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フィールド日記

2012.01.03

沢の調査 サワガニ

  2012.01.03 Tuesday

  今日は茶畑の奥の谷の沢を調査してみました。短時間の調査でしたが、沢の水質はたいへんきれいであることがわかりました。短時間の調査でなぜ水 質がきれいであることがわかるのでしょう。それは、指標生物であるサワガニがたくさん生息していたからです。(サワガニの親子にも出会うことができまし た。)環境省は水質調査の実施を全国に呼び掛けていますが、その指導書には「サワガニがいたら水質はたいへん良いと判断していい」と書かれています。
写真のサワガニは青みを帯びていますが、これは静岡県東部に生息するサワガニの体色の特徴です。カニの体の色にも地域の特性が反映しているのです。

 


谷から上ってきた時、空の青さが目にしみました。

 

 

 今日のことば

 浜口神父様の紹介で私は、長崎教区が運営する高校の教師になり、国語教師の深堀勝さんを知りました。
父、妻、妹と静かに暮らしていた深堀さんは原爆に遭う。爆心直下にあった自宅は壊滅。がれきの中で三人の運命を予感し、思わず口ずさんだ。「主与え、主 取り給う。主の御名は賛美せられよかし」。満たされても、奪われても神を信じるという旧約聖書ヨブ記の一節です。妻は亡くなり父の骨は見つからず、妹も一 カ月して亡くなる。死の直前まで妹は、細い呼吸の中で長いラテン語の歌を歌い続けた。その後も信仰に生きた深堀さんの姿に、私はその後の人生に大きく影響 を受けたのです。

本島等(元長崎市長)

2012.01.02

正月の富士 鹿の足跡 ウラギンシジミ

  2012.01.02 Monday

  グラウンドから見える正月の富士山です。美しい山容を眺めていると故西山民雄先生の「富士の冴え祈りの心諭しけり」の句が思い出されました。
グラウンドには鹿の足跡がたくさんついていました。休暇中は鹿の遊び場となっているようです。
2011年8月20日のフィールド日記でウラギンシジミの幼虫の驚異的な擬態について紹介しました。あの時期の幼虫は今は成虫となってツバキなどの常緑 広葉樹の葉裏で越冬しています。と普通は書くのですが、今日、ポンプ小屋の道で地面に落ちているウラギンシジミを見つけました。よく見ると落葉広葉樹の葉 裏につかまったまま横たわっています。落葉する葉の裏についたら落下することは目に見えています。雨が降ればそのまま死んでしまったことでしょう。無事保 護することができましたが、あの驚異的な擬態の技を持つウラギンシジミが越冬場所を間違えるとは、何とも不思議な話です。 

 

 


今日のことば

 人が何かに出会い、感動する。その感動の元をたどっていった時、その核のところには、こういった肯定の光景があるのではないだろうか。肯定の感情が世界を覆う、そのことを感動というのではないだろうか。

太田省吾

2012.01.01

コウヤボウキ

2012.01.01 Sunday
あけましておめでとうございます。
今年も不二聖心の自然のすばらしさをこの「フィールド日記」を通してお伝えしていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 10月30日に撮影したコウヤボウキが結実している様子を観察しました。下の写真が10月30日に撮影したものですが、ここに写っているクチナガ ガガンボが受粉昆虫として活躍したことがうかがわれます。この近辺はコウヤボウキが少しずつ数を増やしていますが、そのために受粉昆虫の活躍は欠かせませ ん。希少種であるコウヤボウキは花の形が筒状をしており、受粉に関われる昆虫は限られています。ふだん注目されることも少ないガガンボが大切な役割を自然 界の中で果たしているのです。多くの生物は他の生物とのつながりよって支えられています。今年も生き物のつながりにしっかりと目を向けていきたいもので す。

 

 下の写真が結実したコウヤボウキの写真です。

 

 


今日のことば

生命は   吉野弘

生命は
自分自身だけでは完結できないように
つくられているらしい
花も
めしべとおしべが揃っているだけでは
不十分で
虫や風が訪れて
めしべとおしべが仲立ちする
生命は
その中に欠如を抱き
それを他者から満たしてもらうのだ

世界は多分
他者の総和
しかし
互いに
欠如を満たすなどとは
知りもせず
知らされもせず
ばらまかれている者同士
無関心でいられる間柄
ときに
うとましく思うことさえ許されている間柄
そのように
世界がゆるやかに構成されているのは
なぜ?

花が咲いている
すぐ近くまで
虻の姿をした他者が
光をまとって飛んできている

私も あるとき
誰かのための虻だったろう

あなたも あるとき
私のための風だったかもしれない

2011.12.31

アリジゴク

2011.12.31 Sunday

第二牧草地から見た大晦日の空です。

 多くの生き物が活動をやめて越冬に入り、アリの姿もほとんど見かけなくなったこの時期に特別第3教室の下でアリジゴクの巣を見つけて驚きました。 巣の中にはちゃんとアリジゴクが住んでいました。
一度巣を壊して平らにしその後の様子を観察したところ、アリジゴクはきちんと巣を作りなおしました。
この時期もアリジゴクが活動している証です。しかし蟻などの小動物が活動していない時期になぜアリジゴクは巣をつくるのでしょうか。
今日は森の奥でもたくさんのアリジゴクの巣を見つけました。この時期の巣は決して珍しいものではないようです。

 

 アリジゴクがウスバカゲロウの幼虫であることは日本ではよく知られていて、日本人は長い間この虫に親しんできました。井伏鱒二の「蟻地獄」という詩からもそのことがよくわかります。

