シスター・先生から(宗教朝礼)

2023.11.15

2023年11月15日放送の宗教朝礼から

  これから宗教朝礼を始めます。

 秋のつどいから11月23日まで、不二聖心ではウクライナの子どもの絵画展をやっています。現在は図書館の広い閲覧室で展覧をしています。展示を手伝ってくださった生徒の皆さんに感謝しています。もう絵画展をご覧になりましたか。
 この展覧会が不二聖心で行うことになったのは、昨年度の宗教朝礼で紹介した毎月24日にオンラインで行われるウクライナのための祈祷会で、今年の3月にポーランド・クラクフにあるサンスター日本語学校の兵頭博校長先生のお話をうかがったことがきっかけです。兵頭先生は学校のボランティア部を中心にカリタスというカトリックの支援組織と連携してウクライナの人々に食事を提供することなどから支援を始めたこと、ウクライナからポーランドに避難してくる人々の状況などを見たまま感じたままお話しくださいました。その後私は兵頭先生に連絡を取り、不二聖心の生徒たちとウクライナの子供たちが何らかの形で関わりが持てないか相談しました。6月のみこころの祝日の奉仕活動で、日本語を勉強しているウクライナの子供たちにお手紙を送ることからはじまり、今年の9月には高校1年生の宗教の授業で兵頭先生にお話をしていただくことになりました。併せて日本の各地で巡回する子どもたちの展覧会も、秋の3週間を不二聖心が担当することになったのです。
 私は聖心でそれらを行う前に、今年8月の原爆の日に広島を訪ね、来日されていた兵頭先生の講演をうかがい、そして今学院で展示している絵も広島で拝見しました。小さな子どもが戦地となっている故郷を描いた絵を観たとき、不二聖心の生徒にも必ず見てもらい戦争が起きない世界を実現していくことをこれからの勉強の一つの目標にしてほしい。そう願って不二聖心での展覧会を心を込めて準備してきました。
 今日はそれに関連して、先日高校1年生のために兵頭先生が講演をされたときにオンラインでつないでくださったウクライナの若者のソフィアさんという女性のことを話したいと思います。ソフィアさんは展覧会の絵を描いた子供たちより少し上の世代で、兵頭先生の日本語学校にはオンラインで授業を受講している方です。ずっとウクライナに住んでいます。戦争が始まり、大学に通うことはできていません。空襲の標的にならないよう命を守るのに必死です。必要な物を買うときの買い物は空襲がない短い時間に済ませ、停電もしばしばあり、寒さも耐えてきました。学校に行けず、友達の安否も分からずとても悲しいと話していました。ニュースで間接的に聞く以上に、戦禍を生きる当事者のソフィアさんが率直に話す戦争の悲しみは心に響きました。
 ソフィアさんはどうしてポーランドの日本語学校の授業を受けることができたのか。ウクライナへの支援はたくさんあるのに必要な人に届かない現状があることから、兵頭先生は本当に助けがいるウクライナの人々に手が差し伸べていく必要を感じていました。SNSのテレグラムを使ってロシアとの国境付近で恐怖の中 過ごし何か勉強をしたいと思っている若者とつながり、オンラインで日本語を勉強してみませんかと呼びかけたのです。兵頭先生はもともと、受講生がしっかり勉強するにはきちんと授業料を払うということを原則としていましたが、ウクライナの若者には何かボランティアに励んでもらうことを学費の代わりの条件にしました。ソフィアさんは動物愛護のボランティアをすることを約束し、オンラインの日本語の授業を受けるようになりました。私たちのような遠く時差のある日本の人々にオンラインで話をしてほしいという要請があれば、一生懸命プレゼンを準備して話をしてくれます。ソフィアさんは8月の広島での講演会のときにもオンラインでつながってくださいました。そのときにソフィアさんはウクライナの人を助けるにはロシアと闘う武器が必要だと話し、 戦争をなくすために広島に集まった人たちを驚かせました。ソフィアさんは高1の生徒の質問に対して、ロシアへの敵対心を吐露する発言もありましたが、8月の講演のときにはなさらなかったお話もしてくれました。 それはソフィアさんは兵頭先生とつながって日本語の勉強を始めたこと、そのために動物愛護のボランティアをするようになったこと、それらによって友達ができ、オンラインでも勉強をすることができることが喜びで、そこからもっと勉強しようという目標をもつことができたということです。戦争はまだ終わる気配はなく、生活環境も悪いままなのに、ソフィアさんの気持ちが頑張って生きていこうという方向に変化したことを私はとても うれしく思いました。
 絶望的状況にある人に希望をもたらすのは、人とつながり、架け橋ができることなのだと私は実感しました。人どうしに橋を架けていくことは、つながりをつくるだけでも大変ですが、考え方の違いを乗り越える必要があったり容易なことではありません。しかし人を生かしていく力を作り出していきます。世界の人々のために架け橋になる、お互いに希望を感じて生きていける世界を作っていく。そのように世界と連帯することは聖心の生徒にとってミッションの一つだと思います。ウクライナのこうした繋がりをとおして、人をつなぐ架け橋になっていくことを考えていただけたらと思います。
K.S.(理科・宗教科)