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フィールド日記

2012.01.14

クリオオアブラムシの卵

  2012.01.14 Saturday

 2011年12月7日のフィールド日記で紹介したクリオオアブラムシはすべて産卵を終え、木肌は黒い卵で覆われてしまいました。卵は天敵に襲われることもなくこのままの状態で越冬し、3月の半ばごろには孵化し始めるはずです。


 

今日のことば

生きてゆくことの意味 問いかけるそのたびに
胸をよぎる 愛しい人々のあたたかさ
この星の片隅で めぐり会えた奇跡は
どんな宝石よりも たいせつな宝物
泣きたい日もある 絶望に嘆く日も
そんな時そばにいて 寄り添うあなたの影
二人で歌えば 懐かしくよみがえる
ふるさとの夕焼けの 優しいあのぬくもり
本当にだいじなものは 隠れて見えない
ささやかすぎる日々の中に かけがえのない喜びがある

                       「いのちの歌」より

2012.01.13

柿本人麻呂の世界  韓国聖心との交流

  2012.01.13 Friday

 柿本人麻呂に「東の野にかぎろひの立つ見えてかへりみすれば月かたぶきぬ」という歌があります。今日の朝の不二聖心にはまさにこの歌の光景が広がっていました。東から昇る太陽の光をながめたあとで、振り返って陰暦二十日の有明の月の写真を撮りました。

 
夕方、韓国聖心の生徒のみなさんが不二聖心に到着しました。両校の生徒は夏以来の再会を喜んでいました。

 
今日のことば

神のごとくゆるしたい
ひとが投ぐるにくしみを
むねにあたため
花のようになったならば
神のまえにささげたい

                      八木重吉

2012.01.12

雪化粧した愛鷹山 プールのカルガモ サルトリイバラ

  2012.01.12  Thursday


今年一番の冷え込みとなりました。雪に覆われた愛鷹の山には朝日がさし、昨日とは全く違う風景が広がっていました。


 

 昨日まで 築山の池にいたカルガモの夫婦は、今日はプールに移動していました。

  2011年4月28日の「フィールド日記」で、ホウセンカヒゲナガアブラムシを紹介しました。ホウセンカアブラムシが付いていた植物がサルトリイバラです。今は葉を落とし、独特の付き方をする赤い実だけが、冬の景色の中で小さな輝きを放っています。


 

今日のことば

あの人のようになりたくて
あの人の後を追っていたら
あの人の前に
キリストがいた
                                   星野富弘

2012.01.11

コップの中のウラギンシジミ 築山の池のカルガモ

  2012.01.11 Wednesday

  2012年1月2日の「不二聖心のフィールド日記」で、越冬に失敗して落葉広葉樹の葉もろとも地面に落下してしまったウラギンシジミを保護した話を紹介し ました。そのウラギンシジミのその後の様子についてお伝えします。越冬状態を維持するために、外に置いて観察を続けていますが、今朝もしっかりと壁面(横 にしてある紙コップの底)にとまっていました。氷点下になることも珍しくない時期に、なぜ体液が凍ることもなく生き続けられるのか、不思議でなりません。

 

 築山の池には今日もカルガモの夫婦がいました。朝日が水面を照らして光が反射する幻想的な光景が見られました。

 

今日のことば

  人間はだれでも、他者から大切にされなければ、本当に自分を大切にしながら生きているという実感をもつことができない存在なのです。二十世紀前半 にアメリカで、生涯を人道的な精神医療に捧げたとも言われるH・S・サリヴァンは、そのことを見事に指摘しています。人間は自分の存在する意味や価値を、 人間関係のなかに見いだし、実感するのです。心を病んでいるすべての人に共通する問題は、人間関係の障害なのです。
  ですから人間は、自分がだれか他者のために役立っていることを自覚することなしには、本当に安心して充実した生きかたはできないものなのです。人間の幸福は、自分がだれかを幸福にしているという実感のなかから生まれてくるものなのです。

                               佐々木正美

2012.01.10

築山の池のカルガモ

  2012.01.10  Tuesday

 下の写真に鳥が3羽写っているのがわかるでしょうか。1羽は本館の建物の十字架の上にいるカ ラス、あとの2羽は池で泳いでいるカルガモのつがいです。2枚目の写真にはその様子が拡大されて写っています。前を行くのが雌、後ろを行くのが雄です。ま だ学校がにぎわいを取り戻す前の休み明けの朝の静けさの中でしばらくゆったりと泳ぎ続けていました。


