フィールド日記

2012.11.30

イロハモミジ  不二聖心の紅葉の由来

 2012.11.29 Thursday

 不二聖心の紅葉も、ようやく盛りを迎えました。不二聖心には、かつて関西の財界人として名を馳せた岩下清周氏が裾野に移り住んでのち関西の紅葉を懐かしんで京都から取り寄せたイロハモミジがたくさん生えています。
   不二聖心の前身である温情舎小学校を創立した岩下清周氏については、星新一の 『明治の人物誌』(新潮文庫)や小島直記の『日本策士伝―資本主義をつくった男たちー』(中公文庫)で詳しく知ることができます。
以下のURLをクリックすると、中島久満吉の『岩下清周伝』の一部を読むことができます。
http://ktymtskz.my.coocan.jp/kansai/iwasita.htm

 
 

                              今日のことば

 ヒトは、あまりに大きな危険に直面したときは、むしろ危機意識が薄れて、恐怖心がまひしてしまう。
そのような心理状態に陥ると、危機を回避するための適切な行動がとれない。さらにそれが高じると、
自殺行為ともいえるような行動をとることもあるという。
地球環境の危機がこれほど深まり、科学的にもその実態が明らかになっているにもかかわらず、いまだ
その解決を最重要課題にすることができていない人類は、集団的にこのまひ状態に陥っているともいえる。
昨今、地球温暖化や外来種問題に関して、必ずしも十分な専門的知識をもたない「専門家」の危機の否定
・軽視の発言がもてはやされる傾向がある。人々がそれらに同調しがちなのは、まひした心に、それらが
気持ちよく響くからだろう。だれもが、自分や子どもや孫たちの未来に大きな危機が待ち受けているとは、
考えたくはない。
しかし、「甘い現状肯定論」に弱い自らの心の特性を自覚し、厳しい現状から目をそらさないことが、
危機を克服し、持続可能性を確保するためには、何にも増して重要である。

                                  鷲谷いづみ

2012.11.29

ウスタビガの交尾  森の中の鳥の声

  2012.11.29 Thursday

 高校1年生の美術選択の生徒たちが寄宿舎の入り口に蛾がとまっていることを教えてくれました。
駆けつけてみると、そこにいたのはヤママユガ科のウスタビガでした。よく見ると翅の陰にもう一匹隠れていました。どうやらメスのフェロモンに引き寄せられてオスがやってきたようです。
ウスタビガの幼虫はブナ科の植物の葉を食べることで知られています。高校1年生は今年、「共生の森」にブナ科の樹木の苗木をたくさん植えましたので、今日のような光景はこれからますます
不二聖心で増えていくことと思われます。

 ちなみにヘルマン・ヘッセの「少年の日の思い出」の最後の場面で、主人公が親指でつぶす蛾はウスタビガと同じ科に属する蛾です。

10月28日に不二聖心の森で鳴いていた鳥の声について、専門家の方に声の主を推測していただきました。
その推論の展開の仕方がすばらしく、一つの音から感じ取れる情報量とはこれほど豊かなものなのかと感動します。以下にその推論を引用します。

聴きなしますと「キョロンキョキョン......ツィヨツィヨツィヨ」と聞こえます。
こちら、鳴き声の種類は「さえずり(Song)」、声の主は声質や冒頭部分の節から「ツグミ類」ではないでしょうか。加えて、ツグミ類の中でもこのようなさえずりに該当するものはアカハラ、シロハラ、マミチャジナイが挙げられると思います。このさえずりの厄介な部分は、「繁殖期に成熟した雄が鳴く、完成したさえずり」ではないことです。特に中節、終節の部分に不明瞭で特徴のつかみづらい(よく分からない)節があり、全体的に未完成なさえずりである「ぐぜり」の可能性があります。10月下旬に聴かれたものでしたら、時期的に考えて今年生まれの若鳥が来春に向けてさえずりの練習しているのかもしれません。ここからは本当に推測の域を出ませんが....マミチャジナイならさえずりの冒頭節にもっと騒がしく音階が盛り込まれて、中節、後節はほとんど山がありませんし、アカハラならばよりシャープで終始途切れや濁音のあまりないさえずりになると思います。後節のツィヨツィヨツィヨはこの3種のどれにも該当しませんが、冒頭節に適度なスタッカートが混ざる点、その後連続的でなく中・後節が訪れることなどから、この声の主は渡来して間もないシロハラではないかと思います。

今日のことば

私は好きだった、
信じることのできる自分が。
人を、生きている世界を、
その未来を 信じると、私がいう時、
星ほどの数の 子供たちが、
信じる、といっているのを感じた。

                   大江健三郎

2012.11.28

ホソアシナガバチの女王の越冬です

  2012.11.28 Wednesday

 林道脇の森の中でホソアシナガバチの女王バチがヤブムラサキの葉の下で越冬しているのを見つけました。卵を抱えたままで冬を越し来年の春には巣作りを始めます。
ホソアシナガバチの女王バチについては、『ハチとアリの自然史』(北海道大学図書刊行会)に収められた「アシナガバチ・スズメバチにみられる分業の社会性」の中に次のような興味深い記述があります。

アシナガバチ属やホソアシナガバチ属の多くの種では、女王は唯一の産卵者で、巣の中心部にとどまり、働きバチにたいして大顎で威嚇したり、触覚で相手の体を叩くなどの優位行動や、巣盤上での腹部の揺すりなどの示威行動をとる。これによって、女王は絶対的な優位者として働きバチの内分泌などに生理的な影響を与え、卵巣の発達を抑制して産卵を独占するとみなされる。


 

               今日のことば

人生の意義は何か、人生の幸福とは何かということになると、人によって随分見解が違うであろう。
お祭り騒ぎは愚の骨頂だと思う人もあろう。私自身ももともと孤独癖が強かつた。一室に閉じこもって本を読むか、考え事をする方がはるかに有意義だと思っていた。しかし近頃になって、大勢の人と一緒にぼんやりとお祭をながめて、皆が何となく楽しい気分になるということも決して無意味ではないと悟るようになった。お互いの日常生活の水準が少しずつでも向上してゆくように、たゆまず努力することはもちろん何物にも増して大切なことである。しかしそのために私どもは身体を疲らせているばかりでなく、神経をも疲らせ、いらだたせているのである。そしてそのために必要以上に対立を激化させ、住みにくい世の中を一層住みにくくしている傾向さえないとはいえぬ。時たまのんびりとお祭を見て神経を休める機会を持ちうるということは、京に住む身の一つの仕合せである。

