不二聖心からのお知らせ

2026.07.08
2026年7月8日の宗教朝礼から
おはようございます。宗教朝礼を始めます。
みなさん、食べ物の好き嫌いはありますか?私は、絶対に食べられないというほどの偏食はありませんが、うなぎの蒲焼が苦手です。うなぎに限らず蒲焼の類(たぐい)はあまり好きではありません。理由はタレが甘いからです。ごはんに甘いものは合わないと決めているのです。だから、うな丼なんてタレのせいでガッツリごはんが甘くなってしまうのでダメです。夏になると「うなぎ予約受付中」なんてポスターをよく見かけますが、「ああ、もうすぐ土用の丑の日だ」と思うだけで、絶対に予約はしません。甘いからです。だから、夫の好物がうなぎだということは知っていますが、7月下旬になったとしても我が家でうな丼を食することはありません。甘いからです。
それに対し私の夫は、好き嫌いなく何でも食べます。あ、間違えました。好き嫌い「なく」ではなく、好きなものは黙って、嫌いなものは「嫌いだ」といいながら食べます。例えば、カステラやスポンジケーキを出されると「口の中の水分が奪われるからイヤだ」と文句をいいます。牛乳も嫌いなものの一つです。小学校1年生の給食の時に牛乳が飲みきれず、教室に一人残され飲まされた記憶があるからだそうです。でも、カステラと牛乳を同時に出すと喜んでパクパク食べて、グビグビ飲みます。嫌いなものを二つ食べると、掛け算みたいにマイナスかけるマイナスでプラスになるのでしょうか?酢豚やレバーなんかも「給食によく出たから嫌いだ」と言います。夫にとって給食は嫌な思い出でしかないようです。私も酢豚については、パイナップルのせいで甘いおかずになってしまうから苦手なのですが、夫は酢豚が出ると私のパインも一緒に食べてくれます。パインと一緒だと豚肉の匂いがしなくなるのだそうです。レバーも給食によく出たうえに、やはり匂いが嫌いだそうですが、焼き鳥屋に行くと必ずレバーを頼みます。嫌いなのに何で頼むのかと聞くと、ビールによく合うからだと言うのですが、そんなふうに嫌(いや)だ嫌だと言いながら何でも食べてしまうのです。
夫は出されたものや、注文したものは必ず全部食べる人です。嫌いなものでも何でも食べるようになったのは、中学時代から寄宿舎や寮で過ごしてきたからだろうとよく言っています。夫が入学した中学校の寄宿舎はとてもしつけが厳しく、中学1年生のとき、先輩から「飯(めし)を絶対に残すな」と言われたそうです。夫はもともと小食で、先に述べたように給食嫌いです。でも、食堂の残飯入れを使う寮生はいないし、怖い上級生を前にして、出された食事を残すという選択肢はなかったそうです。お昼は学校の教室で寄宿舎の食堂で作ったお弁当を食べるのですが、もしも食べきれない時は、弁当箱に「いつもおいしいお弁当をありがとうございます。今日は体調が悪かったので食べきれませんでした。ごめんなさい」と、ノートの切れ端にでも手紙を書いて入れろと言われたそうです。お弁当を残されると食堂のおばさんが機嫌を損ねてしまい、食事を作ってくれなくなるという話でした。夫は、最初のうちは通学生に自分のお弁当を分けて食べてもらうこともあったそうですが、「そのうち出されたものは、何でも全部食べられるようになった」のだそうです。
「食べ物を無駄にしないって、いい心がけだよね」と夫に言ったら、そんなんじゃないと言われました。作った人に申し訳ないとか、世界には食べたくても食べられない人がたくさんいるからとか、夫はなにかそういう道徳的な理由から完食しているのではないそうです。夫は残飯入れに残飯を入れたくないから全部食べているのです。カレーライスは絶対に混ぜてから食べるとか、靴は必ず右足から履くとか、鶏の唐揚げにレモン汁は絶対にかけないとか、世の中には譲れないポリシーを持っている人がいますが、夫の完食主義はそれと同じで、単なるこだわりです。
