校長室から

2024.01.13

家と土台

 冬休みが明け、生徒たちが学院に戻ってきました。久々の友人との再会に、うれしそうな笑顔と会話があちらこちらで交わされていました。やはり学院は生徒の姿あってこそ、教職員も生き生きとしていました。

 今、体育館前に聖心会の新しい家が建てられています。1階のパーラーは、生徒たちも入りやすいものになるとのことで、皆で楽しみにしています。学院は、創立時から、常に聖心会のシスターたちの愛と祈り、献身と共にあります。地盤調査から始まり、少しづつ形になっていく様子を見ていると、創立者ソフィーが人格形成を家に譬え、「在学中に、年齢にふさわしい土台を築かなかったら、卒業後、社会の荒波に流されてしまうでしょう」と言及したことを思い出します。冬休みにそれぞれ土台作りに励んだ生徒たち、そして未来の不二聖心生が春に向かって開花していくよう、希望のうちに祈っています。 

 

2024.01.06

エピファニー

 カトリック教会では、1月のエピファニー(Epiphany:ご公現)までクリスマスのクリブ(キリストの降誕を再現したもの)が飾られます。エピファニーは、神の栄光がキリストによって「すべての人」に現れたことを祝う日で、キリスト教がローマ帝国で認められた4世紀以降、教会の中でずっと大切にされてきました。本来は1月6日に祝われるのですが、現在は1月2日から8日までの間の日曜日に祝う国も多いです。

 この祝日の意味への共感はもちろんですが、ローマで終生誓願を立てたのがエピファニーということもあり、私にとってとても大切な日になっています。当時の聖心会総長はメキシコ人でした。18世紀に創立者も住まわれた修道院で研修を終えた後、共に誓願を宣立したのは、フランス、ベルギー、ポーランド、アメリカ、チリ、韓国、インドからの仲間で、指導者はスペインとアメリカの聖心会員でした。今もつながっていて、今年もWhatsAppでお互いの存在に感謝し合いました。

 今日は、中学校の入学試験が行われています。「神様の愛は、人を通して現れる」ということを、お嬢様に対する保護者の皆様の思いにふれながら味わっています。そして、入試のお手伝いに来てくださっている高校3年生の方々の入試の時のこと、中1の頃を思いつつ、月日の速さ、愛における成長に感動しています。大学の入学試験を受けている高3の方々のため、特に祈ります。すべての生徒たち、今日いらしてくださった児童の皆さんとそのご家族の上に、エピファニーの祝福がありますように。

 

2024.01.01

Happy New Year!

聖心の森の奥に壮麗な富士を仰ぎつつ、皆様のご健康とご多幸をお祈り申し上げます。

 

2023.12.29

竹あかり

 現在、聖心会マリア修道院の教育職員の田中先生(元本学院教頭)は、裾野市岩波の区長を務めていらっしゃいます。先生が、キャンパスの竹を使って作られた竹あかりのプロジェクトが岩波駅前で開催され、「富士山経済新聞」やyahooニュースで紹介されました。竹特有の温かさをもつ竹あかりが、地域の方々や裾野市を訪れる方々を楽しませてくれました。

 岩波駅(裾野駅の隣)は、トヨタが裾野市に建設を進める近未来都市Woven Cityの玄関口です。Woven Cityが計画された時から、日本橋の開発拠点訪問、学院での出前授業、学院祭へのブース参加等の交流が続いています。2024年にはフェーズ1が完成し2025年からは稼働する予定と伺っています。今後、モビリティ、カーボンニュートラル等、多様な観点から裾野市の子供たちの学びにつながっていく可能性を秘めており楽しみです。

https://news.yahoo.co.jp/articles/ca8dab5cf7cfbd7ac45174913562b0cc904973c6

 

2023.12.22

Merry Christmas!

 聖心の学校では、お祝い日に白いリボンをした生徒たちの姿がよく見られます。「白」は、カトリック教会の典礼では、神の栄光、清らかさ、喜びを意味することが背景にあります。クリスマス・キャロル、チャリテイセールでも、多くの生徒達が身に着けていました。今年は、ご家族だけのご招待となりましたが、落ち着いた雰囲気の中で保護者の方々と生徒たちが交流する微笑ましい光景がみられました。久々に講堂で6学年が一つになってお祝いできたキャロルのテーマは「Lumière」(フランス語で「光」の意)。セールでは生徒たちが自主活動でかかわっているフェアトレードの製品等も出品されました。ホーリーショップはいつもたいへんな人気です。今年は、ドンボスコ社にいらしていただき、イタリアの聖品も多く販売されました。たくさんの笑顔がみられたお祝い日、来年は、卒業生やお客様方もお迎え出来たらと思います。こうして、本年度最終日を迎え、生徒たちをご家族のもとへお返しいたしました。

 生徒の皆さん、いつも、あなた方のために、修道院や先生方が祈り続けていることを忘れないでください。ご家族の方々とともに、恵みに満ちたクリスマスをお迎えになりますように。


いと高きところには栄光、神にあれ、地には平和、御心に適う人にあれ。

ルカによる福音書 2:14

 

