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フィールド日記

2014年05月

2014.05.31

アシナガイタチタケ

 久しぶりに「共生の森」できのこを見つけました。専門家に同定を依頼し、アシナガイタチタケであると教えていただきました。今の季節によく見られるきのこだということです。
 顕微鏡も使わずに、形態的特徴から種名までを言い当てる専門家の同定力には驚いてしまいます。

今日のことば

今日,学問の世界では,進化を基盤とする分子生物学という更に新しい分野がめざましい発展をみせ,これにより系統を重視し,分類学に おいてもこれを反映させていく分類学が,より確実なものとして主流を占めてきています。
若い日から形態による分類になじみ,小さな形態的特徴にも気付かせてくれる電子顕微鏡の出現を経て,更なる微小の世界,即ちDNA分 析による分子レベルで分類をきめていく世界との遭遇は,研究生活の上でも実に大きな経験でありました。今後ミトコンドリアDNAの分析により,形態的には区別されないが,分子生物学的には的確に区別されうる種類が見出される可能性は,非常に大きくなるのではないかと思われます。私自身としては,この新しく開かれた分野の理解につとめ,これを十分に視野に入れると共に,リンネの時代から引き継いできた形態への注目と関心からも離れることなく,分類学の分野で形態のもつ重要性は今後どのように位置づけられていくかを考えつつ,研究を続けていきたいと考えています。
In academia today, an even newer field of research, molecular biology based on evolution, is seeing remarkable development. As a result, more importance is placed on phylogeny, and systems based on phylogeny are considered to be more accurate and are now the mainstream of taxonomy. 
As I have been familiar with classifications based on morphology since I was young, the appearance of the electron microscope which enabled me to observe minute morphological characteristics, and my encounter with an even smaller world, where classification is based on DNA analysis at a molecular level, have been great experiences for me as a researcher.
In the years ahead, I think the analysis of mitochondrial DNAs will open up great possibilities of discovering new species which cannot be distinguished morphologically but which can be clearly distinguished at a molecular biological level. I hope to understand and take into consideration this newly developing field of research, but at the same time, I intend to continue to give my attention to and keep up my interest in morphology, which is a field of study carried on from Linné's days. I would like to continue my research, always keeping in mind the question of what will be the importance and role of morphology in the field of taxonomy in the future.

「リンネ誕生300年記念行事での天皇陛下の基調講演(原文英文)」より 

2014.05.29

グループフレーツと宮川早生(温州みかん)

20年前に寄宿舎のデザートとして出たグレープフレーツの種が立派な木となって「共生の森」で育っています。グループフレーツ独特の鮮やかな緑の葉です。


「共生の森」には、宮川早生(温州みかん)の花が咲いています。訪花しているアリも写っています。昨年と同じように秋には高校1年生がこの実を食べられたらと思います。


今日のことば

木々には木々だけの秘めている知恵がある。
アレコレ頭ばかり使う人間には持てない知恵だ。

木々は木々だけの持つ愛を持っている。
セコセコ押しのけあう人間が忘れちまった愛だ。
                         加島洋造



2014.05.26

アンネのバラとサンショウバラ

 5月はたくさんのバラが咲きにおう季節です。不二聖心でも色とりどりの美しいバラを見ることができます。


図書館の花壇では、アンネ・フランクゆかりの「アンネのバラ」を見ることができます。


サンショウバラも咲いています。サンショウバラは日本の野生のバラでは最も大きく、静岡県、山梨県、神奈川県の富士山周辺にのみ自生するバラとしても知られています。



今日のことば

薔薇ノ木ニ薔薇ノ花咲ク
ナニゴトノ不思議ナケレド    北原白秋



 

 

 

2014.05.24

モリアオガエルの卵を今年初めて確認

 昨日の体育大会の準備の時に、ホトトギスとイカルの声を今年初めて聞きました。そして今年初めて築山の池でモリアオガエルの卵を確認しました。
 不二聖心でのモリアオガエルの卵の初確認日は次のようになっています。

   平成23年 5月24日
   平成24年 5月04日
   平成25年 5月24日

 今年が5月23日であったことを考えると、産卵時期にかなりのずれがあることがわかります。暦とは別の要因が産卵を誘発しているのかもしれません。例えば強雨のような気象現象です。裾野市では木曜日の夕方から一時雷雨となりました。


今日のことば

物みなの底に一つの法ありと日にけに深く思ひ入りつつ    湯川秀樹


 

2014.05.23

道路を横断するモリアオガエル

 掃除の時間にカエルの声が聞こえてきました。生徒にモリアオガエルの声だと話すと、生徒は希少種の声が身近に聞こえることに驚いていました。
 帰り道では、車の前をカエルが横切りました。これもまた絶滅危惧種のモリアオガエルでした。樹上生活をするために発達した吸盤が道路の横断には少し邪魔そうでした。


今日のことば

人間たちはいま急速に退化の道を歩んでいる。なぜなのだろう。その原因をつくっているのは、急ぎすぎる社会だ。現代は経済でも政治でも、そればかりか自分の人生さえ短期間に結果を出そうとする。そのことが人間たちから長期的な思考、根本から時間をかけて解決していこうという思考を失わせる。どこに根本的な問題があるのかに気づかない人間たちをつくりだしてしまうのである。
                                         内山節
             