 京にきて祇園祭を見しあとの耳にすがしき蝉しぐれかな

                                        

                                   湯川秀樹

2012.11.27

今年もジョウビタキが渡ってきました

  2012.11.27  Tuesday

 第2牧草地でジョウビタキの姿を確認しました。今年も、はるばる中国北部かロシアあたりからやってきたものと思われます。不二聖心を越冬地に選ぶジョウビタキは毎年いますが、数年前になかなかその姿が確認できないことがありました。その年は全国的にも目撃されるジョウビタキの数が少なく、繁殖地の環境破壊が原因ではないかと騒がれたぐらいでした。ジョウビタキの元気な姿は、遠い北国の自然が健康に保たれていることを私たちに教えてくれます。

 

今日のことば

What, after all, are the most precious things in a life?

                                                                  Margaret E.Murie

2012.11.26

ノブドウの紅葉

 

 2012.11.26 Monday
第2牧草地のノブドウの葉が美しく色づいています。宮沢賢治の「めくらぶどう(ノブドウ)と虹」にはノブドウと虹がたいへん哲学的な会話をします。虹はノブドウに「けれども、もしも、まことのちからが、これらの中にあらわれるときは、すべておとろへるもの、しわむもの、さだめないもの、はかないもの、みなかぎりないいのちです。」と語りかけます。一年の終わりを迎えたノブドウの葉をじっと見ていると「みなかぎりないいのちです」という賢治の声が聞こえてくるようです。
ノブドウのことを賢治は「めくらぶどう」と呼びましたが、青森県の津軽地方の大鰐町でもノブドウを「めくらぶどう」と呼んでいたという記録があります。方言地図では言葉が県境を軽々と越えていくのが面白いところです。

 

 

今日のことば

「いいえ、変ります。変ります。私(ノブドウ)の実の光なんか、もうすぐ風に持って行かれます。
雪にうづまって白くなってしまひます。枯れ草の中で腐ってしまひます。」
虹は思はず笑ひました。
「ええ、さうです。本たうはどんなものでも変らないものはないのです。ごらんなさい。向ふのそらは
まっさをでせう。まるでいい孔雀石のやうです。けれども間もなくお日さまがあすこをお通りになって、
山へお入りになりますと、あすこは月見草の花びらのやうになります。それも間もなくしぼんで、
やがてたそがれ前の銀色と、それから星をちりばめた夜とが来ます。
その頃、私は、どこへ行き、どこに生まれてゐるでせう。又、この眼の前の、美しい丘や野原も、
みな一秒づつけづられたりくづれたりしてゐます。けれども、もしも、まことのちからが、これらの中
にあらはれるときは、すべてのおとろへるもの、しわむもの、さだめないもの、はかないもの、みなか
ぎりないいのちです。わたくしでさへ、ただ三秒ひらめくときも、半時空にかかるときもいつもおんな
じよろこびです。」
「めくらぶどうと虹」(宮沢賢治)より

2012.11.25

アカタテハ  ササキリの鳴き声

 

 2012.11.25 Sunday
アカタテハが落ち葉の上にとまっていました。夏の間もよく見かけた蝶ですが、写真を撮ることはなかなかできませんでした。学研の『原色ワイド図鑑』に「たいへん敏感で採集しにくい」とあることからもわかるように、人の気配にすぐに反応して飛び去ってしまうからです。しかし、今日はこちらが近づいても動く気配すらありませんでした。そろそろ越冬の態勢に入るものと思われます。

 一方で元気に鳴き声を響かせていた虫もいました。ササキリです。こちらも人の気配に非常に敏感な虫ですが、今日は鳴いている姿の撮影に成功しました。

今日のことば

主なる神は日本人の「救霊に働くこと」によって、私自身の限りない惨めさを深く認識する恵みを与えて
くださったのですから、日本の人たちにどれほど感謝しなければならないか、書き尽くすことはできません。なぜなら、日本において数々の労苦や危険にさらされて自分自身を見詰めるまでは、私自身が自分の中に、
どれほどたくさんの悪がひそんでいたか、認識していなかったのです。

                           聖フランシスコ・ザビエル

2012.11.24

スッポンタケ

 

 2012.11.24 Saturday
「共生の森」に接している竹林でスッポンタケを見つけました。食用にできるキノコですが、虫をおびきよせるために悪臭を放つことでも知られています。臭いによって集められた虫はキノコの胞子を運ぶ役目を果たします。写真のスッポンタケの周辺でさらに3つのスッポンタケを見つけました。虫たちはきちんと役目を果たしているようです。

 

 
今日のことば

 ここ十五年ほどの間、われわれこの島々の住人は開発という名のもとにあまりにも無造作に、というよ
り狂ったように樹をきり倒し、いま、自然ともいえないような環境のなかで、自分たちが何をしてきたか
ということに茫然としている。われわれアジア人は、自然というものはアタリマエに存在するものと信じ
こみすぎてきた。民族としての練度が不足している証拠ともいえるのではないか。
太古、ギリシア地方は森林におおわれていたという。そこにギリシア文明が栄えたころ、ひとびとは文明
とそしてふえてゆく人口を養うために乱伐をくりかえした。このあと地面が乾き、山は衰えて石の肌をあ
らわにしたののになり、野の多くは砂漠同然になって、その文明がほろんだ。いまヨーロッパ人が森を大
切にし、町に樹を植え、樹の一つ一つの生命を介抱してその樹蔭で人間の生命を保とうとしているのは、
遠い先祖が失敗した記憶が牢固として生きているからであり、樹を伐ればヨーロッパは亡びる、という恐
怖心がヨーロッパ社会の基礎にあるからに相違ない。
かれらは本来自然の豊かな豪州北部やニュージーランドに社会を作ってもこの恐怖遺伝は消えることなく、
たとえ牧場をひらいても自然木をできるだけ残そうとつとめている。
その恐怖を、この日本列島に住むわれわれが、いまごろになって感じはじめた。しかしその恐怖が、まだ
社会が共有するところまではひろがっていないために、われわれこの島国に住む人間や他の生物の生命を
たすけてきた樹々が、日々伐られつつある。日本は自然の復元力があるという多分に迷信的な根拠に甘え
すぎているためなのか、それとも自然は人間をふくめた生物の共有のものであり、人間もまた自然物にす
ぎないという当然の思想が、この練度の未熟な民族に定着していないせいなのか。
 

