フィールド日記
2012.01.25
キイロスズメバチの巣
2012.01.25 Wednesday
校内で見つかったキイロスズメバチの巣の写真です。すでに危険性がないように処理されたあとですが、そのあまりの大きさに思わずたじろいでしまいます。
今日のことば
真の愛と呼ばれるものは、誰もが愛せるものを愛することではなくて、誰からも顧みられない価値なきかに見えるものに注がれる愛である。
三浦綾子
2012.01.23
不二聖心の美林 モグリチビガ科の絵かき虫
2012.01.23 Monday
牧草地の横に美林としてかつて賞を受けた林があります。その林床には多くの植物が生息していますが、最も多いのはフユイチゴです。その葉に潜っている絵かき虫については「不二聖心のフィールド日記」でも紹介したことがありますが、絵かき虫の種類が、専門家の方の同定によって、モグリチビガ科の Stigmella属の「イチゴモグリチビガStigmella alikurokoi Kemperman et Wilkinson」か「イチゴアカガネモグリチビガStigmella ichigoiella Kemperman et Wilkinson」であることがわかりました。
今日のことば
今日散れる葉にすら深き彩りを賜えるものを天と思うも
田井安曇
2012.01.22
リョウブの冬芽
2012.01.22 Sunday
日本で見られる樹木で木肌が最も個性的なのは、リョウブではないかと思います。(1枚目の写真参照)冬の時期は一際その木肌が目をひきますが、それとともに最近は冬芽の白が目立つようになってきました。芽鱗がついていた時は茶色く見えていた冬芽(3枚目の写真参照)が、芽鱗がはがれると冬空に白い輝きを放つようになります。(2枚目の写真参照)写真はすべてキャンプ場で撮影しました。
今日のことば
一、 一日一日をていねいに、心をこめて生きること
二、 お互いの人間存在の尊厳をみとめ合って(できればいたわりと愛情をもって)生きること
三、 それと自然との接触を怠らぬこと
結局のところ人の世の詩も幸せもこの他になく、それ以外はすべて空しいことにすぎないのではないかな。
細川宏
2012.01.21
スミレモ
2012.01.21 Saturday
半田信司さんという方の「21世紀初頭の藻学の現況」という文章の中に次のような一節があります。
陸上の岩や樹皮表面などの水のない場所にすむ藻類は「気生藻類」と呼ばれる。ところが,ワカメやコンブのように水の中にすむ藻類はあえて「水生藻類」とは呼ばれないのはなぜか。いうまでもなく,“藻類は水の中にすんでいる”という先入観によるものに違いない。
確かに藻類と言えば水中をイメージしてしまうような先入観が私たちにはありますが、陸上に生活する藻類も多数いて、その代表がスミレモです。不二聖心の裏道の石垣にはこのスミレモがたくさん生息しています。
この種の藻類は水生藻類が陸上に進出して生まれたものですが、進出の理由について半田信司さんは以下のような興味深い仮説を「21世紀初頭の藻学の現況」の最後に述べていらっしゃいます。
最後に,藻類が陸上に進出したのは,炭素の利用効率を上げるためであるという仮説をとりあげたい。シャジクモ類は,CO2の利用効率の良さを求めて大気中にすむことを選択したという歴史がある。「気生」という,藻類にとっては厳しい環境に生きているものたちには,何か計り知れない潜在能力があるのかもしれない。今,人間の生活しやすい大気環境を維持するためにCO2 排出量の削減が叫ばれている中で,気生藻類には,その役割を担う救世主としての可能性が秘められている。
今日のことば
その思想がたとえ高潔なものであっても、人間の最終目標は思想ではなく行動である。
トマス・カーライル
2012.01.20
カンアオイ
2012.01.20 Friday
カンアオイの写真を撮りました。
ギフチョウの食草としても知られるカンアオイは、花が半ば地中に埋もれるようして咲いているため、種子の散布範囲が狭く分布移動速度が極端に遅いことで知られています。前川文夫博士は、1キロ移動するのに1万年かかるという説を唱えています。不二聖心の中でたくさんのカンアオイが見られるのは、裏道と林道で、その間は1キロ以上離れていますので、2カ所でカンアオイを観察すれば、1万年の時間を感じることができます。
カンアオイは地域によっては絶滅危惧種にも指定されている植物ですが、不二聖心にはあまりにもたくさんのカンアオイが生えていて、希少種であることを忘れてしまいそうです。
今日のことば
わたしの言葉に留まるなら、あなた方はまことにわたしの弟子である。あなた方は真理を知り、真理はあなた方を自由にする。
ヨハネによる福音書
2012.01.19
富士山の笠雲 モトグロホシアメバチ
2012.01.19 Thursday
今朝の予報では、静岡県東部は今夜から雪ということでした。その予兆であるかのように富士山には朝から笠雲がかかっていました。
