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フィールド日記

2013年05月

2013.05.18

チャトゲコナジラミとシルベストリコバチの関係



2013.05.18 Saturday
5月15日に中学生のお茶摘みが行われました。その時に中学3年生の生徒が黄色い卵のついたお茶の葉を見つけ職員室まで持ってきてくれました。それはチャトゲコナジラミというお茶の害虫の卵でした。卵は翌日には孵化を始め、1齢幼虫が誕生しました。孵ったばかりの幼虫の様子を写したのが2枚目の写真です。白い卵の殻も一緒に写っています。動画をクリックすると1齢幼虫がかなりのスピードで移動する様子が見られます。これほどの移動能力を持つ幼虫が、このあと脱皮して2齢幼虫になると固着生活を営むようになります。その場所は必ず葉の裏なので農薬の効果が及びにくく農家の人々を困らせてきました。そこで考え出されたのが、シルベストリコバチという寄生蜂を生物農薬として用いる方法です。この方法は劇的な効果を期待できるようです。チャトゲコナジラミのように人間を悩ませる昆虫もいれば、シルベストリコバチのように人間の役に立つ昆虫もいます。チャトゲコナジラミとシルベストリコバチについて詳しくお知りになりたい方は下記のURLをクリックしてください。
http://www2.kpu.ac.jp/life_environ/app_entom/study2.html 

今日のことば


昆虫を将来の食糧にできないかという報告書をこのほど国連の機関がまとめた。現在70億人の世界の人口は、2050年までに90億人を超すと見込まれる。爆発的に増える人類を養う一手として、「昆虫食」に目を向けるように促す内容だ。
天声人語(2013.05.18)より

お知らせ

今年も8月に小学4年生から6年生を対象として「夏休み子供自然体験教室」を不二聖心女子学院で開催します。申し込み方法など詳しいことをお知りになりたい方は下記のURLをクリックしてください。
http://www.fujiseishin-jh.ed.jp/modules/bulletin/index.php?page=article&storyid=297

2013.05.17

富士桜の実  クマヤナギの実



 

2013.05.17 Friday
草木の実を眺めていると不思議と心が落ち着くのはなぜでしょう。
今、「共生の森」では富士桜(リョクガクザクラ)の実とクマヤナギの実などを見ることができます。富士桜は富士山周辺でよく見られるフォッサマグナ要素の植物です。クマヤナギの実は果実酒にも用いられます。鳥も美味であることを知っているのでしょうか。残っている実の数はそれほど多くはありませんでした。

今日のことば

富士桜は、学名Prunus incisa.Tunb.で、標準和名はマメザクラであるが、富士桜と通称されている。
その分布は、富士山と四囲の山々(愛鷹、天子、三坂、丹沢、箱根山系)や、伊豆半島、三浦半島、千葉県の清澄山などで、フォッサマグナ(大地溝帯)の特産植物である。
文字通り富士山やその火山帯の特産であり、標準名が富士桜でないのは惜しみて余りあると思う。富士山と桜は共に日本の象徴であり、その二つを併せた「富士桜」は日本産植物名の中の最高の名称ではないだろうか。園芸愛好者や盆栽界では、もっぱら富士桜の名が愛用されている。別名は乙女桜、箱根桜、山桜などで、やはり富士桜が最良である。

渡辺健二  

2013.05.16

「共生の森」のグレープフルーツ  ホトトギスの初音

 

2013.05.16 Thursday
20年以上前に寄宿のデザートに出たグレープフルーツの種が芽を出し、長い年月をかけて一本の木に育ちました。この春、鉢から出して「共生の森」の土におろしましたが、順調に新しい葉を茂らせています。

 

 今朝、今年初めてホトトギスの声を聞きました。平安貴族も心待ちにしていたというホトトギスの初音です。これまでの日記を読み返してみるとホトトギスの初音は次のように記録されています。

2005年 5月25日(水)
朝、今年はじめてホトトギスの声を聞いた。生徒にも早速話をする。
2006年 5月24日(水)
久しぶりの晴天。五月らしい天気。今年はじめてホトトギスの声を聞く。午前中に声に気づいたが、放課後もよく鳴いていた。
2007年 5月28日(月)
朝、教室で黒板を書いていた時、ホトトギスの声が聞こえてきた。
2010年 5月25日 火曜日
今年はじめてホトトギスの声を聞く。

過去の記録と比較してみると今年は少し初音が早かったようです。日中もよく声が聞こえました。ホトトギスの声を聞きながら生徒に古典の話ができることをとてもうれしく思っています。
動画をクリックすると「共生の森」を横切るホトトギスが小さく見えます。14秒後ぐらいから3回かすかなホトトギスの声を聞くこともできます。

