フィールド日記

2012.01.31

クロハナビラタケ

  2012.01.31 Tuesday


今日の朝日新聞の静岡歌壇に不二聖心の生徒の作品が4首、掲載されました。その4首を転載します。

 古くても気になるものは気になりますテレビで言ってる
「やらさせていただきます」                 芹沢美咲
ふと空を見上げてみれば別世界力をくれる星のきらめき     勝又美咲
もし今日が最後の日だと言われたらあなたはどこで何をしますか 鈴木梨沙
バイバイと手を振り君がこちら向くはにかむ私も小さくバイバイ 大倉照美

 

 お茶畑の横の雑木林でクロハナビラタケを見つけました。クヌギの倒木の上に生えていました。倒木が土に還るために菌類は重要な役目を果たしています。

 

 


今日のことば

  魂に光をそそいでくれることばは、どんな宝石よりも貴重である。

                     ハズラト・イナーヤト・ハーン 

2012.01.30

ヒイロタケ

  2012.01.30 Monday

 栗畑では、昨日、紹介したクリオオアブラムシをはじめとして、さまざまな生物を観察することができますが、下の写真のヒイロタケのその一つです。残念ながらヒイロタケが生えている木はもはや樹木としての生命力を失いつつあります。腐朽菌の力によってやがて材はぼろぼろになっていくことでしょう。しかしこれも自然界にはなくてはならない現象であり、ヒイロタケは分解者としての大切な役割を果たしています。

 


今日のことば

ぼくは読書から生きるヒントをもらってきた。「勝ち」と「負け」の間にほんものの幸せはある。読書のなかから多様な生き方があることを学べば、どんなに辛い人生でも、負けと思わず、意味があると思うことはできるのだ。いい本のなかにはそのヒントが詰まっている。

鎌田實

2012.01.29

ヒラタアブ類の蛹とクリオオアブラムシ

  2012.01.29 Sunday

 校舎裏の栗の木についたクリオオアブラムシについて何度かフィールド日記でも紹介してきましたが、さらに3か所でクリオオアブラムシの卵が密集している場所を見付けました。今年は例年になく集団産卵場所が多いように感じます。今回は卵だけでなくヒラタアブ類の蛹も見つけることができました。幼虫の時に、産卵のために集まったクリオオアブラムシを食べ、クリオオアブラムシの卵の密集地の真ん中で蛹化したものと思われます。ヒラタアブはこのようにアブラムシを食べるので益虫としての扱いを受けています。


 
 

 今日のことば

 コノ本ハ深イケレド、コチラノ本ハ深クナイ。アサイ、デス。私が少女時代のすべてを過ごした学校の西洋人の修道女たちは、そういうふうに、いっていた。深イ、は賞讃のことばで、浅イ、はペケだった。深イカンガエヲモツ人ニナッテクダサイ。ことあるごとに、彼女たちはそうくりかえしていた。
深イ、がどういうことなのか、私にはながいこと理解できなかった。深い考え。深い本……。それは、真実、というのとも、すこしずれているようだった。修道女たちがこれもよく口にのぼらせた、真理、というのともちがった。なにが、どういうふうに、すぐれているとき、深い、という形容にふさわしくなるのだろう。学校を出てから、遊んでいても、本を読んでいても、ふと、深イ、という、私には意味がわからなかった彼女たちの判断の基準が胸に浮かんでは私を萎えさせた。それがわからないまま進むのは、まるで洞窟の扉をあけるための呪文を知らない泥棒たちのように、たよりないことだった。

須賀敦子

2012.01.28

ヤママユガの繭

 2012.01.28 Saturday

 お茶畑の近くの雑木林でヤママユガの繭を見つけました。ヤママユガは野生の蚕で天蚕とも呼ばれます。ヤママユガと聞いて、中学1年生で学習したヘルマン・ヘッセの「少年の日の思い出」を思い出す人もいるでしょう。ヤママユガは雑木林のクヌギの葉を食べますので、雑木林が私たちの生活の身近にあったころは、ヤママユガもよく見られる生き物でした。(雑木林に植えられているクヌギやコナラが大昔から身近な樹木であったことは、クヌギやコナラの総称として「ははそ」という古語が残り、そこから「ははそはの」という枕詞が生まれたことからもわかります。)今は生活の場所の多くを奪われてしまったヤママユガですが、不二聖心ではまだその姿を身近に見ることができます。
天蚕は明治時代から皇居内でも飼育が続けられ、現在は美智子皇后様がその飼育を引き継いでいらっしゃいます。

