〇お知らせ〇
同じ内容をインスタグラム「不二聖心女子学院フィールド日記」(クリックするとインスタグラムのページが開きます)にも投稿しています。より高画質な写真を載せていますのでぜひフォローしてください。

フィールド日記

2012.02.26

カゲロウ

  2012.02.26 Sunday

 カゲロウの羽化を裏道の小川で今年はじめて確認しました。三個体が羽を乾かす様子を観察できました。
トンボ出版から出ている『カゲロウのすべて』はカゲロウについて知るのにとても良い本ですが、その序文で著者の岡崎博文先生は次のように書いています。


私がカゲロウと最初に出会ったのは、20年ほど前になります。初夏の夕方、橋の上で頭をいっせいに風上に向けて群れ飛びをしているチカラカゲロウの集団でした。(中略)
またある日は、産卵を終えたメスたちが川岸ちかくにおびただしく集まっている場面にも出会いました。カゲロウはどんな卵をどれくらい産むのかを調べてい くうちに、毎年春のおとずれが待ち遠しくなるようになりました。カゲロウの羽化は3月より始まるからです。成虫はたいへん短命ですが、水中での幼虫時代は 長く、環境条件の異なる場所ごとに、ちがった多くの種がすんでいます。
成虫の交尾期の構造・羽のたたみ方などに原始性をもつ古い型の昆虫ですが、大あごの構造や亜成虫の段階をもつこと、口器の退化など、固有の特徴をもつ昆虫がカゲロウなのです。
河川・水路の流れや湖岸の清冽な水を好んで生活し、種類の多いカゲロウの生活について、少しでも多くの方に知っていただき、生態を明らかにしてほしいと願っています。


「環境条件の異なる場所ごとに、ちがった多くの種がすんで」いるというは、いわゆる「すみわけ」のことです。この、生物の世界の常識を覆す大発見は、京都大学の今西錦司博士のカゲロウの研究によってもたらされたものでした。
上の文章には「カゲロウの羽化は3月より」と明記されています。2月に羽化を始めるというのは限られた種と考えることができそうです。種の同定には、形態だけでなく、生活史も大きな手掛かりを提供してくれます。

 

今日のことば

 
私たちは子どもを尊重しなければなりません。創造主である神の姿に似せて造られたこの小さき者の世界に敬意を持って接していかなければなりません。

                          聖マグダレナ・ソフィア

2012.02.25

ノミハニワゴケ

  2012.02.25 Saturday  

 第二牧草地の上の雑木林の切り株の一つに、今年もまたノミハニワゴケが群落を作っているのを見つけました。ノミハニワゴケは春先に胞子体の柄を長 く伸ばすことで知られています。春を告げるコケとも言えるでしょう。柄の先がやがてふくらんではっきりとした朔の形をとり、その中の胞子が風にのって地に 落ち、次の世代の誕生となります。できるだけ効果的に風を利用するためには柄はより長いほうがいいわけです。写真家の伊沢正名氏は、その様子を「思いっき り背伸び」と表現しています。 

 

今日のことば

 頬をぶたれた少年がひとり/日暮れの道で泣いている/父が憎いと声とがらせて/涙でゆがんだ空見てる/遠い未来が不安でならず/呼ばれて返事しな かった/だけどやっぱりきみが悪いよ/自分を隠しているからさ/さあ鉛筆しっかり握りしめ/私という字を書くのです/白いノートの私にだけは/夢を話して ゆくのです/君しか書けないその物語/私という名の物語

                                  武田鉄矢

2012.02.24

ツチグリ

  2012.02.24 Friday

 校舎の裏の道に毎年、ツチグリが現れる場所があります。春の使者ともいうべきキノコであるツチグリがいつ発生するか楽しみにしていましたが、今朝 初めてその姿を確認することができました。全部で6つほど確認することができました。学名のAstraeus hygrometricusは「星形の湿度 計」という意味です。外皮が裂けて開いた状態がまさに星形をしているのが、写真からもわかります。

 I found  a fungus whose binominal name is Astraeus hygrometricus  this morning. It is a symbol of spring in Japan. Astraeus hygrometricus, commonly known as the hygroscopic earthstar, the barometer earthstar, or the false earthstar, is a species of fungus in the Diplocystaceae family.