今日のことば

鹿は 森のはずれの
夕日の中に じっと立っていた
彼は知っていた
小さい額が狙われているのを
けれども 彼に
どうすることが出来ただろう
彼はすんなり立って
村の方を見ていた
生きる時間が黄金のように光る
彼の棲家である
大きい森の夜を背景にして

村野四郎

2013.05.15

トゲヒゲトラカミキリ

 

2013.05.15 Wednesday

 「共生の森」で、今最も多く見られるカミキリはトゲヒゲトラカミキリです。害虫と見なされる種も多いカミキリムシについては、誘因物質についての研究が進んでいます。誘因物質がわかれば、それを利用してトラップを作り、一網打尽にすることができるからです。トゲヒゲトラカミキリは、ベルジルアセテートという、芳香を放つ誘因物質に一際強い反応を示すことがわかっています。一つの種が一つの匂いと結びつくまでの進化の過程を興味深く思います。「共生の森」のトゲヒゲトラカミキリはとにかくよく動き回っていました。誘因物質に一目散に向かっていく様子が容易に想像できます。

 

今日は中学生のお茶摘みが行われました。ホームページでもその様子を伝えています。
学院ダイアリー 2013.05.16 【メディア出演・掲載情報】中学LHRでお茶摘みを実施

 

今日のことば

こころが疲れてしまったら
澄みきった青空を見上げなさい
さわやかな大空を吹き抜ける
風になりなさい
森の静けさ
小川のせせらぎ
清らかな朝露に
溶けこんでしまいなさい
葉祥明

 

お知らせ

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2013.05.14

ミズキの花に集まる虫たち



2013.05.13 Tuesday
今日は、急に気温が上がり授業をしていても汗ばむほどでした。昨日から校舎の周辺でもモリアオガエルの声がよく聞こえるようになり、季節の変化を感じています。樹木の花で今の季節にひと際目を引くのはミズキの花です。今、静岡県東部はミズキの花盛りの時期を迎え、車を運転していてもミズキの白い大きな花にはすぐに気づくことができます。「共生の森」のミズキも芳香を放っていて、たくさんの虫が集まってきていました。

今日のことば

最大の旅は、自らの内への旅である。   ダグ・ハマーショルド

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2013.05.13

アシナガバチの営巣  3割への挑戦



2013.05.13 Monday
ヨウシュヤマゴボウの葉裏にアシナガバチが巣を作り始めていました。お腹に卵を抱きながら、たった一匹で越冬した女王蜂です。巣には既に卵が産み付けられていました。アシナガバチの巣作りの最終的な成功率は約3割と言われます。このハチもその3割に入るべく、さまざまな外敵と闘い続けていきます。

今日のことば

信仰と理性は人間の精神が真理の黙想へと飛翔するための二つの翼である。
ヨハネ・パウロⅡ世

 

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2013.05.12

アオスジアゲハよりもジャコウアゲハの方が飛び方がゆっくりなのはなぜか



2013.05.12 Sunday
「共生の森」でアオスジアゲハ(1枚目の写真)とジャコウアゲハ(2枚目の写真)に出会いました。アオスジアゲハは「稲妻の飛翔」と呼ばれるほど飛ぶスピードが速く写真を撮るのも一苦労です。ジャコウアゲハは飛び方がゆっくりで動画まで撮らせてくれました。ジャコウアゲハは体内に鳥などの天敵が嫌がる毒を含むため、むしろゆっくり飛んで目立つ黒色の体色を誇示し敵に警告を与えているのです。

 
 

今日のことば

「一枚、二枚、三枚、四枚……九枚、やっぱり一枚足りない」
怪談「播州皿屋敷」で大切な皿を割ったと因縁をつけられたお菊は、責め殺されて古井戸に投げ込まれてしまう。そして幽霊となったお菊は、古井戸から夜な夜な現れては、恨めしそうに皿の枚数を数えるのである。
その後、お菊が投げ込まれた古井戸には、うしろ手に縛られた女性の姿をした不気味な虫が出現したという。この虫はお菊の怨念が姿を変えたものだと、人々は噂した。これが「お菊虫」である。
お菊の正体は、ジャコウアゲハというチョウのさなぎである。

稲垣栄洋  

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2013.05.11

サトキマダラヒカゲとゴシュケビッチ  高校3年生の短歌

 

