校長あいさつ

   世界の未来を拓く人に

 本学院は、1800(寛政12)年に聖マグダレナ・ソフィア・バラによってフランスで創立された聖心会を設立母体とするカトリックのミッションスクールです。ミッションスクールとは、「使命をもつ学校」という意味です。創立者は教育を通して、真に価値あるものを礼拝する人を育てたいと望み、生前ヨーロッパ、南米、北米に122校の聖心女子学院を創立しました。創立当初から、国際性に根ざした多様性とは、目標として選択するものではなく日常でした。この伝統は不二聖心女子学院にも引き継がれ、本学院の創立にはアイルランド人の初代院長マザーエリザベス・ダフをはじめ5か国のメンバーがかかわりました。

 教育は、未来に向けてなされるものです。グローバル化・ICT化が進む中で、世界はますます多様化していきます。世界の未来を担う生徒たちには、それに対応する力が求められています。自分とは異質の文化や考え方をもつ他者を理解し、インタラクトし、つながっていける知性と行動力。語学というツールに支えられながらもそこに留まらず、ことばにならない思いを聴き取っていく深い内面性が必要です。21万坪の広大なキャンパスの自然、寄宿学校のもつダイバーシティー、そして聖心グローバル・ネットワークが、それらを可能にしていきます。


 10代の生徒たちの可能性の深さ、高さ、広さには限りないものがあります。生徒たちは、未来に向けての宝であり、希望です。不二聖心女子学院は、神様から託されたかけかえのない生徒一人ひとりがもつ可能性を丁寧に引き出していく学校でありたいと願っております。 


                                                                 不二聖心女子学院
                                                                 校長 シスター大原 眞実

不二聖心女子学院2018(平成 30)年度 学校目標
魂を育てる ~ Listen to your inner heart ~

20180409校長室より学校目標教育理念

 不二聖心女子学院では、カトリックの精神に基づき、「魂」「知性」「実行力」の各領域をバランスよく育み、「社会に貢献する賢明な女性」として成長していくよう準備します。これら3つの領域が統合されていくためには、生徒・教職員一人ひとりが各領域を自分と関連づけて意識していくことが必要です。そこで、学院では、毎年、一つの領域に焦点をあて、年度目標に取り入れ6年間を通してスパイラルに深めていくよう留意しています。本年度は、「魂を育てる」を意識する年です。
 また2018年は、学院の守護聖人である聖ローズ・フィリピン・ドゥシェーンが、アメリカ大陸に聖心を創立してから200年にあたります。そこで、「祈りの人」と呼ばれた聖女の生き方に鑑み、学校目標を”Listen to your inner heart”と致しました。

1)「成功」よりも、「神のみ旨」を望む
 「私がミッショナリーにあこがれたきっかけは、8歳の時に、ルイジアナに宣教に行かれたイエズス会の神父様に先住民の方々の話を聞かせて頂いたことです。」とローズ・フィリピンは語っています。その後、フランス革命の混乱期を経て、不思議な導きのもとに聖心会へ入会した彼女が、長い間持ち続けた望みを総長ソフィア・バラに打ち明けたのは1806年のことでした。
 それからアメリカへのミッションの責任者として派遣されるまで12年もの歳月を要しました。1818年3月21日、レベッカ号に乗ってボルドーを出発、5月29日、ニュー・オーリンズに錨を降ろします。この日は、奇しくも「聖心(みこころ)の祝日」でした。セントチャールズに最初の学校を設立し、以後23年間に渡り次々と学校を創立していきました。この間も、先住民のもとへという夢が消えることはありませんでした。
 ようやく彼女が、シュガークリークのポトワトミー族のもとへ行くことが許されたのは72歳の時でした。彼らのことばを覚えるには年をとりすぎていたフィリピンは、無力感を感じつつもできる仕事をこなし、先住民の人たちのために長時間祈りました。健康が衰えため、1年後にセント・チャールズに呼び戻され、最後の10年間をセントチャールズで過ごしました。この間も、苦労の絶えなかったアメリカ各地の聖心女子学院のために力を尽くしました。手記には、「私は名誉より十字架を、安易よりも貧困を欲し、成功を求めるのではなく、神のみ旨を望んでいます」と書かれています。1852年11月18日、後継者のマザー・デュルージェの到着から2日後に、ローズ・フイリピンは天に召されました。
 彼女は知りませんでしたが、ポトワトミー族の人々が「聖なる人」と実感したのは、有能な働きをした人たちに対してではなく、「自分は役に立たない」と思い祈ったフィリピン・ドゥシェーンでした。この深い敬愛の念が、世紀を超え、世代を超えて受け継がれ、後にバチカンでの列聖(1988年)へとつながっていくのです。
 ご帰天から100年後に裾野の地に創立され、聖女を守護者として戴く不二聖心の生徒たちは、創立来、聖女の精神を大切に受け継いできました。この学院の中には、聖フィリピンの祈りとスピリットが宿っています。

