フィールド日記
2012.11.04
顔まで赤くなる赤とんぼ コノシメトンボ
2012.11.4 Sunday
コノシメトンボの写真を撮りました。赤とんぼにはいろいろな種類がありますが、顔まで赤くなる種類
はそう多くはありません。ナツアカネにもよく似ていますが、翅端が黒くなっていることで、ナツアカネ
とは区別できます。翅端の黒色が若干薄めであるのが写真からわかります。この部分の黒色は南にいくほ
ど濃くなるようですが、地域による違いもまた生物多様性の重要な要素です。生物の持つ地域差を大切に
していきたいものです。
今日のことば
人生ということばが、切実なことばとして感受されるようになって思い知ったことは、瞬間でもない、
永劫でもない、過去でもない、一日がひとの人生をきざむもっとも大切な時の単位だ、ということだった。
長田弘
2012.11.03
個体変異という不思議 フタオビオオハナノミ
2012.11.3 Saturday
今日は晴天に恵まれ、良い「秋のつどい」の一日となりました。茶畑ではまだたくさんのマツムシの声がやさしく響き渡っていました。この時期は気温が低くなっているため、昼間鳴くことが多くなるのかもしれません。
「共生の森」でフタオビオオハナノミが見つかりました。10月23日のフィールド日記で紹介したオオハナノミ(フィールド日記 2012.10.23 雨風をしのぐチョウセンカマキリ フタオビオオハナノミ)と同じ種ですが、翅の模様がずいぶん違うことに驚きます。この違いを個体変異といいますが、同じ種でもこれほど違いがあることを不思議に思います。今回の発見について、専門家の方から貴重な発見であるという評価をいただきました。ジガバチに寄生するフタオビオオハナノミは、生き物のつながりを表す不二聖心の新しいシンボルです。
今日のことば
しかし私は何よりも先に、――こういう他の望みもやはりそこを目指しているという意味で、――私自身と
調和した状態でいたい。私は今言ったような義務や仕事に私の最善を尽くすために、ものをはっきり見て、
邪念に悩まされず、私の生活の中心に或るしっかりした軸があることを望んでいる。
リンドバーグ夫人
But I want first of all ―in fact , as an end to these other desires ― to be at peace with myself.
I want a singleness of eye, a purity of intention, a central core to my life that will enable me to carry out these obligation and activities as well as I can.
2012.11.02
助け合う生き物たち オオスズメバチ
2012.11.2 Friday
シスターからスズメバチの巣を見てほしいという依頼があり、「山の家」(校内にある宿泊施設)に行っ
てきました。巣は確認できませんでしたが、何かの理由で桜の木の洞に集まっているオオスズメバチをた
くさん見ることができました。驚いたのは、2匹以上のスズメバチが集まって口移しで栄養の受け渡しを
する様子を何度も見かけたことです。「共生の森」での発見に続いて、この秋、2度目の助け合うスズメ
バチとの出会いでした。フィールド日記 2012.10.08 オオスズメバチの驚くべき生態を「共生の森」で観察朝にはキャンプ場で、口移しで栄養の受け渡しをするヤマアリの姿を見ました。自然界には互いに助け合う生きものたちが私たちの予想以上に存在するのかもしれません。
今日のことば
母なる大地の懐に 我ら人の子の喜びはある
大地を愛せよ 大地に生きる
人の子ら 人の子ら その立つ土に感謝せよ
『大地讃頌』より
2012.11.01
ツワブキ アキチョウジ マダラコシボソハナアブ
2012.11.1 Thursday
石蕗の花が咲くと冬が近いと感じます。花の少なくなる季節に石蕗の黄色の花は一際目立ちます。
下の写真には、花にやってくる獲物を待ちかまえる2匹のクモが写っています。どこにいるかわかる
でしょうか。
石蕗は有毒のピロリジジンアルカロイドを含みます。渡りをすることで有名なアサギマダラなどは植物