 

 

2014.05.18

クロオオアリの結婚飛行

5月16日の夕方に「夏休み子供自然体験教室」の散策コースの下見をしました。その時驚くべき光景に出会いました。クロオオアリの結婚飛行を目にしたのです。結婚飛行のために生まれてきたオスたちが何十匹と巣の周りに集まり、次々に飛び立っていきました。近くには飛び立つ準備をしている女王アリもいました。今の時期の午後の時間帯だけに見られる貴重な光景でした。


こちらが女王アリです。


今日のことば

僕ら人間の分際で、この難しい人生に向かって、答えを出すこと、解決を与えることはおそらくできない。ただ、正しく訊くことはできる。本当にうまく質問することができたら、もう答えは要らないのですよ。
                                       小林秀雄

2014.05.15

マイマイカブリ

 同僚の先生から「珍しい虫がいます」と教えていただき、確認したところマイマイカブリでした。全国で希少種になりつつある甲虫です。カタツムリを食べる虫として知られるマイマイカブリは、カタツムリをより食べやすくするために、胸の部分を細長い首のように進化させました。これだけの形になるには気の遠くなるような時間がかかっているものと思われます。マイマイカブリはオサムシの仲間です。漫画家の手塚治虫が「オサム」というペンネームをつけたのは、マイマイカブリが大好きだったからと言われています。

今日のことば
岩田久二雄氏は昆虫採集のだいご味について、昆虫を見ていると「天地悠久という感じがする」と語る。又、自然の回復力というもののしたたかさを昆虫の内に見るともいうが、冒頭の章にある「夏には過去を、冬は未来を物語る」とみる地史的スケールをもった雄大な自然観は、小さな虫の中に宇宙が集約されていることを、岩田氏が鋭敏なセンスで明確に受けとめているからにちがいない。
                          『自然観察者の手記』の解説(藤原英司)より

2014.05.14

キツネアザミ

「共生の森」でキツネアザミが咲き始めました。「アザミによく似ているが実はアザミではない。狐にだまされたようだ」ということで、キツネアザミと名付けられました。

『日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか』という本の中で、哲学者の内山節が1965年頃からキツネにだまされたという話を聞かなくなったと書いています。キツネにまつわる、「人をだます動物」というイメージは薄れつつあるように思います。キツネアザミの名前の由来の説明には詳しい注釈が必要かもしれません。

 今日のことば 

自然を守る運動は、初めはその破壊に対する告発から始まり、次に自然を守るための規制を要求するようになる。だがその地点でとどまっていることも、また許されない。なぜなら自然を破壊するものは、具体的契機としては、開発や自然の改造であるとしても、その基礎には、私たちの近代から現代にかけての歴史と、その精神がよこたわっているからである。 だから私は人間の理性の力で森を守ろうとすることにも躊躇する。今日の人間の理性とは、現代社会の精神と分かちがたいものでしかない。
 恐らく森は、人間たちの営みの確かさをとおしてしか守れないであろう。森とともに暮らす人々の営み、そしてそんな人々を支えていく私たちの営み。そのさまざまな営みが、永遠に循環し続けるように展開していく森の時空とともにあるとき、森は永遠である。

 

                                  内山節

 

今日のことば

 

自然を守る運動は、初めはその破壊に対する告発から始まり、次に自然を守るための規制を要求するようになる。だがその地点でとどまっていることも、また許されない。なぜなら自然を破壊するものは、具体的契機としては、開発や自然の改造であるとしても、その基礎には、私たちの近代から現代にかけての歴史と、その精神がよこたわっているからである。

だから私は人間の理性の力で森を守ろうとすることにも躊躇する。今日の人間の理性とは、現代社会の精神と分かちがたいものでしかない。

恐らく森は、人間たちの営みの確かさをとおしてしか守れないであろう。森とともに暮らす人々の営み、そしてそんな人々を支えていく私たちの営み。そのさまざまな営みが、永遠に循環し続けるように展開していく森の時空とともにあるとき、森は永遠である。

 

                                  内山節

2014.05.09

卒業生の声とモリアオガエルの声

 久し振りに不二聖心を訪れた卒業生が、教室から聞いたカエルの声が懐かしいと話してくれました。教室から聞こえたということは、おそらくそのカエルは希少種のモリアオガエルだと思います。モリアオガエルは樹上生活をするカエルで、木の枝に卵を産み付けることで知られています。
産卵の時期はまだ先ですが、5月3日にはその姿を池で確認することができました。

今日のことば

夏よ夏よ鳳仙花散らし走りゆく人力車夫にしばしかがやけ    北原白秋

2014.05.06

ハルジオンとヤブキリの幼虫

 共生の森は今の時期、ハルジオンで覆われています。不二聖心の広いフィールドの中でも独特の風景です。切り開いた土地にいち早く進出する性質をハルジオンが持っていることが改めてわかりました。花の上にはヤブキリの幼虫が乗っていました。ハルジオンを中心に独特の生態系が形作られています。


今日のことば

桜が陽の中で散ってゆくさまを見ますと、花びらの一枚ずつが最後には光になってしまうようで、ああいう花はほかにあるでしょうか。
安田章生