〇お知らせ〇
同じ内容をインスタグラム「不二聖心女子学院フィールド日記」(クリックするとインスタグラムのページが開きます)にも投稿しています。より高画質な写真を載せていますのでぜひフォローしてください。

フィールド日記

2011.10.04

雪化粧の富士山・ウラナミシジミ・カゲロウ

平成23年10月4日 火曜日

上空の寒気の影響で今年一番の冷え込みとなりました。富士山も雪で真っ白でした。

 温情舎の跡地に生えているセイタカアワダチソウにウラナミシジミがとまっていました。よく見ると
翅の先に尾状突起と呼ばれる糸のようなものが付いているのがわかります。これを触覚に似せ、
翅の模様を目玉に見せて敵を欺いているのです。

 その近くのススキにはカゲロウがとまっていました。カゲロウがいるということは近くに
水質の良い川があることを示しています。

 

今日のことば

If a child lives with acceptance and friendship, he learns to find love in the world.

受け入れられて育った子は、世界に愛を見つけます。

                         ドロシー・ロー・ノルト

2011.10.03

スズメウリ・ススキの花穂とキンケハラナガツチバチ

平成23年10月3日 月曜日

 スズメウリが杉の木からぶらさがっているのに気付きました。
小さくて色も杉の緑に同化し実に目立たない実です。
熟しても赤や黄色に色づくこともなく白くなって枯れていきます。なんともはかなげな風情があります。

 キンケハラナガツチバチがススキの花穂にとまっていました。花穂の上に乗ったまま全く動こうとしません。
どうやらキンケハラナガツチバチにはこのような姿で休息をとる習性があるようです。

         今日のことば

もしも 走れないのならば 歩けるよろこび歌おう
もしも 歩けないのならば 立ち上がるよろこび歌おう
もしも 立ち上がれないなら 起き上がるよろこび歌おう
もしも 起き上がれないなら 目覚めるよろこび歌おう

                      樋口了一

2011.10.02

マツムシ・ショウリョウバッタモドキ

平成23年10月2日 日曜日

 ススキ野原で、マツムシの接写に成功しました。文部省唱歌の「蟲のこゑ」でおなじみの
「チンチロチンチロチンチロリン」という鳴き声を毎日、耳に していましたが日中は姿を見せることが少なく
警戒心も強いため、撮影はなかなか困難でした。それが今日は雌雄合わせて3匹の撮影に成功したのです。
マツム シのレッドデータリストは以下の通りです。

絶滅危惧Ⅰ類 群馬県
絶滅危惧Ⅱ類 東京都 千葉県
準絶滅危惧種 埼玉県 茨城県

 下の写真は、1枚目がメスで2枚目がオスです。

 実は昨日の夕方に、もう1種、直翅目の希少種の撮影に成功しています。ショウリョウバッタモドキです。
同じようにレッドデータリストを示します。

絶滅危惧Ⅰ類 群馬県
準絶滅危惧種 山形県 茨城県 千葉県 埼玉県 東京都 奈良県 高知県

 以前から、矢島稔先生が1983年にお書きになった『昆虫ノート』(新潮文庫)という本を愛読していますが、
その本にはショウリョウバッタモドキについて以下のように書かれています。

 とにかく四十年近く東京のまわりを虫を探して歩きまわっているから、いつどこで何に会えるかという
「昆虫ごよみ」が私の中にはできている。ところが近頃さっぱり会えなくなった種類がいくつかある。
直翅目ではキリギリス科のカヤキリとクツワムシ。バッタ科のショウリョウバッタモドキである。
特に後者は十年も会っていない。どれほど少なくなったかといわれても定量的に測定していないから、
いわば狩人のカンとしかいいようがないのだが……。
最後に出会ったのは四十八年夏で、しばしば訪れる相模湖に近い丘陵だったと記憶している。
その場所もすっかり変ってしまって、去年も遂にその姿を見出せなかった。私が特に鮮明におぼえている
のは触角から頭、胸、翅の背中側がピンク色で、イネ科の細長い葉の中にいると、
実に巧みなカムフラージュ効果があって、一瞬その姿が消えてしまうからだ。
ショウリョウバッタも、オンブバッタもたしかに保護色だが、決してそれに劣らない。
予想以上に細長い体、頭の尖っている角度など形も姿をかくすのに役立っている。
近年、保護色をテーマに調べているので、もう一度是非会いたいのだが願いがかなうだろうか。
べつにこのバッタがいなくなっても話題にならない。人間とは何の関わりも無いから。
でもこうした生物が他にもいるだろう。という事は自然界のバランスが くずれている証拠である。
人はまだ気づかない。次々に音もなく消える生物が天然記念物だと大問題になるが、その時はもうおそい。

