フィールド日記
2013.01.19
シナモンの香りのヤブニッケイとクスクダアザミウマの関係
2013.01.19 Saturday
キャンプ場のヤブニッケイ(クスノキ科)の葉からクスクダアザミウマを採集しました。体長は約2ミリです。クスクダアザミウマはクスノキ科の樹木に発生して木を枯らしてしまうことがあります。ただし、クスクダアザミウマ自身は植物の汁を吸うだけで、樹木に決定的な打撃を与えるわけではありません。クスクダアザミウマが傷をつけることで、もともと樹木の中に存在した炭疽病菌の活動が活発になり炭疽病が木を枯らしてしまうのです。しかし写真からもわかるように不二聖心のヤブニッケイの葉の色は生き生きとしています。これはキャンプ場の土が良いために樹勢に力強さがあり、多少の病原菌はものともしないからだと考えられます。
今日のことば
緑を増やして、緑のそばで仕事をしたり、ものを考えたりすることは、人間の心を非常にやわらかくすることだという思想が近年われわれにも根づいてきたと思います。ですから、人類の未来に希望のない発言が最近しばしばありますけれども、地球の緑さえ守ってゆけばわれわれにも未来がある、子孫たちはなんとか生きられるだろうということが、近ごろしきりに思われてならないのです。緑は、すべての基礎です。
司馬遼太郎
2013.01.18
ロウバイの蕾
マリアガーデンのロウバイの蕾が少しずつ開き始めています。2002年1月13日の朝日新聞の「花おりおり」(湯浅浩史)というコラムでロウバイは以下のように説明されています。
2002年1月この時期ひっそりと咲く。が、知る人ぞ知る。香り、色、それにロウ細工のような花。個性豊かで冬の得がたい花である。名の由来に2説。一つは臘月(ろうげつ)、つまり陰暦12月に咲く、ウメに似た花の臘梅。またはロウ状の梅からの蝋梅(ろうばい)。分類上はロウバイ科で、萼(がく)と花弁が連続し、ウメとは縁遠い。
日本に伝来したのが17世紀の前半と言われますので、それ以来、約400年の間、日本人はこの花の開花に立春の近いことを感じ続けてきたのだと思います。
今日のことば
昨日の新聞から184 平成22年1月25日(月)
『三行の智恵』(葉祥明 日本標準)を読む
―― 著名な絵本作家による生き方についてのアドバイス ――
僕は「モルゲン」という、主に高校生を対象として作られている新聞を愛読しています。その中に書評のコーナーがあって、そこではプロの書評家ではなく、高校生や高校の教師がさまざまな本を紹介しています。最新号の中で、新潟県立国際情報高校の山本寛先生が葉祥明の『三行の智恵』という本を紹介なさっていました。独特の画風で知られる、著名な絵本作家の葉祥明さんは、生き方についての御自身の思索のあとをまとめた著作を何冊か刊行しています。これまでそれらの著作からさまざまな生きるヒントを得ていた僕は、たまたま書店で『三行の智恵』を見つけてすぐに購入し一読して深い感銘を受け、いつか生徒のみなさんにも紹介したいと思っていました。そのような時に、同じようにこの本に感動した方の存在を知り、うれしく思いました。僕の思いを代弁するかのような、山本寛先生の紹介文を次に引用してみたいと思います。
「よりよく生きる」という言葉を目にする機会が多いように感じる。高度経済成長を支えたパラダイムの崩壊によって、私たちは「目に見える、物質的豊かさ」から「目に見えない、内面的豊かさ」を知らず知らずのうちに志向するようになっている。
「よりよく生きるための~」と題された書物の多くは、How to~ の類ばかりで、一見分かりやすい指針が示されているものの、私たちが真に求める「内面の豊かさ」を教示してくれるか、はなはだおぼつかなく感じていたのも事実である。しかし、本書はそうした書物とは明らかに一線を画している。わかりやすい3行の言葉で生きるための知恵を示してくれる。その一言は、平易だが深い。例えば、「がんばってもいい。しかし、がんばりすぎてはいけない」など。
一冊を読み終えた後、「中庸」を見失っていた自分に気づいた。私たちの思考は、あまりにも一つの方向に偏りすぎていなかったか。「よりよい生き方」にも正解があると思い、かえって生活を息苦しくしていなかったか。短い時間でも読めるが、深い読後感が残る一冊としてお奨めします。
「わかりやすい3行の言葉」で示された、より良く生きるための知恵をいくつか紹介してみましょう。
物を所有してもいい。
しかし、
それに振り回されてはいけない。
理想を持つのはいい。
しかし、
現実を無視してはいけない。
信念を持つのはいい。
しかし、
凝り固まってはいけない。
苦しみがあるのはなぜか。
それは、
成長するためだ。
悲しみがあるのはなぜか。
それは、
深くなるためだ。
人間の真の価値は、
地位や財産や才能ではなく