今日のことば

 幼稚な人間とはIQが低いとか常識がないとかいうことではなしに、何が肝心かが分からぬ、そして肝心なことについて考えようとしない者だ。

                                  福田和也

2012.01.09

マリアガーデンのソシンロウバイ

  2012.01.09 Monday

 ソシンロウバイの花が次々に咲き始めています。
ロウバイは「蝋梅」と書き、「蝋」は花が蝋細工のように見えることを意味しています。花に光があたると、その部分だけが蝋燭に火を灯したように明るさを 増し、まるで自ら光を放っているかのように見えます。姿の美しさと香の芳しさをそなえた蝋梅は、他にはない魅力を持った花と言えるでしょう。
香に誘われてでしょうか。たくさんの双翅目の昆虫が花を訪れていました。

 


今日のことば

人間は常に人間になりつつある存在だ
かつて教えられたその言葉が
しこりのように胸の奥に残っている
成人とは人に成ること もしそうなら
私たちはみな日々成人の日を生きている
完全な人間はどこにもいない
人間は何かを知りつくしているものもいない
だからみな問いかけるのだ
人間とはいったい何かを
そしてみな答えているのだ その問いに
毎日のささやかな行動で

人は人を傷つける 人は人を慰める
人は人を怖れ 人は人を求める
子どもとおとなの区別がどこにあるのか
子どもは生まれ出たそのときから小さなおとな
おとなは一生大きな子ども

どんな美しい記念の晴着も
どんな華やかなお祝いの花束も
それだけではきみをおとなにはしてくれない
他人のうちに自分と同じ美しさをみとめ
自分のうちに他人と同じ醜さをみとめ
でき上がったどんな権威にもしばられず
流れ動く多数の意見にまどわされず
とらわれぬ子どもの魂で
いまあるものを組み直しつくりかえる
それこそがおとなの始まり
永遠に終わらないおとなへの出発点
人間が人間になりつづけるための
苦しみと喜びの方法論だ
                                                           谷川俊太郎

2012.01.08

ナンテン

  2012.01.08 Sunday

 1月6日の「不二聖心のフィールド日記」で紹介したフユシャクについて専門家の方に種の同定の依頼をしていたのですが、その同定結果が今日届きま した。「ナミスジフユナミシャクOperophtera brunnea」でした。これは冊子『不二の自然2』で紹介した「コナミフユナミシャク」と同じ種です。名前が違う理由は和名・学名が変更されたことによ ります。以前は、「ナミスジフユナミシャクOperophtera brunnea」は、コナミフユナミシャク(Operophtera brunnea)とオオナミフユナミシャク(Operophtera variabilis)の2種に分けられていましたが、同一種の個体変異であることが分かり、再び元の学名・和名に戻されたそうです。一つの種を確定する ことの難しさを感じます。
さて、今日は2枚の写真を掲載しました。
1枚目の写真は本館前で撮影したナンテンの写真です。「ナンテン」は「難を転ず」に通じるところから縁起のよい植物としてよく玄関先などに植えられます。今の時期は、葉が美しく紅葉し赤い実をつけています。
2枚目は何かわかるでしょうか。実はこれもナンテンなのです。こちらはポンプ小屋の道で撮りました。樹林下のため陽が当たらず紅葉することができなかったのです。日光を浴びるか浴びないかで植物の姿には大きな違いが生じます。
同じものを同じと判断すること、違うものを違うと判断すること、いずれもなかなか困難な作業です。

 

 今日のことば

 自分の中を見つめているような遠い目をしている人がときどきいる。
   もっとも遠いものとは自分なのかもしれない。
                                 舟越桂

2012.01.07

牧草地の鹿

  2012.01.07 Saturday

 今日は帰りに8匹のフユシャクを見かけて驚きました。しかし、もっと驚いたのは朝の牧草地での鹿との出会いです。5、6頭の群れで動いていましたが、なぜか雄の姿が目立ちました。写真に写っているのもすべて角が生え始めて数か月の雄ばかりです。

 

