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フィールド日記

2011年08月

2011.08.21

スキバツリアブ

平成23年8月21日 日曜日

 8月13日にアブの不思議な行動を目にしました。何匹ものアブが一か所に集まって腹部の先端を土にこすり
つけるような行動をしていたのです。早速、昆虫研究家の平井剛夫先生にうかがったところ、
先生がいろいろと手をつくして調べてくださり、今日その結果が届きました。
このアブはスキバツリアブというアブで、問題の行動は産卵行動である可能性が高いということでした。
しかも土中に巣を作るハナバチ類のようなハチの仲間 の幼虫に寄生しているようだということです。
つまり、この写真に写っている土の下にハチの巣があるかもしれないということです。
この場所はかつて葡萄園があった場所のさらに先にあり、おそらく20年以上人間が誰も立ち入っていない
のではないかと思われる場所です。そのような場所で、人知れず、アブとハチの不思議な関係が続いてきた
可能性があります。

 下の写真は葡萄園に沿って作られた道です。何十年もほとんど人が歩いていませんが、
道としての姿をかろうじてとどめています。この道の先にスキバツリアブの集団産卵場所があります。

2011.08.20

センニンソウ・ウラギンシジミの幼虫

平成23年8月20日 土曜日

 ここしばらくの暑さが嘘のように気温が下がり、不二聖心のフィールドも一日で大きく様変わりした
ように感じました。何より変わったのは音です。蝉の声が小さくなって、キリギリス科の昆虫の鳴き声が
よく聞こえるようになり、何やら寂しい気配がただよっていました。
花々も主役を交替しつつあり、センニンソウが咲き始め、イタドリやクズの蕾が着実に大きくなっている
様子が観察できました。
下の写真は校舎の裏に咲くセンニンソウです。

 クズの蕾を見ていて驚いたことがあります。ウラギンシジミというチョウの幼虫を蕾の房の中に
見つけたのです。蕾に見事に擬態していました。蕾はやがて紫色に変色していきます。
その変化に合わせて幼虫も自分の色を変えていくのです。もうこれは驚異としかいいようがありません。
 

 下の写真は2010年9月11日に撮影したものです。あと一カ月足らずでこのような姿になるはずです。
ウラギンシジミについて詳しく知りたい人には『葉の裏で冬を生きぬくチョウ』(高柳芳恵 偕成社)が
おすすめです。高柳さんが10年にわたってウラギンシジミを観察した記録を本にしたものです。
これ一冊読めば、自然を見る目が確実に変わります。

2011.08.19

タカサゴユリ・オナガバチの産卵

平成23年8月19日 金曜日

全国的に天気が下り坂で、連日の猛暑も一休みとなりました。
今日は9月23日の秋分の日に行われる第2回学校説明会の準備のために学校へ行ってきました。

 正門のところのタカサゴユリがようやく咲き始めました。タカサゴユリは台湾から日本に伝わった外来種で
「タカサゴ」は「台湾」の古名です。今では 野生化しているものも多く、この花を見かけない町はない
といっていいほどどこでも見られる花となっています。毎年、夏休みの後半に咲き始めるので、
この花が咲くと、夏休みにやり残していることはないかと焦りを感じます。
 

 車で上まで上がってみると、本館前のタカサゴユリはまだ咲いていませんでした。
標高の違いが花の咲く時期の違いとなっています。不二聖心のフィールドの多様性は正門から林道まで
多様な標高の自然が存在していることによるところも大きいようです。

 オナガバチの産卵を今日も観察できました。これで17日、18日、19日と3日続けての産卵行動の確認と
なりました。しかもすべて複数の個体の産卵行動が確認できています。下の写真はそのうちの1匹ですが、
産卵管が木にしっかりと刺さっている様 子が確認できます。
この産卵管は樹皮を貫通して木の中に潜んでいる虫の体にまで達しているものと思われます。
著名な昆虫学者の矢島稔氏は『ハチのふしぎとアリのなぞ』(自然の不思議を伝える素晴らしい本です)
(偕成社)の中で、次のように書いています。

