シスター・先生から(宗教朝礼)

2018.05.09

2018年5月9日放送の宗教朝礼から

  おはようございます。これから、宗教朝礼を始めます。

  皆さんは、「SDGs」という言葉を聞いたことがありますね。「Sustinable Development Goals」の略で、日本語で「持続可能な開発目標」と呼ばれます。2015年に、「国連持続可能な開発サミット」において、国連に加盟する193の国によって全会一致で採択された文書において掲げられた、17の目標群です。2015年から2030年までにかけて解決すべき、現在の国際社会が抱えている、貧困や飢餓、ジェンダー平等、環境問題や紛争など、今の世界を持続不可能なものにしている様々な問題を取り上げています。17の目標に通底している考えは、「誰一人取り残されない世界を作る」というものです。
 SDGsが取り上げている目標に、容易に解決できる簡単なものは1つもありません。複雑に絡み合った問題を解決していくためには、世界中の国同士の協力が不可欠です。さらに、このSDGsを考えていく上で、私たちが決して忘れてはいけないことは、いずれの問題についても、私たち自身と深く結びついている問題であり、どこか遠く離れた、自分たちと関係のない問題はない、ということです。
 
 昨年度、今の高校3年生が地理特講の授業の中で、身近な出来事がSDGsの課題へと繋がっている事例を取り上げる取り組みを行いました。ある人は、スーパーなどで売っている、身近な外国のお菓子を取り上げました。皆さんも食べることもあると思います。もともと日本で生産されていないそれらのお菓子は、海の向こう、例えばアメリカ合衆国などで生産され、船に積まれ、輸入品として日本にやってきます。日本で貨物を下ろした船は、貨物の分軽くなります。軽くなったままの船は安定に欠けてしまうため、通常、降ろされた荷物の重さの分、海水を取水し、帰路につきます。この場合は、日本で海水を集めることになります。帰国後、再び船に貨物を載せるために、日本で集めた海水は、アメリカの海で放出します。すると、本来アメリカの海にはいるべきでない様々な生物が、海水とともにアメリカの海まで運ばれてしまうことになり、地域の生態系が崩れてしまう可能性が出てきてしまいます。グローバル化が極限まで進んだ現在、私たちは買い物に出かけた時、輸入品を買わないという選択をすることが難しい社会に生きています。何も考えずにただ買い物をする、その行為が別の地域の生態系を破壊することに手を貸していることにもつながるかもしれないのです。この問題は、SDGsの14番「海の豊かさを守ろう」という目標や11番「住み続けられるまちづくりを」といった目標と関連のある問題です。
 
 またある人は、格安で売られている衣服について取り上げてくれました。今でこそお店によっては大変安い値段で衣服を購入できます。それは、私たちにとってある意味でありがたいことかもしれません。しかし、こうした安い衣服も、何もないところから勝手に産まれてくるわけではもちろんありません。こちらが安いなと思う以上に安い賃金で働かざるをえない人たちが、この世界の中にいるのです。こうした衣服をつくる繊維業盛んなバングラデシュでは、劣悪な労働環境にいる人たちが繊維を作る際の埃を大量に吸って体調を崩したり、また2013年にはバングラデシュの首都ダッカ近郊で、大勢の人たちがすし詰めで働いていた8階建のビルが崩壊し、1100人以上の人が亡くなり、2500人以上の人が負傷するという痛ましいことも起きてしまいました。この高3の人は、「エシカル・ファッション」という提案をしてくれました。安さだけで衣服を選ぶのではなく、その製作に携わっている人、原料を収穫してくれている人にまで気を配り、全ての人にとって幸せになれるような、しっかりとした商品を選ぶべきだ、と語ってくれました。この問題は、SDGsの8番「働きがいも経済成長も」という目標、10番の「人や国の不平等をなくそう」という目標、12番「つくる責任、使う責任」といった目標と関連しています。
  
 今国際社会が抱える、持続不可能な世界を支えているのは、間違いなく私たちです。でも同時に、この持続不可能な世界を変えていかなくてはいけないのも、私たちです。
 昨年度から中学生はお祈りの時に、このSDGsを意識してお祈りを作っていくことになっていますね。学校の毎月の生活目標の中にもSDGsが取り入れられています。今年度から行われる高2のルーツの旅の事前学習でも、SDGsについて学んで生きます。不二聖心での学校生活の様々な場所で、SDGsに触れることができます。
  
 SDGsへ取り組んでいく際にまず大切なことは、こうした課題があることに目を向けることです。慌ただしい日々の中で、ゆっくりと自分の心の中、そしてそこからつながる外の世界へと思いを向けることができる時間が日常的にあるということは、とても恵まれていることです。日々のお祈りや学校生活、授業を通して、私たちと世界とのつながりを意識してもらいたいと思っています。
  
 最後に、一つの物語を紹介します。もともとは、英語の物語ですが、今日は日本語で紹介します。
  これは4人の物語。4人は、「みんな」「誰か」「誰でも」そして、「誰も」。
 
  ある大事な仕事、しないといけない仕事がありました。
   「みんな」は、「誰か」がやるはずだと思っていました。
   「誰でも」できるはずのこと、でも「誰も」しませんでした。
   「誰か」は怒りました。「みんな」の仕事だったのだからと。
   「みんな」は「誰でも」できるはずと思っていましたが、
   「誰か」がやるようには「誰も」しなかったのです。
   「誰でも」できることを「誰も」しなかったあげく、
   「みんな」は「誰か」を非難して、
   おしまいにしてしまいました。
 
 皆さんが生きていく将来の世界が、このような世界にならないように、動いていきたいですね。
 これで、宗教朝礼を終わります。
S.N.(社会科・地歴公民科)