校長室から

2020年09月

2020.09.28

  9月6日にアルフォンス・デーケン先生(イエズス会司祭)が帰天されたとのニュースが、様々なメディアでも流れました。日本における死生学研究の第一人者として、長年、上智大学で教鞭をとられ、また大学を超えて多くの活動に携われた方です。信仰に根差したあたたかくユーモア溢れる語り口の講演会や多数の著書により、多くの人々が影響を受けました。

先生は、祖国ドイツでの少年時代、祖父にあたる方が、兵士によって射殺される光景を目の当たりにされました。にもかかわらず、後に家宅捜索のために自宅に入ってきた兵士に、自ら手を差し出して挨拶されたそうです。それは親から受け継いだカトリックの信仰を、自分で選び直した大切なカイロスの時であったと、語られています。

ギリシア語には時を表す言葉が2つあります。χρόνος (クロノス)が客観的に流れる時間をいうのに対し、καιρός (カイロス)は、決定的な瞬間を指す言葉です。ご帰天の報に接し、感謝の祈りのうちに、生かされている「時の重み」を感じています。

2020.09.23

気候変動とスポーツの祭典

 聖心グローバル・プラザ(渋谷区広尾)では、2年間に渡って気候変動をテーマとした展示がなされています。現在は、「気候変動とスポーツの祭典」という観点から、バーチャルで展示を見るこができます。
https://www.u-sacred-heart.ac.jp/event/20200904/5547/

 この中に、「世界で最も早く朝日が昇る国」と言われるキリバス共和国のオリンピック選手(重量挙げ)からの強いメッセージも掲載されています。キリバスは、クリスチャンが多く、クリスマス島も含めた諸島群から成る美しい国です。海抜はわずか2メートル。地球温暖化の影響による海水位の上昇から、国土の水没危機が深刻な課題となっています。

 気候が穏やかで住みやすいと言われる静岡も、今年は例年にないような大雨に見舞われることが多く、キャンパスや校舎にも様々な影響が出ています。日常の変化を体感しながら、見えない世界のより重い現実に目を向け、サステナブルな未来に向けての教育を推進していきたいと思います。

2020.09.15

祈りの丘

 生徒たちが好きな場所の一つに、体育館とマリア修道院(黙想)の間の十字路付近があります。360度、見晴らしがよく、富士が正面に見える場所でもあります。

今日の日中は、くっきりと紺色がかった富士が美しく、夕方にまた訪ねました。雲にかかって見えませんでしたが、息をのむような美しい夕焼けと、楽しそうに語り合う中学1年生達に出会うことができました。


   富士の冴え祈りの心諭しけり


 旧職員の西山民雄先生の作です。無言のうちに、心を神に向けさせ、落ち着きを与え、清めてくれる富士に見守られながら、生徒達と過ごす日々に感謝しています。

2020.09.08

「責任」の感覚

 アンジェラスの鐘の音を聴きながら祈った後、放送で、委員任命式が行われました。学院生活においては、全員が、何らかの委員や係としての役割を担います。誰も傍観者はいません。頼もしい最上級生の方々が、任命式をリードし、下級生にメッセージを伝えてくれました。


 将来の生活への推移の段階にある高等学校では、上級生がより広い独創性と責任をもって、
各自の学習を編成するようになっています。それゆえ、上級生は、義務の念をもって自由を
使することを習いながら、いつも学校内で、家庭の「姉」としてとるべき任務をよく自覚していな
ければなりません。



今から60年ほど前に、全世界の聖心学院の生徒に向けて書かれた小冊子(「聖心女子学院の生活」)からの引用です。時代は変わりましたが、今も同じ精神が息づいているのを感じ、清々しい気持ちで一日を始められました。

生徒の皆さんへの期待と感謝をこめて

 

2020.09.01

ルドベキアのように

 キャンパスには、季節ごとに様々な花が咲きます。初夏から秋にかけて目を引く花の一つがルドベキア。小さなひまわりにも似た花弁が、夏の到来を感じさせてくれます。今年のような猛暑の中でも、生き生きと黄色い花を咲かせ続けています。ルドベキアの花言葉は「正義」、「公平」、そして「強い精神力」――、名の由来となっているスウェーデンの植物学者オロフ・ルドベックに由来するそうです。

 この花々に、生徒たちの姿が重なりました。コロナ禍での生活様式や熱中症を心配して迎えた夏休み明けでしたが、思いのほか元気で、日々たくさんの笑顔がみられます。学校でも寄宿舎セントマドレーヌでも、夏休み前以上に、自分たちで感染対策を心がけようという意識の向上が感じられます。11月の「秋のつどい」(学院祭)もオンライン開催に変更されましたが、実行委員長の高校3年生は、学院史上初めてとなる第1回「オンライン秋のつどい」を成功させましょうと、全校生徒に力強く呼びかけています。10代の輝くエネルギーに、力をもらっています。