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フィールド日記

2011.05.24

モリアオガエルの卵と1955年の不二農園

平成23年5月24日 火曜日

今朝の7時に築山の池の縁に生えているシダレザクラの枝にモリアオガエルの卵を見つけました。
築山の池での今年最初の産卵ということになります。5 月23日の正午の時点ではまだ確認できませんでしたので、5月23日の正午以降から5月24日の朝までの間に卵が産み付けられたということになります。
モ リアオガエルの産卵行動は、環境の変化や気候変動の影響を受けます。このようにして、その年の最初の
産卵の日時を何年にもわたって記録し続ければ、そこか ら環境の変化を知ることができるかもしれません。

 

5月23日の「不二聖心のフィールド日記」でオオミノガの蓑虫の写真を紹介しましたが、ミノ (蓑)のイメージがわかない人もいるのではないかと少し懸念していたところ、貴重な写真が見つかりました。
1955年に不二農園で撮られた、蓑を身にまと う農園の方の写真です。外国人のシスターが、
写真の下にOur farmerとお書きになっていました。

2011.05.24

オオミノガとヨツボシホソバ

平成23年5月23日 月曜日

4月に学習研究社から「日本産蛾類標準図鑑」が刊行されました。学研のホームページには図鑑の内容紹介
として次のような文章が載っています。

蛾類は昆虫の中でも多くの種類数があるため、生物相、環境を研究調査する上で重要な生物群となっている。
本書は、最近でも新種が多く見つかっている日本産の蛾類を全種解説し、同定点も紹介した。研究者だけでなく、愛好家、さらには環境アセスに必要な一冊。

蛾を知ることは、環境の質をより正しく判断する目を養うことにつながるというわけです。
不二聖心にもたくさんの種類の蛾が生息していて、そのことが不二聖心の自然環境の豊かさを示しています。
今日は裏門のすぐ近くのアカメガシワの幼木にぶらさがっているオオミノガのミノムシの写真を撮りました。
オオミノガは、枕草子にも出てくる、日本の代表的 なミノガですが、オオミノガヤドリバエが中国から侵入して以来、このハエに寄生される率が高まり個体数が激減しています。将来、ミノムシを知らない子供たちが
増えていく可能性も否定できなくなってきました。裏門の近くでもヤドリバエらしきハエを見かけましたが、
それがオオミノガヤドリバエでないことを願う ばかりです。

もう1枚、今日はヨツボシホソバの幼虫の写真も撮りました。ヨツボシハソバは幼虫が地衣類を食べることで
知られています。写真の手前に写っているのが、その地衣類で、ウメノキゴケの仲間と思われます。
地衣類は空気のきれいな場所にしか生息できません。ということは、ヨツボシホソバ1匹を見つけることが、
その環境の空気の状態の把握にもつながることになります。

昨日、姿を消していたアシナガバチは、今日は巣に戻っていました。

2011.05.22

「国際生物多様性の日」とモリアオガエルとアシナガバチの営巣③

平成23年5月22日 日曜日

今日は、「国際生物多様性の日」です。生物多様性の概念の中で最も重要な要素は、生物の種の多様性であり、絶滅危惧種に指定されているような希少種に対して、私たちは関心を高く持ち続けていかなくてはなりません。
中学のクロークルームの窓にモリアオガエルが2匹いるのを見つけました。1匹は窓に張り付き、
もう1匹は窓枠で身を休めていました。モリアオガエルは不二 聖心に生息する絶滅危惧種の一つです。
窓に映るカメラと比較すると、モリアオガエルが日本に生息する蛙の中では大型の種に属することがわかります。
今年は まだ築山の池での産卵が見られませんが、こうして直に姿を見られるようになると産卵への期待も
高まってきます。

