フィールド日記
2014.07.16
「共生の森」でコハクオナジマイマイを発見
「共生の森」で、今年顕著な現象は、コハクオナジマイマイというカタツムリが急激に増えているということです。コハクオナジマイマイは、温暖化とともに生息域を北に広げていると言われる貝です。ただし、これには別の説もあり、物資の移動などとともに生息域を拡大しているという考え方もあります。いずれにしても、昨年、全く見られなかったコハクオナジマイマイが次々に発見されているという事実は、コハクオナジマイマイがなかなかの移動能力の持ち主であることを証しています。
今日のことば
青春はみづきの下をかよふ風あるいは遠い線路のかがやき 高野公彦
2014.07.11
クヌギとクシヒゲハネカクシ
2月の大雪でたくさんの木が倒れましたが、その中で最も多かった木の種類は、クヌギでした。その折れたクヌギから新しい木が育ち始めています。伐ってもまた生えてくるクヌギの特質を利用して、古くから炭焼きの材などにクヌギは利用されてきました。
「共生の森」のクヌギから滲み出ている樹液にクシヒゲハネカクシが来ているのが、平本政隆教諭(「夏休み子供自然体験教室」講師)によって発見されました。このハネカクシはボクトウガの幼虫に寄生することで知られています。クヌギの木を傷つけ樹液を出させるボクトウガの幼虫とハネカクシとのつながりを「夏休み子供自然体験教室」でも紹介できたらと思います。
今日のことば
クヌギは、昔から「苦をぬぐう木」という意味から、そう呼ばれるようになったんや。なんせ、はよ大きくなるし、カシなんかと変わらへんほど質のいい炭がとれるし、木を切ってもまた芽がでてきて、スギやヒノキみたいに植え直さんでもええからな。手間のかからん木や。林には、アベマキもあるけど、やっぱりクヌギが幹の表面のコルク質の部分が少ないんで一番やな!
小谷利夫
2014.07.04
絶滅危惧種のタシロラン発見
今日は「夏休み子供自然体験教室」のリハーサルを行いました。散策コースを歩いてみましたが、何より感動的だったのは、「共生の森」でタシロランを見たことです。
タシロランは26の県で絶滅危惧種などの希少種に指定され、環境省も準絶滅危惧種としています。光合成をしない不思議な白い蘭をスタッフ全員で見られたことが何よりうれしかったです。
今日のことば
愛宕山入る日の如くあかあかと燃し尽くさん残れる命 西田幾多郎
2014.07.02
「共生の森」の植樹
NPO法人「土に還る木・森づくりの会」の協力により、今年も「共生の森」にたくさんの木を植えることができました。木を植える際には、根の周囲の土に水を含ませて捏ね、空気を出すことで根がつきやすくなるという説明を聞いた生徒が、「何でも頭を使うことが大切ですね」と言っていたのが、心に残りました。
後半は、シイタケのほだ木をたてかける作業をしました。
あとは秋の収穫を待つばかりです。
今日のことば
人は新しいことを創めることを忘れない限り、いつまでも若い。
マルチン・ブーバー
2014.06.30
タラノキ コクロヒメテントウ
美味なタラの芽で知られるタラノキが「共生の森」の周辺で青々と葉を茂らせています。
タラノキは、この木だけで一冊の絵本が書けるほど、さまざまな生き物を呼び寄せる木です。画像の白い生き物はコクロヒメテントウというテントウムシの幼虫です。アリの捕食から逃れるために、アリと共生関係にあるカイガラムシに擬態しています。
今日のことば
にんじんは明日蒔けばよし帰らむよ東一華(あずまいちげ)の花も閉ざしぬ 土屋文明
2014.06.27
タケニグサの花
「共生の森」では、栗の花が盛りを過ぎ、タケニグサの花が咲き始めました。
タケニグサの茎は長く伸び、「クサ」という名に似つかわしくない大きさまで成長します。
この茎の中にギングチバチが巣を作ることがあります。ギングチバチの姿は不二聖心のフィールドで既に確認されていますので、いつか巣も見つかるかもしれません。
