シスター・先生から(宗教朝礼)

2023.10.11

2023年10月11日放送の宗教朝礼から

    テストが終わり、秋の3連休を楽しまれた方も多いと思います。一方で先週末は、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が長期化し、世界情勢や経済が混迷を極める中で、中東ではイスラム武装組織ハマスによるイスラエルへの奇襲攻撃とそれに対するイスラエルからの応戦とで紛争が激化し、多くの死傷者が出ているという残念なニュースがありました。更にはドイツにおいても、AfD(アーエフデ―)という極右思想を有した自称右派の政治団体が急速に勢力を拡大している、といった報道も見ました。皆さんも、ロシア・ウクライナ戦争、ハマス・イスラエル間の紛争のニュースなどを見て、心を痛めておられることでしょう。この週末、宗教朝礼で話すことを模索しながら、この大きすぎる問題について何か論じたりすることはとてもできないけれど、今まさに世界で起きているこれらの問題について触れないわけにもいかない、そんな思いになりました。私たちはこれらの問題から何を教訓として得るべきなのか、何かできることはあるのか、考え続けていければと願っています。

 さてここからは、全く違う話をしたいと思います。皆さんは、水野学、という方をご存じでしょうか?この方は、グッドデザインカンパニーという会社の代表です。ヒントは、日本のご当地キャラクターの中でも非常に人気のあるあのキャラクターを生み出した方です。すそのん、ではありません。何のキャラクターでしょうか?ヒントは、〇〇モンです。そう、くまモンです。くまモンを生み出した水野学さんの本がこの夏、本屋にたくさん平積みされていたので、あれほど人気のキャラクターを生み出す人は、どのようなことを考えているのか興味を持ち、読んでみました。その本のタイトルは、『センスは〇〇からはじまる』というものです。『センスは〇〇からはじまる』ーさて、○○には、何が入るでしょうか?漢字2文字です。皆さんなら、何を入れるでしょうか?後で答えを言うので、いくつか案を考えてみてくださいね。さて、本の冒頭で水野さんは、「ものを作り出すアイデアの箱の中身のほとんどは、プラクティカルなものです。つまり、方法を知って、やるべきことをやり、必要な時間をかければ、皆できるようになることです。僕が特別な人間だからできる、というわけではありません。」「僕もあなたもセンスは等しく持っており、違いはそれをどう育てているか、どう使っているか、どう磨いているかだとお伝えしたい」と言っています。彼の本を読んでいて、なるほど、と思った一説をもう1つ紹介します。「技術がピークを迎えるとセンスの時代がやってくる。人間というのは技術がその時点の限界まで進歩すると、ノスタルジックな思いに身を寄せ、美しものを求める傾向があると僕は思っています。」その例として、スティーブジョブズなどを挙げています。確かに、機能がほぼ同じであれば、私たちはデザインを重視しますよね。水野さんは、現代の状況について、「市場はすでに、センスの方向に動き始めているのです」と言っています。そして、センスを身につける方法について、「センスがよくなりたいのなら、普通を知る方がいい。そして、普通を知る唯一の方法は、知識を得ることです。センスとは知識の集積である。これが僕の考え方です。センスがいい文章を書くには、言葉をたくさん知っていた方が圧倒的に有利である。これは事実です。文章というたとえを使いましたが、これは仕事や生きるということにおいても同様だと思います。知識があればあるだけ、その可能性を広げることができるのです。知識というのは紙のようなもので、センスとは絵のようなものです。紙が大きければ大きいほど、そこに描かれる絵は自由でおおらかなものになる可能性が高くなっていきます。すべての仕事において“知らない”は不利です。過去に存在していたあらゆるものを知識として蓄えておくことが、新たに売れるものを生み出すには必要不可欠だということです」と言っています。また、後半では、「不勉強と思い込みはセンスアップの敵です。思い込みを外す方法とは、いつもと違うことをしてみること。いつも手に取らない雑誌を手にとってみる、いつも見ないテレビ番組を見てみる。やったことがないことを試してみる。」なども紹介しています。この本のタイトル、想像がつきましたか?『センスは知識からはじまる』でした。 
また、先日テレビで、チームラボ代表の猪子寿之(いのこ としゆき)さんのインタビューを見ました。現在、没入型・体験型の展示が非常に人気となっていることについて彼は、「〇〇に行って、価値観が変わった、と人はよく言うでしょう。人間は思っているほど、頭だけで理解していない。ネットで読んだだけ、本で読んだだけで、理解したつもりになっているけれど。結構、頭だけでなく、身体全体でとらえていることが多いんですよ。」と仰っていました。私も先日、ライブビューイングという映画館でコンサートを同時視聴するイベントに友人と行ってみたのですが、実際のライブコンサートとの違いに驚きました。また、海外体験学習では、価値観が変わるほどの体験をたくさんさせていただきました。

 知識を得ること、実際に体験することを通して、センスを磨き、視野を広げていければと思います。秋のつどいでも、皆さんの若々しく新しいセンスがたくさん発揮された公演や展示、催し物を拝見することを楽しみにしています。そして、今できることに一生懸命取り組みながら、よりよい世界のためにどのようなことができるか、一緒に模索して参りましょう。

J.N.(英語科)