 ある時期、わたしはそのシーンをもとめて、山道を歩きつづけました。
それはオナガバチのなかまの産卵の現場をみたいからです。以前から話をきいていましたが、
このオナガバチのメスは交尾後、嗅覚をつかって、木の中にいるカミキリムシの幼虫の居場所をたしかめ、
そこへ長い産卵管を刺しこんで卵をおくりこむというのです。

 矢島先生は山道を歩き続けたそうですが、
不二聖心では車道から1分のところでオナガバチの産卵を見ることができます。
 

2011.08.18

ハリギリの樹皮・ベニイグチ

平成23年8月18日 木曜日

 幸田文の名著『木』(新潮文庫)の中に「木のきもの」という随筆が収められています。
その中に次のような一節があります。

 木は着物をきている、と思いあててからもう何年になるだろう。北海道へえぞ松を見に行ったとき、
針葉樹林を走りのぼるジープの上で当惑したこと は、どれがえぞ松だか、みな一様にしかみえず、
見分けができないことだった。仕方がないので、目的地についてから、教えを乞うた。あなたは梢の葉っぱ
ばかり見るから、わからなくなっちゃう、幹の色、木の肌の様子も見てごらんといわれた。
つまり、高いところにある葉や花にだけ、うつつを抜かすな、目の高さに ある最も見やすい元のほうを見逃すな、ということである。そのときに、これは木の装いであり、樹皮をきものとして見立てれば、おぼえの手掛かりになると知った。

 不二聖心の森を歩きながら、木々の樹皮の様子の実にさまざまであることに気づき、幸田文の文章を
思い出しました。とりわけ印象的だったのは、鋭い棘の生えるハリギリの木肌です。
棘があるのは若木の時だけで成長とともに木肌の様子は変わります。
写真のハリギリはかなりの樹高に達しており、いくつかの 棘は手で触れると簡単にとれてしまいました。
 

 樹皮を見ること以外にも樹形を見たり、洞を見たり、森の楽しみは尽きません。
足元にはいろいろなキノコが生えています。今日はワインレッドのベニイグチと出会いました。

2011.08.17

オオフタオビドロバチの泥集め・オナガバチの産卵

平成23年8月17日 水曜日

 不二聖心の敷地内には東名高速道路と国道246号線が通り、その上に聖心橋という橋がかかっています。
今日はその付近の自然を観察しました。

 まず見つけたのは、巣作りのための泥集めをするオオフタオビドロバチです。
(オオフタオビド ロバチについて4月20日のフィールド日記でも紹介しました。)
オオフタオビドロバチがいたところだけが壁面が深くえぐれていました。
オオフタオビドロバ チは筒の中に泥で仕切りを作り産室としますが、
この壁面の泥がドロバチの求める土の条件にぴったり合っているのだと思います。

 オナガバチの1種が産卵している様子を観察しました。メス同士が産卵場所を奪い合っているように見えます。オナガバチにこのような習性があるのか、興味深い問題です。

 他にもいくつかの貴重な発見があり、東名高速の近くにも豊かな自然が存在していることがわかりました。
毎日新聞に載っていた中村桂子さんの言葉を紹介して今日の日記を終わります。

 自然はあるのではなく、見ようとする者にだけ見えるのである。

『里山だより』『めぐる命をはぐくむ風景・水辺』(今森光彦)の書評より

2011.08.16

ツリガネニンジン・イチモンジカメノコハムシ・ツノトンボの幼虫

平成23年8月16日 火曜日

ツリガネニンジンが咲きました。秋が近いことを感じます。

 毎日見続けることで初めて気づける変化があります。
8月7日のフィールド日記で紹介したイチモンジカメノコハムシの幼虫が成虫になり、
ツノトンボの卵から幼虫がかえりました。
 

2011.08.15

マツヨイグサ

平成23年8月15日 月曜日

 今の時期の不二聖心で最もよく見られる花の一つはマツヨイグサでしょう。
宵を待って咲くマツヨイグサは昼間はしぼんでいますから、
早朝でなければ下のような写真はなかなか撮ることができません。

