フィールド日記
2011.06.21
高校3年生の短歌⑦とキボシツツハムシ
平成23年6月21日 火曜日
高校3年生が前期中間試験後に詠んだ短歌を何首か紹介します。
ありがとう小学生の大きな声私は言えず横断歩道
あと少し夏休みまであと少しそれが終ればすぐ冬休み
寝ていると不快な音が聞こえてくるもはや目覚まし蚊飛行中
まさやんのデビュー当時の本見付け思わずレジへ母への土産
今年初口に広がるほろ苦さ愛しの君は抹茶アイス
この先はどこへ向かって進もうかぼくの人生地図のない旅
血液型関係ないと言うけれど気にしちゃうんだ私B型
6月19日に撮影したハムシを専門家に同定していただいたところキボシツツハムシというハムシであることが
わかりました。コナラやカエデの葉を食べるそうです。これもまた不二聖心の雑木林が養っている命の一つです。
2011.06.19
ネジバナ・クリの花・カシワマイマイ
平成23年6月19日 日曜日
ネジバナが咲いているのを見つけました。ネジバナは別名「もじずり」とも呼ばれますが、これは、
百人一首の「みちのくのしのぶもじずりたれゆゑに 乱れそめにしわれならなくに」の歌にも出てくる
「しのぶもじずり」の模様にネジバナの姿が似ているところから付けられた名前だと言われています。
栗の花が、気が付いたら盛りを過ぎていました。「栗花落」と書いて「つゆり」と読む名字の人がいます。
「つゆり」はおそらく「梅雨入り」のことで栗の花 が盛りを過ぎるのが梅雨入りの頃であることから
生まれた名字でしょう。四季の風物の変化は人間の名前にまで影響を与えています。
最後は、ドクガ科の蛾、カシワマイマイの幼虫の写真です。カシワマイマイは6月の下旬に蛹になります。
自然界は、決められた暦に従って、少しずつ、しかし着実に、変化を遂げていきます。
2011.06.18
ライポン
平成23年6月18日 土曜日
今日の産経新聞の「朝の詩」のコーナーに、八十歳になられる安倉栄美子さんの素敵な詩が載っていました。
次のような詩です。
もういいかーい
あの声がどこからか
ふと 聞こえる
まあだだよー
まあだだよー
私は慌てて叫ぶ
新緑溢れる初夏の大地
花咲き蝶飛び交う
私は未練たっぷりです
やがて必ず来るその日
でも今は もう少し
居させて下さいな
美しいこの地球に
「新緑溢れる初夏」の不二聖心の花々には蝶だけでなく、たくさんのハチもやってきています。
6月11日の「不二聖心のフィールド日記」で紹介した ライポンを本館前でも見かけるようになりました。
ライポンはコマルハナバチのオスの別名です。不二聖心の自然を紹介した冊子「不二の自然」に載っている
コマルハナバチについての文章を再録しておきます。
マルハナバチは、ネズミの古巣を使って営巣することで知られる、ハナバチの一種です。
近年、トマトの授粉用に輸入されたセイヨウオオマルハナバチ の野生化によって、その生息域を脅かされつつあると言われています。サクラソウなどいくつかの希少な植物が受粉をマルハナバチに依存しており、
生態系の維 持のためにもマルハナバチの存在は非常に貴重であると言えるでしょう。
写真のマルハナバチは、コマルハナバチのオスで、東京の世田谷・目黒あたりの子がつけた
「ライポン」という名前で今も呼ばれることがあります。昭和五十 年代の後半までは子供たちがバッチのようにこのハチを服につけて遊ぶ姿が見られたそうです。オスですから刺される心配がないのです。
マルハナバチは英語でbumble beeと呼ばれますが、bumbleには「ハチなどがブンブンいう」という意味があり、bumble beeはマルハナバチの羽音から生まれた名前と想像できます。『ハリー・ポッター』に出てくる、
鼻歌好きの校長先生の名前・ダンブルドアは、古英語でマル ハナバチという意味を持っています。
マルハナバチは、人間との間に、実に多様で深い関わりを持っています。
2011.06.17
カノコガとアシナガバチの営巣
平成23年6月16日 木曜日
6月になると不二聖心で必ず見られるようになる蛾、カノコガを今日は目にすることができました。
この蛾を見ると今年ももう6月かとしみじみ思いま す。カノコガのという名前は翅の鹿の子模様から
つけられました。鹿と日本人との関わりの深さも感じさせてくれる蛾です。
写真のカノコガは腹部の大きい雄で す。腹部の模様からフタオビドロバチに擬態しているという説もあります。
「温情の灯」の石碑の近くで営巣していたアシナガバチのことがずっと気になっていました。
