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フィールド日記

2018.05.15

ニワゼキショウ

 校舎近くの芝生やオークヒルにたくさんのニワゼキショウが咲き始めました。北アメリカ原産で明治20年ごろに渡来し各地に広がったそうです。


 名前は庭に咲くセキショウという意味です。セキショウは川の縁などに自生しています。下の写真はマリア館前のビオトープ池に植栽されたセキショウです。4月に撮影したもので、黄緑色の棒状のものが花の集まりです。花は全く似ていませんが、葉のつき方は似ています。

2018.05.11

ウマノアシガタ

 駐車場の近くにウマノアシガタが群生している場所があります。別名をキンポウゲといいますが、本来はウマノアシガタの花が重弁になったものをキンポウゲと呼んでいたようです。花弁には光沢があって遠くからでも目を引きます。

 ウマノアシガタの由来は、葉の形が馬の足跡に似ているという説と、花の形が馬用の履物である馬沓(うまぐつ)の形に似ているという説があるようですが、どちらもあまり似ていないような気もします。

2018.05.08

ホソバオオアマナ

 クリ畑の隅にホソバオオアマナが咲いていました。周りによく溶け込んでいたので在来種かと思いましたが、地中海沿岸地方原産の帰化植物でした。観賞用に栽培されていたものが野生化して分布を広げていると言われています。

 英語版ウィキペディアによると、この仲間は、星の形をした花をキリストが誕生したときに現れたベツレヘムの星に見立てて“Star-of-Bethlehem”と呼ばれているそうです。

2018.05.04

ツルチョウチンゴケ

 ヒノキ林の湿った林床にツルチョウチンゴケが群落をつくっています。先日紹介したコツボゴケと近縁で似た雰囲気をもっていますが、全体的にやや大型で、弱く波打つ葉が美しいコケです。

 ツルチョウチンゴケの仲間は直立する茎のほかに、名前の「ツル」の由来となったと思われる匍匐する茎をもっています。下の写真のように、匍匐する茎が地面に接したところから仮根を伸ばしたり、直立する茎が出たりと新たに成長して群落を広げていきます。生殖器官は直立する茎の先端につきます。

2018.05.01

コツボゴケ

 職員室前の庭にコツボゴケが大きな群落をつくっています。都市部の庭や公園にも普通に見られますが、透明感のある鮮やかな緑色の葉が美しいコケです。

 花のように見えるものは雄花盤といい、造精器などが集まりカップ状の形をつくっています。ここに雨などで水がたまると、下の写真のように精子を含む細胞のかたまりが放出されます。さらに雨粒があたってしぶきが飛び、運よく雌植物の卵細胞まで届くと、受精して胞子体がつくられます。非常に確率が低そうな方法ですが、まわりには胞子体をつけた個体も多くみられることから、それなりにうまくいく方法のようです。

2018.04.27

ホソミオツネントンボ

 先週、築山の池できれいな青いトンボが飛んでいるのを見つけました。図書館で調べたところ、ホソミオツネントンボというようです。オツネンとは越年のことで、成虫で越冬するというトンボとしては珍しい生態に由来しています。

 図鑑には、梅雨の終わりから盛夏にかけて羽化した未熟な個体は淡褐色をしていて、越冬し、春を迎えて成熟した個体は美しい青色をおびてくるとあります。つまり、この個体は昨年羽化し、越冬して成熟した個体だといえます。産卵は抽水植物や水面上にはりだした植物の葉などに行なわれるそうで、築山の池では水面上にはりだしたシダレザクラの葉に産卵している可能性がありそうです。

2018.04.24

ナベワリ

  先週、ヒノキ林の斜面にナベワリが咲いているのを見つけました。花は緑色で下を向いています。有毒植物で、舐めると舌が割れるという意味の「舐め割り」が訛ってナベワリとなったと言われています。

 ナベワリ属は日本にナベワリを含む2種と北アメリカ東部に1種が知られています。被子植物では60前後のグループでこのような東アジアと北アメリカ東部に隔離分布をする植物が見つかっています。これらの植物は古第三期 (約6500万年前~)の地球が比較的温暖だったときには北極圏を取り囲むように分布していましたが、その後の寒冷化に伴い南下してきて、現在見られるような隔離分布を示すようになったと考えられています。

2018.04.20

タチヒダゴケ

 学院内のクリの木の樹幹上にタチヒダゴケの群落が見られます。植物体の先端にある淡褐色のふくらみは「朔(さく)」と言い、中に緑色の胞子が入っています。


 コケ植物は乾燥しているときと湿っているときで姿形が大きく異なっていることが多いため、観察には霧吹きを持って行っています。下の写真は、上の写真の群落を霧吹きで湿らせたものです。あっという間に葉が開き、鮮やかな緑色になりました。


 タチヒダゴケと近縁の種を見分けるポイントの1つは、朔にある気孔が表面ではなく、凹みの中にあるということです。下の顕微鏡写真は朔の表面にピントをあわせたもの(左)と、やや奥にピントをあわせたもの(右)で、気孔が凹みの中にあることがわかります。

2018.04.17

スルガテンナンショウ

 校舎の近くにスルガテンナンショウが咲いていました。「仏炎苞(ぶつえんほう)」と呼ばれる筒状の葉に花の集まりが包まれており、独特の雰囲気があります。


 近縁の種には、草姿や模様がマムシに似ていることからマムシグサと呼ばれるものもあります。本種は仏炎苞の上部の内側に微細な突起が密生することや、付属体と呼ばれる棒状の部分の先端が前方に曲がり球状にふくらむことで区別されます。スルガテンナンショウの分布は中部地方の太平洋側とされており、『神奈川県植物誌2001』に記録がないことから、不二聖心がほとんど分布の東限と言ってよいかもしれません。

2018.04.13

サトザクラ

 職員室横の八重咲きのサトザクラが満開を迎えています。サクラの園芸品種は200種類以上あると言われていますが、これらを総称してサトザクラと呼んでいます。生徒と花弁の枚数を数えたところ、1つの花につき23~32枚の花弁がありました。


 ヤマザクラなど野生のサクラの花には5枚の花弁と多数の雄しべがあります。八重咲きのサトザクラは遺伝子の異常によって雄しべが花弁に変化したものと考えられています。花を分解してみると、下の写真のように花弁と雄しべの中間の形をしたものが見られました。確かに、雄しべが花弁に変化しているようです。

 木曜日には家庭科クラブの生徒たちが、開ききる前の花を摘み取って「桜の塩漬け」づくりをしていました。サトザクラは目で見て楽しむだけでなく、食用にも利用されています。この後、塩や酢に漬け込み、1か月ほどで出来上がるそうです。