                                  司馬遼太郎

2012.11.23

イロハモミジの紅葉  モリオカメコオロギの鳴き声

 

 2012.11.23 Friday
今日は第3回の学校説明会が行われました。あいにくの雨でしたが、たくさんの方にご来校いただき感謝しています。
雨模様の空の下で中庭のイロハモミジが美しく紅葉し始めていました。

 昨日の夜、気温がぐんぐん下がっていくなかで、モリオカメコオロギの鳴き声を耳にしました。
今日はもう鳴き声を聞くことができませんでしたので、あれが今年最後の声だったのかもしれません。
「2012年11月22日に不二聖心でモリオカメコオロギが鳴いた。」これも大切な不二聖心のフィールドの記録です。

               

               今日のことば

     今日散れる葉にすら深き彩りを賜えるものを天と思うも
 

                                  田井安曇

2012.11.22

背泳ぎの名人 マツモムシ

  2012.11.22 Thursday

 第2牧草地の池では今日もマツモムシが元気に泳いでいました。マツモムシは背泳ぎをする姿がとても特徴的な水生昆虫です。水生昆虫の多くは希少種となってきていますが、マツモムシも東京都では準絶滅危惧種に指定されています。

 


今日のことば

 私たちが日ごろ、何気なく見過ごして平気で通りすぎていってしまうことどもに、子どもたちはごく
自然に感動する。空の光に、一片の雲に、垣根の小さな花に、風に舞う一枚の枯葉に、一匹の小さな虫に、
道ばたのただの石ころと思われる自然の一片に、動物に、絵本に、お話に、歌にーー。それぞれの場で、
それぞれの個性によってちがうけれども、計算や思わくなどなしに心を動かす。実にとうとい。
幼い子どもたちの感動しているおももち、顔つき、そのことば、手ぶり身ぶり。さらに「ねえ、ねえ。
……なの」と、共感を求めてくることばに接すると、私はいつもこの子らに深く心をゆり動かされ、圧倒
される思いがする。自分が失ってきた大きなものを嘆くいとまもない。
そんなことを忘れさせてくれるのが子どもの「ねえ、ねえ、見て、ほら」の一言だし、「なぜ」と問うこ
とばだ。そのとき私にとって、世界は新しい光のもとにその姿を私に示してくれる。

                                   小塩節

2012.11.21

泡立ち始めたセイタカアワダチソウ

  2012.11.21 Wednesday

 晩秋から初冬にかけて草原の昆虫たちに最後まで豊かに栄養を与え続けているのが、悪名高きセイタカアワダチソウです。
不二聖心でもハチやハナアブなどいろいろな生き物がセイタカアワダチソウに頼って、命の最後を生きています。しかし、そのセイタカアワダチソウにも花の終わりの時期が近づき、アワダチソウという名前の通り泡立つような姿を見せ始めています。

 

 

                今日のことば

宗教を持つ人は、絶海の孤島へ漂着したが何をしていても一刻も本国へ帰ることを志してやまなかった
あのロビンソン・クルーソーのような人だ。かれは孤島に茅屋を建て、黒人フライデーを僕(しもべ)
とし、山羊を捕えて乳をしぼり、名ばかりの畑を耕した。しかしかれは決してそれだけでは満足せず、
孤島はかれの安住の地ではなかった。何をしてもかれの心は、地平線の彼方なつかしい本国に向っていた。
今かりに孤島に安住して少しも本国へ帰ることは考えなかったとする。無宗教の人はそんなものだと。
なるほど現代の文化生活も、永遠の価値の前にはロビンソンの生活以上に評価されないでしょう。
わたしどもの生活に高い価値と意義を見いだすためには、どうしても永遠無限なるものとの関係において
生きなければならない。人間の生活はだいだいだれも同様で、三度食べて、働き、夜ねて、朝起きるだけ
である。しかし真に信仰に生きる人は、赤ちゃんのおむつのお洗濯をしていても、台所でお芋の皮をむい
ていても、心の眼は浮世の地平線のかなたはるかに高く神に向っている。このような人間の姿こそ実に貴
いものである。現代はあまりにも、孤島に漂着して本国に帰ることを忘れたロビンソン・クルーソーにみ
ちている。われわれは途中で沈没してもいい、孤島で犬死をするよりは、独木舟でもいいから作って故国
へ帰ろうという道心に燃えたい。またこうしてこそ、かえって日々の卑近な生活が高き目的への道程として、光栄に輝くものとなってくるのであります。
 

                         岩下壮一 1934.11.28

2012.11.20

水面を移動するハエ  ミギワバエ

 

 2012.11.20 Tuesday

 11月18日に第2牧草地の池で撮影した、水の上を移動するハエが、専門家の方の同定によってミギワバエ科の1種で、Brachydeutera属の可能性が高いことがわかりました。
脚をよく見ると水の上を移動しやすい構造になっていることがわかります。

今日のことば

How wonderful life is while you are in the world.
君がいてくれるだけで、人生がどんなに素晴しくなるか。

                      Your Song(Elton John)より

2012.11.19

変形したヤブムラサキの実

  2012.11.19 Monday

 第2牧草地のヤブムラサキの木にたくさん美しい実がついていました。ヤブムラサキの実は通常、直径3ミリ程度の小さな球形ですが、第2牧草地では変形した実を見つけることができました。
なぜ変形したのかは、現在調査中です。

 
 

