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フィールド日記

2012.11.09

ミニナンバンギセル発見  ヒゲナガヤチバエのかくも複雑な生活史

  2012.11.9 Friday

 明日、不二聖心女子学院で行われる予定の自然観察会の下見に行ってきました。驚いたのは、ナンバンギセルがまだ咲いていたことです。8月の初旬に咲き始めましたので、もう3カ月以上も咲き続けていることになります。今日は、地面にすれすれに咲くミニナンバンギセルも見つけました。これは、今までに見たことがありませんでした。


 

 

 ヒゲナガヤチバエが「共生の森」でジョロウグモの巣にひっかかっていました。ヒゲナガヤチバエについて知るには、「ヒゲナガヤチバエの生活史」(永富昭・柳下町鉦敏)という論文がたいへん参考になります。その論文の中には次のような興味深い記述があります。


ヒゲナガヤチバエの幼虫はヒメモノアラガイを食べ、又卵はズイムシアカタマゴバチに寄生されて直接間接人類に役立っている。
ヒメモノアラガイは周知のように肝蛭(かんてつ)の有力な中間寄主で、日本全土、琉球、台湾、支那大陸に分布する。ちなみに肝蛭は牛、羊、山羊、ラクダ、ノウサギ、稀に豚、馬、人の胆管に寄生し、北海道、東北には比較的少ないが、関東、関西、四国、九州では寄生率が高い。ズイムシアカタマゴバチはニカメイガの重要な天敵であるが、寄主の転換を行わなければ世代の維持ができないのであろう。
ヒゲナガヤチバエの卵は夏期水田にたくさん見出されるので、ズイムシアカタマゴバチの存続上大きな貢献をしていることになる。


なんと複雑に入り組んだ「共生の姿」であろうかと思います。

 

                今日のことば

 あなた方は研究室で虫を拷問にかけ、細切れにしておられるが、私は青空の下で、セミの声を聞き
 ながら観察しています。
 あなた方は薬品を使って細胞や原形質を調べておられるが、私は本能の、もっとも高度な現れ方を
 研究しています。
 あなた方は死を詮索しておられるが、私は生を探っているのです。
                                  アンリ・ファーブル