シスター・先生から(宗教朝礼)

2018.02.14

2018年2月14日放送の宗教朝礼から

 これから宗教朝礼を始めます。

 まず、椅子に深く座り、背筋をのばし、足の裏は床にしっかりつけましょう。そして、ゆっくり息を吸い、ゆっくり吐いて、自分の呼吸を意識しましょう。
今日は2月14日。世間的、特に日本では聖バレンタインデーとしてチョコレートが爆発的に売れる日です。そして、カトリック教会としては灰の水曜日。「私たちはちりから生まれてちりにかえる」の言葉に象徴されるように、私たちの日常を振り返り、原点を見つめ直す日、そして、私たちの罪のためにイエス・キリストが受けられた受難と復活に心を向ける四旬節の始まりの日。さらに、東日本大震災の起きた3月11日の約1ヵ月前の日です。
さて、この数日の話題のほとんどはバレンタインデーに関することか、現在行われている平昌オリンピックの競技結果に関することのように思います。今年のチョコレートやプレゼントのトレンドはどんなのか、あるいはオリンピックの結果。誰が、どの国がメダルをいくつ取ったのか、今日行われる競技は、あるいはその選手のこれまでの姿。中には選手の容姿や体型、立ち居振る舞いといった、競技とは関係のないことについての論評。今回のオリンピックでは北朝鮮の動きも大きな話題のひとつです。応援団の動きや南北閣僚の対話、日韓・米韓の関係など、たしかに、現在のアジア情勢において重要な問題であり、大きな懸念事項でもあります。そういうニュースや報道が中心になるのは当然と言えば当然でしょう。でも、その中でつい最近に起きたのに、ニュースなどからも完全に抜け落ちてしまっている大きな出来事があることに気づきませんか。最初に「今日はどんな日」とあげた中の出来事と関係しています。
そう、台湾東部花蓮(ファリェン)での地震です。地震が起きたのは2月7日の早朝(現地では2月6日深夜)でした。報道が比較的多かったのは8日まで。今にも倒れそうなビルを必死に支え、中にいる人たちの救助を懸命に行う救助隊の人々の姿は思い出せるでしょう。それが、オリンピックの開会式が始まった9日には報道は半分以下になり、その後はせいぜい1日に1回、そして12日以降はインターネットをざっと検索しただけですが、1回も報道されていません。では、台湾の地震の被害は12日を過ぎたらきれいに片づいて、人々はもとの生活に問題なく戻れているのでしょうか。12日の最後の報道では、16人死亡1人行方不明、負傷者285人。行方不明者は倒壊したビルの中で、現地のトップは救出をあきらめた、とありました。一昨年の4月や3.11、1.17の大地震を体験している私たちは、報道がなくなったらすべて終わっている、ということはありえないと知っているはずです。倒壊した建物のがれきはすぐにはきれいに片づかないし、強い余震がかなり長く続くことも想像がつくでしょう。でも、そのような被災地の状況は、オリンピックという祭典を前に、すっかり忘れられてしまっています。でも、被災された人々は世界がそれを忘れてしまっても、存在するのです。不二聖心で学び、生活するみなさんは、そのような、取り残され、忘れられている人々が世界にたくさんいることを知っています。そのために迅速に動ける力と知識も持っています。世界の動きがそれを忘れてしまう状況であっても、みなさんは、1日のどこか一瞬でも「何か忘れてしまっている出来事は、忘れられている人々はないか」ということを思い返してほしいと思います。そして、自分は何ができるだろう、と考えてみてください。「忘れない」ということが、新しい助けとなるのです。
高3のみなさんにとっては今週が不二聖心で過ごす最後の週ですね。卒業後の生活を楽しみに想像している人も多いでしょう。その時間のどこかを、不二聖心の生徒として、あるは卒業するものとして、「自分にできるはずで、求められているのにし忘れていることはないか」と振り返り、気がついたことは実行してみてください。この残り数日が、下級生のモデルとなります。
3.11の東日本大震災の時、卒業した高3の生徒は「何かできる支援はないか」と学校に問い合わせてくれました。そのような卒業生に、あるいは在校生になっていきましょう。
これで宗教朝礼を終わります。
H.N.(社会科・地歴公民科、宗教科)