シスター・先生から(宗教朝礼)

2020.10.28

2020年10月28日の宗教朝礼から

 おはようございます。これから宗教朝礼を始めます。皆さんは、人が生きていく中で、大切なものって何だと思いますか?

私は、目には見えないことの多くが大切なものだと思うのです。例えば、希望を持つということ、友情や愛情などの情を感じるということ、人から信頼を得るということ、感謝する心、それから相手のことを思いやる心、など目には見えません。
今挙げたものの他にもたくさんあると思いますが、目に見えないものはどれも、大切なものといえます。これらのことを考えたり、感じたりできるようになるためにはある程度、自分が経験して感じたり、考えたりする必要があります。なかなかすぐには身につけられるものではありません。でもこれらのことを自分自身で行うことが、「人として生きる」ことにつながっていると私は思うのです。私たちは一人ひとりに与えられた「生きる」時間の長さは異なります。長い人もいれば、短い人もいます。皆さんは、自分が幸せだなと感じるときはどんなときですか?あなたの周りにいる誰かが、自分のした行いによって笑ってくれたり、喜んでくれたりした時ではないでしょうか。みなさんの人生を豊かにすること、充実した人生を生きることはつまり、命の長さではなく、あなたに与えられた時間をいかに自分以外の誰かのためにどれだけ使えたか、だと私は思うのです。
幼稚園や小学校の時は、自分のためにその時間を使います。例えば、ごはんを食べたり、歯を磨いたり、勉強したり絵を描いたり…それが少しずつ誰かのために自分の時間を使えるようになっていくのです。初めは、おうちの人に、あるいは周りの友人にふと何かしてみたら喜んでくれたなど、些細な事から始まると思います。それから、少しずつ視野を広げていき、クラスのため、地域のため、そして世界の人々のためへと目を向けていけるようになっていくと思います。どの場面でもはじめは、不安に感じると思います。しかしそこでの勇気や学びは必ず、自分の心の成長の栄養になるとともに、いつしか自分の損得は考えることなく、自然な行動として、困っている人に率先して声をかけたり、手をお貸ししたりすることができるようになっていきます。そうなっていくことが自分のいのちを使うことに繋がっていくのだと思うのです。辛い思いや、苦しい体験をしたことのある人は、同じような体験をしている人の気持ちがわかると思います。世界で苦しんでいる人の話や情報を聞き、胸が痛くなった人は、常に世界の変化や情勢に目を向けている人だと思います。同じ地球上の同じ人間、同じ年齢、同じ性別なのになぜっと考えることが出来ると思うのです。
昨年、アフガニスタンで武装集団に襲われ、命を落とされた中村哲医師。彼は初め、医師としてパキスタン、アフガニスタンの診療所で、ハンセン病患者の治療にあたっていました。1990年代後半あたりから温暖化の影響でアフガニスタンにほとんど雨が降らなくなりだし、農作物は枯れはて汚れた水を飲料水として使用しなければならないような状況になっていきました。そして人々の生活の場がなくなり、多くの人が難民となっていきました。彼は、難民の食糧支援や医療支援に取り組むようになっていったのです。アフガニスタンの大干ばつはアフガンの人々の生活を根底から崩したものになりました。そのような状況下で、彼の診療所に来る多くの幼児たちが飢えと渇きで、母親の胸に抱かれながら息絶えていきました。そこで彼は、井戸や用水路建設に、力を尽くされ、多くの人のいのちを救ったのです。彼の言葉の中に、次のようなものがあります。
「誰もがそこへ行かぬから、我々が行く。誰もしないから、我々がする」
「『信頼』は一朝にして築かれるものではない。利害を超え、忍耐を重ね、裏切られても裏切り返さない誠実さこそが、人々の心に触れる。それは、武力以上に強固な安全を提供してくれ、人々を動かすことが出きる。私たちにとって、平和とは理念ではなく現実の力なのだ。」
皆さんはこの言葉を聞いて何か感じましたか?
アフガニスタンなど、いろいろな国で、多くの子供たちが貧困に苦しみ、飢餓に陥り、病気の治療も受けられずにいます。紛争などで罪のない子どもたちが悲鳴をあげながら銃撃から逃げ回っています。住む家、着る服や靴もないという子供もいます。またある国では多くの男性に仕事がなく、家庭で威厳を保つために女性や子供に暴力をふるうというような状況が見られます。
皆さんは、皆さんに与えられた、いのちをどう使いますか?同じ地球上に住む私たち、一人ひとりが何か一つでいいので身近な誰かのために、また遠いようで近い、発展途上にある国で貧困に苦しんでいる誰かのために、なにかできることはないか考えてみましょう
誰かに言われるのを待っているのでは、これは実現できません。みなさん自身が心に何か痛みを感じた人や国を見つけるために自分で探してみましょう。そしてその人を笑顔にさせるために何ができるか、考えてみましょう。自分のことではなく、自分以外の誰かにあなたの力を分けてあげてください。今年度の学校目標である『Let Peace Begin With Me』につながる何かを私たち自身が得られると、思います。
これで宗教朝礼を終わります。
Y.M.(数学科)