5月15日から見守り続けてきたアシナガバチの巣から親の姿が消えていました。成功率3割の営巣に失敗して
しまったのでしょうか。気がかりです。


その一方で、すぐ近くに別の女王蜂を見つけました。やはりオナモミの茎に巣を作っていました。
オナモミの茎はアシナガバチの営巣場所としてあまりに無防備だと感じるのですが、
もしかしたらオナモミの実に巣を擬態させているのかもしれません。

不二聖心には5種類のアシナガバチが生息しています。(5種が好む環境はすべて異なり、そのすべてが
生息しているということは、それだけ不二聖心の中に多様な環境があるということです。)アシナガバチの
生存のためには、餌となるたくさんの生き物と 営巣のための理想的な環境が不可欠です。アシナガバチは、
不二聖心の生物多様性のシンボルともとらえられるのです。

2011.05.21

体育大会と「アンネのバラ」

平成23年5月21日 土曜日

今日は、体育大会がありました。どの色も練習の成果を発揮して精一杯健闘し、最後は見事赤組が勝利を
収めました。


選手だけでなく、それぞれの委員会・係の生徒もしっかり責任を果たし、体育大会を支えました。

1959年にヒッポリテ・デルフォルヘ氏によって作出されたバラが、亡きアンネ・フランクに捧 げられ、
それ以来、そのバラは「アンネのバラ」として世界中の人々に愛されるようになりました。
「もし神様がわたしを長生きさせて下さるなら、わたしはつ まらない人間で一生を終わりません。
わたしは世界と人類のために働きます。」という言葉を残したアンネ・フランクに捧げられたバラは、
まさに「平和のシン ボル」と言えるでしょう。「アンネのバラ」は不二聖心でも見ることができ、
今たくさんの美しい花を咲かせています。

 

体育大会を行うことのできる平和な時代への感謝の念を忘れてはならないと思います。

2011.05.20

カルガモのつがいとサンショウバラ

平成23年5月20日 金曜日

今朝、築山の池でカルガモのつがいが悠々と泳いでいるのを見かけました。カルガモの雌雄は区別をつけにくい
と言われますが、このつがいは羽の色の濃淡に明らかな違いがあり、先を行くのが雄、
そのあとを泳いでいるのが雌であることがはっきりとわかりました。


 

下の写真はサンショウバラの写真です。サンショウバラは静岡県、神奈川県、山梨県だけに自生す る貴重な
植物です。山中湖村の「村の花」、箱根町の「町の花」にも指定されています。この写真も朝撮ったものですが、花の周りには盛んにマルハナバチが飛 び交い、羽音がうるさいくらいでした。

私たちが活動を始める前から、自然界の生き物たちは、それぞれの生活のリズムに従って動き始めている
ようです。

2011.05.19

中村久子とハンショウヅルとアシナガバチ

平成23年5月19日 木曜日

今日の国語の授業で中村久子さんの「ある ある ある」という詩を生徒に紹介しました。中村久子さんは、
病のために3歳の時に両手両足を切断した女性で、ヘレン・ケラーをして、「私を世界の人は奇跡の人と言う
けれど、あなたこそ、真の奇跡の人」と言わしめた人物です。
「ある ある ある」は次のような詩です。

さわやかな秋の朝
「タオル取ってちょうだい」
「おーい」と答える良人がある
「ハーイ」という娘がおる
歯をみがく
義歯の取り外し かおを洗う
短いけれど指のない
まるいつよい手が 何でもしてくれる
断端に骨のない やわらかい腕もある
何でもしてくれる 短い手もある
ある ある ある
みんなある
さわやかな秋の朝

「ないないない」と言いがちな私たちに「あるもの」に目を向ける大切さを教えてくれる詩です。

自然の中にたたずむと自分の心が「あるあるある」という思いに満たされていきます。
5月10日に「不二聖心のフィールド日記」で紹介したハンショウヅルがようやく花を咲かせました。

5月15日に紹介したアシナガバチの女王蜂は今日も巣作りに励んでいました。
5月15に「フィールド日記」に掲載した写真と比較して少し巣が大きくなってきたように感じられます。
成功率3割の大家族作りへの挑戦はまだまだ続きます。