 

 今日のことば

 子に告げぬ哀しみもあらむをははそはの母清やかに老い給ひけり 

                              美智子皇后様

2012.01.27

マラソン大会 トウゲシバ

  2012.01.27 Friday

 今日はマラソン大会が行われました。よく晴れた冬空の下、生徒たちは一生懸命に走り、完走後は達成感を味わいつつ母の会のお母様方の手作りのうどんとお汁粉をいただきました。
今年度の最高タイムは、15分46秒でした。

 

 不二聖心の林内でよく見られる植物の写真を撮りました。ワラビやゼンマイと同じシダ植物の仲間でトウゲシバといいます。「シダらしくないシダ」の代表と言えるでしょう。

 

今日のことば

Perhaps we don’t realize enough how hard it is to listen to one another. We are so busy with ourselves and with our affairs that we don’t hear others or listen to them. How much harder it is for us to hear God and to listen to him! He loves us, he speaks to us, mainly through his written word in the scriptures, in the voice of the Church, in his commandments, in other people, especially in prophets and the poor, in the events of life. Pay attention, try to hear him and say: “Speak, Lord, your servant listens.”

「サンデー・リタジー」より

2012.01.26

雪の富士 薩摩紅梅の蕾

  2012.01.26 Thursday


 ここ数日の寒波で富士山にさらに雪が積もりました。遠くからでも山肌の雪が厚みを増しているのがわかります。

 築山の薩摩紅梅の蕾が膨らんできました。春が近いことを感じます。

 

今日のことば

大阪国際に向けて調整してきましたが、帰国直前に痛めてしまいショックでした。 しかし、少し休めば良くなる程度の症状なので気持ちを切り替え、最後の選考会である名古屋に向けて頑張ります。私は諦めません。                               

                                野口みずき

2012.01.25

キイロスズメバチの巣

  2012.01.25 Wednesday

 校内で見つかったキイロスズメバチの巣の写真です。すでに危険性がないように処理されたあとですが、そのあまりの大きさに思わずたじろいでしまいます。

 

 

 

今日のことば

真の愛と呼ばれるものは、誰もが愛せるものを愛することではなくて、誰からも顧みられない価値なきかに見えるものに注がれる愛である。 

                              三浦綾子

2012.01.23

不二聖心の美林 モグリチビガ科の絵かき虫

  2012.01.23 Monday

 牧草地の横に美林としてかつて賞を受けた林があります。その林床には多くの植物が生息していますが、最も多いのはフユイチゴです。その葉に潜っている絵かき虫については「不二聖心のフィールド日記」でも紹介したことがありますが、絵かき虫の種類が、専門家の方の同定によって、モグリチビガ科の Stigmella属の「イチゴモグリチビガStigmella alikurokoi Kemperman et Wilkinson」か「イチゴアカガネモグリチビガStigmella  ichigoiella Kemperman et Wilkinson」であることがわかりました。

 

今日のことば

今日散れる葉にすら深き彩りを賜えるものを天と思うも

                                                            田井安曇

2012.01.22

リョウブの冬芽

 2012.01.22  Sunday

 日本で見られる樹木で木肌が最も個性的なのは、リョウブではないかと思います。(1枚目の写真参照)冬の時期は一際その木肌が目をひきますが、それとともに最近は冬芽の白が目立つようになってきました。芽鱗がついていた時は茶色く見えていた冬芽(3枚目の写真参照)が、芽鱗がはがれると冬空に白い輝きを放つようになります。(2枚目の写真参照)写真はすべてキャンプ場で撮影しました。

 
 

今日のことば

一、 一日一日をていねいに、心をこめて生きること
二、 お互いの人間存在の尊厳をみとめ合って(できればいたわりと愛情をもって)生きること
三、 それと自然との接触を怠らぬこと