                今日のことば

 モンテ・セナリオは、フィレンツェの北にある海抜八百メートルほどの山で、その頂上に、セルヴィ・
ディ・マリア修道会をはじめた、七人の聖人の由緒ある、大きな森にかこまれた、古い修道院があります。
ジョバンニ神父さんは、その森に点在する、昔、修道士の住んでいた小さな家のひとつを仕事場にしてお
られて、一年のうちの何ヶ月かを、そこで祈りと書きものにすごされるのだということでした。
やっと春のきた杉の木立には、すみれが咲きはじめたばかりでした。ながい冬のあいだに、そこかしこい
たんだ山の家に着くと、神父さんはすぐに、持ってこられた大きな聖母の絵を、壁にかける仕事にとりか
かられ、私には、庭をみてくれないかといわれました。大分雨が降らなかったので、白いあらせいとうや、
ばらのうわった花畑の土は、すっかり乾いてひびわれていました。庭のすみの天井井戸から、私は何杯水
を運んだでしょうか。何時間たったか、一応全体に水をかけおわったとき、家のなかから神父さんが声を
かけられました。「今日はこれぐらいでいいでしょう。召しあがりませんか」。窓ぎわの新聞紙のうえに
は、いくつかのリンゴとオレンジが、灰色の空気のなかで、ふしぎなほどあかるくみえました。つめを立
ててオレンジの皮をむいていると、雨が降ってきました。ほねおって水をまいた庭は、見る見るうちに、
しっとりとうつくしく濡れてゆきます。屋根や木の葉にあたる音をききながら、神父さんは、ぽつりとこ
う云われました。
――音がする。わたし達は、あまりさわがしい中にばかり住んでいて、おと、ほんとうの音とはどんなも
のだったか、わすれているくらいだ――
なにか、奈良の田舎の古寺にでも春雨を聴くおもいで、私も耳をすませるのでした。

                                 須賀敦子

2012.11.18

オナガグモの驚異の擬態

2012.11.18 Sunday

 校舎の裏で松の葉に擬態しているオナガグモを撮影しました。
オナガグモはクモを食べるクモとして知られます。文一総合出版の『日本のクモ』には、「糸には粘性が無く、その糸を伝わって来るクモを捕える」と書かれています。

 

 

                 今日のことば

人間の自由は、諸条件からの自由ではなくて、それら諸条件に対して、自分のあり方を決める自由である。
             
                               ヴィクター・フランクル

2012.11.17

ヌルデの紅葉

 

 2012.11.17 Saturday
不二聖心にはかつて京都から取り寄せたと言われるイロハモミジの木がたくさんあり、紅葉をたっぷり楽しむことができますが、モミジの紅葉の盛りにはまた少し時間がかかるようです。今の時期に紅葉の盛りを迎えているのはウルシ科の植物です。すすき野原ではウルシ科ウルシ属のヌルデが美しく紅葉していました。ヌルデは奇数羽状複葉で葉軸に翼があるので簡単に他の樹木と見分けることができます。
聖徳太子が残したエピソードに、味方が苦戦に陥った時にヌルデの木を刻んで四天王の像を作り、敵を滅ぼした暁には寺と塔を建立しますと願をかけたという話があります。ヌルデは長い間、特別な神通力を持った木であると信じられてきました。



今日のことば


一晩で
何億というお金を
あっちだこっちだと
動かす若社長より

北国の干潟で
泥に塗れ
黙々と何かを
捕っている
茶髪の青年の方が
美しい

と、思える人は
決して
負け組では
ありません

                      山城美奈子

2012.11.16

アシナガバチの巣   不二の自然63コアシナガバチ

 2012.11.16 Friday

すすき野原でアシナガバチの巣を見つけました。もう子育てがすべて終わった巣です。

『不二の自然3』という冊子の中で以前に紹介したアシナガバチの記事を再録しておきます。

               不二の自然63

コアシナガバチ
科名 ハチ目スズメバチ科
学名 Polistes snelleni
 

 レイチェル・カーソンの『沈黙の春』の中に次のような一節があります。

 アシナガバチの雌は、受精卵をいだいて人もこない屋根裏の片すみにかくれている。その卵に彼女の
コロニーの未来のすべてがひそんでいる。ひとりさびしく冬をすごした彼女は、春になると小さな紙の
巣をつくり、そのなかに二つか三つ卵を産みつけ、働きバチを何匹か、大事に育てる。働き蜂の助けを
かりて、やがて巣は大きくなり、コロニーがひろがってゆき、働きバチは、暑い夏の日が続くかぎり休
むことなく餌をさがし集める。

 レイチェル・カーソンによって描かれた自然の営みを不二聖心の中でつぶさに観察することができます。『アシナガバチ一億年のドラマ』(山根爽一)には「普通は約7割のコロニーがワーカーの羽化を待たず
に失われる」とあります。不二聖心に生息するコアシナガバチの巣作りが無事に成功することを願ってい
ます。
                                   (平成22年6月12日)

                 今日のことば


地球は、ひとつの大きないのち。歌い手としての活動を始めて15年あまり、このごろ私の心には、
そんな思いがこだまするようになりました。この星の反対側で、1人のいのちが奪われるときその
悲しみのため息は、私たちの奥深くにきっと、小さな震えを起こす。
すべてのいのちは、つながっているから。

                                鈴木重子

2012.11.15

初霜  球技大会  ハラビロカマキリ  コカマキリ

 2012.11.15 Thursday

 今朝7時の不二聖心の気温は3度でした。「共生の森」では初霜が見られました。

 

 しかし昼間はよく晴れ、絶好の球技大会日和となり、生徒たちの生き生きとプレーする姿が
 たくさん見られました。

 

 今日は、ハラビロカマキリとコカマキリを校舎の裏のほぼ同じ場所で見かけました。
 背中の白い点がハラビロカマキリの目印です。


 

 

 キリンビール株式会社のホームページの中で、不二聖心の自然の写真が紹介されました。
 ご覧になりたい方は以下のURLをクリックしてください。
 
 http://www.kirin.co.jp/csr/env/special/suigen/forests/fuji/
 


             今日のことば

 高校3年生の短歌

 気づいたら今週私の誕生日さよなら私の十七歳(セブンティーン)    
 壮大な秋の絵画が美しい窓という名の巨大なキャンバス         
 将来はやりたいことが多すぎて収拾つかない頭のノート         
 覚悟して離れた道を選んでもさよならなんてまだまだ言えない      
 平和への一歩を担う大統領核なき世界へ新たな四年           
 繰り返し間違うことの何が悪い七度転んで八起きればいい        
 噛み締める間もなく日々を駆け抜けて全てが最後の実感沸かず      
 肩寄せる友に感じるぬくもりが心に積もる憂いを溶かす         
 ありきたりだけどみんなに伝えたい泣かずに言えるかこの「ありがとう」を