に含まれるピロリジジンアルカロイドを摂取し、自分自身が毒蝶となって身を守っています。
アキチョウジの花にはマダラコシボソハナアブが来ていました。
今日のことば
木の葉が落ちる 落ちる 遠くからのように
大空の遠い園生が枯れたように
木の葉は否定の身振りで落ちる
そして夜々には 重たい地球が
あらゆる星の群から寂寥のなかへ落ちる
われわれはみんな落ちる この手も落ちる
ほかをごらん 落下はすべてにあるのだ
けれども ただひとり この落下を
限りなくやさしく その両手に支えている者がある
リルケ
2012.10.31
サラシナショウマ
2012.10.31 Wednesday
裏道にサラシナショウマが咲いています。葉が悪臭を放ち、山菜として利用する時には、水にさらす必要
があるところから「サラシナ」という名前がつけられ、「ショウマ」は薬草であることを示す「升麻」の
意味を持っています。
サラシナショウマは、さまざまな薬効を持つ植物で、その含有成分についてもいろいろな研究がなされて
きました。50年以上前にサラシナショウマの研究を行った草野源次郎先生は、平成2年に研究を再開しま
したが、その時にサラシナショウマの自生地が激減したとお感じになったそうです。それから22年、サラ
シナショウマの自生地はますます少なくなっていることでしょう。不二聖心の裏道では幸い、毎年サラシ
ナショウマを見ることができます。この自生地を大切にしていきたいものです。
今日のことば
戦後日本の繁栄の礎はゴミにある。放射性廃棄物を含め、膨大なゴミと引き換えに栄華の巷を手に入れた。
豊かさとやらを追い求めたあげく、日本社会のゆがみは大きくなるばかり。そのゆがみは一部の人間に押
しつける。ゴミ処理施設は必要だが、近所にあっては困る。原発にしても、欲しいのは便利な生活だけ。
後は考えない。この無責任さが、日本を原発列島にした。
現代人の暮らしを改めて見渡せば、飽和状態をとっくに過ぎて、それでもなお成長神話にとらわれている。
日本は元々自然を大事にし、自然に生かされてきた民族である。人間が自然の中のちっぽけな存在に過ぎ
ないという事実を思い知るべきだ。原発の問題をすべて技術でどうにかしようとするのは間違っている。
日本人の考え方、生き方を根本から見直す必要がある。日本はいっぺん駄目になってみるしかないのか。
立ち止まって考える。今が最後のチャンスだろう。
野坂昭如
2012.10.30
アシダカグモ
2012.10.30 Tuesday
生徒が、アシダガグモがでたと教えてくれました。不二聖心では時々姿が見られるクモで、久しぶりの
再会となりました。アシダカグモについては、大利昌久さんの「わが国におけるアシダカグモの地理的分
布」という非常に興味深い論文があります。その中には次のような一節があります。
本種はインドが原産地で、貿易とくに交通の発達に伴い次第にその分布域を広げ、現在では全世界の熱帯、
亜熱帯、温帯の各地に生息しているといわれ、わが国からはKochが、1878年に長崎県ではじめて本種の
生息を報じた。
今日のことば
小さいクモたちは、晩秋の小春日和に地上に突き出た枯草や棒杭などに登ってゆく。先端に達すると後ろ
向きになり、尻を天に向け、三対の系イボのたくさん吐糸管(としかん)から糸をふきあげる。事実は、糸
をふきあげるのではなく、蛋白質状のせんどう粘液を分泌し、それを脚のせん動と上昇気流によって空中
へ放出するのだ。糸が伸び、その浮力がクモの体をひきあげるほどになったときクモは脚を放す。クモは
青空にのぼってゆき視界から去ってしまう。それらのクモのいくつかは、ジェット気流にまぎれこんで太
平洋を横断し、アメリカ大陸に移動することも、じゅうぶん考えられることだ。クモには国籍などあろう
はずがない。どこへでも生存地を広げる自由をもっている。しかし、目的地を指定することはできない。
気流任せのあてどのない放浪と冒険の旅でもある。このような空中移動を行なうクモは60種以上も確認さ
れており、多くは水田に生息する普通のクモで、コモリグモ科、フクログモ科、カニグモ科など、徘徊
(はいかい)性の小グモでしめられている。
錦三郎
2012.10.29
アキチョウジ
2012.10.29 Monday
裏道の一角に咲いているアキチョウジの数が今年は非常に増えました。紫の花が集まって咲いている
