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フィールド日記

2011.08.25

ヤマトタマムシ・カタツムリ

平成23年8月25日 木曜日

 中学校校舎の中庭でヤマトタマムシを見つけました。残念ながら生きてはいませんでしたが、
構造色は簡単に色あせることはありません。

 ススキ野原のカタツムリはススキの葉裏に隠れてじっとしていました。カタツムリは移動能力が低いため
種分化しやすく、日本に600種以上いると言われています。同じ種の中でも亜種が多く、その土地固有の遺伝子を持っているものも多いようです。こ のカタツムリも何か目には見えない個性を備えているのかもしれません。

 

今日のことば

世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない。
                                  宮沢賢治  1926年

 宇宙には、たくさんの生物がいます。地球にさえも途方もなくたくさんの生物がいます。虫も草 も木も、
賢治の場合は、岩でさえも生物のようだと思っていました。だから、そういうものが全体幸福にならなければ、結局、個人は絶対、幸福になれないこと を、最近の公害、その他は、はっきりと証明しているようで
毎日毎日公害は押し寄せてきております。
もし、原爆のヘドロのようなものを海へなげたり、宇宙の方へなげたりしますと、宇宙のバランスがくずれて、たいへんなことになるということは、科学者がすでに言いはじめていることであります。
                                      宮沢清六  1974年

2011.08.24

フヨウ・フタトガリコヤガ

平成23年8月24日 水曜日

今日の不二聖心は、朝は曇り、昼は晴れ、夕方から雨が降るという変化の多い一日でした。

 芙蓉の花を毎日楽しめる季節となりました。今日の、晩夏の青空を背景にした芙蓉の花弁の美しさは
格別でした。以前に不二聖心で国語を教えていらした西山民雄先生は「富士の冴え祈りの心諭しけり」という
名句を残されましたが、青空と芙蓉の花の間に 立つ聖母子像もまた、
祈りの心をさとしているように感じられました。

 葉に顔を近づけてみると、簡単にフタトガリコヤガの幼虫が見つかりました。
フタトガリコヤガはアオイ科の植物につく蛾の幼虫で、毎年この時期に芙蓉の葉の上で見ることができます。

 今日のことば

葉末の露がきらめく朝に
何を見つめる子鹿のひとみ
すべてのものが日々新しい
そんな世界を私は信じる
信じることは生きるみなもと
             谷川俊太郎

2011.08.23

ツバメ・ウスバキトンボ・羽アリの大発生

平成23年8月23日 火曜日

 夕暮れのすすき野原を歩いていて驚くべき光景に出くわしました。
十羽以上のツバメが空を飛びまわり、その下を何十匹ものウスバキトンボの大群が飛び回っていたのです。
ツバメはウスバキトンボを食べているようでした。

 ウスバキトンボは網で追いかけてもなかなかつかまえることができないトンボです。
そのウスバ キトンボが次から次にこちらの顔に体当たりしてくるのです。群は興奮状態にありました。
下の写真の、横に入った線のようなものがすべてウスバキトンボで す。360度、周りはこのような状態でした。

 これには原因がありました。さらにその下で羽アリが大発生していたのです。しかも全く異なる2種のアリが
大発生していたのです。1種はキイロシリアゲアリでしたが、もう1種は同定ができませんでした。
違う種が全く同じ時に大発生していたのです。 これも非常に不思議なことです。