結局のところ人の世の詩も幸せもこの他になく、それ以外はすべて空しいことにすぎないのではないかな。

                                 細川宏

2012.01.21

スミレモ

  2012.01.21 Saturday

 半田信司さんという方の「21世紀初頭の藻学の現況」という文章の中に次のような一節があります。

 陸上の岩や樹皮表面などの水のない場所にすむ藻類は「気生藻類」と呼ばれる。ところが,ワカメやコンブのように水の中にすむ藻類はあえて「水生藻類」とは呼ばれないのはなぜか。いうまでもなく,“藻類は水の中にすんでいる”という先入観によるものに違いない。

 確かに藻類と言えば水中をイメージしてしまうような先入観が私たちにはありますが、陸上に生活する藻類も多数いて、その代表がスミレモです。不二聖心の裏道の石垣にはこのスミレモがたくさん生息しています。
この種の藻類は水生藻類が陸上に進出して生まれたものですが、進出の理由について半田信司さんは以下のような興味深い仮説を「21世紀初頭の藻学の現況」の最後に述べていらっしゃいます。

 最後に,藻類が陸上に進出したのは,炭素の利用効率を上げるためであるという仮説をとりあげたい。シャジクモ類は,CO2の利用効率の良さを求めて大気中にすむことを選択したという歴史がある。「気生」という,藻類にとっては厳しい環境に生きているものたちには,何か計り知れない潜在能力があるのかもしれない。今,人間の生活しやすい大気環境を維持するためにCO2 排出量の削減が叫ばれている中で,気生藻類には,その役割を担う救世主としての可能性が秘められている。

 

今日のことば

 その思想がたとえ高潔なものであっても、人間の最終目標は思想ではなく行動である。

トマス・カーライル

2012.01.20

カンアオイ

  2012.01.20 Friday

 カンアオイの写真を撮りました。
ギフチョウの食草としても知られるカンアオイは、花が半ば地中に埋もれるようして咲いているため、種子の散布範囲が狭く分布移動速度が極端に遅いことで知られています。前川文夫博士は、1キロ移動するのに1万年かかるという説を唱えています。不二聖心の中でたくさんのカンアオイが見られるのは、裏道と林道で、その間は1キロ以上離れていますので、2カ所でカンアオイを観察すれば、1万年の時間を感じることができます。
カンアオイは地域によっては絶滅危惧種にも指定されている植物ですが、不二聖心にはあまりにもたくさんのカンアオイが生えていて、希少種であることを忘れてしまいそうです。


今日のことば

 わたしの言葉に留まるなら、あなた方はまことにわたしの弟子である。あなた方は真理を知り、真理はあなた方を自由にする。

ヨハネによる福音書

2012.01.19

富士山の笠雲 モトグロホシアメバチ

2012.01.19 Thursday

 今朝の予報では、静岡県東部は今夜から雪ということでした。その予兆であるかのように富士山には朝から笠雲がかかっていました。

 下の写真はモトグロホシアメバチ Enicospilus nigribasalis (Uchida, 1928)の♀です。凍るような水の上に浮いていたのですが、手ですくって木にとまらせたところ、見事に息をふきかえしました。低山地に多く見られるヒメバチのようですが、静岡県では初の記録ということになります。


 

今日のことば

勇気とは、人間が彼の本質的な自己肯定に矛盾する実存の諸要素にもかかわらず、彼自身の存在を肯定する倫理的行為である。

ポール・ティーリッヒ

2012.01.18

白い富士山 ホソガ科の絵かき虫

 2012.01.18 Wednesday

 今朝の富士山は山裾にかなり近いところまで山肌が白く変わっていました。

 アカガシの葉に描かれた模様を手掛かりに葉の中に潜っている「絵かき虫」の種類を確定できないかどうか、専門家の方に同定の依頼をしていたのですが、今日その結果が届きました。潜っていたのは蛾の幼虫です。ホソガ科のAcrocercops group の種で、Acrocercops querci Kumata et KurokoかAcrocercops unistriata  Yuan かAcrocercops vallata Kumata et KurokoかCryptolectica chrysalis Kumata et Kurokoのいずれかであろうということです。あの薄い葉の中で生活することがどうして可能なのか、不思議でなりません。


今日のことば

冬がきたら
冬のことだけを思おう
冬を遠ざけようとしたりしないで
むしろすすんで
冬のたましいにふれ
冬のいのちにふれよう
冬がきたら
冬だけが持つ
深さときびしさと
静けさを知ろう

