シスター・先生から(宗教朝礼)

2018.04.25

2018年4月25日放送の宗教朝礼から

 おはようございます。これから宗教朝礼をはじめます。

 4月、新年度が始まり、あっという間に4週目を迎えました。みなさんは、新しい生活に少しだけ慣れてきたころでしょうか。気温の差や環境の変化により、疲れが出やすい時期です。いつもよりはやめに就寝したり、運動をして体の緊張をほぐしたり、身体と心のケアも大切にしながら過ごしていただきたいと思います。
今年度、不二聖心での生活で、印象的だった出来事がありました。
それは、本館と中学校校舎をつなぐ外廊下を急いで渡っている時でした。ちょうど理科のフィールドワークを終えた生徒の皆さんが靴部屋へと向かう行列と出会い、列の間をすり抜けようとしていたところ、ある生徒の方がすっと歩きを止めて、道を譲ってくれました。落ち着いた様子で、笑顔でどうぞ、と言ってくれた彼女たちをみて、気持ちに余裕がなかった自分が少し恥ずかしくなったのと同時に、彼女たちの振る舞いは素敵だったと心から感じました。
 そのほか、教室に落ちていた貸し出し用の保冷剤を、自分が借りたものではないけれども保健室へ届けてくれた人がいたり、誰も見ていない所でも丁寧に掃除を行っていたり、困っている下級生に声をかけていたり、印象的だった出来事以外にも皆さんが素敵な女性であると感じる場面が数多くありました。もしかしたらすべて当たり前の行動であるのかもしれませんが、なぜだかとっても心が温まり、嬉しく感じたのです。
 そのような行動を目にするたびに、昨年度の学校目標である、bring joy to othersが頭に浮かびました。昨年の宗教朝礼で、 1年後にみなさん1人ひとりが喜びを与える人となった姿を想像すると、とてもわくわくします、 とお話ししましたが、1年が経ち、また新入生の皆さんも、様々な人に喜びを与えている姿をみて、不二聖心の一員として皆さんを誇りに感じています。
 さて、今年度の学校目標は、Listen to your inner heartです。自分の内的なものに耳を傾ける、ということですが、皆さんは1日のうちに、自分の内なる声を聞く時間はありますか?
私は、Listen to your inner heartという言葉をきいて、あることを思い出しました。
 大学に入学したばかりの頃、大学生活や進路、家族のことなどについて、大学の先生によく相談に乗っていただいていました。大学では、臨床心理学を専攻していたので、大学で関わる先生方のほとんどが「心の専門家」です。ちなみに、臨床心理学とは、精神的な健康や障害を対象として、診断や治療を行って対象者をよりよく環境に適応させようとする心理学の一分野です。皆さんも耳にしたり体験したりしたことのあるカウンセリングも、臨床心理学に含まれます。
 大学の先生に相談をすると、いつも親身に話をきいてくださり、いくつか質問をされて答えていくうちに、気づくと問題が解決している、ということが多々ありました。長い間悩んでいた問題が、第三者と話をするだけで解決するなんて 不思議だと思いませんか?先生に、どんな技術を使っているのですか、と聞いたことがありましたが、先生の答えは、「何もしていない。ただ話しをしているだけ」というもので、ますます不思議に感じていました。
 その後、大学の講義で臨床心理学を学び、そのときの疑問が理解できるようになりました。
 臨床心理学には、「来談者中心療法」という1つの理論があります。この理論は、人間には本来、自ら成長する能力がある、という考えを前提としています。「カウンセラーは相談者の話をよくきくこと、そして相談者自身がどのように感じ、どのように生きつつあるかについて真剣に取り組んでいくことさえすれば、カウンセラーが指示しなくても、相談者自らが気づき、成長していくことができる」という理論です。つまり、カウンセラーは、相談者自身の気づきを促すように、対話をします。
解決方法は、カウンセラーが知っているのではなく、実は自分が知っているのです。
 あの時、私はカウンセラーである大学の先生の力を借りて、自分と向き合い、納得のいく答えを出すことができたのだとわかりました。
自己カウンセリングといって、悩んだとき、苦しいときに、自分で自分をカウンセリングする方法があります。自分に問いかけ、自分と向き合うことによって自己理解を深めていく、この作業が、Listen to your inner heartと通じていると感じています。
 自分はどのように感じているのか、どうしたいのか、どうするべきなのか、このことがわかれば、人はあまり思い悩まずに生きていけるのかもしれません。
ぜひ1日の中で、心を落ち着けて、自分の内なる声を聞く時間をとってください。その時間が、皆さんを成長させ、心を豊かにする時間となるよう願っています。
H.K.(保健室)