 竹久夢二の詩に曲がつけられた有名な歌「宵待草」では、待宵草が宵待草と言い換えられています。
この歌についての面白いエピソードが、『花ごよみ』(杉本秀太郎)という本に紹介されていました。
以下に引用してみましょう。

 「宵待草」は、大正末から昭和にかけて愛唱された。夢二の歌詞は一番しかなかったが、
レコー ド会社がつづきの歌詞を西条八十に依頼したという。そして西条が付け足した歌詞には
「宵待草の花が散る」とあったという。待宵草の花は、朝日を受けるとし ぼんでしまう。散りはしない。
人々の失笑を買った二番の歌詞は、幸いにして歌う人もなく、忘れ去られた。

2011.08.14

ツチイナゴ・ホオズキ・ニジュウヤホシテントウ・ミヤマアカネ

平成23年8月14日 日曜日

 温情舎小学校の跡地にクサギの群生地があります。こちらのクサギにも昨日のキャンプ場のクサギと同じようにカブラハバチが来ているのではないかと思い、確認するために跡地に行ってみました。
予想通り、数匹のカブラハバチを見ることができました。
温情舎の跡地では、ツチイナゴの幼虫もたくさん見ることができました。
5月26日のフィールド日記に紹介したのが親で、その子供たちの世代がしっかり育ってきています。

 跡地にはホオズキの実がたくさんなっていました。ホオズキはナス科の多年草ですが、
ナス科の大害虫であるニジュウヤホシテントウが葉をほとんどすべて食いつくしていました。

 ミヤマアカネのオスの赤色がますます鮮やかになってきました。ミヤマアカネのオスは成熟すると
体がまず赤くなり、縁紋の白が赤に変わります。このオスはかなり成熟が進んでいます。
 

 ちなみに下の写真は8月7日に撮影したものです。この1週間で確実に季節がすすんだことがわかります。

 

2011.08.13

クサギ・カブラハバチ・スズバチ

平成23年8月13日 土曜日

猛暑の不二聖心で貴重な発見をしました。

 日当たりのさほど良くない、キャンプ場に向かう道でもクサギの花が咲き始めました。
クサギは美しい花を咲かせますが、悪臭を放つので「臭い木=クサギ」と名付けられました。

 そのクサギの葉の上にカブラハバチがいました。しかも数匹がとまっていました。何かあると思いつつ
坂道を上がり、またクサギの木を見つけました。そこにも同じようにたくさんのカブラハバチがいたのです。
クサギとカブラハバチに特別なつながりがあることを確信し、帰宅後いろいろと調べてみました。その結果、
カブラハバチがクサギにいる理由として考えられることは二つあることがわかりました。
一つは、クサギの葉に生えている腺毛状突起を摂食することで体内にクサギの苦味物質を取り込み
外敵から身を守る一助としているというものでした。もう一 つの説はさらに驚くべきことを伝えていました。
クサギの腺毛状突起を摂食したカブラハバチは体内の成熟卵の数が増える傾向があるというのです。
つまりクサ ギにカブラハバチが集まるのは生殖能力を高めるためということです。
「カブラ」は「大根」の古い言い方であり、カブラハバチは大根の害虫として知られていますが、
大根の真の敵はカブラハバチではなくクサギであったのかもしれません。

 温情舎小学校の跡地の石垣にスズバチがとまっていました。カブラハバチが比較的原始的な種類の
ハチであるのに対して、スズバチは進化の最先端をいくスズメバチ科に属しています。
スズバチは、土を用いて巣を作り、その中に卵を産み幼虫を育てます。

2011.08.12

シオカラトンボ・ウスバカゲロウ

平成23年8月12日

 仕事を終えてから、夕方の雑木林の道を歩いてみました。
3分程度の間にカヤキリのオスが鳴く姿を4匹も見ることができたのには驚きました。

 ムギワラトンボ(シオカラトンボのメス)が夕方の光を受けて静かに草の上に止まっていました。

 ウスバカゲロウも見かけました。あまり見かけない種類です。
不二聖心の中に何種類のウスバカゲロウがいるのか、まだまだ見当もつかない状態です。