優しさや思いやりにある。
どんなに望んでも
そうならないものは
そうならない。
どんなに望まなくても
そうなるものは
そうなる。
知識は外から、
知恵は心の奥深くから
やってくる。
自分自身を、
これでいいともいけないとも
思い過ぎないように。
人は、この世では
本当は何も
所有できない。
この世で所有したものは、
いずれは失う。
親も子も、自分自身も。
自分の中に
豊かな愛を育む。
そのための人生。
あなたが、世界を
愛すれば愛するほど、
世界はあなたを愛する
このようにして3行の言葉が1ページに1組ずつ書かれています。全部でそれが96組あります。読む人によって感銘を受ける言葉は異なるでしょうが、すべての人が「この言葉は自分のためにある」と思える言葉と出会えることは間違いないと思います。ぜひこの本を手にとり、かけがえのない言葉との出会いを経験してください。
ちなみに僕は89ページの言葉が好きです。「人は世界を変えられる」でその言葉は始まります。何をすれば「人は世界を変えられる」のか。89ページを開いて確かめてみてください。
2013.01.17
クスノキとヤブニッケイマルカイガラムシ
2013.01.17 Thursday
不二聖心の植生の特徴の一つは、駿東地区でも珍しいと言えるほどクスノキの巨木が何本も見られることです。
クスノキにはさまざまな生物が集まりますが、中でも最も小さい部類に属するのが、下の写真のヤブニッケイマルカイガラムシです。約1ミリ程度しかありません。カイガラムシの周辺が赤黒く変色していますが、この変色を、カイガラムシによって葉緑素が壊されて隠れていたアントシアンが目立つようになったためだと推測する専門家もいます。もしそうだとすると秋の紅葉と同じことがクスノキの葉上でおこっているということになります。
今日のことば
人間は恐るべき獣であり、しかも同じ種族を餌食にする唯一の猛獣である。同じ種族が反目し、大量殺戮の戦争を起こすのは人間だけである。
ウィリアム・ジェームズ
2013.01.16
スイカズラにはなぜ「忍冬」という別名があるのか
2013.01.16 Wednesday
花の良い香りで知られるスイカズラは別名、忍冬(ニンドウ)といいます。常緑性で冬でも落葉しないところから、忍冬という名前がつけられました。葉を丸めて冬を乗り越えようとしている姿にはいかにも冬を忍んでいるという風情があります。
スイカズラの花をご覧になりたい方は下記のURLをクリックしてください。
https://www.fujiseishin-jh.ed.jp/field_diary/2013/05/4947/
今日のことば
現在伐採している杉や檜、あるいは里山の植物は、先祖からの遺産を利用しているということなのである。先祖によって生かされ、子孫のためにつくすという利他行為の精神が、里山維持の基本だということをしっかり心にとめることが大切である。
河合雅雄
2013.01.15
栗の毬の棘の一本一本に霜がおりました
2013.01.15 Tuesday
冷え込みの厳しい朝となりました。「共生の森」の隣の栗畑のクリの毬の棘の一本一本に霜がおりていました。
クリの葉の葉脈の一本一本にも霜が降りていました。
目を上に向けると陽の光を受けたクリの葉の絵描き虫のあとが鮮やかでした。
小さな冬芽の寒さに耐える姿も心に残りました。
今日のことば
空が美しいだけでも生きてゐられると 子に言ひし日ありき 子の在りし日に
空が美しいのも子が生きてゐてこそとかの日言はざりしゆゑに子に死なれしか
ひとみいい子でせうと言ひし時いい子とほめてやればよかりし
『母の歌集』(五島美代子)より
2013.01.14
ナツグミの虫えい(虫こぶ)
2013.01.14 Monday
御殿場に茱萸沢(グミサワ)という地名があることからもわかるように、駿東地区ではグミ類の樹木を数多く目にすることができます。不二聖心の林内にもたくさんのグミの木が生えています。写真に写っているのはナツグミで、これもグミの仲間です。中央に小さな虫こぶが見えます。この中に1ミリ程度の小さな生物が生活している様子を画像に収めることができましたので、関心のある方は下記のURLをクリックしてみてください。虫こぶは、虫が出した化学物質の影響を受けて植物が作ってしまう虫の子ども部屋です。それを考えると画像に映っている生物が虫こぶの形成者と思いがちですが、どうやらそうではないようなのです。画像に映っている生物は、虫こぶの形成者の子どもが巣立ってから、その部屋を間借りしている可能性が高いことがわかりました。小さな生き物たちの世界も実に複雑なつながりを持っているようです。
https://www.youtube.com/watch?v=7FZbv_PKjHA
今日のことば
