シスター・先生から(宗教朝礼)

2016.07.06

2016年7月6日放送の宗教朝礼から

 おはようございます。

これから宗教朝礼をはじめます。
皆さんは、今、幸せですか?
皆さんの幸せの基準とは、どんなことですか?
旅行をすること?お年玉をたくさんもらうこと?好きなアイドルの追っかけをすること?学校が休みの時?
何気なく過ごしている毎日の中で、どれだけの幸せを感じているでしょうか?
先日、世界保健機関(WHO)が昨年、2015年の各国の平均寿命を発表しました。
皆さんがご存知の通り、世界一の長寿国は、わが国日本です。2015年の男女あわせた平均寿命は83.7歳でした。それに対して、世界一寿命が短い国はシエラレオネ共和国で、なんと平均が50.1歳です。生まれた国によって、こんなにも差があるということに胸が痛くなりました。
このシエラレオネという国を聞いたことがありますか?
シエラレオネはアフリカ大陸の西部、大西洋岸に位置し、面積は北海道ほどのとても小さな国です。主な産業は、農業と鉱業。この国は特に、品質の良いダイヤモンドを採掘ができることで知られています。しかし、この透き通ったきれいなダイヤモンドがシエラレオネの貧困の原因となってしまったのです。
1991年、ダイヤモンドの鉱山の支配権をめぐって、政府と反政府との間でとても大きな内戦が勃発しました。
始めは、隣国であるリベリアがダイヤモンドを狙って攻めてきたのですが、そのまま侵入すると、他の国から批判を受けてしまう。そう考えた当時のリベリアのテーラー大統領は、自国の軍隊にシエラレオネの反政府軍のふりをさせ、侵入させたのです。こうすることによって、リベリアとシエラレオネの国と国との戦争ではなく、シエラレオネの国民同士の紛争と見せかけました。2002年に終結するまでの約10年間、反政府軍は、無差別に人を傷つけました。家を焼き払ったり、手足を切断したり、虐殺したりと多くの国民を苦しめ、多くの死者を出しました。特に、私が大きな衝撃を受けたのは、子どもたちが武器を持ち、内戦の中心にいるということです。初めは、人数が少なかった反政府軍でしたが、その数を増やそうと子どもをさらい、無理やり兵士としての訓練をさせ、育てあげたのです。子ども兵は、大人の思い通りに次々と攻撃していきます。子どもが司令官になることさえありました。命令に従わないと自分も殺されるという恐怖心ももちろんありますが、もっとひどいことは、大人に麻薬をうたれるということです。体に麻薬を埋め込まれることもありました。麻薬が体に回ると、感情をなくし、訳も分からず人を殺すことができてしまうのです。なんの罪もない子どもたちが大人の勝手な判断で、モノのように利用されている現実がそこにはありました。ジャーナリストとして活動していた後藤健二氏が著した『ダイヤモンドより平和がほしい』という本があります。ここに登場する元子ども兵士のムリアは、「この国の大統領になりたい。戦争をなくして平和にしたい」と前を向いていますが、自分自身が兵士として人々を殺してきた過去を思い出し、苦しみながら生活しています。彼らは、自分の意志で、兵士になったのではありません。強制的に、兵士にさせられたのです。このように心の傷を一生、背負って生きていかなければならない子どもたちがシエラレオネにはいるのです。
シエラレオネが世界で一番命が短い国として知られる原因は、10年間続いたシエラレオネ内戦が大きく関わっていると思います。この内戦が、国の経済や環境、そして人々の健康状態をも悪くしました。終戦した2002年のシエラレオネの平均寿命は、男性32.4歳、女性35.7歳でした。
今もなお、手足がなく、不自由な生活を送っている人や麻薬に苦しんでいる子どもたちがいます。
先ほど、話した元子ども兵のムリアは、顔に麻薬を埋め込んだ傷跡が今もはっきりと残っています。
内戦中、学校に通えなかった子どもたちは、その分今、必死に勉強をしています。
現在は、ユニセフや国境なき医師団をはじめ、様々な団体や人々から支援を受けながら、少しずつではありますが、平和へと近付きはじめているようです。
また、こうしている今も世界のどこかで、戦争やテロ、貧困などで多くの人が苦しみ、命が消えています。
偶然、恵まれている日本のそれぞれの家庭に生まれてきた私たち。この与えられた環境の中で精一杯生きること。これこそ、私たちが神様から与えられている一番の使命なのではないでしょうか。まずは、自分自身を大切に思い、思い切り愛し、自らが幸せになるように行動してみましょう。それから、その幸せを他の人に分けてあげるのです。直接できること、離れていてもできること、さまざまな形であらわすことができます。毎日二度あるお祈りの時間もその一つですね。日本や世界の現状を知り、遠く離れたあったこともない人のために祈る時間をこれからも学校全体で大切にしていきましょう。
始めに問いかけをした“幸せの基準”。この基準は、人それぞれだと思いますが、当たり前の毎日こそが一番の幸せだと思いませんか。安全な水が飲め、好きなものを食べ、学校に通い勉強することも、安心して寝ることもできています。豊かな日本に生まれ育った私たちは、どうしても贅沢な生活を求めがちですが、当たり前の生活ができない人々がこの世の中にはいるという現実を受け止めて、生活していきたいですね。
これから、世界中の子供たちが希望をもって生きていけるような社会が広まり、たくさんの笑顔が増え、多くの人が幸せを感じて生きていけますように。
これで、宗教朝礼を終わります。
(参考:シエラレオネ 5歳まで生きられない子どもたち/ダイヤモンドより平和がほしい/世界で一番いのちの短い国)
Y.O.(保健体育科)