく中でみなさんにとって選択を迫られるときが多いと思います。そんなとき,「自分の軸を持つこと」を意識し,ときには「捨てる勇気」をもって生活していくことも大事だと考えています。それでも決断したことに自信がなかったり不安になることも多いと思います。
最後に,最近読んだもので印象に残った,元厚生労働事務次官の村木厚子さんが雑誌インタビューを受けたときの文を引用します。
「一生懸命やっても,なかなか結果が出ない。そんな時ってあると思うんです。もっと頑張らないといけないのかとつらく感じられるかもしれませんが,そんな時は無理せず、ゆっくり歩けばいい。ゆっくり歩いても,時間が経てば,案外距離は稼げているものです。少しずつできることを積み重ねていくと,前に進んでいる自分を自覚できます。ゆっくり進めば周囲にある様々な“景色”も見える。そうしているうちに,また元気になれたりします。」
自分自身,「その選択でよかった」と思えるよう,少しずつ前を向いて努力していきましょう。
これで宗教朝礼を終わります。
M.M.(数学科)