2)人生は、「より大いなるもの」のためにある
 不二農園の開祖岩下清周の長男で、本学院の前身である温情舎小学校の初代校長となった岩下壮一神父様は、中高時代、麻布の自宅からの通学ではなく、あえて寄宿生として九段の暁星で学びました。優秀な壮一は、1900年に2年飛び級して中学に進み、中学卒業時には英語、フランス語をマスターしました。昼夜に渡る暁星で学びの中で、彼はカトリックの洗礼を受けます。洗礼名はフランシスコ・ザベリオ。次第に、父清周が期待する実業家としての将来への問いが生じ、最終的には哲学の道へと方向転換していきます。恩師のひとりであるエミール・エック師は壮一に、「君の人生は、より尊いもの、より大いなるもののためにある」と告げたと伝えられています。
 東京大学へと進んだ壮一は、長い欧州留学を経て、最終的に司祭への道を選びます。学問の発展、教育、そしてハンセン病患者のために生涯を捧げ尽くした彼の生涯は、まさにより大いなるもののためにありました。その選択や生き方は、フランシスコが、パリ大学でイグナチオ・ロヨラに出会い、イエズス会司祭へと召されていった姿と重なります。この聖なる司祭は、1940年、多くの人に惜しまれながら、聖フランシスコの祝日(命日)である12月3日に天に召されました。
 皆さん一人ひとりの人生も、「より大いなるもの」のためにあります。いつ、どこで、何をしていても、神様の望まれる愛の生き方を志すことが「聖心の生徒の使命」であるということを、心の深みでよく味わってみましょう。

3) Listen to your inner heart
 超スマート社会に向かう現代、私たちを取り巻く世界は、騒音や情報、目まぐるしさに満ちています。心身共に、静けさのうちに過ごし難い時代といっていいかもしれません。しかしながら、内的な静寂なしに物事の正しい選択や判断はし難いものです。幸い、21万坪の自然豊かなキャンパスで過ごす皆さんは、意識すれば、外的な静寂の中に身を置き、それを内的な静寂につなげていきやすい環境にあります。聖堂の存在、アンジェラスの鐘の沈黙の時間も助けとなることでしょう。ただし、いくら外的に静かな環境にあっても、心の中に、執着や不安、雑念等が渦巻いていたなら、内的に静寂であるとはいえないでしょう。
 私たちは、日々の生活の中で、あえて「一人になる」(Solitude)時間をもつことが必要ではないでしょうか。これはいわゆる孤独感(Loneliness)とは異なり、騒音や雑念、惰性や他者の中に埋没した状態から、本来の自分に立ち返らせ、真の自由や安定、共生へと促してくれるものです。
 心は、良心の声、すなわち神の声が響く場でもあり、一人ひとりをユニークな存在として創られた神様が、各々に与えられた使命について語りかける場でもあります。フィリピンや壮一神父様も、自らの心の深みに丁寧に聴き、日々の選択や、人生の大きな決断をしていったのです。

全世界の聖心が心を一つにして、聖フィリピンの渡米200年祭をお祝いするこの年が、聖女のスピリットを深め、内的な豊かさにおいていっそう成長する年となりますように。

2018(平成 30)年度 始業式にて


 

2018.08.01.更新

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