シスター・先生から(宗教朝礼)

2023.09.06

2023年9月6日放送の宗教朝礼から

 おはようございます。これから宗教朝礼を始めます。

夏休みが終わり、学校がはじまって1週間がたちました。皆さんいかがお過ごしでしょうか。久しぶりに顔を合わせたお友達と、夏休みの思い出を分かち合っているのではないでしょうか。今日はせっかくなので私の夏休みの思い出をお話したいと思います。私はついに、この夏休み、前から一度は行ってみたいと思っていた高知県に行くことができました。皆さん、どうして高知県なのかわかりますか。そうです。高知県は、日本の植物分類学の父 牧野富太郎博士の出身地です。牧野博士については、中学1年生の理科の授業で必ず取り上げてますので、皆さん知っていると思いますが、簡単におさらいしますね。牧野博士は文久2年(1862年)に現在の高知県佐川町の造り酒屋の一人息子として生まれます。幼少時代から自然と植物に興味をもち、野山を駆け回りながら独学で植物の知識を身につけていきました。小学校を2年で中退したにもかかわらず、22歳のとき東京大学の植物学教室への出入りを許され、植物分類学の研究に打ち込んでいきます。当時は、日本の植物学は始まったばかりで、新種と思われるものは、海外の学者に標本を送って確認してもらい学名をつけてもらうことが一般的だったようですが、牧野博士は27歳のとき、日本人として国内で初めて新種ヤマトグサに学名をつけて発表します。牧野博士は日本のすべての植物を明らかにして目録を作るという目標をもって、日本各地で植物採集を行いました。94年間の生涯で収集した標本は40万点以上、新種や新品種を1500種類以上を命名し、日本の植物分類学の礎を築きました。今年は牧野博士をモデルにしたNHKの朝ドラ「らんまん」が放映され、関連書籍も多く出版されています。ドラマの放映に合わせて高知県では、博士ゆかりの地を中心に、県全域で観光博覧会「牧野博士の新休日~らんまんの舞台・高知~」を令和5年3月25日から令和6年3月31日まで開催しています。私は大学で少し植物の勉強をしていて、『牧野日本植物図鑑』も使っており、いつかは牧野博士のふるさと、高知県を訪ねてみたいと思っていましたので、この機会に実際に訪ねることにしました。
 初めに、高知市の五台山にある高知県立牧野植物園に行きました。博士の「植物園をつくるなら五台山がええ」という一言で、この場所に植物園を作ることが決まったそうで、牧野博士の業績を記念して、博士の逝去の翌年に開園したそうです。起伏を生かした8haの園地には、博士ゆかりの植物など3000種類以上が見られ、じっくり見ようとしたらとても一日では回り切れないほどでした。正門を入ると、高知の自然を再現した「土佐の植物生態園」があり、牧野博士が育った土佐の自然を観察することができました。余談ですが、高知県と静岡県で共通してみられる植物も多くありますから、不二聖心のキャンパスで見られるよく知っている植物に出会うこともあるのですが、なんとなく、旅先で偶然友だちにあったような、うれしい気持ちになりました。翌日は、牧野博士の生まれ故郷である佐川町を訪ねました。生家跡はふるさと館として生家の一室が再現されていたり、博士の遺品や植物図を見ることができます。生家跡の裏山には金峰神社があり、博士は少年時代、よく山中や境内で植物の観察や採集を行っていたそうで、特に金峰神社周辺に群生するバイカオウレンは博士の好んだ植物の一つとして知られています。実際に牧野博士ものぼったと思われる石段をあがり、参道わきでバイカオウレンの葉を見つけたときは、ここから日本の植物学が始まったんだなあと感慨深いものがありました。
 さて、牧野博士の言葉に「世の中に雑草という草はない」というものがあります。これは、一つ一つの植物には固有の名前があり、それを人間にとって重要かどうかで判断し、雑草と呼ぶのは失礼だという意味ではないかと思います。実際、日本で皆さんが見て植物だと思われるものには、まず名前がついているといってよいと思います。現在日本には約7000種の維管束植物が確認されています。しかし、そのうちの4分の1が絶滅の危機に瀕していると言われています。そして植物を絶滅に追いやっている要因の約80%は私たち人間が直接関与しているという指摘があります。教皇フランシスコが『回勅 ラウダート・シ』の中で「すべての被造物はつながっているのですから、愛と敬意をもってそれぞれを大切に受け止めなければなりませんし、わたしたちは皆互いを必要としている被造物なのです」と述べられているように、私たちは、改めて身近な自然に目を向け、できることをしていく必要があるでしょう。そのとき「雑草という草はない」という牧野博士の姿勢にならい、すべてのいのちに愛と敬意をもって目を向ける必要があるでしょう。日本のカトリック教会は、毎年9月1日から、10月4日までを「すべてのいのちを守るための月間」として定めています。今日は最後に「すべてのいのちを守るためのキリスト者の祈り」をささげ、宗教朝礼を終わりたいと思います。
宇宙万物の造り主である神よ、
あなたはお造りになったすべてのものを
ご自分の優しさで包んでくださいます。
わたしたちが傷つけてしまった地球と、
この世界で見捨てられ、忘れ去られた人々の叫びに
気づくことができるよう、
一人ひとりの心を照らしてください。
無関心を遠ざけ、
貧しい人や弱い人を支え、
ともに暮らす家である地球を大切にできるよう、
わたしたちの役割を示してください。
すべてのいのちを守るため、
よりよい未来をひらくために、
聖霊の力と光でわたしたちをとらえ、
あなたの愛の道具として遣わしてください。
すべての被造物とともに
あなたを賛美することができますように。
わたしたちの主イエス・キリストによって。
アーメン。
これで宗教朝礼を終わります。
M.H.(理科)