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フィールド日記

2014.06.23

ムラサキシキブ  カノコガ

 裏道でムラサキシキブの花が咲き始めました。実に注目が集まりがちなムラサキシキブですが、花もなかなか美しいです。ムラサキシキブという名前はもちろん『源氏物語』の作者の名前に由来しています。


 「共生の森」で、この夏初めてカノコガを見つけました。「カノコ」は「鹿の子」を意味し、翅の模様が小鹿の背の斑紋に似ているところから付けられた名前です。古語では小鹿を「鹿の子」と表現するのが一般的でした。

 動植物の名前には古典ゆかりの人物や古語からとられたものがたくさんあります。

 
 今日のことば

 灌仏の日に生まれあふ鹿の子かな    松尾芭蕉

2014.06.22

ゲンジボタルと古典の授業  ホタルブクロ

 先週の古典の授業で、富士山麓の田んぼで採集したゲンジボタルを見せ、ホタルを詠んだ和泉式部の和歌の話をしました。思いの外、大きな反響がありました。


 校舎の裏でホタルブクロの膨らんだ蕾を見つけました。昔の子供が花の中にホタルを入れて遊んだところから、ホタルブクロを名づけられた花です。


今日のことば

ものを思へば沢の蛍もわが身よりあくがれいづる魂(たま)かとぞ見る   和泉式部

2014.06.19

栗の花

 著名な植物学者、前川文夫博士の『日本人と植物』(岩波新書)の中に「栗花落」という難読名字が紹介されています。「栗花落」は「つゆり」と読みます。「つゆり」は「梅雨入り」が縮まってできた言葉です。前川博士は、「栗花落」は梅雨入りの時期に栗の花が落ちることから生まれた名字だろうと推測しています。不二聖心は今が栗の花の盛りの時期です。梅雨入りからはずいぶん時間が経ちました。どうも梅雨入りと栗の花の落ちる時期は一致しないようです。それならばなぜ「栗花落(つゆり)さん」という名字が生まれたのか。じっくり考えてみたいものです。


今日のことば

世の人の見付けぬ花や軒の栗   松尾芭蕉


 

 

2014.06.13

モリアオガエルの不思議な産卵

 夜、帰宅する時に栗の花が香りました。梅雨の季節に欠かせない6月の風物詩です。
 昨日は、高校2年生が、「モリアオガエルをつかまえました」と教えてくれました。
 今日は、高校1年生が、「モリアオガエルがコケの上に卵を産みました」と知らせてくれました。下に水のない場所にモリアオガエルが産卵すると、それだけで新聞に載ることがあります。
 この卵の発見者は、「夏休み子供自然体験教室」の生徒スタッフの一人です。この観察眼が体験教室でも生かされることを願っています。(「夏休み子供自然体験教室」についてはホームページのトップページをご覧ください。)


今日のことば

人が何かに出会い、感動する。その感動の元をたどっていった時、その核のところには、こういった肯定の光景があるのではないだろうか。肯定の感情が世界を覆う、そのことを感動というのではないだろうか。                               太田省吾
 

 

2014.06.12

コマルハナバチの女王の死

 6月10日のフィールド日記で紹介したようにマルハナバチの働き蜂が訪花する季節となりました。春に女王蜂が生んだ卵がかえり、働き蜂として活動し始めたということです。働き蜂が働き始める季節は女王蜂が一つの役割を終える季節でもあります。
 今日は校舎の近くで既に息絶えているマルハナバチの女王蜂を見つけました。静かな思いに誘われる6月の自然の姿です。

 今日のことば

 苦しいことがなにもない人生なんぞ、無意味だよ。わしら人間は、祈るなら、苦しいことの意味を理解するのを助けてほしい、と祈るべきだ。苦しいことを取りのぞいてほしい、と祈るのではなくね。
                          『ナゲキバト』(ラリー・バークダル)より

2014.06.10

六月とサツキ  コマルハナバチ

 今日は陰暦の五月十三日です。旧暦の五月(さつき)は、ちょうど今の季節に当たります。ツツジ科のサツキという和名は陰暦の五月に咲くところから付けられた名前です。不二聖心の庭もさまざまなサツキの仲間であふれています。
 最もよく見られるのが、大盃(おおさかずき)と呼ばれる種類です。


 サツキの仲間は基本的に雄蕊は5本です。サツキ(五月)は5本。覚えやすいです。


 早朝からコマルハナバチの働き蜂が訪花していました。サツキの受粉はマルハナバチのように花にもぐることが得意な蜂でなければできません。自然界では、それぞれの生き物がそれぞれの役割を担っています。