 ツバメが飛び、トンボが群れをなし、アリが大発生する。
一生に一度しか出会えない風景の中に立ちつくしていたのかもしれません。

2011.08.22

トノサマバッタ

平成23年8月22日 月曜日

 朝日新聞の1面に「しつもん!ドラえもん」というコーナーがあり、そこには小学生向けのいろいろな質問が
書かれています。答えは新聞のどこかに隠れています。それを探す過程で自然に他の新聞記事にも
目を向けることになる、そういう工夫です。
8月18日の質問は「アフリカやアジアで、虫の大群が農作物を食べ尽くすことがあるよ。どんな虫かな。」で、
答えは「バッタ ―― バッタは大量に発生 することがあるんだ。群れを作って飛び回りながら作物を
食い荒らすから、人間が食べるものがなくなってしまうほどなんだよ。」でした。
不二聖心のフィールドでも今、バッタがたくさん発生しています。車で走ると何匹も車に飛んできます。
下の写真は8月16日に撮影したものですが、この日は何匹ものトノサマバッタがフロントガラスに
飛んできました。
実はこの写真を撮った直後、困ったことがおきました。腹部の先端から糞が出てきたのです。
このままでは車のフロントガラスが汚れてしまうと思いました。 ところが、糞が出尽くすその瞬間
驚くべきことがおこりました。トノサマバッタが糞を蹴飛ばしてしまったのです。
瞬時に糞は空中を飛んでいきました。このト ノサマバッタはフロントガラスのほぼ中央にとまっているのですが、糞はフロントガラスの端を超えてさらに飛んでいきました。フロントガラスは汚れずにすん だのです。
糞を蹴飛ばすのは、糞が近くにあるとその臭いで外敵に自分の居場所を教えてしまうからだそうです。

2011.08.21

スキバツリアブ

平成23年8月21日 日曜日

 8月13日にアブの不思議な行動を目にしました。何匹ものアブが一か所に集まって腹部の先端を土にこすり
つけるような行動をしていたのです。早速、昆虫研究家の平井剛夫先生にうかがったところ、
先生がいろいろと手をつくして調べてくださり、今日その結果が届きました。
このアブはスキバツリアブというアブで、問題の行動は産卵行動である可能性が高いということでした。
しかも土中に巣を作るハナバチ類のようなハチの仲間 の幼虫に寄生しているようだということです。
つまり、この写真に写っている土の下にハチの巣があるかもしれないということです。
この場所はかつて葡萄園があった場所のさらに先にあり、おそらく20年以上人間が誰も立ち入っていない
のではないかと思われる場所です。そのような場所で、人知れず、アブとハチの不思議な関係が続いてきた
可能性があります。

 下の写真は葡萄園に沿って作られた道です。何十年もほとんど人が歩いていませんが、
道としての姿をかろうじてとどめています。この道の先にスキバツリアブの集団産卵場所があります。

2011.08.20

センニンソウ・ウラギンシジミの幼虫

平成23年8月20日 土曜日

 ここしばらくの暑さが嘘のように気温が下がり、不二聖心のフィールドも一日で大きく様変わりした
ように感じました。何より変わったのは音です。蝉の声が小さくなって、キリギリス科の昆虫の鳴き声が
よく聞こえるようになり、何やら寂しい気配がただよっていました。
花々も主役を交替しつつあり、センニンソウが咲き始め、イタドリやクズの蕾が着実に大きくなっている
様子が観察できました。
下の写真は校舎の裏に咲くセンニンソウです。

 クズの蕾を見ていて驚いたことがあります。ウラギンシジミというチョウの幼虫を蕾の房の中に
見つけたのです。蕾に見事に擬態していました。蕾はやがて紫色に変色していきます。
その変化に合わせて幼虫も自分の色を変えていくのです。もうこれは驚異としかいいようがありません。
 

 下の写真は2010年9月11日に撮影したものです。あと一カ月足らずでこのような姿になるはずです。
ウラギンシジミについて詳しく知りたい人には『葉の裏で冬を生きぬくチョウ』(高柳芳恵 偕成社)が
おすすめです。高柳さんが10年にわたってウラギンシジミを観察した記録を本にしたものです。
これ一冊読めば、自然を見る目が確実に変わります。

2011.08.19

タカサゴユリ・オナガバチの産卵

平成23年8月19日 金曜日

全国的に天気が下り坂で、連日の猛暑も一休みとなりました。
今日は9月23日の秋分の日に行われる第2回学校説明会の準備のために学校へ行ってきました。

 正門のところのタカサゴユリがようやく咲き始めました。タカサゴユリは台湾から日本に伝わった外来種で
「タカサゴ」は「台湾」の古名です。今では 野生化しているものも多く、この花を見かけない町はない
といっていいほどどこでも見られる花となっています。毎年、夏休みの後半に咲き始めるので、
この花が咲くと、夏休みにやり残していることはないかと焦りを感じます。
 

 車で上まで上がってみると、本館前のタカサゴユリはまだ咲いていませんでした。
標高の違いが花の咲く時期の違いとなっています。不二聖心のフィールドの多様性は正門から林道まで
多様な標高の自然が存在していることによるところも大きいようです。