2011.05.18

高校3年生の短歌④とアブラギリ

平成23年5月18日 水曜日

高校3年生が最近詠んだ歌を紹介します。

思い出につい手が止まり一時間部屋の片づけ進まないまま
窓あけてやる気まんまんテスト勉強プリント飛ばされやる気消失
お弁当定番メニューのたまご焼き砂糖が多めの母の味
休み明け準備に練習・小テスト五月病にもかかる暇なし
あくびして悲しくないのに涙でるほんとは心が泣いてるのかな
もう少し勇気があれば伝えたいあなたに言えない私の気もち
アルバムを開いて微笑む父と母「大きくなったね」微笑む私
一日が長い長いといいながらふとふりかえるともう金曜日
窓開けて星空見つつ深呼吸夜を一息吸い込んだようだ
制服を衣替えしてふと思うこれで最後の夏服なんだ
みんながいてほんとによかった幸せですこんな友達一生出来ない

アブラギリの花が目につく季節となりました。アブラギリは不二聖心の中で不思議と数が多い樹木の一つです。
風の強い日に、大木のアブラギリから白い花がいくつも一斉に落下していく様子はなかなか壮観です。
アブラギリは、その実から油が採れることからアブラギリと名付けられましたが、別名イヌギリともいいます。
植物の世界では、「イヌ」という言葉はある種の 蔑称として付けられることの多い言葉ですが、
アブラギリの美しい白い花を見ていると、とてもイヌギリとは呼べないという思いになります。

2011.05.17

ホホジロアシナガゾウムシ

平成23年5月17日 火曜日

象に姿が似ているところから「ゾウムシ」と名付けられた昆虫がいます。ゾウムシは、日本には1000種以上、
世界には約6万種いると言われますが、 不二聖心にもかなりの数の種類のゾウムシが生息しているものと
考えられます。そのうちの1種が下の写真のホホジロアシナガゾウムシで、「温情の灯」の碑の 近くで
見つけました。ホホジロアシナガゾウムシは、ハゼやヌルデの木の枝を折って産卵します。ということは、
「温情の灯」の碑の近くに、ハゼかヌルデの木 が生えているはずだと推測できるわけです。
生き物のつながりから、実際に目にしていないものの存在を推測することも、自然観察の面白さの一つです。

2011.05.15

富士山とアシナガバチの営巣

平成23年5月15日 日曜日

今日は一日中、富士山がくっきりと見える五月晴れの一日でした。

今年初めてアシナガバチの営巣を確認しました。見つけたのは二か所で、一か所はニガイチゴの葉裏、
もう一か所はオナモミの枯れ茎でした。両方の巣で卵も確認できました。越冬した女王バチがたった
一匹で巣作りを始めましたが、ここから大家族を作り上 げることに成功するのは約3割と言われています。
今後も女王の巣作りを見守っていこうと思います。

2011.05.14

ヤツボシハムシの色彩変異

平成23年5月14日 土曜日

面白いものを見つけました。
下の写真に2匹のハムシのオスがメスを奪い合っている様子が写っています。2匹のオスは体色が全く
異なっていますが、種の異なるオスがメスを奪い合うこと はあり得ません。これはどうしたことかと
不思議に思って専門家の方に写真を見ていただいたところ驚くべきことがわかりました。
2匹のオスは同じヤツボシハ ムシだというのです。

 

ヤツボシハムシは下の写真にあるように8つの黒色紋があるためにヤツボシハムシと名付けられましたが、
時にその黒色紋が拡大したり縮小したりすることがあります。上の2匹のオスのうちの一方は黒色紋が拡大して
体全体を覆ってしまった例であり、もう 一方は黒色紋が薄くなってほとんど消滅しかけている例だったのです。
ここに掲載した3枚の写真はすべて不二聖心で撮影したものですが、限られた地域の一つの種の中に
これだけの色彩変異の多様性があることに驚きました。