フィールド日記
2011.06.04
オオイシアブとアシナガムシヒキ
平成23年6月4日 土曜日
人間に忌み嫌われているけれども実は人間の役に立っている、そういう生き物が自然界にはたくさんいます。
アブの仲間もその一つでしょう。
今日は不二聖心で今の時期に既に活動を始めているアブを紹介しましょう。
下の写真は、ハエ目ムシヒキアブ科のオオイシアブです。人間を刺したり体液を吸ったりするようなことはなく、農作物を荒らす虫を捕らえて体液を吸う益虫で す。京都府は、その存在が環境の自然度の高さを示す
環境指標生物としてオオイシアブを挙げています。顔面の中央に毛が生えているユニークな風貌が印象的です。「温情の灯」の碑の近くで撮影しました。
ムシヒキアブ科のアブをもう一種。アシナガムシヒキです。お茶畑の横の雑木林で撮影しました。獲物の体液を
吸いながら長い前肢を片方だけ挙げている姿をよく見かけます。まるで「やぁ」と挨拶をしているようです。
2011.06.03
畠山重篤さんとハナイカダ
平成23年6月3日 金曜日
6月1日の宗教朝礼で加納健介先生が、ご自身と気仙沼との関わりの話を通して、「受けるより与えるほうが
幸いである」という聖書のみことばについて 語ってくださいました。その中で5月12日に読売新聞に掲載された畠山重篤さんの文章が紹介されていました。畠山さんは気仙沼で牡蠣の養殖業をしつつ、森と海とのつながりの重要さについて伝える活動をなさってきた方です。「それでも海しかない」と題された文章の一節を次に引用します。
我が舞根地区は52世帯中、44世帯が流されてしまった。最近のアンケートによると殆どの人が
舞根湾の見える高台にもどりたい、海辺に小舟を浮かべ、小漁をしたり、アワビやウニを採る生活に戻りたい
という。これだけ海に蹂躙されながら、海に怨みをもつ人はいない。私もその一人だ。
畠山さんは、5月の末には再び筏を海に浮かべ牡蠣の養殖を再開したいとお書きになっていました。
今週から6月に入りました。きっと気仙沼の海には畠山さんの筏がすでに浮かべられていることでしょう。
牡蠣の養殖に不可欠なのは、その稚貝を育てるための筏ですが、筏を名前に持つ植物が日本に一つだけあります。「ハナイカダ」です。葉の上に実をつける姿を 古人は筏に見立て「ハナイカダ」と名づけました。
5月5日に「不二聖心のフィールド日記」で紹介した不二聖心のハナイカダは皆見事に結実し、
いっそう筏らしくなった姿を見せています。
2011.06.02
高校3年生の短歌⑤とミヤマカワトンボ
平成23年6月2日 木曜日
先週詠まれた高校3年生の短歌を紹介します。体育大会の歌と試験に向けての歌が多く詠まれました。
大回旋流した涙は忘れない大切なのは友との絆
もう一度やりたいと思う体育祭ありがとみんな楽しかったよ
ドキドキと高鳴る心を落ちつかせ私の目の前みんなかぼちゃ
ありがとう勝っても負けてもこれだけはみんなに言おう私の気持ち
泣いた顔笑った顔や怒る顔いろんな顔が体育大会
最後だからはりきったのと笑う母ちょっとしょっぱいたまご焼き
競技がね終わるたびに涙する生涯最後の体育大会
ヨーイドン皆の心が一つになって空を見上げて綱を引く
体育大会終わったけれどどうしても来年まだあるそんな気がする
飛鳥時代強気の外交聖徳太子今の政治家も見ならいなさい
テスト前焦るあなたを目の前に私の焦りもさらに増してく
受験生悩みはいろいろあるけれど今にきっと良い思い出に
さぁやるぞ唇かみしめペン握り横目にちらちらご褒美のチョコ
次こそは次は次はと言いながら気づけば3回残りのテスト
昨日から6月に入りましたが、先月から今年もミヤマカワトンボの姿が不二聖心で見られるように
なってきました。「ミヤマ」は漢字で書くと「深山」と なり、このトンボは一般的に渓流に生息すると
言われています。ミヤマカワトンボがいるということは、不二聖心の近くに渓流に近い環境があることを
示してい ます。
2011.05.30
マイマイカブリ
平成23年5月30日 月曜日
高校1年生の教室に向かう階段にマイマイカブリがいました。
マイマイカブリはオサムシの仲間で、首の部分が長くなっていることが特徴です。餌であるカタツムリの殻の中に十分に頭を入れるために、このような姿に進化 したものと考えられます。漫画家の手塚治虫は、オサムシが好きであったことから「治虫」というペンネームをつけたと言われていますが、オサムシの中でも
特にこのマイマイカブリが好きだったそうです。
2011.05.29
