シスター・先生から(宗教朝礼)

2021.06.16

6月16日放送の宗教朝礼から

 学院の正門から本館への上り坂。6月だなあと季節をかみしめるアジサイが私たちを毎朝迎え入れてくれます。紫、水色、白の色とりどりのアジサイはいつ見ても私にとってこの梅雨のどんよりした気持ちを明るくさせてくれる存在です。同じような気持ちになる人が実はたくさんいるのだとある本に登場する毎日新聞2021年1月22日の記事を読んで思いました。以下は引用です。

 私たちは東京・池袋の支援団体で路上生活や生活困窮者への炊き出しをお手伝いしています。並ぶ人達は例年150人   程度だったのですが、コロナの影響で300人を超えました。
先日、お花屋さんの友人が50本ほどの花を寄贈してくれました。「これ、もらっていいのですか?」と恐る恐る聞く年配の人や毛布を抱えてチューリップを選んだ女性、スイートピーを手に立ち去った若者らでお花は全部なくなりました。お花は生きるために必要なものではないかもしれません。でも、お花を手にした人達の束の間の笑顔を思い出すと、これからも季節ごとにお配りしたいと思いました。花は食べられません。でも、こころの栄養になります。
 
 さて、ちょうど1年前の宗教朝礼での私の気持ちは人と人との関係は希薄になって「寂しい」ということが一番だったように思います。しかし、1年前の私と違うことは、たとえ直接会えずとも人と人とはつながっていくことができるのだと感じていることです。そう感じさせてくれたのは、私が顧問をしている温情の会委員会での活動からでした。
 不二聖心では、毎年30以上の社会福祉施設と関わりを持ち、訪問させていただいています。しかし昨年、そのすべての施設への訪問が中止されました。不二聖心で大切にしている奉仕活動です。その大切にしている一部がすっかり行いにくくなった状況に、不二で大切にしている心が一つ欠けるように思えたことを覚えています。しかし、多くの施設の方が「なんらかの形でつながりは保っていきましょう。また、不二聖心の方がいらしてくださるのを楽しみにしています。」そうお話ししてくださいました。「こちらでも不二聖心にお願いできること、考えてみます。」と会議で話し合ってくださった施設もありました。そしてその気持ちが皆さんにつながったかのように、夏休み直前に高校生に募集をかけた各施設の暑中見舞いづくりにたくさんの人が参加してくれ、心のこもったカードを送ることができました。クリスマスにはみなさんのおかげでカードやクリスマスの看板、リース、カレンダーがたくさん作成されました。お送りした施設からは「ありがとうございます。変わらない日常が明るくなったようでした。」とお電話をいただくこともありました。チャリティーラッフルや友愛小包でも、多くの場所にクリスマスの喜びを一緒に分かち合えるように行動することができ、インドネシアで活動されているシスター足立からお手紙もいただきましたね。
 もう一つ、私がつながりを感じるようになったのは、昨年度節約弁当で寄付をした、国境なき医師団からのお礼状です。
 国境なき医師団の活動に日頃よりご関心をお寄せくださり誠にありがとうございます。看護師の佐藤太一郎と申します。2020年7月から約3カ月、イラクの首都バグダッドでの活動に参加しました。到着後、現実は想像を絶するほど過酷なものでした。イラクは2017年に終結した紛争の影響でいまだ医療体制がぜい弱な状況にあります。私は、今回の緊急援助の現場で、「目の前の命を救う」ことと、「限られた人と資源で多くの命を救う」という2つのジレンマにさいなまれました。その決断は本当につらく、私自身も追い詰められていきました。そんな時、仲間が声をかけてくれ、3人で食べたアイスクリームの味はいまでも忘れられません。同じくやりきれない日々を過ごしていたであろう仲間の優しさに救われ、「いま自分にできることを一つずつやっていこう」ともう一度頑張る力をもらいました。たとえどんなに困難であっても、患者や家族、働くスタッフの現状を少しでも良くしたい。正解はないかもしれませんが、「ないからできない」のではなく、少しでも良くなるようにその現場の最善の策をみんなで考えた日々でした。この間、皆様からのご支援のありがたさを感じないときはありませんでした。この緊急援助に携わっているのは自分たちだけではない、日頃より私たちを支援してくださる皆様がいらっしゃるのだと強く実感しました。いまも、現地ではスタッフが日々多くの問題に直面しています。しかし、私は確信しています。強く優しいスタッフたちが、今後一つ一つ課題を乗り越え、一人でも多くの命が助かるように奮闘することを。
 まだまだ対面での奉仕活動や多くの交流は難しいのかもしれません。昨年度、私自身もこれから先不二聖心で奉仕活動を続けていくことは難しいのかもしれないと思うこともありました。でも、私たちはたくさんの手段を使って、気持ちは変わらずつながるのだということを私は皆さんから教わったように思います。私たちの活動はもしかしたらすぐに世界をあっと変えられるようなことではないかもしれません。でも、もしかしたら誰かの心をふっと明るくするような可能性に満ち溢れています。見えなくても、会えなくても、遠いようでも私たちはつながっています。マザーテレサは次のように言っています。“It is not how much we do, but how much love we put in the doing.”―「大切なのは、私たちがどれだけの行動をするのではなく、それをするのにどれだけ愛を注いでいるかです。」―と。今日は節約弁当、再来週はみこころの祝日です。みこころでつながる私たち一人一人が、たとえ小さくとも何ができるのか考え、学校から世界へ、心を込めてつながっていくことを私も忘れないでいたいなと思います。(引用 『人生にエールを。はげまし、はげまされ 志賀内泰弘 リベラル社』、国境なき医師団お礼状よりhttps://www.msf.or.jp/team_msf/expats/world/detail/nurse201222.html)
                                                       R.I (英語科)