今日のことば

確かに環境問題への関心は高まった。企業活動の中でも、まずは社会に対する責任としての環境意識を高めることに始まり、近年では環境問題の解決を企業活 動にする動きも出てきた。しかし、社会の価値観は相変わらず成長にあり、その中に環境問題を組み込む方法を考えるという考え方しかできていない。
持続可能性について考えようということは今何かが変わらなければならないという意識の表れであるのに、多くの人が価値観は変えずに小手先でなんとかしようとしているのはなぜなのだろう。

                                     

                                中村桂子

2012.02.23

フジイバラの実   Fruits of a japanese rose

   2012.02.23 Thursday

  掃除の時間に生徒が何か生き物を見つけて大騒ぎをしていました。何かと思ったら地に這いだしたミミズでした。久しぶりに目にしたミミズに春が近いことを感じました。
林道でノイバラの実の写真を撮りました。おそらくフジイバラではないかと思われます。フジイバラは奈良県で絶滅危惧Ⅰ類、東京都と愛媛県で準絶滅危惧種 に指定されている希少種ですが、実はブナが生えるような標高の高い場所に生えるノイバラとして知られています。本来、不二聖心には生息していないはずのフ ジイバラがなぜ不二聖心の林道で見られるのか、もしかしたらこの実はフジイバラではないのか。また一つ謎が増えました。

 I took a picture of fruits of a kind of a Japanese rose. It is called Fujiibara which grows in the high mountain. I do not know the reason why we can see it at Fuji Sacred Heart School.

      

今日のことば


求めないーー
すると
簡素な暮しになる

求めないーー
すると
いまじゅうぶんに持っていると気づく

求めない
すると
いま持っているものが
いきいきとしてくる


                 加島洋造

2012.02.22

ユスリカの幼虫

  2012.02.22 Wednesday

 牧草地の池にユスリカの幼虫がいました。(画像は20倍ほど拡大しています。)エリユスリカ亜科Orthocladiinaeのユスリカの幼虫の ようです。属は、エリユスリカ属Orthocladiusかフユユスリカ属Hydrobaenusのどちらかで、キソガワフユユスリカH. kondoi Sætherの可能性が最も高いであろうというアドバイスを専門家の方からいただきました。ユスリカについて詳しく学ぶだけでも、生 物の多様性に対する認識は格段に深まりそうです。

 

今日のことば

わたしたちには、笑う権利があり、幸せに生きる権利がある。それを阻むもの、蔑ろにするもの、軽んじるもの、踏みにじろうとするものに対し、闘わねばな らないと思うのだ。笑うことで人は救われる。ほんの半歩、前に進める。生き続けられる。政治とは、経済とは、国とは、とどのつまり、人々の小さな笑いを 守っていくためにあるのではないか。

                              あさのあつこ

2012.02.21

ラッパズイセン  ハイイロゲンゴロウ

  2012.02.21 Tuesday

 ラッパズイセンがたくさんの花を咲かせています。ラッパズイセンはウェールズの国花としても知られており、以前不二聖心で講演してくださった、ウェールズ出身の作家、C・W・ニコル氏は長野のアファンの森にたくさんの水仙の球根を植えられたそうです。

 

 

 牧草地の池にいるハイイロゲンゴロウの写真を撮りました。水生昆虫の多くは各地で生息数を減らしていますが、ハイイロゲンゴロウも例外ではありま せん。東京都では、すでに絶滅してしまいました。牧草地の池には他にもさまざまな水生昆虫がいて、そこだけで豊かな生態系をつくっています。

 

今日のことば

雪の日に 吉野弘

――誠実でありたい
そんなねがいを
どこから手にいれた。

それは すでに
欺くことでしかないのに。

それが突然わかってしまった雪の
かなしみの上に 新しい雪が ひたひたと
かさなっている。

雪は 一度 世界を包んでしまうと
そのあと 限りなく降りつづけねばならない。
純白をあとからあとからかさねてゆかないと
雪のよごれをかくすことが出来ないのだ。

誠実が 誠実を
どうしたら欺かないでいることが出来るか
それが もはや
誠実の手には負えなくなってしまったかのように
雪は今日も降っている。

雪の上に雪が
その上から雪が 
たとえようのない重さで
ひたひたと かさねられてゆく。
かさなってゆく。

2012.02.20

オニシバリ

  2012.02.20 Monday

  林道に生えているオニシバリがたくさんの蕾をつけています。オニシバリは昨日紹介したミツマタと同じジンチョウゲ科に属しています。鬼を縛って も大丈夫なほどに繊維が強いことから「オニシバリ」と名付けられました。昨日の「フィールド日記」で紹介したミツマタも繊維が強いことで知られています。 ジンチョウゲ科の一つの特徴はこの繊維の強さにあると言えるでしょう。