                           坂村真民

2012.01.17

クヌギエダイガフシ

  2012.01.17 Tuesday

 今朝は、校舎の上にうっすらと雪が積もっていました。

   不二聖心の雑木林のクヌギやコナラの枝にはクヌギエダイガフシという虫こぶがたくさんついています。これは、クヌギエダイガタマバチという小さなハチが植物の組織内に化学物質を注入し、その結果細胞が異常な発達をしてできるものです。虫こぶの中でハチの卵は幼虫となり、やがて外の世界に成虫となってでてきます。そのあとは、虫こぶは空き家となりますが、その空き家をさまざまな生物が越冬場所として利用しています。不二聖心の雑木林だけでもテラニシシリアゲアリやモリチャバネゴキブリなどが越冬している様子を今月に入って確認することができました。テラニシシリアゲアリは女王を中心としたコロニーを小さな虫こぶの中で形成していて、たいへん驚きました。
いくつかの生物の中でとりわけ目立つのがクモの幼体です。わずか数ミリの幼体を4種類ほど採集しましたので、クモの研究者の方に同定を依頼したところ、ネコグモとアマギエビスグモとアリグモとフクログモの幼体だということがわかりました。やがてこれらのクモは成長して樹木の害虫を食べるようになることでしょう。虫こぶとクモと植物の興味深い関係がそこから見えてきます。


 

 

 今日のことば

 

 私は現代の人間が、もっとも多く失った感情が尊敬の感情だと思うのである。あまりに安価で猥雑な知識の吸収になれて、人は、世界にはまだ自分の理解出来ぬ深い秘密が隠れているという感情を失ってしまったのである。

梅原猛

2012.01.16

ケンポナシ

 2012.01.16 Monday

 下の写真は1950年代に不二聖心にいらしたエデルマン神父様の写真です。(理科室の横の通路に飾られています。)神父様は地元の方ともたくさんの交流の機会を持ち、良寛さんのような方だと評する人もいたそうです。
2枚目の写真はエデルマン神父様が植えられたケンポナシの木の実です。裏門を出たところに落ちていました。一目見たら忘れられない特徴的な形をしています。樹皮もなかなか個性的で、歳月を経た太い幹のケンポナシの大木は、裏門の前の木々の中でも、ひと際、威容を誇っています。

 

今日のことば

いいんだよ。ねずみは、ねずみ一ぴきぶん、きつねは、きつね一ぴきぶん、はたらくのさ。だれのなんびきぶんなんかじゃないんだよ。おとうさんはくまだから、くまの一ぴきぶん。ウーフなら、くまの子の一ぴきぶんさ。みんなが一ぴきぶん、しっかりはたらけばいいんだ。

         『くま一ぴきぶんは ねずみ百ぴきぶんか』(神沢利子)より

2012.01.15

クロスジヘビトンボの幼虫

 2012.01.15 Sunday

 今日は、牧草地から5分ほどのところにある谷を流れる沢を歩きました。湧水がしみ出る沢は水量こそ少ないものの水質はたいへん良く、石を裏返したらクロスジヘビトンボの幼虫が見つかりました。水質の良いところにしか棲めない昆虫です。手を入れられないほど冷たい水でしたが、水の中に放すとすぐに石の下に潜ってしまいました。

 
 

 

 今日のことば

 世界が如何にあるかではなく、そもそも世界があるということ自体が神秘的なことである。

ヴィトゲンシュタイン

2012.01.14

クリオオアブラムシの卵

  2012.01.14 Saturday

 2011年12月7日のフィールド日記で紹介したクリオオアブラムシはすべて産卵を終え、木肌は黒い卵で覆われてしまいました。卵は天敵に襲われることもなくこのままの状態で越冬し、3月の半ばごろには孵化し始めるはずです。


 

今日のことば

生きてゆくことの意味 問いかけるそのたびに
胸をよぎる 愛しい人々のあたたかさ
この星の片隅で めぐり会えた奇跡は
どんな宝石よりも たいせつな宝物
泣きたい日もある 絶望に嘆く日も
そんな時そばにいて 寄り添うあなたの影
二人で歌えば 懐かしくよみがえる
ふるさとの夕焼けの 優しいあのぬくもり
本当にだいじなものは 隠れて見えない
ささやかすぎる日々の中に かけがえのない喜びがある