2012.11.14

クサギアブラムシ

キリンビール株式会社のホームページの中で不二聖心の自然の写真が紹介されました

2012.11.14 Wednesday

「共生の森」に生えているクサギの葉の中に縮れてしまっている葉がいくつかありました。それらの
葉の裏には必ずクサギアブラムシが潜んでいます。クサギアブラムシが葉の汁を吸うことによって、
葉の形が変形してしまうのです。「共生の森」以外でも、不二聖心のフィールドでは、このような
クサギの姿をたくさん目にすることができます。

 

 キリンビール株式会社のホームページの中で、不二聖心の自然の写真が紹介されました。
ご覧になりたい方は以下のURLをクリックしてください。
 
http://www.kirin.co.jp/csr/env/special/suigen/forests/fuji/
 


                今日のことば


「鳥飛んで鳥となり、魚泳いで魚となる」という禅語があります。とすれば、「人祈って、人となる」
といえるのではないでしょうか。というのも、万物の霊長といわれる人間を、動物と確実に区別する
ものは、結局、「祈る」ということしかないと思われるからです。

                                                

                                奥村一郎

2012.11.13

ベニバナボロギク  ショウジョウクロバエ

 2012.11.13 Tuesday

 不二聖心の今朝7時の気温は、7度でした。朝晩の冷え込みがだいぶ厳しくなってきました。
「共生の森」には多くの帰化植物が生えていて、寒さの中でも元気に花を咲かせています。写真の植物はベニバナボロギクで、戦後あっという間に、日本各地に広がりました。戦時中は東南アジア各地に出征した兵士が南陽春菊と呼んで食用にしていたそうです。


 

  すすき野原に咲いている野菊にショウジョウクロバエがとまっていました。夏にやや高い山に現れるハエですが、11月に不二聖心で見られるとは驚きです。個体レベルでも寒さに対する耐性はそれぞれで異なるのかもしれません。


 

 

                今日のことば

A級戦犯の夫 思いやる夫人   無職 升水 一三 (東京都大田区 77歳)

「時の墓碑銘 此人等信念もなく理想なし」(5日朝刊)が、私を半世紀前にタイムスリップさせました。
私は戦後、隅田川のほとりにあった、進駐軍に接収された病院の受付でアルバイトをしていました。
朝鮮戦争が始まると、米軍の負傷兵が搬送されてきました。そのうち、日本人の患者も運ばれてきて、
日本人もこの戦争を手伝っているのかと、驚いた覚えがあります。
当時、巣鴨拘置所から日本人の戦犯容疑の人たちも数人きていました。A級戦犯では大川周明、東郷茂徳
両氏が一階の病棟に入院していて、ご家族の方が面会に通われていました。そんな中に、ブロンドのドイツ
婦人がおられました。東郷茂徳夫人でした。
ある時、面会日以外の日にみえたので「今日は面会出来ない日ですが」と声をかけました。すると「わかっ
ています。夫と同じ建物の中にしばらく居たいだけです」と受付前のソファに座り、手提げ袋から毛糸の玉
を取りだして、静かに編み物をされていました。
ここにも、戦争に翻弄された人の姿を見る思いでした。             
                                   朝日新聞「声」の欄より

2012.11.12

カタバミ  ハナカタバミ  コバネイナゴ  ムジナタケ

  2012.11.12 Monday

 生きものにとっては、厳しい季節に向かいつつあります。今週は後半にいくにつれて寒さがいっそう増してくるという予報も出ています。そのような中で、不二聖心のフィールドでたくましく生きる動植物を紹介しましょう。
先ずは「共生の森」にたくさん咲いているカタバミです。その旺盛な繁殖力から子孫繁栄を願って家紋のデザインとされることも多いカタバミですが、寒さに対しても相当な耐性があります。


 

 次はハナカタバミです。カタバミの仲間ですが、花の少なくなる季節に不二聖心の正門付近を
 美しく彩っています。


 

 次は「共生の森」のコバネイナゴです。植樹のために高校1年生が打ち込んだ杭が多くの生きもの
 の日向ぼっこの恰好の場所となっています。


 

 最後はムジナタケです。この表皮が狸の毛皮のようなキノコということでムジナ(狸)タケとい
 う名前がつけられました。ムジナタケの生えていた場所のすぐ近くで狸を目撃したことがあります。


 

 

                今日のことば

生物は細胞からなり、細胞はたくぱく質からなる。それらはすべて分子からなり、分子は原子から、
原子は核と電子からできている。もしそういうことがわかったとしても、生命の神秘は消え失せない。
寺田寅彦の言葉を借りれば、「生命の不思議を細胞から原子に移したというのみで原子の不思議は少し
も変りはない」。

                                中谷宇吉郎

2012.11.11

「共生の森」の看板  ナガコガネグモの卵のう

  2012.11.11 Sunday

 昨日の「不二聖心のフィールド日記」で紹介した「共生の森」の看板について、もっとデザインをしっかり見たいという声がありましたので、再度写真を掲載します。

  

 すすき野原で11月9日にナガコガネグモの卵のうの写真を撮りました。近くには母グモと思われるナガコガネグモがいましたが、昨日、そのクモが忽然と姿を消しました。何らかの理由で個体としての一生を終えたものと思われます。しかし、卵のうは残り、種としてのナガコガネグモはこれからもすすき野原で生き続けていきます。

 

              今日のことば

   ぼくが ここに いるとき
   ほかの どんなものも
   ぼくに かさなって
   ここに いることは できない

   もしも ゾウが ここに いるならば
   そのゾウだけ
   マメが いるならば
   その一つぶの マメだけ
   しか ここに いることは できない

   ああ このちきゅうの うえでは
   こんなに だいじに
   まもられているのだ
   どんなものが どんなところに
   いるときにも

   その「いること」こそが
   なににも まして
   すばらしいこと として
                             まどみちお

2012.11.10

「小さな親切」運動  ミイラの持ち物、ツリガネタケ

 2012.11.10 Saturday

 秋晴れの素晴らしいお天気に恵まれました。

 

