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フィールド日記

2013.06.08

ウドの葉とヒメシロコブゾウムシ  ジレンホールとツュンベリー

 

2013.06.07 Friday

「共生の森」でウドの葉の上にいたヒメシロコブゾウムシの写真を撮りました。日本にはこれとよく似た形状のゾウムシが何種かいますが、画像のゾウムシは背中の黒い模様からヒメシロコブゾウムシだと判断できます。ヒメシロコブゾウムシはウドやタラを食草としており、これらの植物を栽培している農家にとっては頭の痛い存在です。ヒメシロコブゾウムシの学名(Dermatoxenus caesicollis)は1833年にスウェーデンのナチュラリスト、レオナルド・ジレンホールによってつけられました。ジレンホールは「分類学の父」と呼ばれたリンネの弟子です。5月7日のフィール日記で、箱根からたくさんの動植物をスウェーデンに持ち帰ったナチュラリストとして紹介したツュンベリーもリンネの弟子でした。二人がリンネの弟子であった時期には重なりがあります。ヒメシロコブゾウムシの命名者と箱根ゆかりのナチュラリストが親しく言葉を交わすような機会があったかもしれません。
ツュンベリーに関連する記事を読みたい方は下記のURLをクリックしてください。
フィールド日記 2013.05.07 マルバウツギとツュンベリー


 

今日のことば

今日,学問の世界では,進化を基盤とする分子生物学という更に新しい分野がめざましい発展をみせ,これにより系統を重視し,分類学に おいてもこれを反映させていく分類学が,より確実なものとして主流を占めてきています。
若い日から形態による分類になじみ,小さな形態的特徴にも気付かせてくれる電子顕微鏡の出現を経て,更なる微小の世界,即ちDNA分 析による分子レベルで分類をきめていく世界との遭遇は,研究生活の上でも実に大きな経験でありました。今後ミトコンドリアDNAの分析により,形態的には区別されないが,分子生物学的には的確に区別されうる種類が見出される可能性は,非常に大きくなるのではないかと思われます。私自身としては,この新しく開かれた分野の理解につとめ,これを十分に視野に入れると共に,リンネの時代から引き継いできた形態への注目と関心からも離れることなく,分類学の分野で形態のもつ重要性は今後どのように位置づけられていくかを考えつつ,研究を続けていきたいと考えています。
In academia today, an even newer field of research, molecular biology based on evolution, is seeing remarkable development. As a result, more importance is placed on phylogeny, and systems based on phylogeny are considered to be more accurate and are now the mainstream of taxonomy.  
As I have been familiar with classifications based on morphology since I was young, the appearance of the electron microscope which enabled me to observe minute morphological characteristics, and my encounter with an even smaller world, where classification is based on DNA analysis at a molecular level, have been great experiences for me as a researcher.
In the years ahead, I think the analysis of mitochondrial DNAs will open up great possibilities of discovering new species which cannot be distinguished morphologically but which can be clearly distinguished at a molecular biological level. I hope to understand and take into consideration this newly developing field of research, but at the same time, I intend to continue to give my attention to and keep up my interest in morphology, which is a field of study carried on from Linné's days. I would like to continue my research, always keeping in mind the question of what will be the importance and role of morphology in the field of taxonomy in the future.

「リンネ誕生300年記念行事での天皇陛下の基調講演(原文英文)」より