                       「いのちの歌」より

2012.01.13

柿本人麻呂の世界  韓国聖心との交流

  2012.01.13 Friday

 柿本人麻呂に「東の野にかぎろひの立つ見えてかへりみすれば月かたぶきぬ」という歌があります。今日の朝の不二聖心にはまさにこの歌の光景が広がっていました。東から昇る太陽の光をながめたあとで、振り返って陰暦二十日の有明の月の写真を撮りました。

 
夕方、韓国聖心の生徒のみなさんが不二聖心に到着しました。両校の生徒は夏以来の再会を喜んでいました。

 
今日のことば

神のごとくゆるしたい
ひとが投ぐるにくしみを
むねにあたため
花のようになったならば
神のまえにささげたい

                      八木重吉

2012.01.12

雪化粧した愛鷹山 プールのカルガモ サルトリイバラ

  2012.01.12  Thursday


今年一番の冷え込みとなりました。雪に覆われた愛鷹の山には朝日がさし、昨日とは全く違う風景が広がっていました。


 

 昨日まで 築山の池にいたカルガモの夫婦は、今日はプールに移動していました。

  2011年4月28日の「フィールド日記」で、ホウセンカヒゲナガアブラムシを紹介しました。ホウセンカアブラムシが付いていた植物がサルトリイバラです。今は葉を落とし、独特の付き方をする赤い実だけが、冬の景色の中で小さな輝きを放っています。


 

今日のことば

あの人のようになりたくて
あの人の後を追っていたら
あの人の前に
キリストがいた
                                   星野富弘

2012.01.11

コップの中のウラギンシジミ 築山の池のカルガモ

  2012.01.11 Wednesday

  2012年1月2日の「不二聖心のフィールド日記」で、越冬に失敗して落葉広葉樹の葉もろとも地面に落下してしまったウラギンシジミを保護した話を紹介し ました。そのウラギンシジミのその後の様子についてお伝えします。越冬状態を維持するために、外に置いて観察を続けていますが、今朝もしっかりと壁面(横 にしてある紙コップの底)にとまっていました。氷点下になることも珍しくない時期に、なぜ体液が凍ることもなく生き続けられるのか、不思議でなりません。

 

 築山の池には今日もカルガモの夫婦がいました。朝日が水面を照らして光が反射する幻想的な光景が見られました。

 

今日のことば

  人間はだれでも、他者から大切にされなければ、本当に自分を大切にしながら生きているという実感をもつことができない存在なのです。二十世紀前半 にアメリカで、生涯を人道的な精神医療に捧げたとも言われるH・S・サリヴァンは、そのことを見事に指摘しています。人間は自分の存在する意味や価値を、 人間関係のなかに見いだし、実感するのです。心を病んでいるすべての人に共通する問題は、人間関係の障害なのです。
  ですから人間は、自分がだれか他者のために役立っていることを自覚することなしには、本当に安心して充実した生きかたはできないものなのです。人間の幸福は、自分がだれかを幸福にしているという実感のなかから生まれてくるものなのです。

                               佐々木正美

2012.01.10

築山の池のカルガモ

  2012.01.10  Tuesday

 下の写真に鳥が3羽写っているのがわかるでしょうか。1羽は本館の建物の十字架の上にいるカ ラス、あとの2羽は池で泳いでいるカルガモのつがいです。2枚目の写真にはその様子が拡大されて写っています。前を行くのが雌、後ろを行くのが雄です。ま だ学校がにぎわいを取り戻す前の休み明けの朝の静けさの中でしばらくゆったりと泳ぎ続けていました。


今日のことば

 幼稚な人間とはIQが低いとか常識がないとかいうことではなしに、何が肝心かが分からぬ、そして肝心なことについて考えようとしない者だ。

                                  福田和也

2012.01.09

マリアガーデンのソシンロウバイ

  2012.01.09 Monday

 ソシンロウバイの花が次々に咲き始めています。
ロウバイは「蝋梅」と書き、「蝋」は花が蝋細工のように見えることを意味しています。花に光があたると、その部分だけが蝋燭に火を灯したように明るさを 増し、まるで自ら光を放っているかのように見えます。姿の美しさと香の芳しさをそなえた蝋梅は、他にはない魅力を持った花と言えるでしょう。
香に誘われてでしょうか。たくさんの双翅目の昆虫が花を訪れていました。

 