 この文章が28年前に書かれていることに注目したいと思います。1983年に既に著しく数を減らしていた
ショウリョウバッタモドキを、2011年 の不二聖心で普通に見ることができるのです。
しかし、その姿はいかにも弱々しく人が近づくと瞬時に葉裏に姿を隠してしまいます。
もし不二聖心のススキ野原 が適正に管理されなくなったらあっという間に絶滅してしまいそうです。
ショウリョウバッタとショウリョウバッタモドキの違いに気付ける目を持ち、希少種の数の増減を意識する
ことは実に大切なことだと思います。聖心の教育 は、世の中の弱い立場にあるものに目を向ける心を育てる
ことを目的の一つにしていますが、マツムシやショウリョウバッタモドキのような急激に数を減らし
つつある生き物を慈しむ心を持つことが、弱者への温かいまなざしを育てることにもつながるのでは
ないかと思っています。

  

          今日のことば

夢をまことにと思うならば、焦らずに築きなさい。
その静かな歩みが遠い道を行く。
心を込めれば全ては清い。
この世に自由を求めるならば、焦らずに進みなさい。
小さいことにも全てを尽くし、飾らない喜びに気高さが住む。
日毎に石を積み続け、焦らずに築きなさい。日毎にそれであなたが育つ。
やがて天国の光があなたを包む。

                      アシジの聖フランシスコ

2011.10.01

ススキの花とハナバチ・アサギマダラ

平成23年10月1日 土曜日

 金木犀の香がただようなか、カネタタキの鳴く声を聞きながら一日仕事をしました。
ススキがたくさんの花をつけ、そこには花粉を求めてアリやハチが集まってきています。
今日は朝早くから熱心に動き回るハナバチの姿も撮影できました。

 9時50頃、校舎の中にアサギマダラが飛んできました。1000キロを超える渡りをすることもあると言われる
蝶です。写真を撮ってすぐに外に逃がしました。このあと沖縄あたりまで飛んでいくのかもしれません。

           今日のことば

人が死んでのちに残るのは、集めたものではなくて散らしたものである。

                     ジェラール・シャンドリー

2011.09.30

メリケンカルカヤとツノトンボの幼虫・アザミとイチモンジセセリ

平成23年9月30日 金曜日

 9月24日に紹介した、メリケンカルカヤの茎に付いていたツノトンボの卵が孵化しました。
ツノトンボは宮城県で絶滅危惧Ⅰ類、千葉県で絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。
今回はさらにもう一か所、別のメリケンカルカヤの茎でも孵化を確認しましたので、メリケンカルカヤの
産卵場所提供による希少種保護への貢献度もいっそう 高く評価しなくてはならなくなりました。
要注意外来生物と絶滅危惧種との関わりは、自然を見つめる私たちに複眼的思考を求めています。

 ここのところアザミにとまるイチモンジセセリの姿が毎日見られています。不二聖心の野は
開花を待つアザミの蕾にあふれています。そのことを思うだけでも心が豊かになるのを感じます。

 

      今日のことば

あなたは世の中をどうにもできません
あなたは自分の家族さえ変えられません
あなたが変えられるのはあなた自身だけです

                    葉祥明

2011.09.29

ホタルガ・シソの花・ヤママユガ

平成23年9月29日 木曜日

 昨日は天皇陛下が稲刈りをされたという記事を読みました。今朝は家のドアをあけてすぐに藁を焼く
煙の匂いを感じました。貴重な秋の風物詩です。
学校に来たら空をホタルガが舞っていました。6月25日にもホタルガを紹介しましたが、
その世代が産んだ卵が今月になって成虫になったようです。このようにしてホタルガは年に2回、発生します。

