シスター・先生から(宗教朝礼)

2019.11.13

2019年11月13日放送の宗教朝礼から

 宗教朝礼を始めます。

 中高の朝礼や全校朝礼でのお祈りは一人で唱えるお祈りと違って、皆で声を出し、声を揃えて唱えます。
 以前、聖心の姉妹校の宗教科の先生の集まりに参加したときに、姉妹校のある先生が、生徒たちの心が一つの方向を向いていると、声がそろうということをおっしゃっていました。また、お祈りや聖書の言葉などを、声に出して唱えたり読んだりすると、その言葉が他人事ではなく、自分事になるということもききました。
 私は全校朝礼のお祈りときなどに、全校生徒の声が揃うと、心を一つにしてお祈りができるので、まずは声が揃いますようにと思ってお祈りの時間を始めます。声が揃うと、本当に神様がそのお祈りを受け取ってくださると信じられて、すがすがしい気持ちになることができます。
 
  もう一つの、「声に出すと自分事になるということ」、それをこの夏に経験しました。夏休みに、その頃まだ公式発表前ながら来日されるだろう教皇様をお迎えするにあたっての行事が、さまざまなカトリック教会で行われていました。私は、日頃から自分が所属する教会でニュースレターをつくるにあたり、教皇様が出されたメッセージを毎月のように紹介していましたので、今年の夏は教皇様のメッセージをテーマにしたものに参加しました。
 その研修会には、いろいろな教会から、老若男女さまざまな信者さんたちが集っていました。カトリック教会では11月のある日曜日に「貧しい人のための世界祈願日」というものがあり、教皇様が世界中の人々に向けてメッセージを発信しています。その研修会では、一昨年の「貧しい人のための世界祈願日」のために出されたメッセージを、一緒に集まった人で声を出して読み上げるということをしたのでした。「貧しい人のために祈る」というと上から目線のような気がしました。自分は贅沢な暮らしをしているわけではないので自分自身も貧しいのだけどとはじめに思っていましたが、説明を受けて、今の世の中において、格差や紛争、災害、あるいは精神的なことなどで一人ではどうすることもできない状況に置かれている人こそが、世界中皆で祈るべき「貧しい人」だとわかり、そうした人を目の前にイメージして共にいることを感じながら読むことにしました。
 その会場で一緒にメッセージを読み上げた人たちは互いに初めて会う人たちばかりでしたが、すぐに声が揃っていきました。本文約6500字、400字詰め原稿用紙で16枚以上、一人で声を出して読み上げるとしたら、私なら疲れて途中でやめてしまう量です。途中、段落ごとに解説をしていただき、それが小休止にもなり、読み終えることができました。
 以前、眼で読んだことのあるこのメッセージを、声に出すことによってとても新鮮に思える言葉がありました。
「貧しい人を抱きしめ、助けるために開かれた手は幸いです。
その手は希望をもたらします。文化、宗教、国籍によるあらゆる壁を乗り超え、人類の傷に慰めの油を注ぐ手は幸いです。
何の見返りも求めず、『もし』とも、『でも』とも、『たぶん』とも言わずに開かれた手は幸いです。」*1
 この文章を読んで、「手」という言葉が出てきたときに、文字を追いながらも、メッセージの書かれた紙を持っていた両方の手に力を入れて自分の手の感触を捉えました。自分の手を通して、貧しい人のためにできることをしないといけない。この文章を声に出したとき、書かれていたことが紙の上のことではなく、自分の体を通して実行されなければならない思いに変化しました。自分自身がどのように生きていくべきか、誰のために生きていくべきか実感を伴って考える時間になりました。
 その後、しばらく経って、今年の「貧しい人のための世界祈願日」のためのメッセージが発表されました。私はそれを一人で声に出して読んでみました。その中のある部分がとても印象に残りました。
「貧しい人とは、会いに行く人です。ともに食卓を囲むために家に招かれる孤独な若者や高齢者であり、優しいことばを待っている男性や女性、子どもたちです。
イエス・キリストのみ顔に会わせてくれるのですから、貧しい人はわたしたちを救っているのです。」*2
 来週、バチカンからタイを経て日本へフランシスコ教皇様がいらっしゃいます。教皇様は長崎や東京でミサを司式されますが、東日本大震災の被災者の方々とも会われると聞いています。教皇様ご自身も、苦しい思いをされている方に会いに日本に来られるのです。
 いつも貧しい人を大切にして生きてこられた教皇様、日本でも私たちの心に残るメッセージを出されることでしょう。フランシスコ教皇様がその手を通して人々のために尽くされた生き方に少しでも触れられるのではと期待しています。日本でのメッセージに私も声を合わせ、自分の生き方を問い直していきたいと思います。
K.S.(理科)
*1 「2017年 第1回『貧しい人のための世界祈願日』教皇メッセージ」より
*2 「2019年 第3回『貧しい人のための世界祈願日』教皇メッセージ」より