2023.12.15

受けるよりも、与えることを

 クリスマスを前に、AMAZONと連携しサポートしていただきながら、子供の貧困やインクルーシブな社会実現を念頭にPeak Givingキャンペーンが行われました。本学院で中心になって動いたのは、子ども食堂での活動を続けてきた生徒たちです。ポスターにあるような様々な団体が協力して、このプロジェクトは実現しました。学院でのお菓子贈呈式当日、子供食堂のスタッフの方々が「クリスマスはつらい。クリスマスケーキやプレゼントを買ってあげられないから」という声を聴くと仰っていたこと、お菓子と共に差し上げる生徒たちの手作りカードに涙を流して喜んでくださった姿が心に残っています。

 クリスマスの贈り物というと、聖書の「3人の博士の来訪」の場面や(『聖書』マタイによる福音書2:11)、サンタクロースのモデルとなった「セント・ニココラス」が思い浮かびます。(https://www.pauline.or.jp/chripedia/mame_SantaClaus.php)いずれも「私がもらう」のではく、「私から差し上げる」というクリスマス・プレゼント本来の意味に立ち返らせてくれます。

 「受けるよりも、与える方が幸い」(『聖書』使徒言行録20:35)――、この逆説ともいえる真理をより深く理解することができますようにと願わずにはいられません。

 

2023.12.08

学びたいという望みを耕す

 11月に神成淳司先生(慶応義塾大学教授 環境情報学部教授)による「AI等の活用による持続可能な社会づくりを目指して」の授業がありました。これまでの発想が覆されるようなAI活用の可能性に、生徒たちは刺激を受け授業後も質問が続きました。
 今日は19名の生徒たちが、「未知なるウイルスに立ち向かえ!パンデミック研究ワーキングⅡ」の初会合出席のため三菱総合研究所に出かけています。引率しているのは国語科の教員です。理工農に対する関心が高まり、具体的なアクションをとる生徒たちが増えています。教員の中でも、自分の専門はもちろんですが専門以外の領域にも関心をもち、生徒と共に多面的に学ぶ姿が強められていくのはういれしいことです。来週は東京理科大学の先生をお迎えし、数学科の教員たちが共同研究を進めます。私も生徒、教職員と共に、新たな知の世界を楽しんでいます。森の学校の静けさが、学びの振り返りや統合を助けてくれるのを感じながら。
https://www.covid19-ai.jp/wp-content/uploads/2023/11/ab63f806be1b8ca96d69dc850b9b6c06.pdf

2023.12.01

学院の立地が育むもの

 今、高校3年生一人ひとりと面接を行っています。「18歳のプロファイル」の最終段階にある生徒たちの中に育つ志向性、それは社の現実を自分とつながって理解し自分にできることは何かと考える姿に表れています。
https://www.fujiseishin-jh.ed.jp/careerguidance/ourgoal/

 そして、家族への感謝の思い。森に囲まれた富士の裾野の静謐な高台にあり、校門から校舎まで約1キロという特異ともいえる立地は、家族とのかかわりを見つめ直すことを無言で促してくれているようです。家族とのかかわりは、人格形成や社会性の土台となるもの。卒業後の道に向かう最上級生を支える大きな力です。

 

2023.11.24

Nature & Science

 先月、学院の元現像室を改装して、小さなミュージアムを作りました。キャンパスの21万坪の自然や、地質学、生物学に関する展示がなされています。これは生徒と教職員とが共に学び合う中で、また多様な連携の中で築き上げていく未完成のミュージアムです。
 
 生物多様性が実感できるキャンパスのフィールドは学びの可能性の宝庫です。生徒、教職員の中で「自然」への関心は高く、これまでにも様々な形で研究のテーマになってきました。Petit Museumは名のごとく本当に小さなものなのですが、今後に向けて大きな可能性を秘めています。現在は、キャンパスに生息する今はサワガニが迎えてくれますので、ご来校の際は会いにいらしてください。
 

2023.11.15

追悼ミサの日に

 空は秋晴れ、色づいた楓や銀杏の葉が地に落ちているのを見ながら、「葉っぱのフレディーいのちの旅―」(レオ・バスカーリア)を思い出す今日この頃です。今年も、生徒のご家族、卒業生や元職員の方々等、学院ゆかりの大切な方々を天国にお見送りしました。先週、ご帰天のお知らせいただいた元保護者の方は、コロナ前は毎年クリスマスのごミサに参列してくださっていた方で、いつも学院を大切に思っていてくださいました。お嬢様もお孫さんも「聖心の生徒は、一人で天国に行ってはいけません」(創立者)とう言葉を体現する卒業生です。

 今週、学院では、保護者の希望者や卒業生等を迎えて追悼ミサが行われました。ある男性の方は、卒業生であるお姉様や2人のお嬢様を思い、30年ぶりに来校されたと懐かしそうにお話しくださいました。卒業生だけではなく、そのご家族にとっても故郷のような学院であれたら、たいへんうれしいことです。

「あなたが空しく生きた今日は、昨日死んでいった誰かが心から生きたいと願った明日なのだ」――、ミサの講話の中で、チャプレンが引用された韓国の小説の一節です。生徒の共同祈願の中には、ウクライナや中東問題への言及もありました。天に召された方々を感謝のうちに思い出しつつ、生命や生きることの尊さを思う一日となりました。