フィールド日記
2014.08.21
タマアジサイの開花
裏道の沢のタマアジサイの花が咲き始めました。タマアジサイは、日本固有種で分布が限られていますが、富士山麓では数多く目にすることができます。ただし、見られる場所は限られていて、主に沢の近くです。不二聖心でも裏道でしか見ることができません。富士山麓では、「沢をふさぐ木」という意味でタマアジサイを「サーフタギ」と呼ぶことがあります。少し暗い場所に咲くことが多く、フラッシュを使わないと写真が撮れないこともよくあります。そのような場所でもヒラタハナアブやトラマルハナバチなど、多くの生き物がタマアジサイの花を求めて集まっていました。
今日のことば
戦時中や敗戦後の混乱期には、煙草は配給制となり、愛煙家にとって量の少ないことが悩みの種だったそうです。何か代用になるものはないかと、手当たり次第に乾いた葉を紙で巻いて、煙が出ただけでも喜んだといいます。
この中で、最も愛用されたものがタマアジサイの葉だったのです。他の植物を引き離した格別の代用煙草として、圧倒的に王座を占めていたそうです。
『富士山の植物たち』(渡辺健二)より
2014.08.08
夏休み子供自然体験教室
今日は、「第2回夏休み子供自然体験教室」が行われました。全国的に雨の中で晴天に恵まれ、晴れの日のプログラムをすべて実施することができました。下の写真は講師の平本政隆教諭から「生き物探しコンテスト」についての説明を受ける小学生の様子です。
一生懸命に虫を探す親子の姿もあちこちで見られました。この瞬間が、夏の思い出の一ページとなってくれたらと思います。
小学生が採集した中で最も数が多かったのはクルマバッタです。
今日は緑色型と褐色型のクルマバッタが互いに翅を鳴らしつつ近づいていく様子も観察しました。
今日のことば
窓の向こう、道の向こうに、何が見えますか。
雨の滴をいっぱいためたクモの巣を見たことがありますか。
樫の木の下で、あるいは欅の木の下で、立ち止まったことがありますか。
街路樹の木の名前を知っていますか。
樹木を友人だと考えたことがありますか。 長田弘
2014.08.06
「共生の森」の近くでも見つかったモリアオガエルの卵
昨日の「夏休み子供自然体験教室」で、うれしかったことの一つは参加者の皆さんとともにモリアオガエルの卵の観察ができたことです。木の枝に産卵するモリアオガエルの卵は不二聖心では5月から6月にかけて、毎年確認されています。8月の例はおそらく初めてでしょう。例外的な珍事と思いました。ところがです。今日、第2回の「夏休み子供自然体験教室」の準備のために「共生の森」を訪れたところ、モリアオガエルの鳴き声が聞こえたのです。鳴き声が聞こえるということは求愛行動が続いているということです。もしかしたら、「共生の森」の近くの池にも卵があるのではないかと思い、確認したところ、明らかに8月に産卵したと思われる卵が2つ見つかりました。
今日のことば
自然の中で自分自身の目、耳で鳥の姿を確認できた感動は実に大きい。この感動こそが自然保護涵養の最短距離であると私は思うのである。
高橋節蔵
2014.08.04
真夏にモリアオガエルが産卵
不二聖心のフィールドで驚くべきことが起こりました。モリアオガエルが産卵したのです。通常、モリアオガエルは6月頃産卵をします。20年以上、不二聖心のモリアオガエルを見てきて初めての経験です。全国的に見ても珍しい現象ではないかと思います。
今日のことば
山は父のやうに厳しい。
山はまた母のやうにやさしい。
山はぢつと、みつめてゐると涙ぐましいものが湧いてくる。
そして心はなごみ澄んでくる。
田中冬二
2014.08.03
牧草地のオナガササキリ
今日は、8月5日に行われる「夏休み子供自然体験教室」の「生き物探しコンテスト」のために牧草地の動植物の生息状況を改めて調査しました。やはり驚くのはバッタ相の豊かさです。東京都では既に絶滅したと言われるイナゴモドキや全国各地で絶滅危惧種に指定されているクルマバッタや鳴き声の実に美しいカンタンまで、さまざまな直翅目の昆虫を今年も確認することができました。校舎からほど近い校内にこれだけのバッタ相を有する場所を持つ学校はおそらく不二聖心が日本で唯一ではないかと思われます。下の写真はオナガササキリです。神奈川県で要注目種に指定されているバッタで、メスの産卵管が他のササキリに比べて長いのが特徴です。