今日のことば

人間は常に人間になりつつある存在だ
かつて教えられたその言葉が
しこりのように胸の奥に残っている
成人とは人に成ること もしそうなら
私たちはみな日々成人の日を生きている
完全な人間はどこにもいない
人間は何かを知りつくしているものもいない
だからみな問いかけるのだ
人間とはいったい何かを
そしてみな答えているのだ その問いに
毎日のささやかな行動で

人は人を傷つける 人は人を慰める
人は人を怖れ 人は人を求める
子どもとおとなの区別がどこにあるのか
子どもは生まれ出たそのときから小さなおとな
おとなは一生大きな子ども

どんな美しい記念の晴着も
どんな華やかなお祝いの花束も
それだけではきみをおとなにはしてくれない
他人のうちに自分と同じ美しさをみとめ
自分のうちに他人と同じ醜さをみとめ
でき上がったどんな権威にもしばられず
流れ動く多数の意見にまどわされず
とらわれぬ子どもの魂で
いまあるものを組み直しつくりかえる
それこそがおとなの始まり
永遠に終わらないおとなへの出発点
人間が人間になりつづけるための
苦しみと喜びの方法論だ
                                                           谷川俊太郎

2012.01.08

ナンテン

  2012.01.08 Sunday

 1月6日の「不二聖心のフィールド日記」で紹介したフユシャクについて専門家の方に種の同定の依頼をしていたのですが、その同定結果が今日届きま した。「ナミスジフユナミシャクOperophtera brunnea」でした。これは冊子『不二の自然2』で紹介した「コナミフユナミシャク」と同じ種です。名前が違う理由は和名・学名が変更されたことによ ります。以前は、「ナミスジフユナミシャクOperophtera brunnea」は、コナミフユナミシャク(Operophtera brunnea)とオオナミフユナミシャク(Operophtera variabilis)の2種に分けられていましたが、同一種の個体変異であることが分かり、再び元の学名・和名に戻されたそうです。一つの種を確定する ことの難しさを感じます。
さて、今日は2枚の写真を掲載しました。
1枚目の写真は本館前で撮影したナンテンの写真です。「ナンテン」は「難を転ず」に通じるところから縁起のよい植物としてよく玄関先などに植えられます。今の時期は、葉が美しく紅葉し赤い実をつけています。
2枚目は何かわかるでしょうか。実はこれもナンテンなのです。こちらはポンプ小屋の道で撮りました。樹林下のため陽が当たらず紅葉することができなかったのです。日光を浴びるか浴びないかで植物の姿には大きな違いが生じます。
同じものを同じと判断すること、違うものを違うと判断すること、いずれもなかなか困難な作業です。

 

 今日のことば

 自分の中を見つめているような遠い目をしている人がときどきいる。
   もっとも遠いものとは自分なのかもしれない。
                                 舟越桂

2012.01.07

牧草地の鹿

  2012.01.07 Saturday

 今日は帰りに8匹のフユシャクを見かけて驚きました。しかし、もっと驚いたのは朝の牧草地での鹿との出会いです。5、6頭の群れで動いていましたが、なぜか雄の姿が目立ちました。写真に写っているのもすべて角が生え始めて数か月の雄ばかりです。

 

今日のことば

 作曲をすることは誰にでもできるんだろうと思うんですよ。でも作曲家は作曲をするんじゃなくて、まずいちばん最初の聴衆じゃなきゃいけないんだろう と。つまり作曲家にとっていちばん大事なのは聴くことだって思うんです。音楽を聴くだけじゃないんでよ。命っていうか生きてるものとか、自然とかすべて、 それを聴くってということが大事なんですよ。

武満徹

2012.01.06

フユシャク

  2012.01.06 Friday

  昨日の夜、家に帰る時には気温は既に3度まで下がっていました。校舎の裏に停めてあった車に乗りライトをつけた瞬間、目の前を一匹の蛾が横切り ました。フユシャクです。冬季にのみ活動する蛾です。お茶畑の横を走っていた時にまた一匹のフユシャクが前を横切りました。さらに正門をくぐりぬけようと した時、また一匹横切りました。その三匹目を採集して、その姿をカメラに収めました。それが下の画像です。フユシャクは口が退化しています。彼らが飛ぶの はメスを求めてであり、彼らの生きる目的は次の世代を残すことです。メスは翅が退化していて飛ぶことができません。フェロモンによってオスに居場所を知ら せています。きっと昨晩は、不二聖心の中にフユシャクのオスだけがわかるフェロモンが漂っていたことでしょう。人間の五感でとらえることのできる世界だけ が世界のすべてではないことを覚えておきたいものです。

