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フィールド日記

2011.08.15

マツヨイグサ

平成23年8月15日 月曜日

 今の時期の不二聖心で最もよく見られる花の一つはマツヨイグサでしょう。
宵を待って咲くマツヨイグサは昼間はしぼんでいますから、
早朝でなければ下のような写真はなかなか撮ることができません。

 竹久夢二の詩に曲がつけられた有名な歌「宵待草」では、待宵草が宵待草と言い換えられています。
この歌についての面白いエピソードが、『花ごよみ』(杉本秀太郎)という本に紹介されていました。
以下に引用してみましょう。

 「宵待草」は、大正末から昭和にかけて愛唱された。夢二の歌詞は一番しかなかったが、
レコー ド会社がつづきの歌詞を西条八十に依頼したという。そして西条が付け足した歌詞には
「宵待草の花が散る」とあったという。待宵草の花は、朝日を受けるとし ぼんでしまう。散りはしない。
人々の失笑を買った二番の歌詞は、幸いにして歌う人もなく、忘れ去られた。

2011.08.14

ツチイナゴ・ホオズキ・ニジュウヤホシテントウ・ミヤマアカネ

平成23年8月14日 日曜日

 温情舎小学校の跡地にクサギの群生地があります。こちらのクサギにも昨日のキャンプ場のクサギと同じようにカブラハバチが来ているのではないかと思い、確認するために跡地に行ってみました。
予想通り、数匹のカブラハバチを見ることができました。
温情舎の跡地では、ツチイナゴの幼虫もたくさん見ることができました。
5月26日のフィールド日記に紹介したのが親で、その子供たちの世代がしっかり育ってきています。

 跡地にはホオズキの実がたくさんなっていました。ホオズキはナス科の多年草ですが、
ナス科の大害虫であるニジュウヤホシテントウが葉をほとんどすべて食いつくしていました。

 ミヤマアカネのオスの赤色がますます鮮やかになってきました。ミヤマアカネのオスは成熟すると
体がまず赤くなり、縁紋の白が赤に変わります。このオスはかなり成熟が進んでいます。
 

 ちなみに下の写真は8月7日に撮影したものです。この1週間で確実に季節がすすんだことがわかります。

 

2011.08.13

クサギ・カブラハバチ・スズバチ

平成23年8月13日 土曜日

猛暑の不二聖心で貴重な発見をしました。

 日当たりのさほど良くない、キャンプ場に向かう道でもクサギの花が咲き始めました。
クサギは美しい花を咲かせますが、悪臭を放つので「臭い木=クサギ」と名付けられました。

 そのクサギの葉の上にカブラハバチがいました。しかも数匹がとまっていました。何かあると思いつつ
坂道を上がり、またクサギの木を見つけました。そこにも同じようにたくさんのカブラハバチがいたのです。
クサギとカブラハバチに特別なつながりがあることを確信し、帰宅後いろいろと調べてみました。その結果、
カブラハバチがクサギにいる理由として考えられることは二つあることがわかりました。
一つは、クサギの葉に生えている腺毛状突起を摂食することで体内にクサギの苦味物質を取り込み
外敵から身を守る一助としているというものでした。もう一 つの説はさらに驚くべきことを伝えていました。
クサギの腺毛状突起を摂食したカブラハバチは体内の成熟卵の数が増える傾向があるというのです。
つまりクサ ギにカブラハバチが集まるのは生殖能力を高めるためということです。
「カブラ」は「大根」の古い言い方であり、カブラハバチは大根の害虫として知られていますが、
大根の真の敵はカブラハバチではなくクサギであったのかもしれません。

 温情舎小学校の跡地の石垣にスズバチがとまっていました。カブラハバチが比較的原始的な種類の
ハチであるのに対して、スズバチは進化の最先端をいくスズメバチ科に属しています。
スズバチは、土を用いて巣を作り、その中に卵を産み幼虫を育てます。

2011.08.12

シオカラトンボ・ウスバカゲロウ

平成23年8月12日

 仕事を終えてから、夕方の雑木林の道を歩いてみました。
3分程度の間にカヤキリのオスが鳴く姿を4匹も見ることができたのには驚きました。

 ムギワラトンボ(シオカラトンボのメス)が夕方の光を受けて静かに草の上に止まっていました。

 ウスバカゲロウも見かけました。あまり見かけない種類です。
不二聖心の中に何種類のウスバカゲロウがいるのか、まだまだ見当もつかない状態です。
 

2011.08.11

オオアオモリヒラタゴミムシ・ツチアケビ

平成23年8月11日 木曜日

 図書館で本を選んでいたら、日本最大のトンボ、オニヤンマが目の前を何度も横切っていきました。
どうやら図書館に迷い込んでしまったようです。8月の不二聖心ならではの出来事だと思いました。

 昆虫研究家の平井剛夫先生にゴミムシの同定をお願いしていたのですが、その返事が届き、
下の写真のゴミムシがオオアオモリヒラタゴミムシであることがわかりました。
不二聖心に生息する生物をまた1種確認することができました。平井先生には深く感謝申し上げます。
合わせて平井先生から「不二聖心のフィールド日記」の誤同定の指摘があり、7月31日のフィールド日記で
ツマグロヒョウモンのメスとして紹介したのは、ヒメアカタテハだとわかりました。
この場を借りて訂正させていただきます。
平井剛夫先生は最近、刊行された『恐るべし、外来生物』(しずおかの文化新書)の
昆虫の章を執筆なさっています。この本からもたくさんのことを学ぶことができそうです。
 