今日のことば
静かに、わが心よ、これら大きな樹木たちは祈祷者なのだ。 タゴール
2014.07.30
チャバネアオカメムシをとらえたアオメムシヒキ
共生の森でアオメムシヒキがチャバネアオカメムシをとらえた場面に出会いました。ともに和名に「アオ」がつきますが、それぞれ、緑色の目と緑色の体色に由来します。チャバネアオカメムシは果実の汁を吸う農業害虫です。となるとこの恐ろしい姿のアオメムシヒキは益虫ということになるのでしょうか。
今日のことば
ウナギが私たちにつきつけている問題は、私たちの社会が持続可能な社会かどうかという問題である。 海部健三
2014.07.27
コオニユリの開花 夕暮れのすすき野原
ついに今年もコオニユリが開花しました。全国各地で絶滅危惧種に指定されている希少種です。夏休み子供自然体験教室では、コオニユリから学ぶ生き物の命のつながりの不思議を生徒スタッフが説明する予定になっています。
夕暮れの光に照らされたコオニユリは一際美しく感じられました。木の上にはホオジロが鳴き、地は虫の声に満ちていました。
今日のことば
夕ぐれの時はよい時。
かぎりなくやさしいひと時。
それは季節にかかはらぬ、
冬なれば暖炉のかたはら、
夏なれば大樹の木かげ、
それはいつも神秘に満ち、
それはいつも人の心を誘ふ、
それは人の心が、
ときに、しばしば、
静寂を愛することを、
知つてゐるもののやうに、
小声にささやき、小声にかたる・・・・・・
堀口大学
2014.07.25
ススキの葉の上の生き物たち
今年の夏休み子供自然体験教室の散策コースはススキ野原を通る予定です。
細いススキの葉を生活の場として利用している生き物はたくさんいます。
今日は、エビイロカメムシの幼虫がススキの葉にとまっていました。エビイロカメムシは親も子もススキの葉を好みます。
シロオビトリノフンダマシもいつもススキの葉の上にいます。撮影したのは夕方でしたが、夜行性のシロオビトリノフンダマシの脚が少し見え始めています。そろそろ活動開始でしょうか。
今日のことば
あたしはダイヤモンドを首にかけるより、机をバラで飾りたい。 エマ・ゴールドマン
2014.07.22
イタドリの葉上の生き物たち タンザワフキバッタ ヒカゲチョウ カツオゾウムシ
東名高速沿いの道でイタドリが葉を勢いよく茂らせ、その葉上がさまざまな生き物たちの生活の場になっています。今日見られた生き物の中から3種を紹介しましょう。
一番目はタンザワフキバッタです。タンザワフキバッタは名前に「丹沢」とあることからわかるように分布の限られたバッタです。富士山まで行くとタンザワフキバッタではなくメスアカフキバッタに種類が変わります。
二番目はヒカゲチョウです。ヒカゲチョウは青森県で準絶滅危惧種、福岡県で絶滅危惧Ⅰ類、長崎県で絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。日本の固有種ですか、北と南で生息数が減る蝶です。
三番目はカツオゾウムシです。鰹節によく似たゾウムシで、イタドリがあればどこでも見られるおなじみのゾウムシです。
今日のことば
露草も露のちからの花ひらく 飯田龍太
2014.07.17
ヤマユリとイノシシ
今日も暑い一日でした。この暑さに似合うのが、全国各地で絶滅危惧種に指定されているヤマユリの花です。大輪の花の咲き誇る風情は真夏にこそふさわしいと感じます。
この花の匂いをイノシシが好み、近づいてきて根を食べてしまうという話を聞いたことがあります。ヤマユリとの関係は明らかではありませんが、今日久しぶりにイノシシが地面を掘り返した跡を見つけました。
今日のことば
昨日の自分をわずかでも乗り越えていくこと、それがより重要なのだ。長距離走において勝つべき相手がいるとすれば、それは過去の自分なのだから。
村上春樹