 今日は静岡銀行裾野支店主催の「小さな親切」運動が不二聖心女子学院の「共生の森」で行われ、静岡銀行裾野支店の方々と渡辺工業の方々とNPO法人「土に還る木・森づくりの会」の方々に「共生の森」の植栽や看板の設置をしていただきました。看板は、不二聖心の高校1年生の生徒のデザインをもとに「土に還る木・森づくりの会」の方々が制作してくださいました。


 

  

 記念撮影のあとで自然観察会を行いました。写真のキノコはその時に紹介したツリガネタケで、アルプスの氷河で発見された5300年前のミイラの持ち物の中に入っていたキノコとして知られています。5300年前から人類はキノコのお世話になっていました。

 

               今日のことば

「森」のなかで、しずかに自己の内なる声に耳を傾ける。そうして自己とのつながりを取り戻すとき、
単に癒されているだけでなく、その根底で自己を越えたいのちに触れている。そして、単なる個体の
生命を超えたいのちのつながりに結びついていく。
                                      吉田敦彦

2012.11.09

ミニナンバンギセル発見  ヒゲナガヤチバエのかくも複雑な生活史

  2012.11.9 Friday

 明日、不二聖心女子学院で行われる予定の自然観察会の下見に行ってきました。驚いたのは、ナンバンギセルがまだ咲いていたことです。8月の初旬に咲き始めましたので、もう3カ月以上も咲き続けていることになります。今日は、地面にすれすれに咲くミニナンバンギセルも見つけました。これは、今までに見たことがありませんでした。


 

 

 ヒゲナガヤチバエが「共生の森」でジョロウグモの巣にひっかかっていました。ヒゲナガヤチバエについて知るには、「ヒゲナガヤチバエの生活史」(永富昭・柳下町鉦敏)という論文がたいへん参考になります。その論文の中には次のような興味深い記述があります。


ヒゲナガヤチバエの幼虫はヒメモノアラガイを食べ、又卵はズイムシアカタマゴバチに寄生されて直接間接人類に役立っている。
ヒメモノアラガイは周知のように肝蛭(かんてつ)の有力な中間寄主で、日本全土、琉球、台湾、支那大陸に分布する。ちなみに肝蛭は牛、羊、山羊、ラクダ、ノウサギ、稀に豚、馬、人の胆管に寄生し、北海道、東北には比較的少ないが、関東、関西、四国、九州では寄生率が高い。ズイムシアカタマゴバチはニカメイガの重要な天敵であるが、寄主の転換を行わなければ世代の維持ができないのであろう。
ヒゲナガヤチバエの卵は夏期水田にたくさん見出されるので、ズイムシアカタマゴバチの存続上大きな貢献をしていることになる。


なんと複雑に入り組んだ「共生の姿」であろうかと思います。

 

                今日のことば

 あなた方は研究室で虫を拷問にかけ、細切れにしておられるが、私は青空の下で、セミの声を聞き
 ながら観察しています。
 あなた方は薬品を使って細胞や原形質を調べておられるが、私は本能の、もっとも高度な現れ方を
 研究しています。
 あなた方は死を詮索しておられるが、私は生を探っているのです。
                                  アンリ・ファーブル

2012.11.08

モンシロチョウの驚くべき生存率

  

 2012.11.8 Thursday

 11月5日に「共生の森」でモンシロチョウの羽化の様子を観察しました。11月に羽化とは珍しいと
思いましたが、「共生の森」にはモンシロチョウの大好きなイヌガラシがたくさん生えていて、モンシ
ロチョウは珍しくないのであまり気にとめませんでした。しかし今日、矢島稔さんの次の文章を読んで、
考え方がまったく変わりました。


私自身、モンシロチョウの生存率を調べたことがある。100個の卵を野外のキャベツにつけ、まったく
人間が干渉しないで、節目節目に生きている個体を調べた。
だいぶ以前のことで細かい死因などは省略するが、孵化した幼虫は86匹、2令幼虫になったもの47匹、
3令になったもの40匹、4令になったもの36匹、5令になったもの34匹、蛹になったもの5匹、羽化した
(成虫になった)もの2匹であった。
つまり98パーセントは死ぬわけで、昆虫類の生存率はそのカーブからL型といわれるが、自然界で生き
残るきびしさがよくわかる。

 花々が咲きモンシロチョウが舞う「共生の森」の風景はとても穏やかな感じがしますが、生き物たち
の共生の背後に、このような厳しさがあることに驚きました。この事実を知って以来、一枚の写真に向
ける自分のまなざしも大きく変わりました。学ぶということは、物事が違って見えてくることだと改め
て思いました。

 


今日のことば

高校3年生の短歌

にじむ空それでも見上げ進んだら今よりちょっとは楽になるかな     
つらくても心折れても進むんだもう落ち込まない諦めない        
(もうだめ…。)と心の底で叫ぶ時 応えてくれる友がいること      
ポケットに手をつっ込んで注意され名言飛び出す「ポケットすんな!!」 
仲間とのこのひとときが楽しくて今日も私は五線譜を追う        
無謀でも後悔のない道選べ母の言葉に涙あふるる            
黄昏に友と夕日をながめつつ不二での秋が静かに去りゆく

2012.11.07

ウラナミシジミ

  

  2012.11.7 Wednesday

 「共生の森」でウラナミシジミの写真を撮りました。幼虫がマメ科の植物のツボミやサヤを食べる
ことで知られるウラナミシジミは、冬期にも豆づくりが畑で行われるようになって以降、冬の間も活動
することができるようになりました。人間の生活の変化が生き物の生態を大きく変えた一例と考えるこ
とができます。人間と共に生きてきたウラナミシジミについては、磐瀬太郎氏が全国のアマチュア研究
者に調査を呼びかけたことによって、さまざまなことがわかってきました。その感動的な経緯について
は、日浦勇の名著『海をわたる蝶』(講談社学術文庫)の第2章に詳しく書かれています。

 