今日のことば

 作曲をすることは誰にでもできるんだろうと思うんですよ。でも作曲家は作曲をするんじゃなくて、まずいちばん最初の聴衆じゃなきゃいけないんだろう と。つまり作曲家にとっていちばん大事なのは聴くことだって思うんです。音楽を聴くだけじゃないんでよ。命っていうか生きてるものとか、自然とかすべて、 それを聴くってということが大事なんですよ。

武満徹

2012.01.06

フユシャク

  2012.01.06 Friday

  昨日の夜、家に帰る時には気温は既に3度まで下がっていました。校舎の裏に停めてあった車に乗りライトをつけた瞬間、目の前を一匹の蛾が横切り ました。フユシャクです。冬季にのみ活動する蛾です。お茶畑の横を走っていた時にまた一匹のフユシャクが前を横切りました。さらに正門をくぐりぬけようと した時、また一匹横切りました。その三匹目を採集して、その姿をカメラに収めました。それが下の画像です。フユシャクは口が退化しています。彼らが飛ぶの はメスを求めてであり、彼らの生きる目的は次の世代を残すことです。メスは翅が退化していて飛ぶことができません。フェロモンによってオスに居場所を知ら せています。きっと昨晩は、不二聖心の中にフユシャクのオスだけがわかるフェロモンが漂っていたことでしょう。人間の五感でとらえることのできる世界だけ が世界のすべてではないことを覚えておきたいものです。

 

 

  今日のことば

  ユーモアとは、にもかかわらず笑うことである。
                                                                アルフォンス・デーケン

2012.01.05

セイタカアワダチソウ ギングチバチ

  2012.01.05 Thursday

 要注意外来生物として長年、悪者扱いされ続けてきたセイタカアワダチソウは漢字で書くと「背高泡立ち草」となります。その花穂の泡立つ様子は花の時期が終って種子をつけるようにならないと観察できません。今の時期はまさに「泡立ち草」です。
昨日の朝日新聞の夕刊に「さらばセイタカアワダチソウ ―― 農環研 除草剤使わず駆除成功 ―― 」というタイトルの記事が載りました。次のような内容です。

 

 農業環境技術研究所(茨城県つくば市)が、全国に広がっている外来植物のセイタカアワダチソウを駆除する新たな手法を開発した。
同研究所は、セイタカアワダチソウが土壌のPHが低い(酸性度が高い)土地にはほとんど広がらないことに注目。セイタカアワダチソウなどの茂みを刈り取っ たあと、塩化アルミニウム剤を1平方メートルあたり1.2キロ散布して土壌のアルカリ度を下げると、チガヤなどの在来植物は復活するが、セイタカアワダチ ソウは2年間観察を続けてもほとんど生えなかった。
この土壌処理を、道路わきや農地周辺などで行えば、除草剤を使わずに効率的に駆除できるという。山口県内の果樹園の跡地を使って行った駆除実験では、セイ タカアワダチソウが減り、在来植物の種数が増えた。土壌処理をしなかった場所は5平方メートルあたりの在来植物は22種だったのに対して、処理した場所は 2年後に31種に増えていた。
今後、土の中にすむミミズや細菌などに対する塩化アルミの影響を調べ、他の外来植物の駆除にも役立つかも探る。


在来植物の増加を可能にするうれしいニュースですが、少し複雑な思いもあります。これだけセイタカアワダチソウが幅をきかせるようになるまでに、日本の 生態系はセイタカアワダチソウを組み込むかたちで調和できるように変化してきました。例えばセイタカアワダチソウから供給される多量の花粉や蜜によって活 動時期を秋遅くまで延ばすことになった生物もいたはずです。その生物たちが、人為的な植生の変化によって再び翻弄されることになります。
2枚目の写真のセイタカアワダチソウの花の上にいるハチは、ギングチバチという比較的珍しい種類のハチです。この写真は、11月に裏の駐車場で撮りまし た。(顕微鏡で見ると本当に口の周りが銀色の毛で覆われています。)このハチもセイタカアワダチソウに何らかの形で依存している可能性があります。セイタ カアワダチソウの減少によって少なからぬ影響を受けることになるかもしれません。

 

   今日のことば

    新しき光を揺りて
                       湧く水の如きおもひに拠りて生きむか
                                                                     菊地新