2013.05.11 Saturday
 校舎の中にサトキマダラヒカゲ(Neope goschkevitschii)が迷い込んできました。サトキマダラヒカゲは雑木林で見かける時には翅を閉じていることが多いので表側の模様を見ることはなかなかできません。
サトキマダラヒカゲの学名のゴシュケビッチ(goschkevitschii)は1854年に来日したロシア人、ゴシュケピッチに由来します。海軍大将プチャーチンが率いる使節団の一員として来日したゴシュケピッチは安政の大地震のために帰国の手段を失い伊豆に滞在することを余儀なくされます。その滞在中にゴシュケビッチは数多くの蝶を伊豆半島で採集します。その中にサトキマダラヒカゲも含まれていました。幕末の歴史に深く関わりながら学名が付けられたサトキマダラヒカゲは、静岡県にとって特別な蝶と言えるでしょう。この歴史的にも貴重な意味を持つ蝶が静岡の隣の山梨県では準絶滅危惧種に指定されています。サトキマダラヒカゲをたくさん目にすることのできる不二聖心の自然環境を大切にしたいものです。

今日のことば

高校3年生の短歌より

白露は照らされ光る透明につぶさぬように歩く坂道         
試験前手を合わさずにペン握れ努力なしでは成果は得られず     
春色に染まるいつもの坂道をよりそい歩く優しい友よ        
移り行く草木花の香鳥の歌十八回目の春も後半           
風薫る五月の森にたたずめば命の輝き胸にしみいる         
携帯をのぞいて下がる首の列これは進化かそれとも退化か

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2013.05.10

「共生の森」のヒメウラナミジャノメ



2013.05.10 Friday
「共生の森」でヒメウラナミジャノメ(ジャノメチョウ科)の写真を撮りました。ヒメウラナミジャノメは翅の両面に独特の模様が描かれていますが、和名の由来は裏面の模様にあります。芥川賞作家の三木卓は裏面の白色の波状模様を「繊細な筆づかいで描かれていてみごとだ」と表現しています。
不二聖心には他にもジャノメチョウやサトキマダラヒカゲ、ヒカゲチョウなどのジャノメチョウ科の蝶が生息していますが、世界的な視野で見ると、すべて分布が異なっています。日浦勇の名著『海を渡る蝶』(講談社学術文庫)の中では、ヒメウラナミジャノメは、日本と対岸の朝鮮、中国東北部、アムールと、日本海を取り巻いたかたの分布をする「アムール型」に分類されています。なぜ同じ科の蝶が異なる分布を示すのか、そこに生物地理学にとっての大切な問いが隠されています。

今日のことば

(ジャノメチョウ科の蝶の中には)シベリア型とマレー型の広大な分布圏の間に挟まれて、狭い分布圏をもつ蝶も多い。その中で、日本と対岸の朝鮮、中国東北部、アムールと、日本海を取り巻いたかたちの分布をする一群がまず抽出される。日本から台湾、華中、華南、さらにヒマラヤ山脈に延びる群もある。日本列島特産種もある。これらをそれぞれ、「アムール型、ヒマラヤ型、日本型」と呼ぶことにする。ヒメウラナミジャノメ、キマダラモドキ、クロヒカゲモドキはアムール型、ヒメジャノメ、コジャノメ、ヒメキマダラヒカゲはヒマラヤ型、ヤマキマダラヒカゲ、サトキマダラヒカゲ、ヒカゲチョウ、ウラナミジャノメは日本型である

『海をわたる蝶』(日浦勇)より  

2013.05.09

益虫としてのマルボシハナバエ  スミソニアン博物館の親切

2013.05.09 Thursday

 「共生の森」でメスのマルボシハナバエの写真を撮りました。マルボシハナバエはチャバネアオカメムシに寄生します。チャバネアオカメムシは果樹の害虫として知られていますので、人間の視点から見るとマルボシハナバエは益虫ということになります。今までにオスの写真は何度か撮りましたが、メスの写真は今回が初めてです。

スミソニアン博物館から『A SYSTENATIC STUDY OF THE JAPANESE CHLOROPIDAE(DIPTERA)』が届きました。不二聖心の双翅目相の調査に関係する問い合わせをしたところ、学芸員の方がわざわざこの本を送ってくださったのです。その親切に感動しました。
参考
フィールド日記 2013.04.25 ヤマギシモリノキモグリバエとスミソニアン博物館

今日のことば

 地球上の生命に与えられた目的は、個の欲望を満たすことではなく、命の連鎖だ。人間はいつどこで、この法則を放棄してしまったのだろう……。
ミツバチのDNAにプログラムされたルールが単純明快であるだけに、複雑に欲望が入り乱れる人間社会と比べてしまう。種の繁栄を迷いなく選択するミツバチと、可能な限り選択を避けて「現在」だけを謳歌する人間。一体どちらが、「賢い生き物」なのだろうか……。

『黙示』(真山仁)より