 

 

  今日のことば

  ユーモアとは、にもかかわらず笑うことである。
                                                                アルフォンス・デーケン

2012.01.05

セイタカアワダチソウ ギングチバチ

  2012.01.05 Thursday

 要注意外来生物として長年、悪者扱いされ続けてきたセイタカアワダチソウは漢字で書くと「背高泡立ち草」となります。その花穂の泡立つ様子は花の時期が終って種子をつけるようにならないと観察できません。今の時期はまさに「泡立ち草」です。
昨日の朝日新聞の夕刊に「さらばセイタカアワダチソウ ―― 農環研 除草剤使わず駆除成功 ―― 」というタイトルの記事が載りました。次のような内容です。

 

 農業環境技術研究所(茨城県つくば市)が、全国に広がっている外来植物のセイタカアワダチソウを駆除する新たな手法を開発した。
同研究所は、セイタカアワダチソウが土壌のPHが低い(酸性度が高い)土地にはほとんど広がらないことに注目。セイタカアワダチソウなどの茂みを刈り取っ たあと、塩化アルミニウム剤を1平方メートルあたり1.2キロ散布して土壌のアルカリ度を下げると、チガヤなどの在来植物は復活するが、セイタカアワダチ ソウは2年間観察を続けてもほとんど生えなかった。
この土壌処理を、道路わきや農地周辺などで行えば、除草剤を使わずに効率的に駆除できるという。山口県内の果樹園の跡地を使って行った駆除実験では、セイ タカアワダチソウが減り、在来植物の種数が増えた。土壌処理をしなかった場所は5平方メートルあたりの在来植物は22種だったのに対して、処理した場所は 2年後に31種に増えていた。
今後、土の中にすむミミズや細菌などに対する塩化アルミの影響を調べ、他の外来植物の駆除にも役立つかも探る。


在来植物の増加を可能にするうれしいニュースですが、少し複雑な思いもあります。これだけセイタカアワダチソウが幅をきかせるようになるまでに、日本の 生態系はセイタカアワダチソウを組み込むかたちで調和できるように変化してきました。例えばセイタカアワダチソウから供給される多量の花粉や蜜によって活 動時期を秋遅くまで延ばすことになった生物もいたはずです。その生物たちが、人為的な植生の変化によって再び翻弄されることになります。
2枚目の写真のセイタカアワダチソウの花の上にいるハチは、ギングチバチという比較的珍しい種類のハチです。この写真は、11月に裏の駐車場で撮りまし た。(顕微鏡で見ると本当に口の周りが銀色の毛で覆われています。)このハチもセイタカアワダチソウに何らかの形で依存している可能性があります。セイタ カアワダチソウの減少によって少なからぬ影響を受けることになるかもしれません。

 

   今日のことば

    新しき光を揺りて
                       湧く水の如きおもひに拠りて生きむか
                                                                     菊地新

2012.01.04

茶畑の富士 石蕗の花

 2012.01.04 Wednesday

 お茶畑から見る富士山が美しい朝でした。


晩秋から咲き始めた石蕗(ツワブキ)が今も校舎裏のクスノキの大木の脇で咲き続けています。地味な花ですが、不思議と心ひかれる花で、眺めているとその 寂しい風情に冬の心が静まっていくのがわかります。網野菊は「冬支度するもひとりや石蕗の花」と詠み、高浜虚子は「静かなる月日の庭や石蕗の花」と詠んで います。石蕗の花の風情が名句を生み、名句は石蕗を見るまなざしを深めます。

 

 今日のことば

 私達の魂の故郷は静寂の国である。魂の孕むすべての美しいものは、この寂しさから生れ出て来るのだ。

薄田泣菫

2012.01.03

沢の調査 サワガニ

  2012.01.03 Tuesday

  今日は茶畑の奥の谷の沢を調査してみました。短時間の調査でしたが、沢の水質はたいへんきれいであることがわかりました。短時間の調査でなぜ水 質がきれいであることがわかるのでしょう。それは、指標生物であるサワガニがたくさん生息していたからです。(サワガニの親子にも出会うことができまし た。)環境省は水質調査の実施を全国に呼び掛けていますが、その指導書には「サワガニがいたら水質はたいへん良いと判断していい」と書かれています。
写真のサワガニは青みを帯びていますが、これは静岡県東部に生息するサワガニの体色の特徴です。カニの体の色にも地域の特性が反映しているのです。

