フィールド日記
2012.04.07
バイモ(貝母)
2012.04.07 Saturday
不二聖心の春を彩る花の一つにバイモがあります。寄宿舎の裏の出口の近くと裏道の東名高速の近くに咲いています。中国からの帰化植物であることは間違いないのですが、渡来時期に奈良時代と江戸時代の2説があります。江戸時代に貝原益軒によって編纂された「大和本草」に「薬類」として「貝母(はるゆり)」の名が見られますので、江戸時代に渡来していたことは間違いないわけです。
別名は編笠百合で、学名は Fritillaria verticillata var. thunbergii です。学名の Fritillaria(フリティラリア)は、ラテン語の 「fritillus(サイコロを入れる筒)」が語源ですので、別名も学名も花の形に着目していることがわかります。
今日のことば
わたしどもの生活に高い意義と価値を見いだすためには、どうしても永遠無限なるものとの関係において生きなければならない。人間の生活はだいだいだれも同様で、三度食べて、働き、夜ねて、朝起きるだけである。しかし真に信仰に生きる人は、赤ちゃんのおむつのお洗濯をしていても、台所でお芋の皮をむいていても、心の眼は浮世の地平線のかなたはるかに神に向かっている。このような人間の姿こそ実に貴いものである。
岩下壮一
2012.04.06
辛夷の花
2012.04.06 Friday
今日は中学1年生のオリエンテーションが特別第8教室で行われました。特別第8教室からは、少しずつ花が開き始めた辛夷の木をたくさん見ることができます。辛夷の花は白木蓮の花と似ていますが、若葉も一緒に見られるのが辛夷の花の特徴です。
今日のことば
みみをすます
じゅうねんまえの
こじかのなきごえに
ひゃくねんまえの
しだのそよぎに
せんねんまえの
なだれに
いちおくねんまえの
ほしのささやきに
いっちょうねんまえの
うちゅうのとどろきに
みみをすます
谷川俊太郎
2012.04.05
チビマルヒゲナガハナノミ
2012.04.05 Thursday
チビマルヒゲナガハナノミの幼虫が不二聖心の沢から見つかりました。名前から見当がつくかもしれませんが、これは甲虫の幼虫です。大きさは5mmで沢の石の下にはりつくようにして生活しています。カブトムシの仲間の幼虫がこんな姿をしているということに大きな驚きを感じます。
今日のことば
生も死も越えたるごとき優しさに白木蓮の花ほぐれゆくなり
柳澤桂子
2012.04.04
不二聖心の沢 トビケラの幼虫と巣 葉脈の顕微鏡写真
2012.04.04 Wednesday
不二聖心の中には森にそって流れる沢があります。そこにはたくさんの沢蟹が棲み、いろいろな種類の水生昆虫を見ることができます。2枚目の写真は、沢の石をめくって見つけたトビケラの幼虫とその巣です。3枚目の写真は、水生昆虫によって食べられ葉脈だけが残った葉の表面の顕微鏡写真です。
今日のことば
このたくさんの涙は
何かの種かもしれない
わたしの庭にこっそり
埋めておこう
春、夏、秋、冬
そしてまた春
忘れたころ
芽を出して
びっくりするくらい
元気な花を
咲かせるかもしれない
みつはしちかこ
2012.04.04
嵐の前の桜と山吹
2012.04.03 Tuesday
朝のNHKのラジオのニュースで、昨日会津若松市で初めてウグイスが鳴いたという話を紹介していました。不二聖心ではしばらく前から毎日のようにウグイスがいい声で鳴き続けています。今朝は東名高速のすぐ近くで姿まで見ることができました。
ウグイスの声を聞きながら、桜と山吹の写真を撮りました。朝はこのように穏やかな天気でしたが、夕方からは台風並みの低気圧のために記録的な暴風雨となりました。いずれの花も今はもう散ってしまっていることでしょう。
今日のことば
舗道のそばに、一本、大きな切り株だけがのこる木がある。椅子くらいの高さの切り株のまわりを、切り株の木がずっと生きてきた時間が囲んでいる。日々の魂を浄めるような時間が、そこにはのこっている。
長田弘
2012.04.02
『こどもお茶小辞典』に不二聖心の記事が掲載 イワボタン
2012.04.02 Monday
静岡県が発行した『めざせ!お茶博士 こどもお茶小辞典』に不二聖心のお茶が紹介されました。「幻の紅茶ただにしき」についても詳しい説明がついていて非常に興味深い内容となっています。
