フィールド日記
2013.07.04
「共生の森」に高校1年生が植樹 早朝のヤブヤンマの羽化
2013.07.03 Wednesday
今日は高校1年生が「共生の森」に自分たちが選んだ樹木の苗木を植えました。小雨が降る中での植樹となり、梅組しか活動することができませんでしたが、さまざまな樹木が植えられた「共生の森」はいっそう賑わいを増しました。植樹の指導はNPO法人「土に還る木・森づくりの会」の方々がしてくださいました。指導者の方の中には、東京から来てくださった方もいらっしゃいました。心から感謝申し上げたいと思います。
植樹をするために電気柵の入り口を朝7時過ぎに開けました。写真はその時に隣の池で羽化していたヤブヤンマです。
今日のことば
時計やカレンダーに目をくらまされ、人生の一瞬一瞬は奇跡と謎であることを忘れてはならない。
H・G・ウェルズ
2013.07.02
牧草地のコマツナギが開花
2013.07.02 Tuesday
牧草地のコマツナギが開花しました。コマツナギは希少種のミヤマシジミ(鱗翅目シジミチョウ科)の食草としても知られています。不二聖心ではミヤマシジミを見ることはできませんが、県内にはまだ生息域が残っています。愛知県以西では確認できず、神奈川県では絶滅したと考えられる現状から、静岡県の個体群を世界最南端の個体群と考える人もいます。
写真からわかるようにコマツナギは丈の低い植物であり、人の手入れが行き届かないところでは雑草の中に埋もれてしまいます。不二聖心のようにコマツナギの可憐な花を観賞できる場所はそう多くはないのかもしれません。
今日のことば
小さな完成物を作るより、偉大な仕事を始める方が意味がある。
聖心会 第6代総長 マザー J・スチュアート
2013.07.01
音楽堂の下のツバメの巣 牧草地のコキイロウラベニタケ
2013.07.01 Monday
音楽堂の下にあるツバメの巣で親ツバメが抱卵している様子を観察しました。最近、全国的にツバメが減少してきていると言われており、「日本野鳥の会」は「消えゆくツバメを守ろうキャンペーン」を展開しています。
http://www.wbsj.org/nature/research/tsubame/
牧草地にたくさん生えているキノコは、イッポンシメジ科イッポンシメジ属のコキイロウラベニタケだとわかりました。コキイロは「濃色」という意味です。コキイロウラベニタケは、第13回南方熊楠賞を受賞した本郷次雄氏が命名したキノコです。
今日のことば
世界に不要のものなし。 南方熊楠
2013.06.30
アラゲハンゴンソウの帯化 築山のシマヘビ
2013.06.30 Sunday
6月26日のフィールド日記で紹介したアラゲハンゴンソウの奇形は、「帯化(たいか)fasciation」と呼ばれる現象であることがわかりました。分裂組織の突然変異や遺伝的原因、細菌の感染などによる植物の奇形の一つです。日本では1949年には既に『植物畸形学』(藤田哲夫)という本が出版されており、その中で「帯化」についてもふれられています。
昨日の第1回学校説明会にいらした方の中に「先ほどヘビに出会いました。いいことがありそうです。」とおっしゃった方がいらっしゃいました。ヘビを縁起の良い生き物ととらえる考え方が日本には古くからあります。この民間信仰が真実であるかどうかを問うのは難しいことですし、野暮な行為でしょう。ただ、ヘビが生息できる環境は自然豊かな環境であり、そこではあらゆる生物が生き生きと暮らしていて良いことが起こりやすいことは間違いないでしょう。
今日のことば
高校3年生の短歌より
ふと気づく月日の流れその速さ やるべきことを今やらないと
揺れる本、揺れるつりかわ、揺れる首。人それぞれのガッタンゴトン
ゆふ2号真っ赤な車両カタコトと筑後の時がゆっくり流れる
どこにでも行く先々で根を張って育つ綿毛のようになりたい
2013.06.29
ムシバミコガネグモの威嚇行動
2013.06.29 Saturday
ムシバミコガネグモと思われるクモの生息を確認しました。静岡県で3例目となります。2例目も不二聖心で発見されました。
フィールド日記 2013.01.12 ムシバミコガネグモの生息を確認 静岡県で2例目
ムシバミコガネグモの生息を可能にする何かが不二聖心の自然環境の中に存在するようです。今日はムシバミコガネグモの威嚇行動も観察することがでました。画像をクリックするとクモが網を激しく揺さぶる様子を見ることができます。
今日のことば
クモは人間の味方である。クモがどのように害虫の天敵となっているかが各地の農業試験場で研究されてきたが、徳島農試のデータを掲げると次のようである。
水田におけるクモの生息数は、たとえば十月上旬では一〇アール当たり五万八千匹から九万九千匹。そして一日に捕食されるウンカ、ヨコバイ類は約十万匹から二十三万匹であったという。これは無防除およびメチルパラチオン二千倍を散布ていどの水田でのデータだが、驚くべき捕食数である。いまでは、クモを天敵として利用する研究が各地のクモ学者の間で進められている。