 気付いたらシソがたくさんの花を咲かせていました。そこにオオハナアブやキンケハラナガツチバチが集まり、
シソの花の周りは朝からたいへんにぎやかでした。目立たない花ではありますが、
実に多くの生物の命を養っています。

 夜、職員室で仕事をしていたらヤママユガが飛来してきました。ヘルマン・ヘッセの「少年の日の思い出」で、
主人公の「ぼく」がエーミールから盗んでしまうのは、このヤママユガの仲間の蛾です。

           今日のことば

学ぶとは心に誠実を刻むこと。教えるとはともに希望を語ること。

                         ルイ・アラゴン

2011.09.29

秋の雲・ヒガンバナ

平成23年9月28日 水曜日

 空を彩る雲の様子にも秋が感じられるようになってきました。

 築山の近くの彼岸花の写真を撮りました。図書館の花壇の白い彼岸花が咲き始めた頃にはまだ全く姿を
見せていなかった花です。今もまだ蕾が残っています。白と赤で開花の時期に差があるのか、
来年も引き続き開花の時期に注目していきたいと思っています。

                      今日のことば

神秘的生活の不思議の一つはこうである。人はけっして彼自身の最奥に入り、その中心を通りぬけて神へと
到達することはできない。彼が完全に自分自身からぬけ出て、みずからを空しくし、
無私の愛の純粋さのうちにみずからを他の人々に与えることができないかぎり。

                                     トマス・マートン

2011.09.27

富士山の初冠雪・アシダカグモ

平成23年9月27日 火曜日

富士山の初冠雪は9月24日でしたが、今朝の富士山を見ても雪が降った様子がよくわかりました。

 中学3年生の生徒が図書館に大きなクモが出たと教えてくれました。
確認してみたところアシダ カグモでした。
アシダカグモはさまざまな害虫を食べるので、益虫としてとらえることのできるクモです。
アシダカグモの子どもは体から糸を出して上手に風に 乗り遠くまで自分の体を飛ばすことで知られています。
いわゆる飛行蜘蛛と呼ばれるものですが、この飛行蜘蛛の話を実に印象的に使っているのが、
宮本輝の 『約束の冬』という小説です。

 

    今日のことば

私達の魂の故郷は静寂の国である。
魂の孕むすべての美しいものは、
この寂しさから生れ出て来るのだ。

                薄田泣菫

2011.09.26

ベッコウシリアゲ

平成23年9月26日 月曜日

今朝、ベッコウシリアゲの写真を撮りました。ベッコウシリアゲは、5月8日のフィールド日記で紹介した
ヤマトシリアゲムシとは別種であると考えられてき ましたが、最近では、ヤマトシリアゲムシの夏型であると
考えられるようになりました。昨日のキタテハと同じように季節によって姿を変えているということです。
シリアゲムシは、完全変態をする昆虫の中では最も原始的な種類で2億数千万年前から地球上に存在していたと
言われています。もしベッコウシリアゲをヤ マトシリアゲムシの季節型とするならば、四季の存在を前提として
季節型の発生を考える必要があります。いったいいつ頃からベッコウシリアゲが存在するようになったのか、
興味のあるところです。

 

    今日のことば

Honesty is such a lonely word
Everyone is so untrue
Honesty is hardly ever heard
And mostly what I need from you

               Billy Joel

2011.09.25

キタテハ(秋型)

平成23年9月25日 日曜日

 昨日は富士山の初冠雪が確認されました。今日は、朝7時04分発の御殿場線に乗ったら暖房が入っていて
驚きました。季節の変化のあまりの速さに体がついていけていないように感じます。
しかし、自然界の生き物は季節の変化にしっかり対応しているようです。秋らしい気候になって秋の生物が
次々に活発な動きを見せ始めました。昨日はキタテ ハの秋型をこの秋はじめて観察しました。地色が濃くなり
翅の外縁の切れこみが鋭くとがるのが秋型の特徴です。季節によって、色だけでなく形まで変えてしまう
キタテハを見るたびに自然の不思議を感じます。

 今日のことば

あなたは教えてくれた
小さな物語でも
自分の人生の中では
誰もがみな主人公

        さだまさし