完食で思い出しました。私の父は今、老人ホームで生活しているのですが、その施設からは毎月の請求書などと一緒に、父の健康状態や食事の様子が綴られたレポートが届くのです。そのレポートには、七夕の短冊を飾りましたとか、お誕生会でケーキを食べましたとか、そんな毎月の出来事が書かれているのですが、食事の様子の欄に必ず「お食事は毎食完食されています」と書いてあるのです。最初のうちは、食いしん坊だからなあと読み流していたのですが、あまりにも毎月毎月、完食完食と書いてくるので私はふと疑問に思ったのです。父は夫と違い偏食家です。特に鶏肉は大の苦手で全く食べません。焼き鳥屋に行っても焼き鳥を食べず、お弁当の唐揚げも必ず残します。鶏肉を見るとあからさまに嫌そうな顔をして、料理人の目の前でも「なんだ鶏肉か」と言ってしまうような人です。施設のお知らせには一か月の献立表も入っていますが、2、3日に一回は鶏肉料理があります。父は本当に鶏肉も食べているのか?私は施設からのレポートに疑惑を抱いたのです。
果たして、父は鶏肉を食べていたのでした。父との面会の際に、施設の人と食事の話をしたところ、鶏肉が入った料理もしっかり食べているそうです。ちょっと父を見直してしまいました。80歳を過ぎて好き嫌いを克服するなんてえらいなあ。環境は人を変えるんだなあと、ちょっと感心しました。父に「鶏肉も食べるようになったんだね。えらいね。鶏肉おいしいでしょ?」と話しかけたら、「鶏なんて食べてないぞ」と言うのです。え!?もしや自覚がない?どうも父は施設の食事で出される鶏肉を、鶏肉と気づかずに食べているようなのです。とすると、父は鶏肉の味が嫌いではないのです。ただ鶏肉というだけで味を確かめることもせず、自分から遠ざけて食べてこなかったのです。これまでずーっと、私が生まれるずっと前から。なんてことでしょう。おいしい鶏肉料理の味を知らずに、人生の大半を過ごしてしまった人がここにいる。でも、そんなことを老い先短い老人に言ったところで仕方がないので「そうか。ここでは鶏肉を使った料理は出ないんだね」と父に言うと「そうなんだよ。ありがたいよ」とニコニコ笑いながら、差し入れの歌舞伎揚げを口からボロボロこぼしながら食べるのでした。
施設に入ってからの父はとても元気です。一人暮らしの頃と比べると、顔色も良く、病気で体調を崩すこともなくなりました。食生活のおかげ、偏食がなくなったせいだと私は思っています。父は自分が変わったとは自覚していませんが、鶏肉を食べるという小さな変化は、きっと健康に大きな影響を与えているのでしょう。なので「健康診断の結果も良くなかったし、私もそんなふうに自分を変えることができたらいいなあ、今年の不二の目標は「Change」だしね」と夫に言ったら、「ドラえもんって、未来を変えるためにのび太のところに来たんだよね。のび太が変わると、しずかちゃんの未来も変わる。一人が変わると、その人の周りの世界も変わっていくんだ。風が吹けば桶屋がもうかるように、未来なんてちょっとしたはずみでどんどん変わるってことだよ!」って、のび太としずかちゃんの恋の行方はともかくとして、風が吹いたら洗面器がよく売れるという、わけのわからないことを言われてしまいました。でも、風が吹くとすぐに飛ばされるような自分にとっては本当に小さな変化でも、未来は大きく変わっていくものなのかも知れません。今日からは甘いおかずも残さずに食べていこうと思います。
みなさん、好き嫌いはありますか?
The future depends on what we do in the present. - Mahatma Gandhi
これで宗教朝礼を終わります。
M.S.(技術・家庭科)