キングスレイ・ウォード(『ビジネスマンの父より息子への30通の手紙』の著者)は生活のバランスを保つ重要さも息子に教えている。
仕事に行き詰ったら、一時、心の中にその問題を預け、しばらく寝かせる。
その間に、運動したり読書をしたりすること、特に自然に接することを勧めている。自然の中で釣りをしたり狩りをしたりして、時間がたてば無意識の内に考えが整理され、まとまってくる。
そういう意味で、自然がこの世の中での最高顧問であると言う。
佐々木常夫
2013.01.13
ツツジの幼木の紅葉
2013.01.13 Sunday
牧草地の横の道の脇に生えているヒノキの根元にツツジの幼木を見つけました。ドウダンツツジなどの真赤な色の紅葉も魅力的ですが、このような幼木の控えめな紅葉にもまた格別の味わいがあります。モチツツジの幼木ではないかと思われます。
モチツツジは主に東日本に分布し、西日本には近縁種のキシツツジが見られます。四国の東部では分布域が重なっているようです。キシツツジは牧野富太郎博士により、高知県で採集された標本に基いて1908年に記載されました.
今日のことば
私は、草木に愛を持つことによって、人間愛を養うことができる、と確信して疑わぬのである。もしも私が日蓮ほどの偉物であったなら、きっと私は草木を本尊とする宗教を樹立して見せることができると思っている。
牧野富太郎
2013.01.12
ムシバミコガネグモの生息を確認 静岡県で2例目
2013.01.12 Saturday
1月9日の「不二聖心のフィールド日記」で紹介したコガネグモについて、東京大学大学院農学生命科学研究科生物多様性科学研究室の谷川明男先生から以下のような回答が届きました。
お送りいただきましたコガネグモ,本日,無事に到着いたしました.さっそく拝見いたしましたが,まさにムシバミコガネグモでした.大変貴重な記録となりますので,日本蜘蛛学会のニュースレター「遊絲」にこの記録を掲載させていただけないでしょうか。
日常的に目にしていたクモが大変貴重なものだと知り、驚きました。親グモの近くには子グモもいました。次世代の個体もしっかりと育っています。
今日のことば
何をゴールに決めて 何を犠牲にしたの
誰も知らず
歓声よりも長く
興奮よりも速く 走ろうとしていた
あなたを
少しでもわかりたいから
人々がみんな立ち去っても私
ここにいるわ
「ノーサイド」(松任谷由美)より
2013.01.11
中学1年生の冬の自然観察 お茶の種子 鹿と人間の足の大きさ比べ
2013.01.11 Friday
中学1年生が理科の授業で小野加代子教諭の指導のもと、校内の冬の自然を観察しました。
気温6.5℃の中、植物の冬越しのようすを観察することができました。写真はタンポポのロゼット葉です。
秋の自然観察ではお茶の花を見ることができましたが、今回はお茶の種子を手にとってみることができました。不二聖心ならではの体験です。
ソテツの様子も変化していました。
鹿の足跡を見つけました。みんなで足の大きさ比べです。これもまた不二聖心ならではの体験でしょう。
今日のことば
If the primary theme of human life in the 21st century is living in harmony with other animals and plants then Kenji Miyazawa is the Japanese writer who can most thoroughly help us to understand and pursue this theme.
Miyazawa died 75 years ago ; but his profound ideas, expressed in exquisite prose parables and philosophical poetry, speak to us as if he were our contemporary. He truly considered himself to be in total harmony with all creation.
Roger Pulvers
2013.01.10
アラゲキクラゲ 食べられます
2013.01.10 Thursday
裏の駐車場から校舎に向かう道の途中でアラゲキクラゲを見つけました。アラゲキクラゲはキクラゲ科キクラゲ属のキノコで、食用にすることができます。日本では、食べられるキクラゲ科キクラゲ属のキノコとしてキクラゲとアラゲキクラゲの2種が見られますが、不二聖心にはその両方が自生しています。
今日のことば
もし神様が私を長生きさせてくださるなら、私はつまらない人間で一生を終わりたくはありません。私は世界と人類のために働きます。
アンネ・フランク