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フィールド日記

2012.08.14

カヤキリ

 

 2012.08.14 Tuesday

 約1年ぶりにすすき野原でカヤキリの声を聞くことができました。日本最大のキリギリス
科の昆虫で、頭の先から羽の先まで60ミリを超えます。声の大きさも体の大きさに比例して
いて、他に間違えようのない、鋭く強い声でジーと鳴きます。今日は4か所でオスの姿を確認
しました。野趣あふれる声の魅力をブログでは十分にお伝えできないのが、残念です。
カヤキリは東京都では既に絶滅し、9つの県で絶滅危惧種・準絶滅危惧種に指定されています。

 

 
今日のことば

虫の命は夏だけのはかないものである。(室生)犀星が九月末に帰京するまでに、ほとんど夏の百日
の鳴く使命を果し、毎朝何匹かは死んでゆく。時には稀に命永らえる虫もあり、九月末家を片づけ
る時まで生き残ったものを、犀星は白いハンカチーフに虫籠ごと包んで、自分で持って帰って来る。
東京まで来た虫は、毎夜鳴き方はまばらになり、声の艶や張りもなくなって来る。夜は寒いだろう
と、犀星は自分の寝室に運び、暖をとるために小裂をかけてやっていた。私の記憶では、クリスマ
ス頃まで生きていたものもあった。夏百日どころか、命ぎりぎりまで鳴き声を楽しませてくれた虫
が死ぬと、犀星は何日もかかって、縁側の陽だまりで日光浴をさせる。虫の体は少しずつ水分を失
い、やがてカラカラした軽い物体となる。それを朱の小箱に綿を敷きつめたなかに並べて、そっと
飾り棚にしまっておく。生命が失われても、自分を楽しませてくれた虫一匹をも、粗末に扱わない。
犀星の感情は最後までを看取り大切にしないと、納得できないのである。小さい生き物にまで、
しかもそれが死んだあとも、細かい愛情を充分に持っていた人であった。
室生朝子