フィールド日記
2011.09.04
ハナオチバタケ・オオフタオビドロバチ
平成23年9月4日 日曜日
雨が降るとキノコの数が増えます。大雨警報発令中に不二聖心でもたくさんのハナオチバタケが姿を
見せていました。針金状の柄と薄い紙質の傘のハナオチバタケには、このキノコにしかない独特の魅力が
あります。
大雨警報発令中にもオオフタオビドロバチはせっせと泥を運び、巣作りの仕事に励んでいました。
今日のことば
できていないのに、「わかっている」と言い続ける人には、進歩がない。
「知っている」ことと「できる」ことは、全く違うことだ。
そのあいだには深い川が流れている。
齋藤孝
2011.09.03
カラスウリ
平成23年9月3日 土曜日
台風12号が猛威をふるった一日となりました。上陸してからも10キロ未満で進む台風というのは極めて
珍しい例です。速度の遅さが際立った台風として12号は長く記憶されることになるでしょう。
下の写真は、雨つゆに濡れるカラスウリの実の写真です。東名高速沿いの道で撮影しました。
まだ緑色をしていて周囲の色に溶け込んでいます。
中の種が熟し ていないので今から鳥などに突かれてしまっては完熟した種を下に落とすことができなくなります。
もう突かれていい時期になると実は赤く熟していきます。目 立たないことにも大きな意味があるのです。
今日のことば
自然の中で暮らしていると、鳥が起してくれる。
雲よりも風のざわめきのほうが、より正確に雨を告げる。
自然の声を聴くがよい。
人間の作ったものは、あやまりだらけだ。
ムルアカ・ジョン
2011.09.02
クズの花びら・ベニバナボロギク
平成23年9月2日 金曜日
台風の影響で今日は休校となりました。せっかく咲き始めたクズの花も、降り続く雨でだいぶ散って
しまいました。クズの茂っているところだけ、路面が紫になっています。
富士山南東には大雨警報が出続けたものの、裾野市だけは比較的風雨の強まりが遅く、
朝はミンミンゼミが力強く鳴いていました。
下の写真は、雨に濡れて立つベニバナボロギグです。南アフリカ原産ですが、早い時期に東南アジア各地に
広がり、南方に出兵した兵士は、ベニバナボロギク を「南洋春菊」と呼んで食用にしていたと言われます。
食糧不足の中で生きのびるためにベニバナボロギクを口にした兵士もいたことでしょう。ベニバナボロギクを
帰化植物として嫌うだけでなく、日本人とこの花との関わりの歴史にも思いを馳せたいものです。
今日のことば
人生にはただ一つの義務しかない。それは愛することを学ぶことだ。
人生にはただ一つの幸せしかない。それは愛することを知ることだ。
ティヤール・ド・シャルダン
2011.09.01
朴の実
平成23年9月1日 木曜日
台風12号の影響で午後の授業は行わずに生徒は帰宅しました。明日には上陸の恐れもあるようです。
今日は、まだ黒く変色する前の朴の実を見つけました。朴の花は雌しべが一日しか開きません。
結実のチャンスはその日しかないのです。受粉昆虫の助けを借 りるためには雨の日を避けて雌しべを開く必要がでてきます。
初夏のさわやかな一日に何の虫かが他の花から花粉を運んできて受粉の手伝いをしてくれたので しょう。
雌しべが閉じると次は雄しべが開きます。これは同花受粉を防ぐための工夫だと言われています。
今日のことば
どんな命も、もろさとともにある。だから大切に育てたい。
人との出会い、交わしあう言葉。
日々の小さな出来事の中に、大きな未来が含まれている。
アレックス・ロビラ
2011.08.31
ハグルマトモエ・オスグロトモエ
平成23年8月31日 水曜日
最近、不二聖心でよく目にする蛾について専門家に同定をお願いしたところ、返事が来ました。
上の写真がハグルマトモエ、下の写真がオスグロトモエだそうです。同じ種だと思っていたら全く別の種でした。
専門家はその違いをいとも簡単に見抜いてしまいます。勉強するということは、
物がよく見えるようになることだと改めて思います。
今日のことば
自分を離れ他の生命力を見つめよ。 戸塚洋二
2011.08.31
ショウリョウバッタ・カマキリ・ケンポナシ
平成23年8月30日
夏休みが終わり、生き物と親しむ生徒たちの姿がもどってきました。
ある生徒は、東京と裾野でツクツクボウシの鳴き声の音程が2.5度ぐらい違う気がすると話してくれました。
ある生徒は、つかまえたショウリョウバッタを見せに来てくれました。校舎の周辺にある、
草原に近い環境を代表する昆虫です。
ある生徒は、ベランダでカマキリがアリを食べていますと教えてくれました。この写真を撮ったあとも
生徒たちは熱心に観察を続け、アリを食べ尽くしてフンをするところまで見届けたそうです。