               今日のことば

人間ひとりが一生に観察し、実験しうる範囲は知れたものである。秘密主義を排し、手がかりをつかん
だら仲間に知らせよう。ヒントや知識は教え合おう。そしてたくさんの目で新事実を発見し、新しい考
え方を育てよう。

                                 磐瀬太郎

2012.11.06

富士山の裾野に猿が出ました  チヂミザサ

  2012.11.6 Tuesday

 昨日の夕方、聖心橋の近くでサルの群れをみかけました。車が近づくのに気付いたサルたちは林の中
に隠れてしまいましたが、木々の間からしばらく鳴き声が聞こえていました。

 

  不二聖心のあちこちで、結実したチヂミザサが見られる季節となりました。下の写真は「共生の森」
で撮影したものです。この植物は、獣などの体に粘り気のある種を付けて生息域を広げようとしています。
この時期に野原を歩いていて、気が付くとズボンの裾がチヂミザサの実だらけになっていることがあります。
今日もサルたちは、チヂミザサの実を体につけて、野山をかけまわっていることでしょう。


 
今日のことば


ほんとうに大きな人間というのは、世間的に偉くならずとも金を儲けずとも、ほんの少しでもいい、
濁ったものを清らかなほうにかえる浄化の力を宿らせた人である。
                                       磯田道史

2012.11.05

ウスキツバメエダシャク  三井物産環境・社会貢献部社有林環境基金室室長のご講演

  2012.11.5 Monday

 毎週日曜日、日本経済新聞に「都会のオアシス皇居」という非常に興味深いコラムが連載されています。
10月26日は蛾の話題でした。その冒頭部分を引用します。

ガは夏に活発に動く印象が強いが、晩秋から早春に成虫になるものも少なくない。国内で見つかっている
ガは6000種ほど。このうち皇居には約800種いる。寒い時期に成虫になるのは全体で約300種だ。
コウモリやクモなどの天敵を心配せずに済むので、寒さに耐える性質を備えていれば好都合という。

 不二聖心でも寒い季節に活動する蛾がたくさん見られます。下の写真は11月2日の18時52分に撮影した
ウスキツバメエダシャクの写真です。この日も寒い夜でした。

 

 不二聖心では、今年から高校1年生の総合学習の時間を活用して、「森づくりと森についての学習を通
しての新しい教育プログラムの開発」に取り組んでいます。これまでにNPO法人「土に還る木・森づく
りの会」の協力を得て「共生の森」の植栽を行ったり、矢作川水系森林ボランティア協議会の御指導の下
で、「森の健康診断」や手ノコによる間伐体験などを行ったりしてきました。(間伐体験は「フィールド
日記」で動画でも紹介してきました。
フィールド日記 2012.10.14 ムラサキシキブハケタマフシ  間伐実習で木が倒れた瞬間の映像
10月24日には、森に関わる学習の社会的な意味を学び実際に企業が行っている森を通しての社会貢献に
ついて知るために三井物産の環境・社会貢献部社有林・環境基金室の赤間哲室長と齊藤江美マネージャー
に来ていただいて講演会を開催しました。
生徒たちの意識が変わった、たいへん意味のある講演会となりました。


 

                今日のことば

三井物産(株)環境・社会貢献部社有林・環境基金室の赤間哲室長と齊藤江美マネージャーの講演の感想

◎今日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございます。森林のはたらきって何だろうと思って
いましたが、自分たちの生活の仕方をよく見てみると私たちの生活は木なしでは成り立たないことがわか
りました。それなのに日本では林業に力を入れていないという事態はとても深刻なものだと思いました。
日本は世界でもトップレベルの森林率を持っているのに、その長所を上手く使っていないところがもった
いないと思いました。三井物産の方々は環境を守るために大きな貢献をしていてすばらしいと思いました。

◎私たちが森づくりを行う上で知っておかなければならない知識を多く習得することができました。
95%の森林は間伐遅れであることに驚くと同時にもっと林業に力を入れるべきだと強く感じました。
68.5%の森林率を持つ日本のすばらしい環境を利用すべきであり、そのことを日本人が理解することで
企業や人々の関心を高め、木の使用量を増やしていくことが重要だと思います。私もこれからはFSC
のマークがあるものを買おうと思います。

◎今日は私たちのために素敵なお話を聞かせていただき、本当にありがとうござます。4月から森づくり
について話し合い、9月に間伐を体験し、机を作った私たちにとって、とても分かりやすかったです。
今の日本は森林大国なのにもかかわらず、それを上手に活用できていないのはすごく残念だと思いました。
木のぬくもりはすごく温かくて好きなので、これから私たちの身の周りのものが木で作られればと思いま
した。
地球温暖化を食い止めるために、これからの私たちに何ができるのかをしっかり考えたいです。

◎貴重なお話をありがとうございました。三井物産の方々の、木材はなるべく国産のものを使い身の周り
にあるものに生かしていくという考え方に同感です。木材には鉄筋コンクリートにはない温かさがあります。この温かさを知らない人たちにもっと広めてもらいたいです。木を切らないようにするだけが森を守るわけ
ではない、たくさん消費するのも森のためなのだということを心にとめておきたいです。

◎今日の講演会で、森についてより知識を深めることができました。全ての生命の源は森であり、土砂崩れ
を防いだり、教育上の恵みを与えてくれたりする森を、もっと人間は大切にするべきだと感じました。もし
森林を私たちが失ってしまったら、生命の維持にまで関わってくると知り、とても恐ろしくなりました。
森林を壊すのは人間だけであり、また森を復活させることができるのも人間だけなので、私も普段の生活の
ちょっとしたところを見直し、環境を良くできたらと思いました。

◎日本には、想像以上に多くの森林があると知り、驚きました。その実感がわかないのは日本人があまり木
を使わなくなってきたからだと思います。恵まれた自然を生かし、林業のサイクルが上手く回っていくよう
になってほしいです。また、企業の社会貢献についても学ぶことができました。知ることによって見えてく
る世界があると気づきました。

