シスター・先生から(宗教朝礼)

2023.07.05

2023年7月5日放送の宗教朝礼から

 これから宗教朝礼を始めます。

私は日常的に車をよく使うため、消耗品の交換や車の点検を短い周期で行っています。いつもお店で点検などを待っているとき、だいたい案内される席から見えるポスターに、「きょう、だれかを、うれしくできた?」と書かれています。これはHondaハートのキャッチコピーで、「日々、誰かの役に立ちたいと思う従業員の想いや、このような想いから創られた商品・サービスに触れたお客様が、誰かをうれしくしてほしい」という想いが込められているそうです。先日、学院ではみこころの祝日がありましたね。高3の方々がみなさんのためにクラスの装飾をしてくださいました。この飾りつけを毎年楽しみにしている方も多いと思います。私もその1人です。なんだかとてもうれしい気持ちになった人も多いと思います。また、それぞれの与えられた役割を全うし、世のため人のために動いていたであろうと、温情の掲示板をみて感じていました。聖心に通うものとして、これからの社会を生き抜くためにも、実行力の基礎となるものを学院で身につけてほしいです。今日は、うれしさをテーマに、私の実際の体験も含めて話をさせていただきます。
昨年9月23日未明、台風15号が静岡県を襲い、広範囲に大きな被害を与えました。翌24日には静岡市清水区の広範囲で断水が起こりました。道路は大混乱、市内のスーパーやコンビニなどから水やお茶が一瞬にしてなくなりました。この断水は長いエリアだと2週間以上にも及び、そのあいだ、全国各地から給水車が駆けつけ、街の人たちの支援にあたってくださいました。
私もこの断水を10日ほど経験しました。当時ニュースでもそれほど大きく取り上げられていなかったのですが、SNSなどの情報を見て、水をわざわざ隣県から届けて励ましてくださる方や、心配で連絡をくださった方も多くいました。普段は支援する側にいる私が支援される側になって、感謝してもしきれないくらいのうれしさを覚えたのを昨日のことのように覚えています。そのときの気持ちを忘れずに、現場で自分自身にできることとして、一般としてできる支援だけでなく、水を含んだままの床下や壁の奥を乾燥を目的とした技術系支援の団体に入り、実戦で学んでいます。
話は変わりますが、うれしさを覚える身近なものとして、「言葉」があります。言葉は、ときに励ましを与えてくれますが、残念ながら、ときに凶器にもなってしまいます。インターネット上での世界では、自分の本名や身分を伏せて発言ができます。匿名性と呼ばれるものです。この匿名性が1つの原因で、言葉で人を傷つけてしまうことがニュースなどで多々取り上げられています。著名人が自粛や休養、最悪の場合は人の命までをも奪ってしまいます。一般の人でも、同様のことが起こったり、誹謗中傷や個人情報の特定をされてしまうことがあることを見聞きした人も少なくないと思います。そんな見えない銃弾が飛び交って、精神的につらい思いをする人が多い世界になってしまっています。平和の祈りの中に、「悲しみのあるところに喜びをもたらすものとしてください」とあるように、大変な思いをしている方々がいたときはぜひ寄り添ってほしいと思います。
だれかをうれしくする、この「だれか」を広い意味でとれば、自分自身も当てはまると思っています。自分たちが発した言葉は、自分たちの心や身体に影響を及ぼすと言われています。人間の脳の仕組みとして、「私」や「あなた」といった人称を認識する仕組みがないと言われています。「できない」や「無理だ」と言ってしまっては、本当にできないし、無理になってしまいます。また、暴言やそれに近いことを発することで、自分の心も負の方向へいってしまいます。できるだけ前向きな言葉を使えば、言葉によって思いがつくられ、言葉によって気持ちも前向きになってくるはずです。だれかをうれしくすること、それは自分自身の小さな行い1つで変わります。1人1人の行動や言葉が自分自身だけでなく、自分の周りにいる人たちにも影響を与えると信じています。自分自身が受けたうれしかったことはほかの人にも与えていけるようになってほしいと思います。勇気ある行動は人の心を開きます。ぜひ今日からだれかをうれしくできる一歩を踏み出してみてください。
これで宗教朝礼を終わります。
M.M.(情報科)