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フィールド日記

2011年09月

2011.09.10

ナンバンギセル

平成23年9月10日 土曜日

 今年もまたナンバンギセルが咲き始めました。ナンバンギセルはススキに寄生する植物として知られています。
万葉人は、この花の姿が物思いにふける 人間の姿を思わせるところから、この花を「思ひ草」と呼びました。
日本の各地で絶滅危惧種に指定されていますが、不二聖心ではたくさんのナンバンギセルを 見ることができます。
今年はススキ以外の植物に寄生するナンバンギセルも発見されています。
掘ってみたら思わぬ発見があるかもしれません。

 

                                                       今日のことば

地球の美しさと神秘を感じとれる人は、科学者であろうとなかろうと、人生に飽きて疲れたり、
孤独にさいなまれたりすることはけっしてないでしょう。たとえ生活のなかで苦しみや心配ごとに
であったとしても、かならずや、内面的な満足感と、生きてい ることへの新たなよろこびへ通ずる
小道を見つけだすことができると信じます。
                                                                   レイチェル・カーソン

2011.09.10

ナガコガネグモ・カンタン

平成23年9月9日 金曜日

 祈りの会が終わり、それぞれの実りを手に生徒たちは帰宅しました。
今日は残暑厳しい一日となり、各地で三十度を超えたようです。相変わらず蝉も声もにぎにぎしく、
夕方にはヒクラシも鳴いていました。
雑木林の横の道にはナガコガネグモが網を張り、その網にバッタがかかっていました。
ナガコガネグモは夏の終わりに成熟するクモですから、下の写真にも季節を感じることができます。

 不二聖心で初めてカンタンの姿を見かけました。カンタンについては、『秋に鳴く虫』(小林正明)の中に
次のような一節があります。 

 カンタンは古くから人々に親しまれてきた秋の虫だ。東京では毎年高尾山などでカンタンの声を聞く会が
開かれているほどである。人気の秘密は、秋の野原にどこからともなく響く幽玄で神秘的な声の美しさであろう。

 今日のことば

あなたが虚しく過ごした今日という日は、

きのう死んでいったものが、あれほど生きたいと願ったあした

趙昌仁

2011.09.09

クツワムシ

平成23年9月8日 木曜日

 昨日の夜、職員室で仕事をしていたら、クツワムシの声が聞こえてきました。今年はじめて聞く
クツワムシの声です。帰りには、車の窓を開けて正門ま で車を走らせたところ、マツムシ、ウマオイ、
エンマコオロギの声も聞くことができました。中でもクツワムシの声は生命力にあふれ、
場所によっては茶畑全体 がクツワムシの声に覆われているような感じでした。
クツワムシについては、「不二の自然70」でも紹介しました。以下に転載します。

不二の自然 70

(駐車場で撮影)
クツワムシ
科名 バッタ目キリギリス科
学名 Mecopoda nipponensis

 ラフカディオ・ハーンは、「虫の音楽家」というエッセイの中で、明治時代にはたくさんの秋の鳴く虫が
商品として売られていたという事実を紹介しています。彼が示した価格の一覧を見ると、クツワムシは
10銭~15銭の値がつけられていて、松虫や鈴 虫などを含む12種類の中で最も高価であったことがわかります。
和泉式部の歌にも登場するほど日本人との関わりの長いクツワムシですが、
今では5つの県で滅危惧種に指定され、希少種となってしまいました。  (平成22年9月27日)

 今日のことば

さまざまな人生の岐路に立った時、
人の言葉にではなく、
いつか見た風景に励まされたりすることがきっとある。
                    星野道夫

2011.09.07

ゼフィランサス

平成23年9月7日 水曜日

 事務室の入口の近くでゼフィランサスが純白の美しい花を咲かせています。別名レインリリーとも言いますが、これは雨のあとで一斉に花を咲かせるところから生まれた名前です。そういえば、台風が去ったあと、
ゼフィランサスの美しさがいっそう増したように思います。

 

     今日のことば

みんなむかしからきやうだいなのだから
けつしてひとりをいのつてはいけない
              宮沢賢治

2011.09.06

コハクオナジマイマイ

平成23年9月6日 火曜日

 すすき野原で繁殖しているカタツムリの名前がわかりました。コハクオナジマイマイでした。
このカタツムリについて、国立科学博物館発行の「科博メールマガジン」(2009.11.12)に、
動物研究部の長谷川和範さんの興味深い文章が出ています。

今年の秋の初め頃、つくば市にある自宅の庭で見慣れないカタツムリを見つけました。今や秋葉原から
快速電車45分で結ばれるつくば市も、駅から15分も 歩くと、まだヒタチマイマイ、ニッポンマイマイなど
在来のカタツムリが這い回る自然が残されています。我が家の庭にもそれらを含め5~6種が見られるのですが、今回目に留まったのは、2cmほどの小型の種類で、殻がとても薄く、特徴的な黄色い内臓(中腸腺)が
透けて見えることから、すぐにコハクオナジマイマイであることがわかりました。これは日本固有の種類で、
元来山口県や四国以西にのみ分布していたのですが、1990年代に突然千葉県と神奈川県で相次いで見つかって
以来、関東でも少しずつ分布を広げています。茨城県ではまだ確実な記録はないようで、
これが恐らく現時点の北(東)限となります。人為的な拡 散とは思いますが、温暖化も影響している
のかもしれません。いずれにしても今後の分布の動向が気になります。皆さんも周りにいるかもしれない、
小型で薄くて「黄色い」カタツムリにご注意ください。