今日のことば

五月雨をあつめてはやし最上川    松尾芭蕉
 

2014.06.06

幻のアジサイ シチダンカ

 理科室から本館に向かう通路の脇に幻のアジサイ、シチダンカが咲いています。シーボルトが「フローラ・ジャポニカ」に記載して以来、約130年間、幻のアジサイとなっていましたが、六甲山小学校の職員の荒木慶治さんによって1959年に六甲山で発見されました。
 花崗岩で有名な六甲山の土壌は酸性で、アジサイの栽培に適した土壌です。全国に広がる御影石のふるさとは、全国に広がるシチダンカのふるさとともなりました。


今日のことば

麦秋や子を負ひながらいはし売り  小林一茶


 

 

2014.06.03

ホオジロとオオミズアオ

 高い木のてっぺんでホオジロが元気よく鳴いていました。ここのところ毎日のようにホオジロの声を聞くことができています。


 放課後、中学1年生の3人の生徒が、「マリアガーデンに蝶のような生き物がいます」と教えてくれました。それはオオミズアオという蛾でした。澤口たまみは、宮沢賢治の「グスコーブドリの伝記」に出てくる蛾はオオミズアオに違いないと推測しています。


今日のことば

オオミズアオの繭から糸をつくることは、すでにまったく廃れており、宮澤賢治がそれを知っていたかどうかは、今では知るよしもない。しかしオオミズアオほど、幻想的な賢治の童話世界に似つかわしい昆虫を、私は知らない。
                                    澤口たまみ

2014.06.01

ナキイナゴ

 明日の「夏休み子供自然体験教室」生徒スタッフミーティングに備えて自然観察のコースの現状を確認しました。


 すすき野原ではナキイナゴの声があちこちから聞こえていました。


 ホオジロは木のてっぺんで良い声でさえずっていました。
 「夏休み子供自然体験教室」では視覚だけでなく聴覚や嗅覚など、さまざまな感覚を使って自然を味わうことができたらと思います。

 
 
 今日のことば

 もしこの世に
 本当の祝福
 というものが
 あるとすれば
 いま
 私の
 見ているものが
 それだ
 
             ローリー・リー
 

2014.05.31

アシナガイタチタケ

 久しぶりに「共生の森」できのこを見つけました。専門家に同定を依頼し、アシナガイタチタケであると教えていただきました。今の季節によく見られるきのこだということです。
 顕微鏡も使わずに、形態的特徴から種名までを言い当てる専門家の同定力には驚いてしまいます。

今日のことば

今日,学問の世界では,進化を基盤とする分子生物学という更に新しい分野がめざましい発展をみせ,これにより系統を重視し,分類学に おいてもこれを反映させていく分類学が,より確実なものとして主流を占めてきています。
若い日から形態による分類になじみ,小さな形態的特徴にも気付かせてくれる電子顕微鏡の出現を経て,更なる微小の世界,即ちDNA分 析による分子レベルで分類をきめていく世界との遭遇は,研究生活の上でも実に大きな経験でありました。今後ミトコンドリアDNAの分析により,形態的には区別されないが,分子生物学的には的確に区別されうる種類が見出される可能性は,非常に大きくなるのではないかと思われます。私自身としては,この新しく開かれた分野の理解につとめ,これを十分に視野に入れると共に,リンネの時代から引き継いできた形態への注目と関心からも離れることなく,分類学の分野で形態のもつ重要性は今後どのように位置づけられていくかを考えつつ,研究を続けていきたいと考えています。
In academia today, an even newer field of research, molecular biology based on evolution, is seeing remarkable development. As a result, more importance is placed on phylogeny, and systems based on phylogeny are considered to be more accurate and are now the mainstream of taxonomy. 
As I have been familiar with classifications based on morphology since I was young, the appearance of the electron microscope which enabled me to observe minute morphological characteristics, and my encounter with an even smaller world, where classification is based on DNA analysis at a molecular level, have been great experiences for me as a researcher.
In the years ahead, I think the analysis of mitochondrial DNAs will open up great possibilities of discovering new species which cannot be distinguished morphologically but which can be clearly distinguished at a molecular biological level. I hope to understand and take into consideration this newly developing field of research, but at the same time, I intend to continue to give my attention to and keep up my interest in morphology, which is a field of study carried on from Linné's days. I would like to continue my research, always keeping in mind the question of what will be the importance and role of morphology in the field of taxonomy in the future.

「リンネ誕生300年記念行事での天皇陛下の基調講演(原文英文)」より