モリアオガエルの卵②とアシナガバチの営巣④
平成23年5月29日 日曜日
台風2号の接近により、強い雨の降り続く一日となりました。
今日は、不二聖心の自然の様子について、2点確認したいことがありました。一つはモリアオガエルの卵が増えているかどうかということでした。降り続く雨が モリアオガエルの産卵を促しているのではないかという予感がありました。雨の日には天敵であるヘビが活発に行動できないからです。
予感は当たりました。金曜日には1つしかなかった卵塊が今日は5つに増えていました。
もう一つ確認したかったことは、この大雨の中、巣作りの真最中のアシナガバチの母親たちはどうしているのかということでした。驚いたことに母バチはみな雨 に濡れながら巣を守り続けていました。外敵の少ない雨天時は自分も雨宿りしてもいいのではないかと思いましたが、実は母親たちには巣を離れない理由があり ました。
下の写真を見てください。母バチが巣に口をつけているのがわかります。このあとハチはのけぞるような
かっこうをしました。するとみるみるうちに口 からハチの頭ほどの水滴があふれ出てきたのです。
つまり母バチは巣にたまった水を吸い込み、それを外に吐き出すことで、卵と巣を雨水から守っていたのでし た。
2011.05.28
縄文時代のクワガタとベニボタル
平成23年5月28日 土曜日
5月25日の朝日新聞に「縄文クワガタよみがえる」という記事が載りました。次のような内容です。
縄文時代晩期後半(2500年~2800年前)のノコギリクワガタが、奈良県御所市の秋津遺跡でほぼ
完全な形で見つかった。県立橿原考古学研究所(橿原市)が24日発表した。
大あごなど一部だけが見つかった例はあるが、完全に近い縄文時代のクワガタは全国初という。
大きく湾曲した大あごを持つ体長約6・4センチ、幅約1・5センチのオス。地中約2メートルの同時代の
木の根の下で見つかった。
左前脚以外はほぼ残っており、体毛や爪の先も判別できた。水や土で密閉されて酸素が絶たれ、
細菌が活動できず分解されなかったらしい。同じ地層からは同時代の土器や土偶の破片約1千点も見つかった。
ノコキリクワガタは、ほぼ日本全土に分布する昆虫で、甲虫目に属しています。
下の写真は2008年の夏に撮った不二聖心のノコギリクワガタの写真です。
不二聖心の土地からは黒曜石も出土しており、古くから人間の生活が営まれていた可能性があります。
不二聖心の地中深くから縄文の遺跡とともにノコキリクワガタが発見される可能性も皆無ではないでしょう。
ずいぶん昔の話だと思うかもしれませんが、気 が遠くなるほどの進化の過程を経て現在に至っている
ノコキリクワガタにとっては、2800年前というのは、ごく最近の時間とも言えるのです。
ノコキリクワ ガタが属する甲虫目というグループは4枚の翅のうちの2枚を丈夫な硬い翅にすることよって
環境への適応能力を高めてきました。2枚の丈夫な翅が順調な進化 の歩みを支えたとも言えます。
下の写真は「温情の灯」の近くで撮った、ベニボタル(甲虫の一種)が飛び立つ瞬間の写真です。
紅色の翅が甲虫目の由縁である 硬い2枚の翅です。
2011.05.27
聖マグダレナ・ソフィアの祝日とハンナ・ブレイディとハスジカツオゾウムシ
平成23年5月27日 金曜日
今日は聖心会の創立者・聖マグダレナ・ソフィアの祝日でした。ミサでは神父様のお説教を通して、
「すべての命にすばらしい価値があり、すべての人は 大切にされなければならない。」ということを学び、
そのことを伝える神様の愛を創立者は何よりも大切になさっていたことを再確認しました。
午後は、中学生は石岡史子先生の講演を聴きました。先生は、ナチスによるユダヤ人大虐殺の犠牲となった
ハンナ・ブレイディという女の子についてお話してくださいました。
先生はユダヤ人の大虐殺の原因の一つに人間の弱さがあることを指摘なさいました。虐殺はヒト ラーだけ
の手によってなされたわけではありません。多くの人がそれに加担し、さらに多くの人がただ黙って見て
いました。困っている人を目の前にして何もし ないことが事態を悪化させたのです。しかし、
その一方で多くの人が勇気をもってユダヤ人を助けました。今自分に何ができるかを真剣に考えた人が
大勢いたの です。石岡先生は一つの言葉を紹介してくださいました。それは次の言葉です。
To save a life is as if you have saved a whole world.