私たちの気づかぬところで静かに自然が変わりつつあることを今回も感じました。
そのわずかな変化に気づくために私たちは「知る」努力をしていかなければなりません。
今日も不二聖心ではたくさんのコハクオナジマイマイを見かけました。
その数はますます増えていくことでしょう。

今日のことば

Time is , out of which
Eternity is made.
聖心女子大学 初代学長 マザー・エリザベス・ブリット

2011.09.05

マダラホウライタケ

平成23年9月5日 月曜日

 今日も静岡県全域に大雨警報が出続け、授業をすることができませんでした。
一日職員室にいましたが、夕方になって秋の虫の声が戻ってきました。特によく聞こえたのがウマオイの声です。
明日こそは晴れてほしいと願わずにいられません。

 下の写真は、8月30日に撮ったものですが、専門家の助けを借りてようやく名前がわかりました。
マダラホウライタケで、2002年に発表されたキ ノコです。あの大部な山渓カラー名鑑『日本のきのこ』にも
名前が載っていません。見られるチャンスも少ないようです。そういう意味では貴重な写真と
言えるかもしれません。不二聖心に生息するキノコの数がまた一つ増えたことをうれしく思います。

 

 今日のことば

生きるべき「何故」を知っている者は、ほとんどすべての「いかに」に耐える。
                        ニーチェ

2011.09.04

ハナオチバタケ・オオフタオビドロバチ

平成23年9月4日 日曜日

 雨が降るとキノコの数が増えます。大雨警報発令中に不二聖心でもたくさんのハナオチバタケが姿を
見せていました。針金状の柄と薄い紙質の傘のハナオチバタケには、このキノコにしかない独特の魅力が
あります。

 大雨警報発令中にもオオフタオビドロバチはせっせと泥を運び、巣作りの仕事に励んでいました。

 

今日のことば

できていないのに、「わかっている」と言い続ける人には、進歩がない。
「知っている」ことと「できる」ことは、全く違うことだ。
そのあいだには深い川が流れている。
                       齋藤孝

2011.09.03

カラスウリ

平成23年9月3日 土曜日

 台風12号が猛威をふるった一日となりました。上陸してからも10キロ未満で進む台風というのは極めて
珍しい例です。速度の遅さが際立った台風として12号は長く記憶されることになるでしょう。
下の写真は、雨つゆに濡れるカラスウリの実の写真です。東名高速沿いの道で撮影しました。
まだ緑色をしていて周囲の色に溶け込んでいます。
中の種が熟し ていないので今から鳥などに突かれてしまっては完熟した種を下に落とすことができなくなります。
もう突かれていい時期になると実は赤く熟していきます。目 立たないことにも大きな意味があるのです。

       今日のことば

自然の中で暮らしていると、鳥が起してくれる。
雲よりも風のざわめきのほうが、より正確に雨を告げる。
自然の声を聴くがよい。
人間の作ったものは、あやまりだらけだ。
                  ムルアカ・ジョン

2011.09.02

クズの花びら・ベニバナボロギク

平成23年9月2日 金曜日

 台風の影響で今日は休校となりました。せっかく咲き始めたクズの花も、降り続く雨でだいぶ散って
しまいました。クズの茂っているところだけ、路面が紫になっています。

 富士山南東には大雨警報が出続けたものの、裾野市だけは比較的風雨の強まりが遅く、
朝はミンミンゼミが力強く鳴いていました。
下の写真は、雨に濡れて立つベニバナボロギグです。南アフリカ原産ですが、早い時期に東南アジア各地に
広がり、南方に出兵した兵士は、ベニバナボロギク を「南洋春菊」と呼んで食用にしていたと言われます。
食糧不足の中で生きのびるためにベニバナボロギクを口にした兵士もいたことでしょう。ベニバナボロギクを
帰化植物として嫌うだけでなく、日本人とこの花との関わりの歴史にも思いを馳せたいものです。

今日のことば

人生にはただ一つの義務しかない。それは愛することを学ぶことだ。
人生にはただ一つの幸せしかない。それは愛することを知ることだ。
                       ティヤール・ド・シャルダン

2011.09.01

朴の実

平成23年9月1日 木曜日

 台風12号の影響で午後の授業は行わずに生徒は帰宅しました。明日には上陸の恐れもあるようです。
今日は、まだ黒く変色する前の朴の実を見つけました。朴の花は雌しべが一日しか開きません。
結実のチャンスはその日しかないのです。受粉昆虫の助けを借 りるためには雨の日を避けて雌しべを開く必要がでてきます。
初夏のさわやかな一日に何の虫かが他の花から花粉を運んできて受粉の手伝いをしてくれたので しょう。
雌しべが閉じると次は雄しべが開きます。これは同花受粉を防ぐための工夫だと言われています。

今日のことば

どんな命も、もろさとともにある。だから大切に育てたい。
人との出会い、交わしあう言葉。
日々の小さな出来事の中に、大きな未来が含まれている。
                     アレックス・ロビラ