下の写真はモトグロホシアメバチ Enicospilus nigribasalis (Uchida, 1928)の♀です。凍るような水の上に浮いていたのですが、手ですくって木にとまらせたところ、見事に息をふきかえしました。低山地に多く見られるヒメバチのようですが、静岡県では初の記録ということになります。
今日のことば
勇気とは、人間が彼の本質的な自己肯定に矛盾する実存の諸要素にもかかわらず、彼自身の存在を肯定する倫理的行為である。
ポール・ティーリッヒ
2012.01.18
白い富士山 ホソガ科の絵かき虫
2012.01.18 Wednesday
今朝の富士山は山裾にかなり近いところまで山肌が白く変わっていました。
アカガシの葉に描かれた模様を手掛かりに葉の中に潜っている「絵かき虫」の種類を確定できないかどうか、専門家の方に同定の依頼をしていたのですが、今日その結果が届きました。潜っていたのは蛾の幼虫です。ホソガ科のAcrocercops group の種で、Acrocercops querci Kumata et KurokoかAcrocercops unistriata Yuan かAcrocercops vallata Kumata et KurokoかCryptolectica chrysalis Kumata et Kurokoのいずれかであろうということです。あの薄い葉の中で生活することがどうして可能なのか、不思議でなりません。
今日のことば
冬がきたら
冬のことだけを思おう
冬を遠ざけようとしたりしないで
むしろすすんで
冬のたましいにふれ
冬のいのちにふれよう
冬がきたら
冬だけが持つ
深さときびしさと
静けさを知ろう
坂村真民
2012.01.17
クヌギエダイガフシ
2012.01.17 Tuesday
今朝は、校舎の上にうっすらと雪が積もっていました。
不二聖心の雑木林のクヌギやコナラの枝にはクヌギエダイガフシという虫こぶがたくさんついています。これは、クヌギエダイガタマバチという小さなハチが植物の組織内に化学物質を注入し、その結果細胞が異常な発達をしてできるものです。虫こぶの中でハチの卵は幼虫となり、やがて外の世界に成虫となってでてきます。そのあとは、虫こぶは空き家となりますが、その空き家をさまざまな生物が越冬場所として利用しています。不二聖心の雑木林だけでもテラニシシリアゲアリやモリチャバネゴキブリなどが越冬している様子を今月に入って確認することができました。テラニシシリアゲアリは女王を中心としたコロニーを小さな虫こぶの中で形成していて、たいへん驚きました。
いくつかの生物の中でとりわけ目立つのがクモの幼体です。わずか数ミリの幼体を4種類ほど採集しましたので、クモの研究者の方に同定を依頼したところ、ネコグモとアマギエビスグモとアリグモとフクログモの幼体だということがわかりました。やがてこれらのクモは成長して樹木の害虫を食べるようになることでしょう。虫こぶとクモと植物の興味深い関係がそこから見えてきます。
今日のことば
私は現代の人間が、もっとも多く失った感情が尊敬の感情だと思うのである。あまりに安価で猥雑な知識の吸収になれて、人は、世界にはまだ自分の理解出来ぬ深い秘密が隠れているという感情を失ってしまったのである。
梅原猛
2012.01.16
ケンポナシ
2012.01.16 Monday
下の写真は1950年代に不二聖心にいらしたエデルマン神父様の写真です。(理科室の横の通路に飾られています。)神父様は地元の方ともたくさんの交流の機会を持ち、良寛さんのような方だと評する人もいたそうです。
2枚目の写真はエデルマン神父様が植えられたケンポナシの木の実です。裏門を出たところに落ちていました。一目見たら忘れられない特徴的な形をしています。樹皮もなかなか個性的で、歳月を経た太い幹のケンポナシの大木は、裏門の前の木々の中でも、ひと際、威容を誇っています。
今日のことば
いいんだよ。ねずみは、ねずみ一ぴきぶん、きつねは、きつね一ぴきぶん、はたらくのさ。だれのなんびきぶんなんかじゃないんだよ。おとうさんはくまだから、くまの一ぴきぶん。ウーフなら、くまの子の一ぴきぶんさ。みんなが一ぴきぶん、しっかりはたらけばいいんだ。
『くま一ぴきぶんは ねずみ百ぴきぶんか』(神沢利子)より
2012.01.15
クロスジヘビトンボの幼虫
2012.01.15 Sunday
今日は、牧草地から5分ほどのところにある谷を流れる沢を歩きました。湧水がしみ出る沢は水量こそ少ないものの水質はたいへん良く、石を裏返したらクロスジヘビトンボの幼虫が見つかりました。水質の良いところにしか棲めない昆虫です。手を入れられないほど冷たい水でしたが、水の中に放すとすぐに石の下に潜ってしまいました。
今日のことば
世界が如何にあるかではなく、そもそも世界があるということ自体が神秘的なことである。
ヴィトゲンシュタイン