 オナガバチの産卵を今日も観察できました。これで17日、18日、19日と3日続けての産卵行動の確認と
なりました。しかもすべて複数の個体の産卵行動が確認できています。下の写真はそのうちの1匹ですが、
産卵管が木にしっかりと刺さっている様 子が確認できます。
この産卵管は樹皮を貫通して木の中に潜んでいる虫の体にまで達しているものと思われます。
著名な昆虫学者の矢島稔氏は『ハチのふしぎとアリのなぞ』(自然の不思議を伝える素晴らしい本です)
(偕成社)の中で、次のように書いています。

 ある時期、わたしはそのシーンをもとめて、山道を歩きつづけました。
それはオナガバチのなかまの産卵の現場をみたいからです。以前から話をきいていましたが、
このオナガバチのメスは交尾後、嗅覚をつかって、木の中にいるカミキリムシの幼虫の居場所をたしかめ、
そこへ長い産卵管を刺しこんで卵をおくりこむというのです。

 矢島先生は山道を歩き続けたそうですが、
不二聖心では車道から1分のところでオナガバチの産卵を見ることができます。
 

2011.08.18

ハリギリの樹皮・ベニイグチ

平成23年8月18日 木曜日

 幸田文の名著『木』(新潮文庫)の中に「木のきもの」という随筆が収められています。
その中に次のような一節があります。

 木は着物をきている、と思いあててからもう何年になるだろう。北海道へえぞ松を見に行ったとき、
針葉樹林を走りのぼるジープの上で当惑したこと は、どれがえぞ松だか、みな一様にしかみえず、
見分けができないことだった。仕方がないので、目的地についてから、教えを乞うた。あなたは梢の葉っぱ
ばかり見るから、わからなくなっちゃう、幹の色、木の肌の様子も見てごらんといわれた。
つまり、高いところにある葉や花にだけ、うつつを抜かすな、目の高さに ある最も見やすい元のほうを見逃すな、ということである。そのときに、これは木の装いであり、樹皮をきものとして見立てれば、おぼえの手掛かりになると知った。

 不二聖心の森を歩きながら、木々の樹皮の様子の実にさまざまであることに気づき、幸田文の文章を
思い出しました。とりわけ印象的だったのは、鋭い棘の生えるハリギリの木肌です。
棘があるのは若木の時だけで成長とともに木肌の様子は変わります。
写真のハリギリはかなりの樹高に達しており、いくつかの 棘は手で触れると簡単にとれてしまいました。
 

 樹皮を見ること以外にも樹形を見たり、洞を見たり、森の楽しみは尽きません。
足元にはいろいろなキノコが生えています。今日はワインレッドのベニイグチと出会いました。

2011.08.17

オオフタオビドロバチの泥集め・オナガバチの産卵

平成23年8月17日 水曜日

 不二聖心の敷地内には東名高速道路と国道246号線が通り、その上に聖心橋という橋がかかっています。
今日はその付近の自然を観察しました。

 まず見つけたのは、巣作りのための泥集めをするオオフタオビドロバチです。
(オオフタオビド ロバチについて4月20日のフィールド日記でも紹介しました。)
オオフタオビドロバチがいたところだけが壁面が深くえぐれていました。
オオフタオビドロバ チは筒の中に泥で仕切りを作り産室としますが、
この壁面の泥がドロバチの求める土の条件にぴったり合っているのだと思います。

 オナガバチの1種が産卵している様子を観察しました。メス同士が産卵場所を奪い合っているように見えます。オナガバチにこのような習性があるのか、興味深い問題です。

 他にもいくつかの貴重な発見があり、東名高速の近くにも豊かな自然が存在していることがわかりました。
毎日新聞に載っていた中村桂子さんの言葉を紹介して今日の日記を終わります。

 自然はあるのではなく、見ようとする者にだけ見えるのである。

『里山だより』『めぐる命をはぐくむ風景・水辺』(今森光彦)の書評より

2011.08.16

ツリガネニンジン・イチモンジカメノコハムシ・ツノトンボの幼虫

平成23年8月16日 火曜日

ツリガネニンジンが咲きました。秋が近いことを感じます。

 毎日見続けることで初めて気づける変化があります。
8月7日のフィールド日記で紹介したイチモンジカメノコハムシの幼虫が成虫になり、
ツノトンボの卵から幼虫がかえりました。