静岡県東部に大雨洪水警報が出るような荒れた天気の日もありま したので、巣が無事かどうか
気になっていたのです。2つの巣のうちの1つは無事でした。巣のサイズもずいぶん大きくなっていました。
もう1つの巣は親が死んでしまったようです。親のいなくなった巣は無残に荒らされ、
巣の中の卵もすべて食べられてしまっていました。
寒さに耐えて冬を越えた親バチの必死の生の営みはすべて無に帰してしまいました。
自然界の厳しさを感じます。
2011.06.16
セッコク
平成23年6月15日 水曜日
昨日は中学校朝礼が行われている間中、ホトトギスの鳴き声が聞こえていました。今日の朝礼の時間には
ガビチョウがけたたましい声で鳴いていまし た。そのままでは朝礼の進行に支障をきたすので
窓を閉めたほどです。ガビチョウは特定外来生物に指定されていて、いわゆる外来種の中でも環境への悪影響が
特に懸念される生物と言えます。不二聖心の自然も外来種の脅威にさらされていて、
その影響で生態系が変化することも大いにあり得るというのが現状です。
環境を維持することで守っていきたい希少種が不二聖心の自然の中にはたくさんありますが、
下の写真のセッコクもその一つです。31の県で絶滅危惧種に指定されているセッコクが、
不二聖心では毎年白い美しい花を咲かせています。
2011.06.14
高校3年生の短歌⑥とヨウラクランとジャコウアゲハ
平成23年6月14日 火曜日
高校3年生が前期中間試験の前に詠んだ歌を紹介します。
妹に「む」って何だと訊かれてももうわからない古典文法
繰り返し覚えることが重要とようやく知った高3の夏
テスト前私の頭にたまるのはほどほどの知識とかなりのストレス
貢ぎ先間違ってるよAKBオタあつこじゃなくて東北募金
菅下ろしする暇あるなら原発を何とかしてよ政治家たちよ
お買い物サイフ忘れるサザエさん買う物忘れる私の母さん
ご近所の中華屋さんの看板に「冷やし中華始めました」
どうしてもお腹がなっちゃう4時間目とっても長い最後の5分
テスト後の笑顔の自分を想像し再び手にとるシャープペンシル
今年も不二聖心ではヨウラクランが咲きました。ヨウラクランは、24の県で絶滅危惧種に指定されている
希少種です。花の姿が仏具の瓔珞に似ていることか らヨウラクランと名づけられました。
小さな花が集まって花穂のようになっていますが、一つ一つはしっかりとランの花のかたちをしています。
日本一小さいラ ンの花でしょう。
中学3年生の生徒がジャコウアゲハをつかまえて見せてくれました。下の写真はその時に撮ったもので、
雌のジャコウアゲハであることが翅の色からわかります。6月7日の「不二聖心のフィールド日記」で紹介した
のは雄のジャコウアゲハでした。
2011.06.13
アリグモとトビイロトラガとアオダイショウとベニシジミ
平成23年6月12日 日曜日
休日の不二聖心のフィールドの表情は普段にも増して豊かです。
そして心なしか生き物たちのしぐさにもゆったりとしています。
下の写真の生き物は、一見するとアリに見えますが、実はクモです。アリに擬態しているクモ、アリグモです。
クサギの葉の上をゆっくり歩いていました。
下の写真は、トビイロトラガです。独特の模様が印象的な蛾で、幼虫はツタやブドウの葉を食べます。
接写されても少しも動じる様子はありませんでした。
下の写真は、アオダイショウです。先週は、築山の池の近くでシマヘビばかりが目立っていましたが、
アオダイショウは職員室の裏にいました。パイプがちょうどいい休憩場所になっているようです。
よく見ると中心に目が見えます。
最後の写真は、ハルジオンに集まるベニシジミとヒメヒラタアブです。これは春型のベニシジミで、
真夏には体色のさらに濃い夏型の個体が現れます。
2011.06.11
キクラゲ
平成23年6月11日 土曜日
静岡県東部に大雨洪水警報が出され、新幹線も一時運転を見合わせるほどの荒れた天気となりました。
そのような中で、不二聖心では6月に限って活動 するコマルハナバチのオス(ライポン)が
活発に活動していたのには驚きました。今しか働けないことを自覚するかのような活発さでした。
もう一つ、生き生きした姿を見せていたのが築山のキクラゲです。ここのところ萎れていたのが、
雨に打たれてすっかり息を吹き返していました。キクラゲは 食べられるキノコで、さまざまな料理に利用されています。西洋には、「イエスを裏切ったユダが首を吊った木に生えたのがキクラゲ」という俗説があり、