今日のことば
岩田氏の本を読んでから間もなく、私はギングチバチの巣を偶然に見つけることができた。終戦の年の冬で、たまたま青山墓地の附近を歩いていたとき、空襲警報が鳴った。昼間の空襲であった。すでに哨戒機の爆音がとどろき、なんとなく大規模な空襲のように思われた。私は墓地のなかへはいっていった。人家のある場所より樹木と墓石のつらなった人家のない墓地のほうが安全そうに思えたからである。敵機を待ついくばくかの時間に、私は立枯れているタケニグサの茎をさしたる期待もなく割っていった。茎の中には越冬中のトビイロケアリの雌がひそんでいたりした。そして一本の茎を割ったとき、なかからバラバラと黒いものがこぼれおちてきた。十数匹の蠅の残骸である。私の手はふるえた。この巣をつくった蜂は、たしかにクララギングチバチか、それに近い種類にちがいない。私はなおタケニグサの茎を割り、もう一つの巣の跡を見つけだした。しかしそれは過ぎ去ったものの残骸にすぎなかった。乾からびた蠅のキチン質が、おそらくは前の夏の、ふしぎな狩猟蜂の生活を暗示しているにすぎなかった。
『どくとるマンボウ昆虫記』(北杜夫)より
2014.06.26
共生の森の植樹の準備 セミの幼虫
6月25日の総合学習の時間に高校1年生が植樹のための準備として杭打ちと穴掘りをしました。
生徒が土を掘っていたら、蝉の幼虫が出てきました。形から判断するにヒグラシではないかと思われます。7年地中にいてからようやく地上に姿を現し、地上での1週間を過ごす蝉の生活史には、人をして時間というものに深く思いを至らしめるものがあります。
今日のことば
私は花が好きだ。
しかし、なぜと問われてもうまく答えることは出来ない。
だが、花に逢えば、感動し心が癒される。
千変万化する花ビラやしべの形や彩り、風に乗って漂う、夢を誘うような不思議な香り、新たな命を宿し育ち色づいてゆく果実や種子、そういったすべてが、何かを語りかけてくるのだ。
そう、それは過ぎてゆく時の流れの標しでもある。 栗田子郎
2014.06.23
ムラサキシキブ カノコガ
裏道でムラサキシキブの花が咲き始めました。実に注目が集まりがちなムラサキシキブですが、花もなかなか美しいです。ムラサキシキブという名前はもちろん『源氏物語』の作者の名前に由来しています。
「共生の森」で、この夏初めてカノコガを見つけました。「カノコ」は「鹿の子」を意味し、翅の模様が小鹿の背の斑紋に似ているところから付けられた名前です。古語では小鹿を「鹿の子」と表現するのが一般的でした。
動植物の名前には古典ゆかりの人物や古語からとられたものがたくさんあります。
今日のことば
灌仏の日に生まれあふ鹿の子かな 松尾芭蕉
2014.06.22
ゲンジボタルと古典の授業 ホタルブクロ
先週の古典の授業で、富士山麓の田んぼで採集したゲンジボタルを見せ、ホタルを詠んだ和泉式部の和歌の話をしました。思いの外、大きな反響がありました。
校舎の裏でホタルブクロの膨らんだ蕾を見つけました。昔の子供が花の中にホタルを入れて遊んだところから、ホタルブクロを名づけられた花です。
今日のことば
ものを思へば沢の蛍もわが身よりあくがれいづる魂(たま)かとぞ見る 和泉式部
2014.06.19
栗の花
著名な植物学者、前川文夫博士の『日本人と植物』(岩波新書)の中に「栗花落」という難読名字が紹介されています。「栗花落」は「つゆり」と読みます。「つゆり」は「梅雨入り」が縮まってできた言葉です。前川博士は、「栗花落」は梅雨入りの時期に栗の花が落ちることから生まれた名字だろうと推測しています。不二聖心は今が栗の花の盛りの時期です。梅雨入りからはずいぶん時間が経ちました。どうも梅雨入りと栗の花の落ちる時期は一致しないようです。それならばなぜ「栗花落(つゆり)さん」という名字が生まれたのか。じっくり考えてみたいものです。
今日のことば
世の人の見付けぬ花や軒の栗 松尾芭蕉