 


谷から上ってきた時、空の青さが目にしみました。

 

 

 今日のことば

 浜口神父様の紹介で私は、長崎教区が運営する高校の教師になり、国語教師の深堀勝さんを知りました。
父、妻、妹と静かに暮らしていた深堀さんは原爆に遭う。爆心直下にあった自宅は壊滅。がれきの中で三人の運命を予感し、思わず口ずさんだ。「主与え、主 取り給う。主の御名は賛美せられよかし」。満たされても、奪われても神を信じるという旧約聖書ヨブ記の一節です。妻は亡くなり父の骨は見つからず、妹も一 カ月して亡くなる。死の直前まで妹は、細い呼吸の中で長いラテン語の歌を歌い続けた。その後も信仰に生きた深堀さんの姿に、私はその後の人生に大きく影響 を受けたのです。

本島等(元長崎市長)

2012.01.02

正月の富士 鹿の足跡 ウラギンシジミ

  2012.01.02 Monday

  グラウンドから見える正月の富士山です。美しい山容を眺めていると故西山民雄先生の「富士の冴え祈りの心諭しけり」の句が思い出されました。
グラウンドには鹿の足跡がたくさんついていました。休暇中は鹿の遊び場となっているようです。
2011年8月20日のフィールド日記でウラギンシジミの幼虫の驚異的な擬態について紹介しました。あの時期の幼虫は今は成虫となってツバキなどの常緑 広葉樹の葉裏で越冬しています。と普通は書くのですが、今日、ポンプ小屋の道で地面に落ちているウラギンシジミを見つけました。よく見ると落葉広葉樹の葉 裏につかまったまま横たわっています。落葉する葉の裏についたら落下することは目に見えています。雨が降ればそのまま死んでしまったことでしょう。無事保 護することができましたが、あの驚異的な擬態の技を持つウラギンシジミが越冬場所を間違えるとは、何とも不思議な話です。 

 

 


今日のことば

 人が何かに出会い、感動する。その感動の元をたどっていった時、その核のところには、こういった肯定の光景があるのではないだろうか。肯定の感情が世界を覆う、そのことを感動というのではないだろうか。

太田省吾

2012.01.01

コウヤボウキ

2012.01.01 Sunday
あけましておめでとうございます。
今年も不二聖心の自然のすばらしさをこの「フィールド日記」を通してお伝えしていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 10月30日に撮影したコウヤボウキが結実している様子を観察しました。下の写真が10月30日に撮影したものですが、ここに写っているクチナガ ガガンボが受粉昆虫として活躍したことがうかがわれます。この近辺はコウヤボウキが少しずつ数を増やしていますが、そのために受粉昆虫の活躍は欠かせませ ん。希少種であるコウヤボウキは花の形が筒状をしており、受粉に関われる昆虫は限られています。ふだん注目されることも少ないガガンボが大切な役割を自然 界の中で果たしているのです。多くの生物は他の生物とのつながりよって支えられています。今年も生き物のつながりにしっかりと目を向けていきたいもので す。

 

 下の写真が結実したコウヤボウキの写真です。

 

 


今日のことば

生命は   吉野弘

生命は
自分自身だけでは完結できないように
つくられているらしい
花も
めしべとおしべが揃っているだけでは
不十分で
虫や風が訪れて
めしべとおしべが仲立ちする
生命は
その中に欠如を抱き
それを他者から満たしてもらうのだ

世界は多分
他者の総和
しかし
互いに
欠如を満たすなどとは
知りもせず
知らされもせず
ばらまかれている者同士
無関心でいられる間柄
ときに
うとましく思うことさえ許されている間柄
そのように
世界がゆるやかに構成されているのは
なぜ?

花が咲いている
すぐ近くまで
虻の姿をした他者が
光をまとって飛んできている

私も あるとき
誰かのための虻だったろう

あなたも あるとき
私のための風だったかもしれない

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