 7月6日のフィールド日記で紹介したツチアケビのその後の様子を、たくさんの蚊に刺されながら観察しました。ぜひ2枚の写真を比較してみてください。

2011.08.10

カヤキリ・ジャノメチョウ・エビイロカメムシ

平成23年8月10日 水曜日

 この夏、初めてツクツクボウシの鳴く声を耳にしました。昆虫学者の矢島稔氏は
「東京あたりでは八月の中頃から鳴き出し、この声を聞くと『宿題やったか』といわれているようで、
苦々しい奴だと思ったことがある」と書いています。

 今日は、不二聖心のフィールドのすばらしさを再認識することができました。
まずは下の写真をご覧ください。何かが隠れているのがわかるでしょうか。

 中央に写っているのがカヤキリというキリギリス科の昆虫で、10の都道府県で、絶滅危惧種・準絶滅危惧種に指定されています。草に見事に同化してしまっていて、
上に突き出ている産卵管の赤茶けた色だけが少し目立つ程度です。
カヤキリはススキ野原を好みますが、飛ぶことが苦手で移動能力が低いので環境破壊に非常に弱いと言われます。手入れの行き届いたすすき野原でしか生息できないのです。
その点で不二聖心のすすき野原は格好の生息場所です。
次は、ジャノメチョウです。東京都は、このチョウを絶滅危惧Ⅰ類に指定しています。幼虫の食草はススキです。

 ススキが養う命はまだまだあります。エビイロカメムシもその一つです。
今日は初めて幼虫を撮影することができました。

 これ以外にも何種かの希少種に出会うことができました。運が良ければ、
ごく短時間に絶滅危惧種にいくつも出会えてしまうフィールド、それが不二聖心のフィールドです。

2011.08.09

コマツナギ

平成23年8月9日 火曜日

今日も暑い一日でした。裾野市の最高気温は32.9度でした。

 不二聖心では今年もコマツナギがたくさん咲いています。「コマツナギ」の「コマ」は「瓢箪か ら駒」の
「コマ」と同じで「馬」のことを表しています。つまり、その茎に馬をつないでも大丈夫なほどに
茎が丈夫なことからこの名がつけられたのです。遠い昔、暑い夏の日に実際にコマツナギに手で触れ
その丈夫さを自ら確かめた人が何人もいたのでしょう。「駒繋ぎ」という名前が多くの人の共感を呼んだ
からこそ、和名として定着したのだと思われます。
コマツナギの花は、人間と自然との距離が今よりずっと近かった時代を、その花を見る者にしのばせます。


2011.08.08

ツマグロヒョウモンの幼虫と蛹

平成23年8月8日 月曜日

今日も不二聖心は快晴で、牧草地ではさまざまな生き物が活発に動いていました。

 チョウだけに限ってみても、モンキアゲハ、ジャコウアゲハ、サトキマダラヒカゲ、ツマグロ ヒョウモンなどを短時間で観察することができました。7月15日、31日に「フィールド日記」でも紹介したツマグロヒョウモンについては、幼虫と蛹も確認 することができました。
ツマグロヒョウモンは不二聖心に完全にすみついていることがわかります。

 1980年に刊行された学研の学習科学図鑑には「ツマグロヒョウモンは、
日本ではほとんど全 土で採集されるが、完全にすみついているのは四国、九州以南の暖地である。」
という記述があります。この30年で、人間がツマグロヒョウモンの生息域を変 えてしまったとしたら、
それは極めて憂慮すべきことです。

2011.08.07

イチモンジカメノコハムシの偽装とツノトンボの卵

平成23年8月7日 日曜日

 今日は衝撃的な出会いを経験しました。
図鑑でしか見たことがなかったイチモンジカメノコハムシの幼虫に、第二牧草地から東名カントリーまでの間の
林道で出会ったのです。イチモンジカメノコハ ムシの幼虫は自分の糞を背中に乗せて擬装します。
どのような進化の過程を経てこのような擬装をするようになったのか、
その不思議と姿のあまりの奇妙さに思 わず唸ってしまいました。

 7月30日の「フィールド日記」で紹介したツノトンボの卵を見つけました。
希少種のツノトンボですが、来年の夏もきっと姿を見せてくれることでしょう。

2011.08.06

井坂洋子の「存在が語る」とダイミョウセセリの幼虫

平成23年8月6日 土曜日

詩人の井坂洋子さんの「存在が語る」というエッセイを読み、次のような一節に出会いました。

 植物が優しく思えたり、犬や猫をはじめ動物たちがあわれでいじらしく思えたりするのは年齢のせいだろうか。存在そのものが何かを語っている者の方が、言葉で語る者より、胸にぐっとくるのである。

 不二聖心にも、その営みにいじらしさを感じる生き物がたくさんいます。
今日はその中からダイミョウセセリの幼虫を紹介します。

 今の季節、野外で植物を観察していると、下の写真のように一部分がめくれている葉をよく見かけます。
ぜひ一度、その葉をそっと裏返してみてください。


 するとそこには一匹の小さな虫が隠れています。7月23日の「フィールド日記」で紹介した
ダイミョウセセリの幼虫です。こんな小さな体で既に自分の身を隠すすべを体得しているのです。
この小さな命が無言で語りかけるものも決して少なくないように感じます。