福島彬人
2013.06.28
コハクオナジマイマイが生息場所を拡大
2013.06.28 Friday
温暖化の影響によって生息域を北に広げている可能性があると言われるコハクオナジマイマイが不二聖心で発見されて数年が経ちました。これまではすすき野原でよく見かけていましたが、今年から隣のキャンプ場でも見られるようになりました。不二聖心の中でもゆっくりと生息場所を拡大している可能性があります。コハクオナジマイマイは今最も注目すべき蝸牛ではないかと思いますが、下記のURLをクリックすると国立科学博物館動物研究部の長谷川和範先生のコハクオナジマイマイの文章を読むことができます。
http://www.kahaku.go.jp/news/2009/mail_snail11/
今日のことば
高校3年生の短歌より
傘立てで首長くして出番待ち雨の日は君の晴れ舞台だね
努力こそが夢への扉あけるカギそのカギつかめ日々の努力で
大丈夫そう言いつつもつのる危機動き出そうか変えたいのなら
流れゆくあの白い雲を追いかけてきっと見えるはず明日への道が
2013.06.27
電気柵4800ボルトを記録 タケニグサの開花 ヤブヤンマの羽化
2013.06.27 Thursday
昨日は生徒の下校時間を早めなければならないほどの大雨が降りました。雨の日のあとで「共生の森」の電気柵の状態がどうなっているかが、気にかかり確認してみましたが、太陽光発電の機械から約100メートル離れたところでも4800ボルトの電圧を記録していました。
「共生の森」の周辺に生えているタケニグサの花が咲きました。開墾地に真っ先に生え、やがて姿を消すことも多いタケニグサですが、「共生の森」でも遷移の過程を観察することができそうです。地味な花ですが、これほど多くの種類の虫を呼び寄せる花も珍しいです。
ヤブヤンマは今日も2個体羽化していました。この三日間の記録をまとめておきます。
6月25日 2個体
6月26日 1個体
6月27日 2個体
今日のことば
ああここにおれの進むべき道があった! ようやく掘り当てた! こういう感投詞を心の底から叫び出される時、あなたがたは初めて心を安んずる事ができるのでしょう。
夏目漱石
2013.06.26
連日のヤブヤンマの羽化
2013.06.26 Wednesday
「共生の森」の隣の池で、昨日と今日の2日間にわたり、ヤブヤンマの羽化を確認しました。ヤブヤンマは、周辺が木立に覆われた、光のあまり射さない池に多く生息すると言われるトンボです。昨日は2個体、今日は1個体、羽化を確認しましたが、まわりには他にもヤゴの抜け殻がたくさんあり、ヤブヤンマは今、羽化のピークの時期を迎えているものと思われます。以前は、この池をもっと明るい池にしたらどうだろうかと考えたこともありましたが、そうしてしまうとヤブヤンマは生息できなくなってしまいます。暗い湿気の多い場所をあえて好む生き物がいる。このことは、たいへん示唆的な事実ように思います。
今日のことば
ヤブヤンマ ――名前は冴えないが、姿はとても美しいトンボである。特に、成熟した雄の青い目玉は、常夏の海を思わせるほど澄んでいる。体は大きいくせに木立に囲まれた小さな池が好きで、林ややぶの近くで一生を過ごすことから名前をつけられた。
杉村光俊
2013.06.26
白いネジバナと板状の茎を持つアラゲハンゴンソウを発見
2013.06.25 Tuesday
今日は中学3年生の国語の授業で「不二聖心の新しい博物学」という調べ学習を行いました。教科書に載っていた池内了の「新しい博物学の時代」の主題を踏まえて、一つの対象物を理科系と文科系の2つの視点から見つめる学習です。生徒は先ず関心のある動植物を校内で見つけて写真を撮ることから始めました。いくつかの貴重な発見が生徒によってなされましたが、その中に驚くべき発見がありました。一つは白いネジバナ、もう一つは板状の茎を持つアラゲハンゴンソウです。
今日のことば
愛宕山入る日の如くあかあかと燃し尽くさん残れる命
西田幾多郎
2013.06.24
朴の花はいかにして自家受粉を避けるか
2013.06.24 Monday
キャンプ場に朴の実が落ちていました。朴の花は、開花した日に雌しべの先端の柱頭が現れ受粉可能となりますが、雄しべから花粉は出ません。自家受粉は行われないのです。次の日になると雌しべの柱頭は閉じ、雄しべの花粉が出てきます。他家受粉を可能にするための見事な仕組みです。写真の実ができるためには、花から花へと飛び回る昆虫の活躍があったことは間違いありません。
今日のことば
人はかの樹木の地に生えている静けさを知っているであろうか。ことに時間を知らず年代を超越したような大きな古木の立っている姿の静けさを。自然界のもろもろの姿をおもう時、常に静けさを感ずる。なつかしい静寂を覚ゆる。中でも最も親しみ深いそれを感ずるのは樹木を見る時である。
若山牧水