今日の午後、元用務員の中家さんから温情舎と不二聖心の歴史についていろいろと話をうかがうことが
できました。裾野を訪ねた大臣に岩下清周氏が馬上から挨拶をしたという話は当時の岩下清周氏の姿を
彷彿とさせましたし、イエズス会のエデルマン神父 から託されて中家さんが植えたケンポナシの木の立派な姿に昭和30年代の不二聖心をしのぶことができました。
ケンポナシの木はおいしい実がなることでよく知られています。今から秋が楽しみです。
今日のことば
人が生命の織物を織るのではない。人は、その織物のひとすじの糸にすぎない。
生命の織物に対して人がすることは、それがなんであれ、自分自身にすることなのである。
酋長シアトル
2011.08.29
キンミズヒキ
平成23年8月29日 月曜日
キャンプ場からススキ野原への道にキンミズヒキが咲いています。(長い花序がミズヒキと似ているので
キンミズヒキと名付けられましたが、キンミズ ヒキはバラ科、ミズヒキはタデ科に属しています。)
この道は今ではほとんど歩く人がいませんが、かつては馬と人の通り道でした。わずかに舗装されたあとも
残っています。ヤマケイポケットガイドの『野の花』には、「キンミズヒキは萼のとげで運ばれるので、
人や動物の通り道に沿って生えることが多い」と書かれ ています。かつてここは道であったと
キンミズヒキを見て改めて思います。キンミズヒキは人の暮らしの歴史を静かに語る花でもあったのです。
今日のことば
いい日は幾らでもある。
手に入れるのが難しいのは
いい人生だ。
アニー・ディラード
2011.08.28
マルバノホロシ
平成23年8月28日 日曜日
キャンプ場への道にマルバノホロシの花が咲いていました。ひと目見てナス科とわかる特徴を備えている
花です。マルバノホロシは、福岡県で絶滅危惧Ⅰ類、鹿児島県で絶滅危惧Ⅱ類、東京都と鳥取県で
準絶滅危惧種に指定されています。
「マルバ」と名前に付けられていますが、下の写真を見てわかるように葉は丸くありません。
この場合の「丸い」は「ギザギザのない」という意味です。日本語の「丸い」は「円形」のみを意味する
のではないことが、このような植物の名前の例からもわかります。
今日のことば
「より多く所有する」ことではなく、
「より深く存在する」ことが大切なのです。
ヨハネ・パウロ二世
2011.08.27
クズの花・オオフタオビドロバチ・シオカラトンボ
平成23年8月27日 土曜日
今年はじめてアオマツムシの声を聞きました。樹上から聞こえてくる一年ぶりの声に耳を傾けつつ歩いていると今度は甘酸っぱい匂いが上から漂ってき ました。クズの花の匂いでした。クズの開花を確認しているときに視界を横切ったのはアサギマダラ、数百キロの渡りをするチョウとして知られています。
今日 もまた、季節のめぐりを実感する一日となりました。
車で正門から上ってくるときに壁面に新しい穴を見つけました。車を止めて確認したところ、
穴の中でオオフタオビドロバチがせっせと作業をしていました。しばらくして穴から泥だんごを咥えて
出てきました。よほど重いらしく壁面をすべり落ちていきま したが、もう一度体勢をなんとか立て直して
飛び立ち、右の林に消えていきました。数秒後、同じ穴にオオフタオビドロバチが再びやってきました。
これもしば らくして穴から出てきましたが、今度は左の方角に飛んでいったのです。
全く別の個体が同じ穴から泥を集めていることがわかりました。
シオカラトンボのオスとメスが連結して飛んでいるのを見かけました。
オスが腹端にある付属器でメスの後頭部をはさんでいるのがわかります。
今日のことば
知覚をみがくための方法はひとつだけだ。まことの深い知覚を開発するには、
とにかく自然のなかに出ることなのである。
C.W.ニコル
2011.08.26
ヨウシュヤマゴボウ・ジガバチ・ナガコガネグモ
平成23年8月26日 金曜日
久しぶりに青空の広がる一日となりましたが、夕方からはまた雨が降りだしました。
天気が安定しないだけに夏の青空がことさら貴重に感じられます。
ヨウシュヤマゴボウの実が次々に熟してきています。外来種のなかでもとりわけ生命力に富む植物で、
不二の自然の生態系全体を考えた時には少々困り者の面もあるのですが、近づいてみれば実も花も
それぞれに美しく沢山の命を養っています。
まだまだ咲き続ける花にはジガバチなどの虫が集まり、その虫を捕らえようとナガコガネグモが
巣を張っていました。
今日のことば
もし今日が自分の人生の最後の日だとしたら、今日やる予定のことを私は本当にやりたいだろうか?
If today were the last day of my life, would I want to do what I am about to do today?
スティーブ・ジョブズ