様子はたいへん美しく、そこがほとんど人通りのない場所であることを残念に思います。せめて写真で
その美しさをお伝えできればと思います。
アキチョウジは鹿児島県で絶滅危惧Ⅰ類、長野県で絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。
今日のことば
学校というところは、みんなして力を合わせ、真理を追究し、新しい知識や技術を獲得していくことが
楽しくてならないというところでなくてはならない。そのためには学校の教師が、真理とか美しいもの
とかへのあこがれを持ち、真理とか美しいものとかを追求することが楽しくてならないという人間にな
っていなければならない。
斎藤喜博
2012.10.28
フユイチゴ ヤマホトトギス
2012.10.28 Sunday
夏が長かったために秋から冬への季節の変化についていけないような感覚があります。
今朝のテレビでも四季が三季になりつつあるという話題を取り上げていました。
不二聖心のフィールドも秋の実りの姿とともに冬の訪れのきざしを見せ始めています。今日は裏道で
フユイチゴ(冬莓)の結実を確認しました。
その近くではヤマホトトギスが花の時期とは全く異なる姿を見せていました。あの複雑な構造を
持った花が、実りの時期にはきわめてシンプルな形に姿を変えていくことを不思議に思います。
不二聖心のヤマホトトギスについては以下のURLをクリックすると見ることができます。
https://www.fujiseishin-jh.ed.jp/field_diary/2012/09/5338/
今日のことば
「なぜ学校でこんなに勉強するの?」という子どもたちの質問に対する唯一の正しい答えは、
「学ぶということは素晴らしいことなんだよ」であると、私は信じている。断じて「大人に
なったら役に立つから」ではない。
浪川幸彦
2012.10.27
キイロホソガガンボ
2012.10.27 Saturday
昨夜8時過ぎに校内の茶畑の横の暗い道を車で下っていると、突然、タヌキが道を横切りました。
あやうく轢いてしまうところでした。ほっとしたのも束の間、今度は聖心橋の真ん中に一頭のシカ
が佇んでいました。車が近づいても逃げようとしません。聖心橋は東名高速の上にかかっているため、
左右の網が高く逃げ場を失ったと思ったのかもしれません。
タヌキにしろ、シカにしろ、不二聖心に生息する動植物の中でも哺乳類の存在感は実に大きなものが
あります。一方であまり目立たない生物も不二聖心のフィールドにはたくさん生息しています。
写真に写っているのは、キイロホソガガンボです。ガガンボと呼ばれる虫もあまり目立つことはなく、
中にはユウレイガガンボなどという名前がつけられているものもいます。しかし、よく見ればその姿
は種によってさまざまで、キイロホソガガンボは黄色を基調とした模様と長い後ろ脚が特徴的です。
写真の個体は体長が15ミリに対して後ろ脚は35ミリありました。
今日のことば
林檎がうまい。梨もしゃきしゃきと美味しい。葡萄も柿も、栗もまた。味覚の秋。
俳句といえば、芭蕉の句にも、秋をうたったものが。
……物言えば 唇寒し 秋の風
理不尽な社会や格差を拡大する流れには、唇寒し、となってもどんどん異議申し立てをしたほうがいい、とわたしは考える。が、芭蕉のこの句は、ひとの批判をしたり、自慢話をした後の自己嫌悪とわびしさ
を意味するものではないかという解釈が、何かに載っていた。
この期に及んでの原発推進や再稼働には、唇裂けても、反対!です。
「落合恵子のクレヨンハウス日記」より
2012.10.26
シソヒゲナガアブラムシ
2012.10.26 Friday
シソの葉の上で交尾しているカメムシを見つけました。種の同定にはいたりませんでしたが、
シソを好むカメムシである可能性が高いと思われます。
シソの葉の裏には、シソヒゲナガアブラムシがいました。こちらは間違いなくシソの葉につく
アブラムシです。体長2ミリの小さな小さなアブラムシです。
今日のことば
なぜ、勉強しなければならないのか。この問いを問い続けることは大切です。この問いを問い続ける限り、
私は人の幸せについて心を配ることを怠らないでしょうし、世界の問いかけに耳をすまし学ぶ値打ちのあ
るものを探し続けるからです。
佐藤学