キク ラゲのことを「ユダの耳」と呼んでいます。
2011.06.10
ナガゼンマイハバチ
平成23年6月10日 金曜日
今日の朝日新聞の天声人語は次のような書き出しでした。
虫好きの少年を通して命の尊さを描いた『クワガタクワジ物語』(中島みち著)に、主人公の太郎が縄文時代の子を思う場面がある。「シカかなんかの皮のふんどしをして、これとおんなじクワガタと、遊んでいたのかなあ」数億年前に現れた昆虫は、生き物の種の過半を占める。『虫の文化誌』(小西正泰著)の表現を借りれば、人類はずっとあとから「昆虫王国」のただなかに生まれてきた。
「数億年前に現れた」時の姿のまま今も生き続けている昆虫が、不二聖心にもたくさん生息しています。
そのうちの一種、ナガゼンマイハバチの幼虫の 姿を今年も確認することができました。ゼンマイの葉に見事に
擬態しつつ、悠然と葉を食べ続けていました。ゼンマイの葉を食べるハバチには、他にゼンマイハ バチが
いますが、こちらの姿は発見できませんでした。もしかしたら二種の間に微妙な棲み分けがなされているのかもしれません。ハバチはハチの中でも最も原 始的な種類で、彼らが生きてきた時間の長さを思うだけでも、
畏怖の念に近い感情を抱きます。
今日の天声人語は次のような一節で終わっていました。
支配者を気取る一つの種の都合で、動植物が振り回される時代はそれほど続くまい。
この夏、虫たちは放射能も知らずに飛び回る。合わす顔がない。
2011.06.09
バイマーヤンジンさんのコンサートと中学3年生の「不二聖心の新しい博物学」の調べ学習
平成23年6月9日 木曜日
今日はバイマーヤンジンさんのコンサートが裾野市民文化センターで行われました。今日のコンサートの
プログラムの挨拶には山本滉校長先生の次のような文章が載っていました。
待ちに待ったバイマーヤンジンさんのコンサートです。
昨年6月18日に、声楽家バイマーヤンジンさんに講演をして頂きました。お話に講堂全体が感動に包まれ、
涙する生徒も多くいました。最後にバイマーヤンジ ンさんはチベットの歌を一曲歌って下さいました。
ああ、その歌声の素晴らしかったこと。その日のうちに是非コンサートをお願いしようと決めました。
バイマーヤンジンさんの歌はもちろん、人間性、生き方からそれぞれが多くのことを感じ、
自分自身の生き方を真剣に考える機会となるでしょう。
東日本大震災の被災地の復興を願ってバイマーヤンジンさんの「祈りの唄」で始まった今日のコンサートは、校長先生の期待通りのコンサートとなりま した。バイマーヤンジンさんの歌声の美しさと声量の豊かさに圧倒されるとともに、そのお話から多くのことを学びました。実は今日のコンサートには一曲、曲 目の変更が
ありました。バイマーヤンジンさんは、どうしても「我は海の子」を歌いたいとおっしゃったのです。
過去に東北を何度も訪れ、陸前高田市の海の美 しさに深く感動した経験を持つバイマーヤンジンさんは、
海のないチベットで育った方です。だからこそわかる海の素晴らしさがあり、私たちはバイマーヤンジンさんの話を通して改めて海の素晴らしさを知り、日本の自然を見直すことができました。和歌山の白浜の海の水を
5年間、仏前に供え続けたバイマーヤンジン さんのお母様の話を私たちは忘れることはないでしょう。
海への思いを込めた歌は、復興への祈りの歌でもありました。間違いなくバイマーヤンジンさんの歌声は美しく、その声量は豊かで聴く人の心を圧倒します。しかし、何よりも素晴らしいのは、バイマーヤンジンさんの
歌の精神性の深さではないかと今日改めて思 いました。
バイマーヤンジンさんに私たちから歌の贈り物をしました。曲目は、With Christ。祈りの歌で始まり、
祈りの歌で終わったコンサートでした。私たちの贈り物のお返しとしてバイマーヤンジンさんは
不二聖心の校歌を歌って下さり、私たちも一緒に歌って会場が一つになりました。
バイマーヤンジンさんのお心に感謝の思いあふれる素敵な時間でした。
今日は、中学3年生の国語の授業で「不二聖心の新しい博物学」という調べ学習をしました。
国語の教科書で学習した池内了の「新しい博物学の時代」という文 章をふまえて、
生徒が不二聖心の中に生息する動植物の写真を撮り、その動植物について理科系と文科系の両面から
レポートするという調べ学習です。さまざま な発見のある充実した2時間となりました。
下の写真は、薩摩紅梅についたテントウムシの幼虫と蛹と餌のアブラムシを観察する中学3年の様子です。