(一つの命を救うことは、世界を救うことにひとしい。)
この言葉の背後には、「一人一人の命の中に無限大の宇宙に等しいものがある。」という思想が存在すると
先生はおっしゃいました。
ミサと講演を通して、命の価値を深く学んだ一日でした。
昨日の「不二聖心のフィールド日記」で温情舎の校舎の跡地について書きました。岩下壮一神父様 が校長を務め歌人若山牧水の訪問の記録もある温情舎という学校の跡地は、今はさまざまな生き物の生活の場所となって
います。その中から今の時期に見られる 生き物を今日も一つ紹介しましょう。下の写真を見てください。
ハスジカツオゾウムシです。アザミの葉につきます。見つけたらそっと近づいて手を伸ばしてみ てください。
面白いことが起こります。
2011.05.26
東北地方へ文房具を送る活動とクリスマスのバッタ
平成23年5月26日 木曜日
温情の会委員会の呼びかけによって集められた文房具の、東北地方への発送の準備が整いました。鉛筆1722本、ノート463冊など、たくさんの文房 具が集まったことをたいへんうれしく思います。これらの文房具は、宮城教育大学の協力を得て、福島県、宮城県、岩手県の小・中学生に届けられることになり ます。
温情の会委員会の「温情」という名前は、不二聖心の前身である「温情舎」という学校の名前に由来しています。その温情舎の校舎の跡地でツチイナゴを見つけ ました。冬の厳しい季節を成虫で乗り切る珍しいバッタです。昆虫博士の矢島稔さんは、このバッタを「クリスマスのバッタ」と呼んでいます。
冬の時期、成虫は枯葉に擬態するために茶色の体色をしていますが、幼虫のころは鮮やかな緑色をしています。周囲の環境に合わせて体色を変えることも生きるための重要な工夫なのです。
2011.05.26
東北地方へ文房具を送る活動とクリスマスのバッタ
平成23年5月26日 木曜日
温情の会委員会の呼びかけによって集められた文房具の、東北地方への発送の準備が整いました。鉛筆1722本、ノート463冊など、たくさんの文房 具が集まったことをたいへんうれしく思います。これらの文房具は、
宮城教育大学の協力を得て、福島県、宮城県、岩手県の小・中学生に届けられることになり ます。
温情の会委員会の「温情」という名前は、不二聖心の前身である「温情舎」という学校の名前に由来しています。
その温情舎の校舎の跡地でツチイナゴを見つけ ました。冬の厳しい季節を成虫で乗り切る珍しいバッタです。
昆虫博士の矢島稔さんは、このバッタを「クリスマスのバッタ」と呼んでいます。
冬の時期、成虫は枯葉に擬態するために茶色の体色をしていますが、幼虫のころは鮮やかな緑色をしています。
周囲の環境に合わせて体色を変えることも生きるための重要な工夫なのです。
2011.05.25
今日の富士山とマツバウンランとアカマツの花
平成23年5月25日 水曜日
昨日は冷たい雨の降る一日でした。富士山には雪が降ったようです。下の写真は今朝の富士山の様子です。
5月15日の「不二聖心のフィールド日記」で紹介した富士山の写真と比較すると山肌の色合いの違いが
わかります。
今日は、今ちょうど紫色の花をつけている植物を2種、紹介しましょう。紫は、古来、
特別に高貴な色とされてきました。
一つは、マツバウンランという、アメリカ原産の帰化植物です。葉が松の葉に似ているところから
マツバウンランと名付けられましたが、松との間に生物学的なつながりは全くありません。
お茶畑の縁にたくさん生えています。
本物の松の花も今咲いています。下の写真は築山のアカマツの雌花の写真です。
ユニークなかたちをした、渋い色合いの松の花には、独特の味わいがあります。
今日は、創立者の命日であり、本当の「聖マグダレナ・ソフィアの祝日」になります。葡萄畑の近くで
育ちスミレの花を愛したという聖マグダレナ・ソフィアは、紫の色を好まれたのではないかと想像します。