蟻地獄  井伏鱒二

小学校へあがる前のことーー
お寺の回廊の下が涼しかつた
そこの地面に二つ三つ蟻地獄の穴があつた
その穴のわきに身を伏せて
その穴にそつと頬を近づけて囁くのだ
「こんこん出やれ、鬼出やれ
こんこん出やれ、鬼出やれ」
さう囁きながら
穴のわきを静かに静かに手のひらで叩く
これは一人遊びの遊戯である

それを私はお寺の小僧から教はつた
「こんこん出やれ、鬼出やれ」
繰返し囁き繰返し叩いてゐると
穴の底から蟻地獄が顔を覗かすのだ
兜の鍬型のやうな頑丈な顎を出し
「おい、いたづらは止せ」と云ひたげにすぐ隠れる
それを見て子供一人で遊ぶ遊戯であつた

                     今日のことば

「頭のいい人」というのは「心のやさしい人」です。「成績のいい人は心の冷たい人だ」というのは嘘です。
一生懸命勉強する人は物の奥行きが見える ようになるので、心やさしい人になるのです。
本当に勉強する人は奥行きを学ぶのです。そういう人は思いやり深い人間になるのです。                                                      西経一

2011.12.29

テイカカズラ

2011.12.29 Thursday

 第2牧草地に向かう道の途中でテイカカズラの種を見つけました。種の上についている綿毛のおかげで遠くまで飛んでいくことができます。この工夫は 見事に成功しているようで、不二聖心ではいろいろなところでテイカカズラの種が落ちているのを見かけます。
見つけたら手にとって宙に投げてみてください。 ゆっくりと落下する様子を観察することがでるでしょう。

          今日のことば

わたしが生きているのはむだにはならないでしょう
もしだれかの心がひとつでも裂けるのをふせいであげられたら
ひとつでも生命の痛みを軽くしてあげられるなら
あるいは苦痛をしずめられるなら

あるいは一羽の弱ったこまどりを助けて
もういちど巣にもどしてあげられるなら
わたしが生きているのはむだにはならないでしょう
                                     エミリー・ディキンソン

If I can stop one heart from breaking
I shall not live in vain
If I can ease one life the aching
Or cool one pain

Or help one fainting Robin
Into his nest again
I shall not live in vain.
              Emily Dickinson

2011.12.28

ビロウドサシガメ

2011.12.28 Wednesday

 すすき野原でビロウドサシガメに出会いました。ビロウドのような藍色の光沢を帯びた頭部と胸部が印象的です。このサシガメは植物の根ぎわや落ち葉 の下で生活し、昆虫類や多足類などの小さな動物を捕食します。腹部の赤い色も鮮やかですが、落ち葉の下では藍色も赤色も誰の目にもふれることはありません。

     今日のことば

つまずいたりころんだりしたおかげで
物事を深く考えるようになりました

あやまちや失敗をくり返したおかげで
少しずつだが
人のやることを暖かい眼で
見られるようになりました

               相田みつを

2011.12.27

チャエダシャク

2011.12.27 Tuesday

葉を落とした木々の美しさが心にしみる季節となりました。

 12月22日に本館前で撮影したシャクガ科の蛾の画像を2人の専門家に見ていただき、チャエダシャクであることが判明しました。不二聖心初記録です。晩秋に活動する蛾です。
世界に35000種いると言われるシャクガの仲間の中でどの種であるのかを特定するのは至難の業です。
不二聖心だけでも驚くほどの数のシャクガが生息し ていることでしょう。シャクガの幼虫がいわゆるシャクトリムシです。Wikipediaにはシャクガの学名(Geometridae)についての次のような興味深い記述が載っています。

The name "Geometridae" ultimately derives from Latin geometra from Greek γεωμέτρης ("geometer, earth-measurer"). This refers to the means of locomotion of the larvae or caterpillars, which lack the prolegs of other Lepidopteran caterpillars in the middle portion of the body, with only two or three pairs at each end.

今日のことば

子どもを愛するだけでは足りない。愛を感じさせないといけない。
                 ドン・ジョバンニ・ボスコ

2011.12.26

牧草地の朝日 聖母子像 越冬するテントウムシ

2011.12.26 Monday

 今日もまた実に朝日の美しい朝でした。第二牧草地に向かう道の途中の聖母子像を覆うように三椏の木が枝を
広げています。三椏の蕾に隠れるようにしてテントウムシが越冬していました。

                        今日のことば

今日、あなたは空を見上げましたか。空は遠かったですか、近かったですか。雲はどんな形をしていましたか。
風はどんなにおいがしましたか。あなたにとって、いい一日とはどんな一日ですか。
「ありがとう」という言葉を、今日あなたは口にしましたか。
                                   長田弘

2011.12.25

イヌマキ

2011.12.25 Sunday

 イヌマキの実の写真を撮りました。一見赤い部分が実のように見えますが、これは実ではなく花床で、緑の部分が種子になります。赤と緑のクリスマスカラーが印象的な植物です。

 

             今日のことば

ことばで祈れなくとも、頭で祈れなくとも、生きることによって祈れる。
愛したいとねがって生きることそれ自体が立派な祈りなのだ。
                    ルネ・ヴォアイヨーム

2011.12.24

オサムシ

2011.12.24 Saturday

今日の牧草地では冬の空に美しい雲が数多く浮かんでいるのが見られました。

 オサムシの死骸を拾いました。オサムシは空を飛ぶことができず移動能力が低いため、種分化が起きやすいと言われています。このオサムシはアオオサ ムシかシズオカオサムシのいずれかです。
不二聖心内のオサムシ相の解明はまだまだこれからですが、詳しい調査がなされれば富士山山麓の自然史について重要な事実が見えてくるかもしれません。

    今日のことば

キリストが百度、千度生まるるとも、
汝の心に生まれざれば、
何の益かあらん。