◎三井物産は林業を活性化させるために様々な活動をなさっていることを初めて知りました。健康な森林を
維持するために間伐などを行いながら手入れをきちんとし、成長した木は加工して消費するという林業のサ
イクルが森林保護のために最も重要なことであると思いました。森林伐採はしてはいけないことだと思って
いましたが、人工林は木材として利用する必要があると知り、今までの考え方が変わりました。またFSC
の認証マークの商品にも注目するようにしていきたいと思いました。

◎今日は貴重なお話をありがとうございました。「木を使う」ことは、地球に対して悪いイメージがあった
ので、国産材を使うことが林業のためになるという話を聞いてとても驚きました。金属やコンクリートの建
物が多い中、不二聖心は木に囲まれた環境にあるので、とても恵まれているのだということを認識すること
ができました。

◎素晴らしい講演をしていただき、ありがとうございました。森の面積についてや森の伐採、間伐について
詳しくうかがうことができて良かったです。日本にはたくさんの森があるのにもかかわらず、手入れをして
いないがために死なせてしまっていて、林業にたずさわる人も減少していると知り、危機的なのだと感じま
した。ドイツのように日本より木が少ないのにたくさん生産している国もあるのに、日本は木を使用しなく
なっているために生産量が少ないというお話でしたので、もっとたくさん木を使い、森を取り戻さなければ
ならないと思いました。本当にありがとうございました。

◎今日は講演会をして下さってありがとうございました。森に対する熱い意見をお持ちになっていて、私た
ちも森づくりに対して意欲が増しました。「森林を作ったのは人間。森林を壊しているのも人間。」という
言葉が印象的で、人間が中心になってしまっている今の世の中の現状ではいけないと感じました。木をどん
どん使って森を活性化させ、私たちの地球を守っていくべきだと今回の講演で強く感じました。

2012.11.04

顔まで赤くなる赤とんぼ  コノシメトンボ

 

2012.11.4 Sunday
コノシメトンボの写真を撮りました。赤とんぼにはいろいろな種類がありますが、顔まで赤くなる種類
はそう多くはありません。ナツアカネにもよく似ていますが、翅端が黒くなっていることで、ナツアカネ
とは区別できます。翅端の黒色が若干薄めであるのが写真からわかります。この部分の黒色は南にいくほ
ど濃くなるようですが、地域による違いもまた生物多様性の重要な要素です。生物の持つ地域差を大切に
していきたいものです。

 

今日のことば

人生ということばが、切実なことばとして感受されるようになって思い知ったことは、瞬間でもない、
永劫でもない、過去でもない、一日がひとの人生をきざむもっとも大切な時の単位だ、ということだった。

                                                 

                                  長田弘

2012.11.03

個体変異という不思議  フタオビオオハナノミ

 

 2012.11.3 Saturday
今日は晴天に恵まれ、良い「秋のつどい」の一日となりました。茶畑ではまだたくさんのマツムシの声がやさしく響き渡っていました。この時期は気温が低くなっているため、昼間鳴くことが多くなるのかもしれません。
「共生の森」でフタオビオオハナノミが見つかりました。10月23日のフィールド日記で紹介したオオハナノミ(フィールド日記 2012.10.23 雨風をしのぐチョウセンカマキリ  フタオビオオハナノミ)と同じ種ですが、翅の模様がずいぶん違うことに驚きます。この違いを個体変異といいますが、同じ種でもこれほど違いがあることを不思議に思います。今回の発見について、専門家の方から貴重な発見であるという評価をいただきました。ジガバチに寄生するフタオビオオハナノミは、生き物のつながりを表す不二聖心の新しいシンボルです。
 

              
今日のことば

しかし私は何よりも先に、――こういう他の望みもやはりそこを目指しているという意味で、――私自身と
調和した状態でいたい。私は今言ったような義務や仕事に私の最善を尽くすために、ものをはっきり見て、
邪念に悩まされず、私の生活の中心に或るしっかりした軸があることを望んでいる。
リンドバーグ夫人
But I want first of all ―in fact , as an end to these other desires ― to be at peace with myself.
I want a singleness of eye, a purity of intention, a central core to my life that will enable me to carry out these obligation and activities as well as I can.
 

2012.11.02

助け合う生き物たち  オオスズメバチ

  2012.11.2 Friday

 シスターからスズメバチの巣を見てほしいという依頼があり、「山の家」(校内にある宿泊施設)に行っ
てきました。巣は確認できませんでしたが、何かの理由で桜の木の洞に集まっているオオスズメバチをた
くさん見ることができました。驚いたのは、2匹以上のスズメバチが集まって口移しで栄養の受け渡しを
する様子を何度も見かけたことです。「共生の森」での発見に続いて、この秋、2度目の助け合うスズメ
バチとの出会いでした。フィールド日記 2012.10.08 オオスズメバチの驚くべき生態を「共生の森」で観察朝にはキャンプ場で、口移しで栄養の受け渡しをするヤマアリの姿を見ました。自然界には互いに助け合う生きものたちが私たちの予想以上に存在するのかもしれません。

 



今日のことば

母なる大地の懐に 我ら人の子の喜びはある
大地を愛せよ 大地に生きる
人の子ら 人の子ら その立つ土に感謝せよ
                                『大地讃頌』より

2012.11.01

ツワブキ  アキチョウジ  マダラコシボソハナアブ 

  2012.11.1 Thursday

 石蕗の花が咲くと冬が近いと感じます。花の少なくなる季節に石蕗の黄色の花は一際目立ちます。
下の写真には、花にやってくる獲物を待ちかまえる2匹のクモが写っています。どこにいるかわかる
でしょうか。
石蕗は有毒のピロリジジンアルカロイドを含みます。渡りをすることで有名なアサギマダラなどは植物
に含まれるピロリジジンアルカロイドを摂取し、自分自身が毒蝶となって身を守っています。


 
 

 アキチョウジの花にはマダラコシボソハナアブが来ていました。

 

              今日のことば

     木の葉が落ちる 落ちる 遠くからのように
     大空の遠い園生が枯れたように
     木の葉は否定の身振りで落ちる

     そして夜々には 重たい地球が
     あらゆる星の群から寂寥のなかへ落ちる

     われわれはみんな落ちる この手も落ちる
     ほかをごらん 落下はすべてにあるのだ

     けれども ただひとり この落下を
     限りなくやさしく その両手に支えている者がある

                               リルケ

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