山地の谷川沿いに生える多年草であるイワボタンが裏道の川で今年も咲いています。イワボタンは別名ミヤマネコノメソウと言います。トンボのミヤマアカネもそうですが、動植物の名前の中には、必ずしも「深山」に生息していなくても「ミヤマ」と名付けられているものがあります。
イワボタンは佐賀県と長崎県で準絶滅危惧種に指定されています。
今日のことば
うつくしい自然よ
どうしたら どうしたら
あなたのうつくしさに
つり合えるだろう
くつを脱いで わたしははだしになってみた
新川和江
2012.04.01
ヒトクチタケ オオコクヌスト
2012.04.01 Sunday
裏の駐車場のマツの木にヒトクチタケがついているのを見つけました。
枯れ始めたマツの木につくというヒトクチタケの中にはカブトゴミムシダマシ、ヒラタキノコゴミムシダマシ、オオヒラタケシキスイなど、何種類もの甲虫が棲みつくことで知られています。2枚目の写真は、2010年5月13日に、ある生徒が持ってきてくれたヒトクチタケの写真で、中にはオオコクヌストという甲虫が入っていました。
今日のことば
ぼくたちは いきているだけで
きっと えらいのだとおもう
かなしみを こらえて いきているのだから
おいおいなきながら いきているのだから
それだけで じゅうぶんに
内田麟太郎
2012.03.31
齧歯類調査報告 アカネズミの生息を確認
2012.03.31 Saturday
齧歯類調査のための仕掛けを確認したところ、栗畑の縁に仕掛けたケースにアカネズミが入っていました。オスのアカネズミで、体長は21㎝、体重は39.8gでした。齧歯類調査のベテランである浜田俊先生に計測をしていただいたあとは、また野に放しました。
アカネズミは森にすむネズミで、ドングリを分散貯蔵することで知られています。貯蔵したまま放置されたドングリはやがて芽を出し育っていきます。ある調査ではアカネズミが木の実を100m以上移動させたという記録も残っています。不二聖心の森の中にもアカネズミによって運ばれた種やドングリから芽生えた樹木がきっとあるはずです。
今日のことば
そうだ僕は僕だけで出来てるわけじゃない
100年1000年前の遺伝子に
誉めてもらえるように いまを生きてる
この生命で いまを生きてる
今日も生きてく
福山雅治
2012.03.31
ハナニラ キスジコヤガの幼虫 齧歯類調査
2012.03.30 Friday
ハナニラが学院のあちらこちらで見られるようになりした。ほとんどがかつて植えられたものが野生化したもので、繁殖力の旺盛さにおいて際立つ花です。
写真の中央に移っている棒のようなものは、キスジコヤガという蛾の幼虫です。地衣類を身にまとうことによって、自分が目立たないように工夫しています。まるで地衣類と同化しているようですが、下の写真を見ると確かに移動していることがわかります。
富士山周辺の哺乳類調査を続けていらっしゃる浜田俊先生に不二聖心にも調査のための仕掛けを設置していただきました。明日の朝、7時に仕掛けの中を確認します。不二聖心の齧歯類の生物相が明かされようとしています。
今日のことば
達人は少ない。詩人も少ない。われわれ凡人はどうしても現実にとらわれ過ぎる傾向がある。そして現実のように豹変し、現実のように複雑になり、現実のように不安になる。そして現実の背後に、より広大な真実の世界が横たわっていることに気づかないのである。
湯川秀樹
2012.03.29
今日の富士山 アズマキシダグモ クヌギカメムシの孵化
2012.03.29 Thursday
今日の富士山の写真です。真冬の富士山とは違って山肌に白以外の部分が増えてきたように思います。
アズマキシダグモの写真を撮りました。このクモの生態は非常にユニークで、求愛の時にオスがメスに獲物を糸で包んだプレゼントを渡したり、メスが卵のうを口にくわえて運んだりします。
2月7日のフィールド日記で紹介したクヌギカメムシの卵が孵化しました。背中にはもうすでに立派に模様が入っています。一度見つかると次々に目に入るもので、このカメムシの卵を何十箇所にもわたって確認しました。
今日のことば
真の文明は山を荒らさず、川を荒らさず、村を破らず、人を殺さざるべし。
田中正造