 オニシバリは以下のようにいろいろな県でレッドデータリストの中に含まれています。これほど減少してきている植物が不二聖心の森の中でたくさん見られることに驚きを感じます。

 絶滅危惧Ⅰ類 奈良県

 絶滅危惧Ⅱ類 埼玉県 徳島県 福岡県

  準絶滅危惧種 宮城県 茨城県 京都府 広島県 大分県

 オニシバリの葉に絵かき虫によって食べられた痕を見つけました。オニシバリが絶滅するとこの絵かき虫も行き場を失うことになります。

今日のことば

深くかつ遠く思はん天地の中の小さき星に生まれて

湯川秀樹

2012.02.19

雪の牧草地  ミツマタ

  2012.02.19 Sunday

  今日も不二聖心に雪が降りました。午前11時の段階で気温は2度。寒い一日でした。

 寒さの中でも季節は着実に春に向かって進んでいます。ミツマタの花の蕾もだいぶ膨らんできました。あのミツマタの良い香りを楽しめる日が来るのが 待ち遠しいです。ミツマタという名前は枝が三方に分かれるところからつけられました。繊維が強く紙幣の材料としても使われてきました。


 

今日のことば

私たちには人間を超える大きな存在に繋がっているという感覚が必須である。それがないと人間は成長することができない。

                            ダニエル・ピンク

2012.02.18

牧草地の霜柱  オランダミミナグサ

  2012.02.18 Saturday

 今日は卒業式でした。良いお天気に恵まれましたが、朝の寒さは一段と厳しさを増していました。牧草地でも一面の霜柱を観察することができました。

 

 このような厳しい寒さの中でもたくましく成長を続ける草花があります。ネズミの耳のような葉の形が印象的なオランダミミナグサもその一つです。 ヨーロッパから世界各地に広がった植物ですが、厳寒に耐え得る生命力が分布拡大の力となっているものと思われます。南ヨーロッパ原産のようですが、和名に はオランダとついています。これは日本とオランダとの関係の深さを示す一例であり、時としてオランダは日本人にとってヨーロッパの代名詞となり得ることを 示しています。
世界各地で見られるオランダミミナグサについては、ウィキペディアの英語版にも詳しい説明が出ています。日本語版とは違った面白さがありますので、その一部を以下に引用しておきます。

 


Cerastium glomeratum is a species of flowering plant in the pink family known by the common names sticky mouse-ear chickweed and clammy chickweed. It is probably native to Eurasia but it is known on most continents as an introduced species. It grows in many types of habitat. This is an annual herb growing from a slender taproot. It produces a branched, hairy stem up to 40 or 45 centimeters tall. The hairy leaves are up to 2 or 3 centimeters long.

 

 

 オランダミミナグサは、2月の下旬から3月の上旬にかけて開花するものと予想されます。三島では既に蕾をつけているオランダミミナグサも見かけま した。「花は風雪に耐えてこそ美しく咲く」と言います。卒業生のみなさんにも、世の風雪に耐えてやがて美しい花を咲かせてほしいと心から願っています。

  


今日のことば

一日の時が恵み深く光や風や雲やさまざまな季節の訪れとともに人間のもとにやってきているのを現代人は忘れている。それは「心をときめかせて生きること」を忘れているということに他ならない。

                                      辻邦生

2012.02.17

不二聖心の雪景色  ノキシノブ

  2012.02.17 Friday


不二聖心に雪が降りました。早朝の雪景色に生徒も大喜びでした。これまでフィールド日記で紹介してきた薩摩紅梅やフキノトウにも雪が降り、いっそう輝きを増した姿が見られました。 


 

 これまでフィールド日記で紹介してきた薩摩紅梅やフキノトウにも雪が降り、いっそう輝きを増した姿が見られました。


 
 


樹木につくシダ植物として有名なノキシノブにも雪が積もりました。葉裏にはたくさんの胞子が付いています。


 
 

今日のことば

僕が暮しているここだけが世界ではない。さまざまな人々が、それぞれの価値観をもち、遠い異国で自分と同じ一生を生きている。

星野道夫